食・グルメ
2022.03.27
“奇跡の窯”と職人技が生み出す、ベーカリー「フロイン堂」の人気パン＜神戸パン巡り②＞
パンの名店が多い神戸で、90年にわたり愛され続けるお店「フロイン堂」。御年88歳になる店主の竹内善之さんと息子の隆さんが、歴史あるレンガ窯でおいしい食パンや田舎パン、バターケーキを焼いています。手作りにこだわる名ベーカリーの魅力に迫りました。
「フロインドリーブ」の流れを汲む老舗ベーカリー
阪急岡本駅から徒歩すぐ、閑静な街並みに佇む「フロイン堂」は、昭和8年（1932）に創業した老舗ベーカリーです。初代の従姉妹であるヨネさんが、神戸にドイツパンを広めたハリー・フロインドリーブさんと結婚したことが縁で、初代店主が「フロインドリーブ」で修業。その後、のれん分けのような形で独立され、店の歴史が始まったそうです。
フロイン堂の顔といえば、戦時中からあるドイツ式のレンガ窯で焼いた食パン。作業は全て手作りで1日に焼ける本数に限りがあるため、すぐに完売御礼となることも珍しくないのだそう。わざわざ遠方から訪れて買う人もいるのもうなづけます。
フロイン堂で買いたいパンと焼菓子
そんなフロイン堂で、ぜひ食べてほしい商品をご紹介します。まずはなんといっても食パン1本870円（1/2本420円）！ 小麦粉や塩、砂糖に少量のイーストと、使う素材は極めてシンプル。だからこそ、職人の技がより際立ちます。
トーストにすれば、小麦の豊かな風味と軽やかな食感が口の中に広がり、朝から幸せな気分になれること間違いなしです。
こちらは、ライ麦を10％配合した生地にクルミとサルタナレーズンがギッシリ詰まった田舎パン小370円。1cm程度にスライスした後、クリームチーズを塗るのがオススメの食べ方なのだとか。
こちらは、食パンと同じ生地に粒あんを包んで揚げたあんドーナツ200円。昔ながらの懐かしい見た目に、思わずそそられます。大人も子どもも大好きな味は、ぜひ牛乳と一緒にいただきたいですね。
同じレンガ窯で作るバターケーキ大850円・小590円も、しっとりとした食感とバターの豊かな風味がたまらない、人気の逸品。優雅なおやつタイムにぴったり！手土産にも喜ばれますよ。
レンガ窯と熟練の技が織り成す至極の味わい
食パンをはじめ、フロイン堂で作るパンや焼菓子は、全て戦時中に造られたといわれるドイツ式のレンガ窯で焼き上げます。
レンガの余熱が生み出す遠赤外線効果によって、独特の軽やかな食感を生み出すのだそうで、善之さんも「よくできた窯です。これがダメになったら、もう廃業せなあかん」と冗談めいたように話します。神戸空襲や阪神・淡路大震災をも乗り越えた「奇跡の窯」は、フロイン堂になくてはならない存在です。
善之さんがこだわるのは、このレンガ窯だけではありません。初代であるお父さんから受け継いだ、生地作りから成形、焼き上げまでのすべてを手作りする姿勢です。
特に全身を使っての手ごねは骨のいる作業ですが、善之さんは88歳の今も毎日行っているそうです。「パン作りに100点はないと思います。また明日、今日よりも美味しいパンができると思って、パン作りを続けたいですね」（善之さん）
焼き上がった食パンは、頭の部分にバターを塗ってツヤを出すのですが、プチプチという音を出しながら溶けるバターの香ばしい匂いに、思わず胸がときめいてしまいます！
雨の日も風の日も休むことなくパン作りに勤しむ善之さん。「パンを焼き続けて気がついたらこの歳になってましたわ」と笑顔で話す姿は、御年88歳とは思えない程若々しいものでした。職人の技と温もりが詰まったフロイン堂のパン。予約は当日分のみ、午前9時から電話でのみ受付可能となっています。
Photo：ハリー中西
Text：津曲克彦
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