食・グルメ
2022.04.08
【神戸】三宮高架下の愛されパン屋さん♪人のぬくもりもやさしい「トミーズ 三宮店」のパン
慶応3年（1868）の神戸港の開港とともに洋食文化にふれ、歴史ある有名ベーカリーも多い神戸の街。幼い頃からパンを食してきた舌の肥えた神戸人を唸らせるべく、パン職人たちは日夜しのぎを削り合っています。そんななかでも、長きにわたり地元の人たちに親しまれ、店頭では下町のようなふれあいも繰り広げられる、レトロなパン屋さんをご紹介。
神戸で生活する老若男女がリピート！
開店は朝8時。通勤時間帯、まだシャッターを下ろしたお店が多い薄暗い通りのなかでも、温かな灯ともに迎えてくれます。
昭和52年（1977）創業、今年45周年を迎えるトミーズ。三宮店は阪神・淡路大震災からほどなくしてオープンし、神戸の人たちに安くておいしいパンを提供し続けてきました。電車が駅に到着するたびに、常連さんが訪れては「いつものパン」を購入。慌ただしいなかにも、「今日は寒いねー」などと世間話が聞こえてきます。
約2坪のお店ですが、ショーケースにはサンドイッチから調理パン、菓子パン、食パンまでズラリ。昔ながらの対面式のパン屋さんです。素材にこだわり、一つひとつ丁寧に作られる焼きたてのパンが、今どき100円台からという驚きの安さ！ 給料日前の会社員の懐にもやさしいのです。
人気のあん食、味わい方は人それぞれ？
トミーズと言えば、食パンの中に粒あんを練り込んだあん食が有名。北海道産の小豆を使った粒あんと、生クリーム入りのふんわりクリーミーな食パンが絶妙にマッチし、子どもからシニアまで幅広い世代から人気を集めています。まずはそのままで上質な粒あんの甘みを味わうのがオススメですが、トーストすればサクッとした生地に、あんこがほんのりとろけてこれまた絶品。「私はトースト派」「バターをつけてもおいしいのよ」などと、店頭でお客さん同士が食べ方談議を繰り広げることもあるそう。
「あんパンはあるのに、なんで食パンの中にあんこを入れられないの？」。そんなお客さんからの声をもとに誕生したあん食。食パンの耳を残す子どもが多いという話もよく聞くことから、耳までおいしく食べられるよう、パン全体がやわらかく仕上げられました。スティック状にカットすれば、子どもが喜ぶおやつにもちょうどいいサイズに。
お客さんとの温かいやりとりも大きな魅力
子どものおやつといえば、サクッとしたケーキドーナツが70円、やさしい甘さのたまごパンはなんと50円！「近所の小学生が、お小遣いを握りしめて『これくださーい』と来ることもありますよ」と店長の中村悦子さん。
かつて、2人で仲良くお店のポイントカードをシェアする女子高生がいたそう。「その子たちが最近、8年ぶりにお店に来てくれたんです。『おばちゃん、まだカード持ってるよ』と声をかけてくれて、一緒に記念写真も撮ったんですよ」と話す中村さんのお顔を見ると、こちらまでキュンとしちゃいます。「転勤を経て神戸に戻ってきた男性から、『まだおったんか！』とツッコまれることもありますけどね（笑）」と、関西人らしいオチもつけてくれました。
オリジナリティ豊かな品揃えがうれしい
食パンの種類が豊富なのも特色の一つで、ふんわりと焼き上げたシンプルな上食や、デニッシュ生地のハイミルク、たまごのやさしい甘みを加えたたまご食など。家族の食卓を支える奥さんが、慣れた手つきで購入する姿も見られました。
ほかのお店ではあまり見られない、工夫を凝らした珍しいパンも並びます。目玉焼きトーストは、食パンに目玉焼きを乗せただけと思うなかれ。トーストは牛乳に浸けて焼いたうえで、目玉焼きをトッピング。サクッとした食感がクセになり、卵と牛乳のやさしい味が口に広がります。塩パンとあんパンを融合させた、あん入り塩パンなるものも！
冷蔵コーナーにはサンドイッチがこれまたいっぱい、選び放題です。「対面式なので、明るい笑顔でお声がけしながら接客することを心がけています」と中村さん。今日も明日も明後日も、安くておいしいパンと店員さんとの何気ない会話を楽しみに、神戸人が通い続けることでしょう。
text&photo：木元優子
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