富山県魚津市は県の北東部に位置し、富山湾に面した古くから漁業が盛んな港町。立山連峰をはじめとする標高2400m以上の山々の雪解け水は、河川によって作られた扇状地を通り、最深1000mを超える富山湾に一気に注がれます。扇状地が天然のフィルターとなって、土壌の栄養をたっぷり含んだ河川の水が海へ流れ込むおかげで、富山湾は多種多様な魚介類の住処となっているのです。魚津市は山から海までわずか25km、高低差約3400mという地形を水が循環することで、新鮮な魚介類をはじめ、おいしい食材の宝庫となっているのです。
魚津の代表的な冬の味覚といえば、「ベニズワイガニ」、「ゲンゲ」、「ハギ(ウマヅラハギ)」。「ベニズワイガニ」は毎年9月1日に漁が解禁され、翌年の5月頃まで水揚げされます。ズワイガニよりも深海に生息し、肉厚で上品な甘味がヤミツキになるおいしさ!「ゲンゲ」は深海に生息し、グロテスクな見た目に反した上品な味わいの魚。同じく「ハギ(ウマヅラハギ)」もクセがなく淡泊で、プリプリとした歯ごたえが特徴の白身です。「バイ貝」は通年味わえる貝で、コリコリ食感と磯の風味が絶品。ほかに3~6月頃が漁期の「ホタルイカ」は魚津の春を代表する味覚です。
魚津らしい海の幸の代表格、「ベニズワイ」、「ゲンゲ」、「ハギ(ウマヅラハギ)」、「バイ貝」の料理例もご紹介。「ベニズワイガニ」は刺身、塩茹で、しゃぶしゃぶ、カニ鍋などバラエティ豊か。濃厚な味わいのミソは食通も思わずうなってしまうほどです。「ゲンゲ」は唐揚げやお吸い物で味わうのが定番。「ハギ(ウマヅラハギ)」は薄造りに、こってりとした旨みと甘味がある肝を添えて味わいます。「バイ貝」は、殻ごと煮込んだバイ貝の煮汁と一緒に炊き込んだバイ飯がテッパン。魚津の郷土料理のひとつです。
魚津のおいしい冬の味覚を味わいつくすなら、魚津駅前飲食店街へ。「柿の木割り」の愛称で親しまれていて、なんと200軒以上の飲食店が大集合!旅行者だけではなく、本物の味を分かっている地元のお客さんも足繁く通うお店が目白押しです。ちなみにこのエリアには、旬の味覚めぐりの拠点にぴったりなリーズナブルなホテルも多いのでチェックを忘れずに!
「げんげの天ぷら」は30cm超えの大型のものを使用。軽く塩を振って脱水した後、急速冷凍し、冷凍状態で皮に2mm間隔で鹿の子に切れ込みを入れてゆっくり解凍。菜種油で175度の低温でじっくり揚げることでふっくら&ジューシーな仕上がりに!
ウマヅラハギを活〆して捌いた身と肝を4日間熟成したものを、刻み麹味噌などを加えて肝和えにして、ご飯にのせてお茶漬けに。お茶はカワハギの骨などでとっただしがベースになっています。
なお、メニューは日替わりなので、予約時に確認をお忘れなく!
店主の海野さんは「新川食文化研鑽会」のメンバーのおひとり。研鑽会は魚津市の若手料理人8名で結成した有志の会で、古くから伝わる伝統的な食文化や郷土料理について学び、知識や情報を共有して次世代につなげていく活動を行っています。
店内は漆喰やヒノキの無垢材を用いた落ち着いた和の空間。ところどころに季節の花を飾った一輪挿しがさり気なくあしらわれていて、風情を感じることができます。
地元でとれた旬の食材を使った多彩な料理が楽しめる「四季料理 悠」。地元客でも知らないような魚介類がメニューに並ぶこともあるとか。純和風の優雅な空間で魚津のおいしいものを味わうなら、絶対足を運びたい一軒です。
■四季料理 悠(しきりょうり ゆう)住所:富山県魚津市釈迦堂1-15-20
問合先:0765-24-5980
営業時間:11時30分〜14時30分、17時30分〜23時
定休日:日曜
表面パリッ&中トロッの「ゲンゲの竜田揚げ」は外せない!/日本料理 海風亭
魚津駅の向いに店を構える「日本料理 海風亭」は、1908年創業の老舗。現在は5代目の美浪呂哉さんが、「食で魚津を伝える」をモットーに料理の腕をふるっています。ちなみに美浪さんも「新川食文化研鑽会」のメンバーのおひとり。
こちらのお店の代表的な料理といえば、漫画『美味しんぼ』に掲載された「ゲンゲの竜田揚げ」。30年ほど前は利用価値のない魚として廃棄されてしまうこともあったというゲンゲを先代(4代目)が、さまざま調理法を試し、たどり着いたのが「竜田揚げ」だったそうです。
「そもそもゲンゲは深海1000mに生息し、水分が多く傷みやすい魚。新鮮なゲンゲが手に入るのは、山と海が近く、海岸から深海までの距離も近い魚津の特異な地形のおかげ」と美浪さん。魚津の地形や気候、そして先代の探求心が生んだ逸品なのです!
