阿波座「喫茶 水鯨」。金沢からやってきた新レトロ喫茶へ【大阪ごはんカフェ#8】

阿波座「喫茶 水鯨」。金沢からやってきた新レトロ喫茶へ【大阪ごはんカフェ#8】

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大阪でおいしい食事が楽しめるカフェを紹介する連載企画第八弾。今回は昔ながらの喫茶店の味を求めて、2021年オープンのお店「水鯨」にお邪魔しました。新店なのに見渡す限りレトロな歴史を感じるこのお店の不思議とともに、とっておきのメニューをお伝えします。

Summary

大阪のレトロと金沢のレトロが交差する「喫茶 水鯨」

2021年9月9日、大阪メトロ中央線・千日前線阿波座駅 7号出口から徒歩7分の場所に誕生した「喫茶 水鯨」。駅を出て、本町駅方向へはレストランやカフェが点在しますが、木津川を越えて西側には飲食店がほとんどない印象で、「喫茶 水鯨」から漏れる灯りがひときわ輝いてみえます。

旧川口居留地に建つモダン建築は、昭和初期に建てられた鉄筋コンクリート建ての洋館。向かいには、大正9年建築のステンドグラスが美しい日本聖公会川口基督教会聖堂(大阪府指定有形文化財)があり、実はレトロ建築好きにはよく知られたゾーンです。

近づいてみると少し剥げた「珈琲館 禁煙室」の文字が読み取れます。あれ?懐かしい…と思われた方がいらっしゃるとしたら、その方は石川県出身では?? この扉、石川県金沢市で50年近く営業されていて、店主が高齢につき2020年に惜しまれつつ閉店された名物純喫茶「珈琲館 禁煙室」から移築されたもの。

「街から消えゆく喫茶店を継いで残していきたい」。大阪で間借りカフェを営みながらも、遠く離れた金沢の喫茶店「珈琲館 禁煙室」を継ぎたいと熱望していた山口さん。そのままの場所で店を継ぐことは叶いませんでしたが、熱意が店主の心を動かし、店を構成するパーツたちを残さず譲り受けることに。それらを大阪・阿波座のレトロビルに移築、NEW OPENしたのが「喫茶 水鯨」なのです。

重厚な扉も、キラキラと光るステンドグラスの窓も、ゴブラン織と思われるソファも天井から下がるペンダントランプも、すべて金沢にあった店舗から丁寧に取り外して持ち運んだもの。

当時の店名は「禁煙室」なのに、「たばこの吸える喫茶店」の看板が加えられているのも時代の流れを感じます。

50年間の埃やタバコのヤニを丁寧にぬぐいとると、見違えるような美しい姿に。もともと上質な調度品たちは、時を超えて歴史を繋げます。

「喫茶 水鯨」でも奥の庭に喫煙コーナーあり。全席禁煙のお店が多くなった中で、愛煙家の方には嬉しいお店です。

ガス火で煎る、自家焙煎珈琲豆で淹れるコーヒーと豆販売

山口さんが「街から消えゆく喫茶店を継いで残していきたい」と思ったときに、もうひとつ大事にしたのはコーヒー。自家焙煎の店が増えていますが、こちらはよく見かける機械煎りではなく、ガス火で火加減を調整しながら煎るアナログな焙煎方法。

コーヒー480円〜
コーヒー480円〜

何度も焙煎を繰り返し、ようやく完成した店の味。直火で煎った豆の苦味とコクがしっかりと感じられ、後味はスッキリ。

豆とドリップバッグも販売。パッケージが少しずつ違います。よく見るとロゴと豆の名前はハンコ。細部まで手作りの温かみを感じられます。

姿も味も品がよい、バターライスのオムライス

オムライス(スープ・サラダ付き)800円
オムライス(スープ・サラダ付き)800円

さて、「大阪カフェごはん」がテーマのこの記事の主役は、オムライス。玉子の黄色とケチャップの赤の色合い、端っこにいくにつれてすぼんだ形も美しくて食欲をかきたてられます。

「禁煙室」時代の革のランチョンマットが、まるで誂えたようにしっくりと合います。

美しく整えられた玉子にスプーンを入れると、中から現れたのはバターライス。こっくりとしたバターにベーコンと玉ねぎとバターのうまみが混じり合ってこれまた美味。玉子は厚みがあって、中はトロトロ。ケチャップ、玉子、バターライスのバランスの良さが抜群です。

昭和のレシピ復刻、純喫茶のプリンとプリンアラモード

自家製プリン450円
自家製プリン450円

そしてレトロ喫茶といえば、やっぱりコレ。固焼きのクラシックなプリン。

プリンアラモード850円
プリンアラモード850円

プリンを飾り切りしたフルーツでおめかししたプリンアラモードはこのゴージャスさで850円。なんだか値段まで昭和のようです。

昔のもの、古いものを残して、未来に繋いでいきたいという山口さんの思いが呼び寄せたのか、阿波座のレトロビルの庭からは、今は存在しない昔々の喫茶店の専門学校「関西喫茶専門学院」の教科書が。ここには昭和の喫茶店の王道レシピがたくさん載っていて、先ほど紹介したプリンアラモードとホットケーキはこの教科書から復刻したもの。(プリンアラモードのフルーツは季節によって変更)

「街から消えゆく喫茶店を継いで残していく」活動は、これからも続き、いまはいろいろな喫茶店から受け継いだ調度品を集めながら、次のお店でお披露目できるように準備中とのこと。

昭和の頃から続く喫茶店にはいろんなドラマがあったのでしょう。私たちも、この場所でおいしく楽しい思い出を紡いでいきたいですね。

■喫茶 水鯨 (きっさ すいげい)
住所:大阪府大阪市西区川口1丁目4−19
TEL:06-6556-6226
営業時間:7〜17時(16時30分LO)
定休日: 月・火曜
アクセス:大阪メトロ 阿波座駅から徒歩7分

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Photo: photo scape CORNER.大﨑 俊典
Text:京都ライター事務所 小西尋子

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