蔵ステイ×ローカルガストロノミーで、白鷹町の歴史と文化に浸るモダンな旅【NIPPONIA 白鷹 源内邸(山形県 白鷹町)】
白鷹丘陵、朝日山系に挟まれ、中央を最上川が流れる山形県白鷹町(しらたかまち)。その白鷹町ののどかな田園地帯に立つ「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は、明治・大正時代の面影を色濃く残す古民家宿。蔵をリノベーションした趣ある客室で“おこもりステイ”を満喫できると人気です。名産・紅花を使った染物体験、珍しい薪窯の工房での陶芸体験、遠方にもファンが多いそばグルメなど、このエリアならではの魅力がいっぱい。ローカルガストロノミーをテーマにした食事や着物の着付け体験を通し、白鷹町の文化にふれましょう。
Summary
白鷹町の旧家の蔵に泊まって、
明治・大正のモダンな時代にタイムスリップ
NIPPONIA 白鷹 源内邸(宿泊)
米沢藩主・上杉鷹山とゆかりがあり、白鷹の地で11代続いた奥山家。その建物群をリノベーションした宿「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は、約3000坪の広々とした敷地に母屋や蔵など5つの建物が点在しています。総客室数はわずか8室という贅沢な空間。モダンな雰囲気の洋風タイプや、蔵の風情を色濃く残すメゾネットタイプ、天井まで7m以上の吹き抜け蔵など、個性豊かな客室が揃います。部屋の名前は紅花の産地である白鷹らしく、「紅」の色名にちなんだもの。細部までこだわっていますね。
建物はすべて明治中期から大正初期に建てられ、宿泊客に当時の暮らし、趣を感じてもらうため、往時の姿を残すような最小限のリノベーションにとどめているのだとか。照明は白鷹に400年以上前から伝わる深山和紙を使用したり、ダイニングに昔の味噌樽を飾っていたりと、インテリアや調度品に白鷹町の歴史や文化をさり気なく取り入れているところが粋ですね!
今回宿泊した客室は、大正10年(1921)築の蔵を改修したメゾネットタイプ「紅の八塩」。重厚なドアは蔵の造りそのままで、一歩足を踏み入れた瞬間から非日常を感じることができます。客室の中は、土間や小上がり、2階のベッドルームなど多様なスペースがある広々とした空間。一棟貸し切りで使えるなんて贅沢!
客室にはテレビや時計がなく、ゆったりとした時間に身も心もリラックス。ソファに座ると、大きな窓から青々とした竹林が眺められます。その明るい風景と落ち着いた客室のコントラストが絶妙です。客室にある風呂は、改修時に造られたヒノキの浴槽。窓から射す月明りのもとでくつろぎのバスタイム、というのもロマンティック♪
夕食や朝食は、明治時代の味噌蔵を改修した「ダイニング纏(まとい)」でいただきます。
シェフの横澤充洋さんは白鷹町や置賜エリアの伝統野菜、地場食材を通して町の文化を伝える取り組みに尽力。「ローカルガストロノミー」を料理のテーマに、地域の風土、歴史、伝統を料理で表す術はさすが!
「食事からも山形、白鷹を感じてもらえたらうれしい」と横澤さん。食材は地の物が中心、自家菜園で栽培しているハーブのほか、山椒や桑の葉、タケノコ、山菜など。敷地内で採れるものも料理に取り入れています。素材本来の風味を際立たせるために、塩などの調味料は控えめに。その分、調理法や食材の組み合わせに工夫を凝らしているのだとか。供される一皿はどれも絵画のように美しい。
夕食は前菜、スープ、メイン、デザート、お茶菓子のコース。この日のメニューは、前菜から白鷹名産の鮎、「山形おきたま伝統野菜」に認定された畔藤(くろふじ)きゅうりや、白鷹町に隣接する長井市産の鯉など、地元の食材を生かしたメニューが次々と運ばれてきます。白鷹産トマトを使ったスープに、メインは上質な米沢牛のグリル。内容は季節替わりで、メインの肉料理も蔵王の鴨肉などになることも。何度訪れても、新たな食の発見に出合えるのがうれしいですね。(※写真は一例)
シェフの横澤さんはソムリエの資格ももっており、料理との相性を考えた酒もセレクトしてくれます。ワインだけでなく、山形県の日本酒やクラフトビールなど、地酒も選んでくれるので気軽に相談して!
