清らかな京都の石庭をお取り寄せ、和洋折衷な“絹ごし緑茶てぃらみす”
京都市の北西エリア。南北に伸びる白川通から「詩仙堂」へと続く曼殊院道(まんしゅいんみち)の途中にある『一乗寺中谷』は、昭和10年から続く古い和菓子店。10年ほど前に一風変わった和洋菓子が登場してからその存在に熱い注目が集まることに。お取り寄せができるこのお店、地元の人たちに愛されながら進化する人気の秘密を探ります。
下町の風情残る一乗寺の和菓子・洋菓子店
京都市左京区といえば京都大学や京都芸術大学などの大学が集まり、下鴨神社をはじめとした神社仏閣も多くあるアカデミックなエリア。
なかでも白川通り周辺はお洒落な飲食店やスーパーが並ぶ人気の住宅街です。
その白川通から四季折々の庭が美しい「詩仙堂」に向かって歩く道すがらにある『一乗寺中谷』は、瓦屋根に土壁の日本家屋で古くからご近所に愛される和菓子屋さん。
通りに一番目立つ場所には、一乗寺の郷土銘菓であるでっち羊かんが並びます。
ショーケースには近所の人たちの日々のおやつになる季節の朝生菓子が。ここまでは見慣れた街の和菓子屋さん。
ですが、店内に足を踏み入れると、ショートケーキやプリン、濃い味カスタードのシュークリームなどケーキ屋さんそのもののショーケースが。
でもなぜこんなことに? と伺えば、遡ること十数年前、パティシエをしていた奥さんと和菓子店の跡取りの旦那さんが、技術の向上と勉強のために通っていた菓子技術専門校で出会ったことから始まったそう
最初に話題になったのが豆乳プリン。「お茶を飲もうとして、湯呑み茶碗を持ったら、お菓子だった!」といういたずら心から生まれたプリンは、見た目の艶やかさもお茶そのもの。
味も抹茶とほうじ茶で、それぞれ京都が誇る茶舗「柳桜園」の抹茶と「一保堂」のほうじ茶が使われています。
遊び心と職人のこだわりが食べた人のハートをつかみ、ロングセラー商品。
龍安寺の石庭を思わせる、お取り寄せ名物「絹ごし緑茶てぃらみす」
とっても素敵な『一乗寺中谷』ですが、2020年の春は外出自粛しないといけない時期ですよね…。
でも、『一乗寺中谷』の味は、お取り寄せができます!
お取り寄せの一番人気は、かたちが決まるまで2年もの時間がかかったという「絹ごし緑茶てぃらみす」。
枯山水の庭をイメージして折り箱に流し込んだ風情のある和テイストの洋菓子です。
白あんと豆乳に上質な生クリーム、フロマージュブランと白い素材が競演。“緑茶”部分の味の決め手は「柳桜園」の抹茶。緑色を表に出さないのは、ほんものの抹茶は空気に触れるとすぐに変色してしまうから。中にたっぷりと配合されています。
材料だけを聞いていると甘さが強いように感じますが、食べてみるとまるで“絹ごし”の食感。すっと溶けていく繊細なあと味。
甘いものが好きではなくても、もう一度食べたいと思わせられる不思議なスイーツです。
でっち羊羹と抹茶ジェラートが混在⁉︎不思議でおいしい「中谷パフェ」
さて、店の奥には、茶家(喫茶)のスペースも。こちらでは京都のお正月に欠かせない白味噌の雑煮がついた「京雑煮のいろどりごはん」などのごはんもの、和菓子または洋菓子とドリンクのセット、おやついろいろがいただけます。
どのメニューもとっても人気で、魅力的なのですが、今回はお店の名前がついた「中谷パフェ」をご紹介。
このパフェ、『一乗寺中谷』の魅力がギュギュギュッと詰まっていて、写真を見ているだけで思い出してニヤニヤしてしまいます。
一番上の飾りは、店の代表菓子でっち羊かん。その横にはミルクと卵の香りが濃厚なアイス。中には葛もちのようにやわらかい豆腐羊かん、すっと爽やかな抹茶のジェラート、食べ進めるとなめらかな豆乳プリンが現れ、その奥からロールケーキが顔を出す。
どれもがしっかりと存在を感じられるのに、次のおかしが現れるとさっと座を譲る名役者揃い。とっても値打ちのある1050円です。気持ちよくおでかけができるようになったら食べてみてくださいね!
日々の生活がちょっと窮屈に感じる2020年の春。ご自宅に“京都の石庭”を呼んで、ちょっぴり旅気分のティータイムを過ごしませんか?
Photo:瀬田川勝弘
text:小西尋子
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