本とカフェとギャラリーと。京都の書店が手がける文化複合施設「堀川新文化ビルヂング」
京都創業の書店「大垣書店」が2021年11月に複合型の施設「大垣書店 堀川新文化ビルヂング店(おおがきしょてん ほりかわしんぶんかびるぢんぐ)」をオープン。『堀川の暮らしに、豊かさを。日常の延長線上に「文化のプラットフォーム」を。』をテーマにした、アートと本と食を楽しめる地元の暮らしと密着した芸術振興の拠点が誕生しました。
地域と文化・芸術の振興の拠点に、京都・堀川商店街の文化複合施設
京都人にはお馴染みの大垣書店。創業の地は京都で、京都府下を中心に39店舗を展開している本屋さんです。
最新店舗の「堀川新文化ビルヂング店」があるのは、南北に長い堀川通の真ん中あたり。戦前から商店が集まっていたエリアで、全国初の店舗付き集合住宅としても注目を浴びた堀川団地(堀川商店街)が近くにあり、周辺を散策すると観光地ではない地元の人たちの生活にふれられます。
横に広い敷地には、駐車スペースや駐輪場もあり、一般図書コーナー、セレクト図書コーナー、カフェ、ギャラリーが併設されています。
入り口を開けてすぐの場所に平積みされているのが、ウィリアムモリス著の「理想の書物」。堀川新文化ビルヂング店をオープンする際のコンセプトとなったのが、この本の「書を、美術品として価値を置く」という価値観。デザイナーで詩人でもあるウィリアムモリスのこの本を、オープンに伴い限定復刊しています。
本屋さん、雑貨、カフェバー、印刷工房、ギャラリーを併設
南北に長い敷地。右手は一般図書、真ん中エリアは紙とアートに関する図書がセレクトされています。
タイトルを見ているだけで興味深い本がずらり。アートの好きな人ならば一日中過ごせそうです。
少し不思議なスペースが「印刷工房 昌幸堂(しょうこうどう)」。“本のオートクチュール”をテーマに「自分だけの本やアートブックを作りたい」という、夢を叶える手伝いをしてくれます。
2階は入場無料のギャラリー。ふらっと入りやすい本屋さんの中だから、ギャラリーのちょっと入りにくい壁を取り払ってくれます。展示はシーズンごとに変わり、ときによって1テーマの展示の場合もあれば、いくつかのテーマで展示されることもあります。
2022年1月時の展示は、「京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA」の京都における次世代作家を紹介する展覧会。大学出身の若手作家から、大槻拓矢氏(日本画)、森夕香氏(日本画)、矢野洋輔氏(彫刻)の作品をピックアップして紹介されています。
若い作家さんのみずみずしい感性に触れて、心を浄化。
もうひとつの展示は、京都精華大学美術学部卒業の作家・ヤマガミユキヒロ氏の作品。都市や自然の風景を、鉛筆で緻密に描き、同じ視点から撮影した映像をプロジェクターで投影する「キャンバス・プロジェクション」という手法の作品が展示されています。
同じ場所で、日が登り、沈むまでの様子を動かない線の上で映像だけが変化していく不思議な作品。いままで知らなかった作家さんや世界を知れる貴重な体験になります。
展示に合わせた図書も販売されているので、作品や作家さんのことが気になったら、1階に戻ってチェックしてみて。
8時30分から23時まで、オールデイ楽しめる本屋さん併設のカフェ
併設のカフェ「Slow Page(読みかた記載をお願いします)」。さすが本屋さんのカフェだけあって、一人で本を読みながらくつろげるカウンター席も充実。
カウンターで注文するキャッシュオンデリバリー。
焙煎室も併設されています。豆を800gずつ焙煎しているとのことで、いつも香り高く、新鮮なコーヒーがいただけます。豆の販売もされていて、200g以上購入するとドリンク1杯分のチケットがもらえてお得!
自家焙煎のコーヒーが400円、たっぷりサイズでも500円とお手頃です。
ゆったりとした間取りで、椅子やソファーの座り心地もよくて、ついつい長居してしまいそう。カウンター席にはUSBの充電設備が完備、店内で使える無料Wi-Fiもあります。
気候がよければ、テラス席も。屋根付きなので、雨降る景色を眺めつつ、読書するのもいいですね。
フードメニューはグリルドサンドイッチが充実。大正2年(1913)に京都で創業した「進々堂」のパンが使われていて、トーストした焦げ目がおいしそう。11時~14時30分までは、一部のグリルドサンドイッチが、単品価格+200円でサラダとドリンク付きになります。
あんバターのホットサンドやバナナとミルクチョコのホットサンドなどデザート系ホットサンドもあり、グリルドサンドイッチの種類は10種類以上。ランチタイムだけではなく、カフェタイムにも楽しめます。
便利さと出不精が重なって、ついついネットショッピングしてしまいがちですが、本屋さんに足を運ぶこと自体が上質なアミューズメントと思わせてくれるお店です。
Photo: photo scape CORNER.大﨑 俊典
Text:京都ライター事務所 小西尋子
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