続いては魚津発祥のかご漁でとるバイ貝の炊き込みご飯「魚津ばい飯」。もともと売れ残った小さなバイ貝を漁師さんが持ち帰り、賄飯にしたのが始まりだとか。「海風亭」では、当時の漁師さんたちにレシピを聞き込み、味を再現しつつ、日本料理のエッセンスも加えた仕上がりになっています。
こちらも冬のおすすめ「ウマヅラハギ薄造り」。活きたまま仕入れたウマヅラハギを、提供する前に〆て、死後硬直していない状態の物を薄造りにしています。だから薄造りはコリコリ食感でえぐみ臭みもありません。濃厚な肝との相性も抜群ですよ。
「海風亭」は、海の見えるホテル「美浪館」内にある日本料理店。店内はカウンター、テーブル席、小上がり、掘りごたつ個室、大広間が揃っているので、利用人数やシチュエーションでセレクトできるのもうれしいポイントです。
日本酒と一緒に味わう魚介料理の数々/浜多屋 魚津駅前店
富山の食材をシンプルに調理したメニューと日本酒が楽しめる「浜多屋 魚津駅前店」。店主の浜多雄太さんをはじめ、スタッフも唎酒師の資格をもち、お店で提供する料理にあうお酒も一緒に選んで提供してもらえます。
おすすめは「魚津バイ飯」。魚津の郷土料理にお店流のアレンジを加えたもので、締めの一品としてぴったりです。
「富山おでん」も店自慢のメニューで、野菜ソムリエが厳選した素材を、鶏ガラを半日煮込んでとったダシをベースに、クリアなスープで仕上げています。富山名物の白エビを使ったしんじょうはぜひ味わってほしいネタです。
そのほか、「季節の焼き魚」や「刺身3種盛り」など、その日の仕入れでラインナップが決まる黒板メニューも要チェック。
店内はカウンター席と掘りごたつ席の2タイプ。富山県産を中心に17蔵元の日本酒が揃っているので、富山の美味と美酒で至福のひとときを過ごせそうです。
■浜多屋 魚津駅前店(はまだや うおづえきまえてん)住所:富山県魚津市釈迦堂1-15-8
問合先:0765-23-5775
営業時間:17時30分~23時(22時30分LO)、日曜は15~21時
定休日: 月曜
漁港が目の前!市場直送のとれピチ鮮魚を味わう/魚津丸食堂
魚津漁業協同組合が直営する「魚津丸食堂」は、漁港のすぐそばにあるので、市場直送の新鮮な魚介を使った料理をお得感満載の価格で味わえるんです。
メニューは定食が基本で、ほかに丼ものとサイドメニューがスタンバイ。お店のイチ押しは「お刺身定食」で、とれたて新鮮な旬の魚を満喫できます。刺身の種類はアジ、カワハギ、甘えび、バイ貝など、その日の仕入れによるので、訪れてからのお楽しみ♪
こちらは「カニ身丼」。提供は9~5月のベニズワイガニのかご漁解禁時期のみ。スタッフがカニの身を丁寧に手作業で取り出し、ご飯の上にたっぷりのせたボリューム満点の丼もの。出漁次第での入荷となるため、必ず食べられるというわけではないのでご注意を!
「バイ飯定食」は、バイ貝を煮て旨みを抽出したダシを効かせた煮汁で炊き込んだ、定番の漁師飯です。
店内は気軽な雰囲気で、富山湾を眺めながら食事ができます。県外からの旅行者のほか、魚津在住のお客さんが多いとのこと。地域の皆さんに愛されている1軒です。
ミントグリーンの外観が印象的な建物は、漁協の倉庫をリノベーションして利用。地元魚津に息づく料理をサクッと食べたいときにも便利。料理や接客を担当している地元スタッフの方との交流も楽しみなお店です。
■魚津丸食堂(うおづまるしょくどう)住所:富山県魚津市港町5-1
問合先:0765-32-5831
営業時間:10時30分~14時(13時30分LO)
定休日:日曜、祝日、市場休業日
魚津市には独特の地形と漁師町として歴史に育まれてきた、魅力的な魚介料理がたくさん。また魚津は蜃気楼も有名で、春先から初夏にかけて、天気の良い日には幻想的な景色を出会えるチャンスも!今回は冬の味覚のご紹介でしたが、別の季節にも訪ねてみたいですね。
Text:粟屋千春
Photo:魚津市商工観光課
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