誰にも教えたくない、わたしだけの"避暑地"。憧れのクラシックホテルで、のんびり気楽にひとりステイ【第11回 東京ヒトリホテル】
年に150泊以上するひとりステイのスペシャリスト・マロ(@ohitorigram)が、ひとりで泊まりたい都内のホテルを紹介する『東京ヒトリホテル』。第11回目となる今回は、東京・御茶ノ水にある「山の上ホテル」です。数々の文豪に愛されたクラシックホテルとして名高く、「いつか泊まってみたいなあ…」と憧れていたのですが、今回念願かなってひとりステイをしてきました。泊まったからこそ分かる、隅々に宿る“素朴で美しい”魅力をたっぷり紹介していきます!
Summary
おうちの居間のようにのんびり安らげる、“一服の清涼剤のような安息地”
東京・御茶ノ水、丘の上にひっそりと佇むクラシックホテル「山の上ホテル」。緑に囲まれ、静寂が広がっていて、都会とは思えない空気が流れています。
今回、私が宿泊したのは「デラックスシングル・ダブル」(和室)。数々のお部屋タイプの中で、悩みに悩み、畳の上にベッドという和洋折衷の設えが美しいお部屋に決めました。
透き通るアクリルが美しいお部屋のキー。なんとショップで、ミニチュア(キーホルダー)を販売しています!
しかもなんと今回は、作家・池波正太郎氏が気に入って指定していたという、401号室に宿泊できることに。
私も一目でこのお部屋を気に入ってしまったのですが、何より心奪われたのがこちらの机。障子に光が差し込む瞬間がとてもきれいで、眺めているだけで幸せになれます。
障子を開けると、さわやかな緑が…。ここに座りながら仕事をしたり、本を読んだり、ただお茶を飲んだり。あまりにも静かで、夏らしい蝉の音も聞くことができて、至福の時間でした。私も次回から、このお部屋を指定したいな。
さらに、私が好きだったのが、こちらの鏡台。丸みを帯びた鏡や椅子と、添えられた一輪の薔薇がなんとも可愛らしく、何の用がなくても思わずふらっと近づいて見惚れてしまうほどでした。
和洋から選べるのですが、私は洋食をチョイス。
「とにかくお部屋にずっといたい」と思っていたら、なんと今(2021年8月現在)はルームサービスのみでの朝食提供になっていたので、こちらで朝食を味わいながら、日差しの差し込むお部屋を堪能することができました。なんと幸せな…!
しかも今回、庭付きスイートルームにも宿泊させていただけて感無量でした。坪庭が美しく、優雅な時間を満喫することができました。
ずっと泊まりたかった憧れのホテルだったのですが、素朴で美しい空間だからこそ、初めての滞在でも自分のおうちのようにくつろぐことができました。
40年前に作られた客室コンセプトは「一服の清涼剤のような安息地」だったそうですが、本当にその言葉通り、静かでさわやかな空気が広がっているので、ひとりで心落ち着く穏やかな時間を過ごせます。
また、夜眠る前に使うアメニティボックスには「お休みなさいませ」と心温まる手書きの言葉がさりげなく添えられていて、
タイの高級スパブランド「パンピューリ」のシャンプー類が入ったアメニティの袋はこんなにも可愛く(もちろんお持ち帰りしました!)て、
ドアノブにかけられたお掃除の札も愛おしさがあふれていました。隅々まで山の上ホテルらしさを、楽しんでみてください。
床や天井、階段も…現代によみがえるアール・デコ調の意匠
建物は昭和12年(1937)、建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏によって建築され、当時は生活改善を目的とした活動を行う「佐藤振興生活館」の本部ビルとして使われていました。
その後、昭和29年(1954)に「山の上ホテル」が創業し、現在まで至るのですが、長い年月とともに創業時の“アール・デコ調の意匠”が薄れてきたため、2019年に一部リニューアルを実施。当時の意匠をただ再現するのではなく、長い歴史の中で培われた現在のホテルのもつ空気感に合わせたかたちで、よみがえりました。
たとえば、こちらの陶器のタイルが可愛らしい階段。今回、お部屋は4階だったのですが、この階段を愛でたいがために、あえてエレベーターではなく階段を使用するシーンが何回もありました(笑)
そして、この螺旋階段は、上から見下ろしても、下から見上げても、美しいんです。真ちゅうと黒い御影石の手すり、赤いじゅうたん…惚れ惚れしますよね。
天井にはステンドグラスまで…!
