温泉 外観

船が唯一の交通手段、水辺にひっそり佇む「大牧温泉観光旅館」

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この現代において、島でもないのに宿までの交通手段が船しかないという一軒宿が存在するのをご存じですか?その不便さやユニークさを楽しみに訪れる人が多く、稀なロケーションのため、テレビドラマのロケ地になることもしばしばなんだそう。宿から見える水辺の景色や緑の山並み、野趣あふれる温泉露天風呂など秘境気分もたっぷり。非日常を味わえるとっておきの宿をご紹介します。

Summary

遊覧船でしか行けない秘境、庄川峡の岸辺に佇む一軒宿

船

世界遺産の五箇山合掌造り集落が上流に位置する庄川。流域の庄川峡は四季折々の峡谷美を堪能できる絶景の地として有名で、平家の落人がこの地で傷を癒やしたという伝説の大牧温泉があります。交通手段は今でも船しかないという聖域のような一軒宿が、庄川河畔の山肌に沿うように立ち、静寂の中で深い歴史を刻んできました。

川

昭和5年(1930)、小牧ダムの完成と同時に建てられた大牧温泉観光旅館ですが、今でもアクセスは船のみです。庄川峡遊覧船は1日3~4本の運行で、小牧ダムにある小牧港から出港。ダム湖を上流へと進み、大牧温泉観光旅館がある大牧港まで片道約30分。遊覧船からは庄川の清流と周囲の山々の移ろいが見渡せ、四季折々に彩られる峡谷美も楽しみ。大牧温泉コース(往復約60分)と途中で引き返す長崎橋周遊コース(約25分)があり、多くの人が遊覧船観光を楽しみに訪れています。
※写真は紅葉の庄川峡に架かる赤い利賀大橋。一幅の絵のような景色が自慢です。

一部携帯も通じない仙境の地でゆったりくつろぐ

宿 外観

大牧の船着場から階段を上がり、宿まではすぐ。玄関を入ると窓外に見えるのは庄川の豊かな流れと山々の景色のみ。この風景は客室はもちろん、内風呂や露天風呂、テラス風呂からも眼前に迫り、その美観にため息。夕食はカニやブリ、シロエビなど富山湾の海の幸が主体の郷土料理が並びます。宿の一部では携帯が通じず、ときにはカモシカやキツネが姿を見せることもあるのだとか。
※写真は白い雪に覆われた冬の大牧温泉観光旅館。

ロビー

囲炉裏を備えた民芸調のロビー。庄川峡の絶景が眼前に広がります。大牧温泉観光旅館は平成期に大幅にリニューアルを重ねているため、館内もきれいで落ち着いた空間になっています。

客室

こちらは、露天風呂付きの客室「曲水」。川に向かって設置された露天風呂は源泉かけ流しだそう。この部屋はベッドがある和室なので、お年寄りや子ども連れにも使い勝手がよいですよね。客室はこのほかに和室や和洋室など全30室あります。

男女別、野趣あふれる野天風呂が魅力

露天風呂

山と川の大自然に囲まれた一軒宿。周囲に人の目がないことから、自然を見渡す大らかな露天風呂が設置されています。男性用の露天風呂(写真)は、宿の裏山の階段を上ったところに設置されたダイナミックな岩組みの開放的な露天。自然に抱かれたような気分を味わえる人気の浴場です。

露天風呂

峡谷の雄大な自然を見渡す女性用の露天風呂。庄川べりに設けられていて、ゆったりと流れる水面や四季ごとに異なる山肌を眺める贅沢なロケーションです。大牧温泉の湯は約53℃で湧出し、泉質は「ナトリウム、カルシウム、塩化物、硫化物、硫酸塩泉」、無色透明で微弱な硫化水素臭と弱い塩味があります。

温泉

男性専用のテラス風呂。川面に最も近づいた浴場で、冬は対岸に積もる白銀の世界を眺めてゆったりとしたひとときを味わえます。

温泉

浴場が多彩に揃う大牧温泉観光旅館。女性は大浴場と中浴場、露天風呂の3カ所、男性は大浴場と露天風呂、テラス風呂の3カ所あります。浴槽それぞれに雰囲気や景色が異なるので、入り比べを楽しみましょう。
※写真は館内にある女性用の大浴場内風呂。

夕食は富山湾の幸を生かした会席料理

会席料理

夕食は地物食材を中心に揃えた会席料理が基本。富山湾から届く新鮮な魚介をふんだんに取り入れ、食べ飽きしない献立にこだわっています。写真は、ブリや甘エビのお造り、カニの酢の物、ブリの照り焼き、つみれ鍋、炊き込みご飯などが付いた夕食。季節によって内容が替わります。

旅館のテラスから川面に糸をたらして釣りも楽しめる

釣り竿

のんびり温泉に入り、豊かな自然を眺めてゆったり過ごすのに飽きたら、釣りをしてみるのはいかが。宿では釣り道具のレンタル(有料:エサ付き1セット1000円)も可能。屋外テラスから庄川の水面に糸をたらして、のんびりとアタリを待ちます。運がよければウグイやニジマスが釣れるんだそうですよ。

温泉の看板

大牧温泉は湯冷めしにくいのが特長で、日本経済新聞が選出した「日本百名湯」にも選ばれています。静寂の中でゆったりと温泉につかれば、対岸に野生動物が姿を見せることもあるのだとか。次の休日に、非日常たっぷりの秘境宿を訪れてみるのはいかがですか。

■大牧温泉観光旅館(おおまきおんせんかんこうりょかん)
 住所:富山県南砺市利賀村大牧44
 交通:北陸自動車道・砺波ICから10㎞、小牧港から庄川峡遊覧 船で30分、大牧港下船、徒歩すぐ
 TEL:0763-82-0363
 営業時間:チェックイン15時/チェックアウト11時
 料金:1泊2食付(2名利用時)1名2万2000円〜
 室数:30室
 駐車場:なし(小牧港に40台、無料)

○エアコン
○Wi-Fi
○テレビ
○浴室
○大浴場
○冷蔵庫
○タオル
○洗浄機付トイレ
✖送迎



Text: 沖﨑松美
Photo: シンヤシゲカズ、施設


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本の表紙


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