• るるぶ&more.
  • エリア一覧
  • 東京都
  • まるで世界がミニチュアに見える!?「本城直季 (un)real utopia」展が東京都写真美術館で2022年5月15日(日)まで開催中
まるで世界がミニチュアに見える!?「本城直季 (un)real utopia」展が東京都写真美術館で2022年5月15日(日)まで開催中

まるで世界がミニチュアに見える!?「本城直季 (un)real utopia」展が東京都写真美術館で2022年5月15日(日)まで開催中

東京都 美術館 アート 展覧会 美術展・博物展 るるぶ&more.編集部
Twitter Facebook LINE はてなブックマーク Pocket

まるでミニチュアのようなジオラマ風写真を撮影し続けている本城直季さんの大規模個展が東京都写真美術館にて開催中です。まるで日々の生活を俯瞰して観察するような、そんな時間を過ごしに出掛けてみませんか?

Summary

写真家・本城直季さんの初の大規模個展が東京都写真美術館で開催

JR恵比寿駅東口徒歩7分の東京都写真美術館にて、写真家・本城直季さんの大規模個展が開催中。江戸時代の写真機が輸入された頃に使われていた大判カメラで撮影された写真たちは、まるでおもちゃの世界の中のようですが、どれも私たちが今を生きている、リアルな世界を映しているものばかりなのです。

オリンピックイヤーの東京を被写体にした撮り下ろし作品も発表

《Tokyo, Japan》2021 © Naoki Honjo
《Tokyo, Japan》2021 © Naoki Honjo
本城さんが大判カメラと出合ったのは、大学4年生の頃。学校で「シノゴ」と呼ばれる大判カメラを借り、アオリと呼ばれる技法を試行錯誤しているうちに、現在のミニチュア模型のような写真のスタイルが生まれたそう。2007年には、初の写真集『small planet』(2006年リトルモア刊)で木村伊兵衛写真賞を受賞しています。

本展では、今の独自の表現が誕生するまで試行した様子がうかがえる初期作をはじめ、およそ20年にわたり撮り続けているシリーズ作の数々、さらに今回の個展開催を機に東京を空撮した撮り下ろしの新作作品まで公開されます。オリンピックイヤーを迎え、開発が続く東京を写した写真からは、私たちが今生きる日本の隆盛と、相反して滲んでくる虚しさを改めて問いかけられているような感覚に陥ります。
京都の街並みを和紙に焼き付けた連作の「kyoto」も、新たに東京で撮られた作品と対になる形で展示されています。青々とした緑の中に、長く歴史を紡いだ街が融合した姿からは、空気が澄んでいて、人々も快適に過ごしやすそうな、やさしい雰囲気が感じられます。同じ日本なのに、まるで別世界の景色が広がる東京と京都の姿を見比べてみると、興味深い発見がありそうです。

ミニチュア化された世界から見える、私たちの現在地

《Tokyo, Japan》2005(small planetシリーズより)© Naoki Honjo
《Tokyo, Japan》2005(small planetシリーズより)© Naoki Honjo
ジオラマのように撮るこの作風は、15年前に本城さんが木村伊兵衛写真賞を受賞した時点でも、珍しいと言い切れるスタイルではありませんでした。

イタリアの写真家オリバー・バルビエやドイツの写真家マーク・レイダーなどが先人として作品を発表していましたし、フォトショップの加工でも同じような効果の写真を作り出すことも可能です。また、今ではスマホのアプリを使い、誰でも簡単に撮影もできます。

それでも、本城さんがこの作風を続けているのは、「ミニチュア」の世界にこだわっているのではなく、「自分たちが暮らすこの世界をもっと知りたい」という思いから。
「自分たちの住んでいる広大な世界も、俯瞰すると小さな世界のように思えてくる。そこには人々の営みが見えてくる」と本城さんは話します。

上の写真は、本城さんが大判カメラを持ち、撮影をはじめた初期の作品です。この時から、人工的に作られた道路や、ビル、そしてそこに暮らす人々の影を追っていることが、見て取れるようです。

