京都で日曜日だけ開く、ギャラリー&喫茶室「雪月の鳥 / 土と植物と手仕事」。野草茶と郷土菓子に北国を想う

京都で日曜日だけ開く、ギャラリー&喫茶室「雪月の鳥 / 土と植物と手仕事」。野草茶と郷土菓子に北国を想う

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心のこもった物だけを扱う、静かな町家カフェ「雪月の鳥 / 土と植物と手仕事」。雪国の冷えた土に育った強い野草のお茶、守り継がれてきた工芸品、そしてその生態が目に浮かぶようなリアルな野鳥彫りの作品。ひとつひとつ、京都の他の場所では見たことのないものばかりです。

Summary

京都の花街、上七軒に2022年オープンの町家カフェ

「雪月の鳥 / 土と植物と手仕事」は、京都の五花街の一つ、上七軒に2022年5月オープンした喫茶兼ギャラリー。店主の斎藤さんは、京都で生まれ育ち、いまは新潟に居を構えて創作活動をしながら、新潟の魅力あるさまざまなものを京都で発信されています。

京都での拠点をつくりたい…と、数年前から物件を探していたそう。「古い街並みの中を、芸舞妓さんが時おり蝶のようにあらわれる上七軒の街が昔から好きで、ずっと探して回って巡り合った理想の物件」というのが、このお店。

明治中期に建てられた二階建ての京町家は、必要以上に手を加えることなく、1階で新潟の手仕事のものや古道具などの雑貨を販売、二階は野草茶や新潟の郷土菓子などを提供するカフェになっています。

雪国で見つけた“ステキ”を京都で発信

新潟に暮らして10年以上になる斎藤さん。その間に素敵な作り手さんや生産者さんとのたくさんの出会いがありました。嬉しい反面、見えてきた課題があったそう。それが販路。とてもいい製品や農産物などを作っていても、売り先が限られています。自身も新潟で作家としての活動を続けていく中で、地域と一緒に商品を作り広めていくことを模索し、たどり着いたひとつの答えがこのお店でした。

「数年前に母の町家のアトリエを借りてイベントをやったとき、新潟のものを京都の人がとても興味をもって買っていってくれるのがとても嬉しくて。京都の人に、新潟のことを知ってもらって、いつか新潟を訪れてもらえるきっかけになればいいなぁと思っています」とお店をオープンしようとしたきっかけを教えてくれました。

お店に置く物を選ぶ基準は「その商品を買ってもらうことで、使う人、作った人どちらも幸せになるようなものかどうか」。すべてに自分の基準をもって、扱うものを選んでいる斎藤さんにとくに思い入れのある商品を伺いました。

泥の中の農作業にも耐える丈夫な布「亀田縞」

「雪国の土のもの/亀田縞」ハンカチ1650円〜
「雪国の土のもの/亀田縞」ハンカチ1650円〜

ひとつめは「亀田縞(かめだじま)」。新潟市の亀田郷という地域で、農作業着の布として織られていた縞模様の木綿織物です。亀田郷は「芦沼」とよばれた低湿地帯で、腰まで水につかりながら米作りが行われていたそう。そんな過酷な農作業に耐えられる、泥土に強い丈夫な生地として評判でした。

一度は途絶えたものの、産地に残った2軒の機屋さんによって、復活。江戸時代から続くその縦縞の柄は江戸ストライプともよばれ、素朴ながらモダンさも感じられます。「雪国の土の記憶とともに、その丈夫な布を残していけたら」と現在、オリジナルプロダクトを製作中です。

バードカービング作家がリアルに彫り出した野鳥たち

もうひとつは、新潟市在住のバードカービング作家、石川さんによる鳥の作品と玩具。鳥が好きで、個人の楽しみとして制作されているそうなのですが、色彩はもちろん、周りを警戒しながら見渡す様子、リラックスしている様子など息遣いを感じるリアルさ。