ロビーの床のタイルや、天井の直線デザインもリニューアルで復元されたもの。クラシックでありながらどこかモダンな雰囲気も持ち合わせているからこそ、決して古びない美しさを放っています。
心ゆくまでディテールに目を凝らせるのが、おひとりステイの醍醐味のひとつ。それだけ細やかなデザインが施されているので、自分の“お気に入り”を、ぜひ見つけてほしいです。
ちなみに、私はこの階数表示のフォントが大好きでした。こちらも創業当時のものを復刻させているそうで、ここまでこだわっているのはさすがだなと…。レトロな色合いもとっても可愛いですよね。
これはアール・デコとは直接関係はないのですが、チェックインのデスクと椅子の空間もお気に入り。
あえてこちらにゆっくり腰かけてチェックインの手続きをするところが、山の上ホテルらしく、心のこもったサービスの温もりを感じました。
チェックインの様子を、窓際から“アフリカライオン”が見守っているので、こちらもお見逃しなく。
あの復刻デザートも堪能。“物語”を紡ぐ、ここにしかないレストランたち
35室とこじんまりした小さなホテルですが、なんと7つもの飲食店・バーが併設されています。なかでも、一番人気なのがこちらの「コーヒーパーラーヒルトップ」。
好きすぎて、4泊の滞在中で4回も訪れてしまったのですが(笑)、こちらも装飾がとても可愛いい。飾ってある画は、常連だった池波正太郎先生が海外旅行で訪れた風景をパステルや水彩画で描いたものだそうです。絶妙にこの空間になじんでいて、素敵ですよね。
そして、愛らしい薔薇の照明はスペインのヴィンテージものだそう。食事をしながら、見上げるたびにこの照明が目に入り、心が満たされました。
そして、やっぱりお目当てはこちら!「山の上ホテルのプリンアラモード」1430円(サービス料10%別)。
「こんなに優美なデザートがあっていいの?」という感じですよね。食べる前に、しばらくじっと見入ってしまいました。
実はこの前にしっかり食事もしていて、全部食べ切れるか不安だったんですが、重たくなく軽やかで、あっという間にぺろっと食べ切ってしまいました。びっくり!(笑)
そして、昼には「てんぷらと和食 山の上」にも行きました。どのレストランもこだわっているのですが、このロゴとイラストがもういいですよね~。
「天丼」3960円(サービス料10%別)は器も美しく、エビも3尾も入っていて豪勢で、とてもおいしかったです!このほか、中国料理、フレンチとお食事のジャンルも豊富で、作家の先生方が“缶詰め”したくなる理由に納得。こんなにおいしい食事があれば、ずっと籠れます(笑)
現在は営業を休止していますが、重厚で気品溢れる英国風バー「バーノンノン」も!お食事の後、ここで一杯飲んで、お部屋に泊まれたらなんて幸せなことでしょう…。
レストランも細やかなデザインが散りばめられていて、ひとりだからこそ堪能できていいなと思いました。
たとえば、こちらのコースター。途中でも触れましたが、書体やイラスト、ロゴまで本当にこだわっていて、いちいちときめいてしまいます。
「てんぷらと和食 山の上」の箸止めには、エビのイラストが…!
あまりにも愛らしくないですか?普段目にも留めないような場所に、素敵なデザインが潜んでいるので、ぜひ見つけてみてください。宿泊しなくても利用できるので、ぜひ♪
いかがでしたでしょうか?
今も次々にハイセンスなホテルは誕生していますが、ここまで細部に魂の宿るホテルは、なかなかないような気がしています。
そのすべてが織りなす空気感が本当に心地よく、ひとりでのんびりくつろげるんです。お部屋の便箋に書いてあるこのコピー、まさにその通りだなと思いました。
そして、やっぱりこれも、書体や改行が軽やかで美しいんですよね。好きだなあ、山の上ホテル。
■「山の上ホテル」
住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
TEL:03-3293-2311(代表)
チェックイン時間:14時~
チェックアウト時間:~12時
宿泊料金: デラックスシングル・ダブル(和室)1名利用2万5410円(税・サービス料込)
text:マロ
1992年東京生まれ。物心ついた頃から"ひとり行動"が大好き。「ひとり時間の楽しさ」をもっと多くの人に伝えたいと、2017年におひとりさま専門メディア「おひとりさま。」を設立。Instagramアカウント(@ohitorigram)のフォロワーは3.1万人。ひとりで行きたいお出かけ情報を日々発信するとともに、ホテルや飲食店とコラボして“ひとり向けプラン”の企画・プロデュースも手掛ける。
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