庭園を眺めながら縁側でワーケーション。京都・登録有形文化財「苔香居」

庭園を眺めながら縁側でワーケーション。京都・登録有形文化財「苔香居」

京都府 泊まる ステイ ホテル 建築 伝統文化
Twitter Facebook LINE はてなブックマーク Pocket

京都市の西、阪急嵐山線・上桂駅エリアにある「山口家住宅 苔香居(たいこうきょ)」はコワーキングスペースとして利用することができる、国・登録有形文化財の屋敷です。お茶室のある美しい庭園に囲まれた静かな環境でのワーケーションは、とっても快適です。

Summary


江戸時代後期に建てられた見事な茅葺屋根の長屋門をくぐるトキメキ

苔香居のある松尾山田一体は、公家・葉室家が治める荘園でした。建物の前に立つと、15mもある長屋門の見事な茅葺屋根に圧倒されます。この葉室家の重臣であり、江戸時代には地域の庄屋も務めたのが、苔香居のオーナーである山口家です。400年の歴史をもつ旧家で現在の当主は20代目となります。

長屋門をくぐると、前庭の向こうに重厚な母屋が見えます。この母屋も江戸時代後期に建てられたもので、ほぼ当時のまま残されており、母屋を含む3棟が国・登録有形文化財に指定されています。

土間には囲炉裏があり、実際に使われていた古い生活道具がさりげなく置かれています。地域をまとめていた庄屋の暮らしに思いを馳せることができますね。囲炉裏の使用については、申し込み時に相談を。

アトリエとして使われていたモダンな洋間でお仕事

建物内には現在2つの部屋と広い縁側、リビングというワーキングスペースがあり、利用者はここを自由に移動して使うことができます。洋間は現当主が絵を描くためのアトリエとしてリフォームした部屋。大きな窓がある明るい部屋は6畳ほどで、ほどよい広さのため、集中できて作業効率が上がりそうです。
さりげなく置かれている双眼鏡や三脚が、昭和初期のものだったり、随所に旧家らしい調度品があることに驚かされます。

茶室が見える書斎はイマジネーションが広がりそう

もう一つの部屋は2方向に出窓スタイルの大きな窓がある書斎。窓から見える庭園には、お茶室と待合いが見えて風情を感じます。新緑の季節、紅葉の季節、落ち葉で赤や黄色に染まる初冬、そんな風景を見ていると心が落ち着いてイマジネーションが広がります。クリエイティブな仕事をしている人におすすめです。

オブジェのように置かれている古い蓄音機、そして昭和時代のテレビはダイヤル式でチャンネルを変えるもの。リモコンに慣れた世代には新鮮に映ります。夏でも窓を開けると涼しい風が入り、冬はオイルヒーターで快適。この部屋が気に入って、1カ月ほど利用した外国人家族もいたそうです。その気持ち、わかります。

苔の庭を背景に広い縁側で過ごす穏やかな時間

自然生えの数十種類の苔が美しい庭に面した広縁は、仕事もいいけどゆっくりしたくなるスペースです。鳥の声だけが聞こえる静かな空間、季節によっては和室のふすまと床の間の小窓を開けて、中庭からの風が渡る心地よさを体感できます。コーヒーマシンでコーヒーを淹れて、休憩タイムをとりたいですね。

あちらこちらに凝った造りがみられる昔ながらの和の建物。さりげなくて見逃しそうなのですが、釘隠しの泥七宝(どろしっぽう)は、皇室ゆかりの曼殊院門跡(まんしゅいんもんぜき)のものと同じなのです。富士山にかかる雲の図案がすべて違うという芸術作品を間近に見ることができます。

人間国宝が作った家具があるリビングルーム

リビングのテーブルとイスは、木漆工芸の人間国宝、黒田辰秋氏の作品です。今はもう入手できないほど希少なものを日常づかいできるのも旧家のすごいところでしょう。
カウンターを隔てたキッチンは、快適にリフォームされて、冷蔵庫や電子レンジ、食器類も完備。茶道の道具もあるので抹茶を点てるのもいいですね。

台所は新旧の設備が整っています。水道もあれば、昔ならの井戸も健在で、冬温かく夏冷たい井戸水をポンプでくみ上げています。5つのかまどを備えたおくどさんも現役で使え、かまどでのご飯炊き、いろりでの鍋づくり、当主直伝のそば打ち(各一人5500円)も予約制で体験できます。

滞在型ワーケーションを希望する人は、苔香居から歩いて1分の場所に、家具家電付きのシェアアパートメントに宿泊ができます。

●コワーキングスペース利用料
ドロップイン1日2200円、マンスリー1カ月1万6500円

●コリビングアパートメント シングルベッドルーム

1泊5000円(コワーキングスペース利用料、別途1日2200円)、1カ月1室 6万4000円(水道光熱費、通信費、コワーキングスペースの利用料を含む)
※リビング・キッチン・バス・トイレ・洗面は他滞在者(3部屋で)と各共用
※現地で別途200円/泊の宿泊税要
※チェックイン17:00、チェックアウト10:00

コワーキングスペース、コリビングアパートメント、ともに利用申し込みは事前にHPから。
公式HP:https://achicochi.life/kyoto-taikoukyo-coliving-japanese/

夏は昔ながらのあじろ、よしず、みすで暑さ対策をするなど、日本の生活文化を実際に体験できます。歴史ある旧家で、長年受け継がれてきた「本物」に囲まれて過ごすワーケーションは、都心の環境とは違う発想と集中力が生まれそうですね。

text:松田きこ(ウエストプラン)

●旅行中は「新しい旅のエチケット」実施のご協力をお願いします。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

Twitter Facebook LINE はてなブックマーク Pocket
記事トップに戻る

この記事に関連するタグ

編集部のおすすめ

ページトップへ戻る

検索したいキーワードを入力してください