大人の趣味としてコレクションしたい精巧なバードカービングのほかに、くるくると回すと盤の上の水鳥たちがカタカタと餌をついばむかわいらしい玩具もあります。

「植物をたのしむ喫茶室」でいただく野草茶と郷土菓子

もうひとつのオススメ、野草茶は二階のカフェ「植物をたのしむ喫茶室」で。

二階は、2部屋がひと続きになっていて、畳の上にひとつ一つ違う形の骨董の机やちゃぶ台がゆったりと配置されています。亀田縞の座布団の肌ざわりも気持ち良い。

「クマ笹とヨモギのブレンド」「ドクダミ×有機玄米×スギナ」「レンコン×枇杷の葉」など香りと味わいでブレンドされた5種類の野草茶の中から、クマ笹とヨモギをチョイス。

新潟から野草の写真を送っていただきました。野草の種類は、日本各地で見られる馴染み深いものですが、国内でも上質な野草で知られる山間の地など、良い環境で採取されたものを仕入れています。

ポット提供なので、量もたっぷり。生命力が強い野草の葉が開いて、湯に成分が溶け出していきます。

味のしっかりとした野草茶に合わせていただきたいのは「笹団子」。あんこを包んだよもぎ餅を笹の葉で包んで蒸しあげる新潟の郷土菓子です。よもぎの味が野生的で強く、野草茶ととてもよく合います。

ブームの予感!甘じょっぱいお揚げで餅をくるんだ「おきつねさん」と佐渡番茶

新潟で親しまれている和菓子「おきつねさん」も食べられます。新潟市北区の和洋菓子店「わらび屋」さんが、甘く炊いたお揚げに新潟県産こがねもちの餅をはさんだもの。お揚げにお寿司を詰めた「おいなりさん」がメジャーですが、こちらはみたらし団子ぐらい甘じょっぱく炊いたお揚げにやわらかい餅がたっぷり。一度食べるとハマる味です。(白、くるみ、黒ごまの3種類、お持ち帰りもあります)

あわせていただいたのが佐渡の自然栽培の番茶。過疎化で耕作放棄された茶畑を、地元の福祉施設で管理・手摘みして製茶しています。通常は煎茶に使う新芽とその下の淡い緑の茎だけをつかう、とても贅沢な番茶。そのため甘みと香りがとても上品です。

季節ごとに変わるフレッシュハーブのハーブティーとヴィーガンアイス

野草茶、自然栽培の番茶のほかにハーブティーも。取材時は6月だったので、収穫したばかりの6月の花、マロウ、カモミール、レモンバーベナ、ミントのブレンドティーでした。

無農薬有機栽培です。今収穫期のため、乾燥ではなく、フレッシュハーブのハーブティ。のどの渇きを癒し、余韻としてすっとした清涼感が残ります。

「季節のヴィーガンアイスクリームのパフェ」750円
「季節のヴィーガンアイスクリームのパフェ」750円

新潟のヴィーガン料理店「mountain△grocery」と相談しながら作る、季節の素材を使ったヴィーガンアイスクリームのパフェ。取材時のものは新潟市の酒蔵・今代司酒造の酒粕と、ココナツミルクを使ったアイスクリーム。酒粕のコクにココナッツミルクのまったりした甘さ、酸味の利いたフルーツソースのアンサンブルが見事です。

雪国と心がつながった気分になれる、癒しの場所「雪月の鳥 / 土と植物と手仕事」。静かな雰囲気を楽しみに訪れてみてください。

■店名 雪月の鳥 / 土と植物と手仕事
(ゆきづきのとり/つちとしょくぶつとてしごと)
住所:京都府京都市上京区真盛町726−6
TEL:080-4008-0581
営業日:日曜+不定期営業
営業時間:13~18時
アクセス:市バス「上七軒」から徒歩2分


Photo: photo scape CORNER.大﨑 俊典
Text:京都ライター事務所 小西尋子

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