レトロモダンな街・大阪中崎町の「葉ね文庫」で、秋の夜長に沁みる1冊を!【わざわざ行きたい大阪の本屋さん#2】
レトロな街並みに、カフェや古着店など話題のショップが立ち並ぶ中崎町。街の一角にある雑居ビルに、週3日だけ開店する書店「葉ね文庫」があります。歌集や短歌などの作品集を中心に扱う店内には、新旧の作家たちが綴った素敵な言葉がずらり。何度となく通いたくなる書店がみつかるかもしれません。
小さな空間に新刊、古本がずらり
「葉ね文庫」は大阪メトロ谷町線・中崎町駅から徒歩2分ほど、古着店が多く入居する雑居ビル「サクラビル」の一角に店を構えています。ちょっとレトロなビルの一階、通路の奥へ進むと、教室の室名札にさりげなく書かれた店名が見えてきます。
ドアを開けると、8坪ほどのこぢんまりとした店内には至る所に本がずらり。と、その前に。靴を脱いでお店に入るのが「葉ね文庫」流です。絨毯敷の店内では、ホテルや自室のようなリラックスした空間の中で本を選ぶことができますよ。
「靴を脱ぐのはまずは自分が楽に過ごしたかったからですが、『ゆっくりしてくださいね』と言わなくても、ゆっくりしていいとお客様に感じていただけるといいな、とも思いました」、店主の池上規公子さんがレジ前に座りながら話をしてくれました。
足繁く通うファン多数。関西ではここにしかない作品も
「葉ね文庫」で取り扱うのは歌集や詩句、短歌や俳句などに特化した書籍ばかり。店内には注目の若手から有名作家、関西ではここでしか手に入らない作品集など、新刊や古本を含め数多くの書籍や作品集が並んでいます。
店内中央の棚には新刊、その奥に古本が並んでいます。新刊本は幅広い作家陣の作品が、古本はお客さんが持ち込んだものも多く、短歌や歌集のほか、漫画や小説なども展開しています。
「『葉ね文庫』のお客さん同士で好みも似通っているのか、古本には意識していなくても偏りがあるのかも」。たくさんある古本の中から、探していた歌集が見つかることも多いそう。
短歌に魅せられ、少ない営業日ながら連日賑わう店内
営業は週3日で、平日の開店時間も遅めと書店としては珍しい営業スタイル。実は店主は、WEB関連の仕事も兼業中だとか。「本当に関わっていたい仕事って何だろうと考えて本屋の道に。長く続けるために特色を出したいと、当時は店頭での扱いが少なかった詩歌というジャンルを充実させることにしました」。
短歌を題材にした枡野浩一の小説『ショートソング』を読み、短歌に興味を持った店主。気に入った本を出版社から取り寄せていたところ、想像以上に短歌や句集の書籍の数が多いことに驚き、今のスタイルを確立しました。
若い世代が意外と多い!? 短歌仲間が増えるかも
池上さんにオススメを尋ねると、次から次に教えてくれました。なかでも、「潭」(書肆山田発刊)は1980年代に発行された雑誌ながら、出版社から直接仕入れた新刊本。名詩人たちの作品が一同に楽しめると人気を集めています。
「短歌や俳句好きは年配の方が多かったり、敷居が高いと思われがちですが、今風の言葉で書かれているものも豊富。音楽のジャンルがいろいろあるように、詩歌もいろいろあって、今も新しいものが生まれているんです」と店主。店を訪れる人は大学生など若い人も多いんだとか。
オリジナルのブックカバーにも描かれている、“跳ね”るイラストが描かれた青い壁。その前にはイスが置かれ、ゆっくりと腰掛けながらお気に入りの作品を選ぶ人も多い。「夜はぐっと静かになって雰囲気も良い。つい長居する人も多くて、気付いたらお客さん同士が仲良くなることも」
気軽に読める詩歌の世界はこれまでと違う新しい体験ができるはず。どの作品を選ぶか迷ったら店主に相談を。オススメの一冊を提案してくれますよ。
Text&Photo:黒田奈保子
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