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【神戸】万人に愛された老舗「ひょうたん」の、味噌だれ餃子の物語

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神戸の餃子と言えば、濃厚な味噌だれで味わうのが定番。お店ごとに趣向を凝らしたオリジナルの味噌だれは、カリッと焼き上げた餃子に独特のコクをプラスしてくれます。ここ、三宮高架下の「ひょうたん」は、そんな神戸味噌だれ餃子を代表する一軒。地元に根付いたその人気を裏書きする、一つのエピソードがあります――。

Summary

愛されて60余年。味噌だれで味わう、庶民的な餃子専門店

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創業時代のひょうたん 元町店。「おいしい栄養食」のポップが時代を感じさせます

「ひょうたん」は、昭和32年(1957)創業の老舗餃子屋さん。安い・早い・旨いの三拍子そろった庶民的なお店です。店内に掲げた「餃子しかありません」の貼紙は、あまりにも有名。ご飯や日本酒はない、とにかく餃子(とビール)だけを楽しんでほしい、というお店の意思表示です。

もっちりと厚めの皮、ニンニク少なめのあっさりした具、そして神戸特有のコクのある赤味噌だれが渾然一体となった餃子はしみじみおいしく、ビールの進む逸品。「世界一おいしい!」とまでは言わないけれど、思い出したら食べたくなる親しみやすい味に、長年のファンも多いお店でした。

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現在の三宮店。ストイックなメニュー構成は相変わらずです

ところが2020年6月、突如貼り出された「閉店」の報…!お店は家族経営でしたが、2店舗の餃子を作っていた工場責任者が体調を崩されたこと、また機械の老朽化などの事情も重なり、やむなく閉店となってしまったそう。もちろん惜しむ声は多く、TVなどでも多くの著名人がこの店の思い出を語っては残念がっていました。

創業者の孫で、当時三宮店の店長だった長塚仁孝さんは、最終日のシャッターを下ろして、もちろん残念な気持ち半分、でもホッとする気持ちも半分だったそうです。


大切な食文化を次の世代へ。ファンの声と協力者の出現

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三宮店では、2020年春に店舗を改装したばかりでした

しかし閉店後も、お店を懐かしむ声は止みません。片付けを進めるうちにも、昔の常連さんたちがお店をのぞいて声をかけてきます。「『ひょうたん』は、私たちだけの店じゃなかった。お客さんみんなのものになっていたんだ。閉店したのは正しかったのか?」オーナーはそう自問し始めます。

「この店の味噌だれ餃子は、神戸の大切な食文化。次の時代につないでいきましょうよ!」ある飲食店経営のサポート会社から、再三にわたって事業承継のオファーがあったことも、オーナーの気持ちを後押ししました。新たに長塚さんを店主に据え、よし、一緒に頑張ろう!と、ここに復活ののろしが上がったんです。


「味、変わったな」と言われてはいけない。コロナ禍の中の再出発

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現在も餃子は工場で一括製造。各店舗で熟練の焼き手が仕上げています

再開にあたって一番苦心したのが「以前と味を変えないこと」。同じ機械、同じレシピで作っても、それで同じ味ができるわけではありません。半世紀以上受け継がれてきた味を忠実に再現するため、何度も試行錯誤を重ねたそうです。なんとか前オーナーが認める味にたどり着き、2021年2月、満を持してまず元町店、次いで三宮店が再オープン。閉店から8カ月、コロナ渦中の時短営業ではありましたが、待っていたたくさんのお客さんから諸手を挙げて祝福された再出発でした。

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1人前7個390円(写真は2人前)

味も値段もお店の雰囲気も以前と変わらない中で、唯一変わったのが経営体制。家族経営の温かみもいいけれど、今まで「ひょうたん」を知らなかった世代や地域にも、この味を広めていこう!サポート会社とタッグを組んで、店舗展開に乗り出しました。2022年5月現在で、元町・三宮に加え、さんプラザ・東山商店街・板宿・ミント神戸・垂水駅前と、全7店舗が営業しています。もちろん各店舗の焼き手はそれぞれみっちり研修、どの店でも同じ味を提供することは絶対条件。

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神戸特有の赤味噌だれ。あっさりした餃子に、濃厚なコクと旨みをプラス!

そう、この味。ひょうたんの餃子は、やっぱり味噌だれで食べるのがおいしい!コクのある八丁味噌にひき肉などを合わせたたれは、そのまま使ってもいいし、酢や醤油、ラー油などを加えて自分好みに調整してもOK。プリプリ・モチモチの皮にしっかり絡めてかじると、もうビールなしではいられません!

三宮店では提供していないけれど、味噌なので絶対ご飯にも合います。テイクアウトで晩のおかずにしている常連さんも多いはず!

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三宮店の壁には、あの名文句が今も…

あの「餃子しかありません」の名物貼紙も発見。でも、こんなこじゃれた貼紙でしたっけ?…こちら、関西ローカルの長寿バラエティ番組「ちちんぷいぷい」最終回(2021年3月12日放送)で、パーソナリティのハイヒールモモコさん・桂吉弥さんが取材に訪れた際に書いてくれたんだそう。「すまぬ!!」の一言が優しいですね。

なお、さんプラザ店・板宿店・ミント神戸店では、定食やライス単品も提供されていますよ。

老舗の食文化を現在、未来へ。令和の「ひょうたん」に期待大!

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「ひょうたん」グループの大黒柱として大忙し。三宮店・元町店で店長を務める長塚仁孝さん

今回の取材中も、平日の昼下がりにもかかわらず店内はほぼ満席。常連客・観光客、いろんな人が入れ代わり立ち代わり餃子をつまんで行きます。常連さんの中には、「店長が子どもの頃から知ってる」なんて人も。長く続くお店には、その理由があるんですよね。

神戸に来たらなんとなく足が向く、思い出したら食べたくなる。食べたい時にいつでも食べに来れるようになった、古くて新しい「ひょうたん」よ、永遠なれ!

■ひょうたん 三宮店
住所:神戸市中央区北長狭通1-31-37 阪急西口高架下通
TEL:078-331-1354
営業時間:11時~22時30分LO
定休日:無休

text:中谷晶子
photo:直江泰治

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