「まるでミニチュアのように見えて不思議な写真かと思うかもしれないが、実は人が見る目線にとても似ている。(略)画面の一部に焦点があった写真は、人が瞬間的に見た風景の目線により近いのかもしれない」。
《giraffe》2008(kenyaシリーズより) © Naoki Honjo
《giraffe》2008(kenyaシリーズより) © Naoki Honjo
東京をはじめとする都市、街は、人の手によって人工的に作られていきますが、自然豊かなケニアの風景も同じように、動物や自然の力で作られていき、季節が巡るごとに絶えず姿を変えています。そういった当たり前のようで、思いの及ばない気づきにも、世界をミニチュア化するという行為を通して、実感したことだそうです。
「学校と家の往復の日々がすべてだった子どもの頃、住宅街の奥地にそびえ立つ高層ビル群の景色は、SFやゲームの世界のようだった」。

開発がどんどんと進んでいく今、幼き頃に感じていた空想の世界と、現実の境がおぼろげになってきているとも本城さんは話します。

まるで、仮想空間のような世界に住んでいる私たち。

遥かに高いところから俯瞰して臨むことで、この先この街がどのような発展を遂げて、私たち人間はどのように順応して暮らしていくのか、そこに今のような暮らしはあるのか。

空に向かってぐんぐんと伸びて、積み上げられていく高層ビルの群れを見ていると、そんな遠い先の未来にまでも考えが膨らんでいくようです。

シリーズとリンクした展示方法も見どころのひとつ!

一瞬一瞬を切り抜くために、何年にも渡り欲しい景色を狙い続けることもあり、苦労が多いというこの撮影方法。とある小学校の校庭の季節の移り変わりを映した「small garden」もそのひとつだと言います。
《linedance》2009(treasure boxシリーズより) © Naoki Honjo
《linedance》2009(treasure boxシリーズより) © Naoki Honjo
展示方法にも仕掛けがあって、見ているだけで景色が変わるのもおもしろいポイントです。「treasure box」は宝塚歌劇団を映した作品ですが、まるで舞台の中とも取れる箱に写真が飾られている、入れ子構造のような展示方法なっています。
東京の夜の景色を映した「LIGHT HOUSE」も、夜の街を模したような暗い壁に展示されているなど、歩くだけで心がわくわくするような仕掛けも。作品と合わせた展示方法の工夫やライティングが醸し出す雰囲気もお楽しみに。
《Taito-ku, Tokyo》2011(LIGHT HOUSEシリーズより) © Naoki Honjo
《Taito-ku, Tokyo》2011(LIGHT HOUSEシリーズより) © Naoki Honjo
他にも「scripted Las Vegas」や「tohoku 311」など、20年の時間をかけて撮影を続けてきたシリーズが揃います。街が作られ、壊され、そしてまた人の手によって作られていく。そのサイクルがおとぎ話の一場面のように切り取られていますが、実際に私たちの身に起きた現実の出来事なのだということに気づくと、その場から離れられず、釘付けになって作品を眺めてしまいます。

JR恵比寿駅東口徒歩7分の東京都写真美術館では、他の階でも企画展を同時開催中。ぜひ他の展示と合わせて見るのもおすすめです。写真が持つ力に、改めて感動するはず。本城直季展では、自分の暮らす現在地と向き合う時間を過ごしに、ぜひ足を運んでみてください。

■「本城直季 (un)real utopia」展
会期:2022年3月19日(土)〜5月15日(日)
会場:東京都写真美術館 B1F展示室(東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内)

Text & Photo:森美和子

●新型コロナウイルス感染症対策により、記事内容・営業時間・定休日・サービス内容(酒類の提供)等が変更になる場合があります。事前に店舗・施設等へご確認されることをおすすめします。
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
●旅行中は「新しい旅のエチケット」実施のご協力をお願いします。
Twitter Facebook LINE はてなブックマーク Pocket
記事トップに戻る

この記事に関連するタグ

編集部のおすすめ

ページトップへ戻る

検索したいキーワードを入力してください