食・グルメ
2022.04.12
【神戸】文豪が愛した「トアロード デリカテッセン」のソーセージ。神戸マダム御用達！
三宮・元町エリアから北野方面に延びるトアロードは、明治～昭和初期には在留外国人たちの通勤路でもあり、昔からハイカラなお店が点在する通り。「トアロードデリカテッセン」は、そんなトアロードを代表する老舗の一つです。創業から70年余り、本場ドイツ人から助言を受けたレシピを受け継ぐソーセージやスモークサーモンは、神戸マダムをはじめ数々の著名人からも愛されています。自分のためにワンランク上の食材を手に入れたら、味わったことのない優雅な気分に浸れるはず！
日本の家庭に西洋風惣菜を広めた先駆者
世界を巡る船乗りだったご主人が、ノルウェーで魅了されたハムやソーセージの味を再現し、昭和24年（1949）に夫婦で創業した「トアロード デリカテッセン」。ところが創業してまもなくご主人が急逝、跡を引き継いだ奥様の高橋コトさんが、ドイツ人のアドバイスを受けて商品を改良。現在も継承する製法を完成させ、当時の日本では珍しかった西洋風惣菜を販売する店として繁昌していきました。1950年代半ばごろには、現在のJRの高架あたりまで長い行列ができたという伝説を持つお店です。
店内には、ハムやソーセージ、ウインナー、スモークサーモン、ベーコン、チーズなど約200アイテムのオリジナル商品が並びます。贈答用のセットもありますが、ほとんどの商品は家庭用。バラ売りの惣菜を今夜のおかずにと、足しげく通う神戸人の姿が多く見られます。著名人にもファンが多く、村上春樹氏や司馬遼太郎氏、田辺聖子氏、谷崎潤一郎氏など関西ゆかりの作家をはじめ、有名歌手、政治家など錚々たる人々の逸話も残っています。
看板商品はソーセージとスモークサーモン！
プレーンのボロニアソーセージを筆頭に、野菜やコンビーフ、鶏肉、チーズ入り、ニンニク風味などのソーセージは、この店の看板商品。きめ細かくてなめらかな舌ざわりで、冷たいままでも軽く焼いてもおいしく味わえます。各家庭で調理することを想定して味付けは控えめ、さまざまな料理に合わせやすいのも特徴。量り売りもあり、必要な分量だけでも購入できます。進物用でも、「子どものころから親しんできたから」「先方の希望で」と、あえてソーセージだけのセットを選ぶ人も多いそうです。
とろけるような食感が魅力のスモークサーモンも、創業時からの人気商品。脂が乗って身が引き締まった紅鮭を世界各国から厳選し、25度以下の低温で燻製することで生に近い食感に。オリジナルのチップで燻して芳しい香りもやさしくまとわせた、食欲を誘う逸品です。このスモークサーモンを使ったサンドイッチは、村上春樹氏の長編小説『ダンス・ダンス・ダンス』に登場して話題を集めました。なんと、そのサンドイッチが併設のカフェで味わえるのです！
村上春樹氏絶賛のメニューを賞味できるカフェも！
お店の2階は、人気商品を使った料理が味わえるカフェ。写真はスモークサーモンに加え、ローストビーフ、ハム、ソーセージの4種が楽しめるサンドイッチで、パンは同じ時代に神戸で創業したイスズベーカリーのもの。村上春樹氏は、神戸高校の学生だったころにこのスモークサーモンのサンドイッチを口にしていたそうです。『ダンス・ダンス・ダンス』では「理想のサンドイッチ」として、この店の名前が登場します。
カフェのイチオシメニューをもう一つご紹介。ドイツのスパイスを数種類使用した香りのよい粗挽きのニュルンベルガーと、日によって異なるウインナーの2 種が味わえる盛合せです。このほかランチプレートをはじめ、ビーフシチューやロールキャベツのセットなどもあり、カフェで試食してから1階で商品を選ぶのもおすすめ。
冷凍食品やテイクアウトメニューも魅力的
1階の冷凍食品コーナーでは、オリジナルのハムをたっぷり使ったナポリタンなどのパスタや、自家製ベーコンを巻いたロールキャベツなども販売。温めればすぐに食べられる手軽さが魅力ですよね。家にいながら外食気分を満喫できると、特にステイホームの昨今は好評だそうです。
店頭にはテイクアウト用のサンドイッチも各種揃い、村上春樹氏ごひいきの逸品を手軽に購入できます。
創業者の高橋コト氏は、神戸をともに盛り上げた子ども服メーカーのファミリアやにしむら珈琲店の創業者とも親しく、人望が厚かったそうです。彼女が試行錯誤しながら作り上げ、数々の人を惹きつけてきたソーセージやスモークサーモン。古き良き時代に思いを馳せて堪能すれば、きっと豊かな気持ちに包まれるはず！
text&photo：木元優子
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