朝食は郷土料理を意識した和食。例えば納豆は、雪深い置賜地方で生まれた雪割納豆。従来の納豆にさらに麹を加えて発酵させたもので、濃厚な大豆の甘みと旨味、塩辛さがあと引く味わいです。地元の「すずき味噌店」の味噌で作るみそ汁も好評で、帰りに店に立ち寄って買い求める人もいるとか。心尽くしの料理で今日の観光も思いっきり楽しめそう。
白鷹町は古くから養蚕業や絹織物が盛んだった地域。現在は、精緻な模様を板締(いたじめ)という技術で染付する絣(かすり)の織物・白鷹紬(つむぎ)が伝統工芸として守り、伝えられています。こちらの宿は「きものリトリートホテル」として、宿泊客が着物の着付け体験を通して、町の風土と非日常を体感することを目指しています。
着付け体験の着物は数種類の中から好みの柄を選んで。着付けていただく間も、着物や白鷹の魅力について話が聞けますよ。着物を着たらそのまま自由に過ごしてOK。記念撮影をしたり、敷地の外へ出て田園風景の中を散策したり、艶やかな着物とともに心浮き立つ時間を過ごしましょう。春は桜、秋は紅葉など四季折々の風景の中を、着物で歩く体験はきっと忘れられない思い出になるはずです。
■NIPPONIA 白鷹 源内邸
住所:山形県西置賜郡白鷹町浅立183-1
TEL:0238-87-3150
交通:東北中央自動車道南陽高畠ICから車で約30分、またはJR山形駅前より山交バス道の駅川のみなと長井行きで約60分、浅立局前下車徒歩約5分
チェックイン:15~17時
チェックアウト:10時
料金: 1泊2食付き1名3万5000円~(大人2名1室利用時)、着物着付け体験1名7700円(宿泊予約時要申し込み)
定休日:火・水曜(月曜宿泊、火曜チェックアウトは可能)
江戸時代と変わらぬ手法で紅花文化を継承。
染色体験で紅花の奥深さを知る
紅花の館(体験)
江戸時代、紅花生産地として栄えた置賜領。なかでも白鷹の地には数多くの紅花畑があったそうです。一度は途絶えた紅花栽培ですが、現在は、紅花文化を守る地域住民の取り組みによって、栽培・加工する産業が復活。紅花を染色用の素材に加工した紅餅(下写真)や、すり花、乱花が多く生産され、国内有数の紅花生産地として知られるようになりました。
白鷹町の栽培・加工方法は江戸時代と同じ手法を守っていて、手摘みや天日干しといった昔ながらの工程で作る染料は高い品質を誇ります。栽培・加工技術が継承されている農業の仕組みは、2019年、「歴史と伝統がつなぐ山形の『最上紅花』」として「日本農業遺産」に認定されました。紅花文化の伝承施設「紅花の館(はなのやかた)」。こちらに勤める県認定の紅花マイスター・今野正明さんに、紅花の歴史や染料の作り方についていろいろ聞くことができます。
紅花染め体験で紅花の美しい色合いを堪能しましょう。使用する染料はもちろん目の前に広がる畑で採れた紅花。45分ほどで自分らしい模様のオリジナルハンカチが完成します。6月下旬~8月初旬の開花時期には、紅花摘み体験や紅餅作り体験も開催(各30分550円)。紅花文化にふれるチャンスです!
■紅花の館
住所:山形県西置賜郡白鷹町十王1707-1
TEL:0238-85-1883
交通:東北中央自動車道山形上山ICから約35分
営業時間:9~17時 ※紅花摘みは早朝でも受け入れ可能(要問合せ)
定休日:無休
料金:紅花染め体験1430円~(ハンカチ代込、2日前までに要予約、4名以上受付)
薪窯の工房で陶芸体験。
紅花の釉薬を使うのが白鷹町流
深山工房つち団子(体験)
白鷹町の中でも里山に囲まれたのどかな場所にある「いきいき深山郷 のどか村」。深山和紙の紙漉きなどの体験ができるスポットです。今回訪れた「深山工房つち団子」では、陶芸を体験しました。地元の紅花を原料とした釉薬を作品に使うのが白鷹町の工房ならでは。全国でも数少ない薪を燃料にした登り窯を使用し、大量の薪を5日間焚いて焼き上げるそう。窯の奥に高く積まれた薪は圧巻の光景です。
手びねりや絵付けなどのメニューから、今回は電動ろくろ体験にチャレンジ。エプロンを借りて、陶芸家の金田利之さんが手の角度やコツを優しく指導してくれます。鳥のさえずりやろくろの音だけが響く静かな空間で、目の前の作品に1時間30分ほどどっぷりと集中。体験を終えるころには、頭の中がすっきりとリフレッシュしているから不思議です。
陶芸体験の釉薬は4種類から選べます。完成した品は味わい深い色としっとりと手に馴染む風合いが魅力。体験で制作したものは乾燥や焼き上げを行い、1~2カ月後には完成品が自宅に届きます。どんな仕上がりになっているか楽しみに待ちましょう♪
■深山工房つち団子
住所:山形県西置賜郡白鷹町深山2530
TEL:090-2955-1939
交通:東北中央自動車道山形上山ICから約45分
営業時間:9~17時
定休日:不定休、冬期休業
料金:電動ろくろ体験1名3300円~(送料別途、要予約)
※電動ろくろ体験は汚れてもいい服装をおすすめします
田園の中を走るローカル電車。
車窓から見える日本の原風景にほっこり
山形鉄道フラワー長井線(体験)
山形鉄道フラワー長井線は、山形県南陽市から白鷹町の間、約30kmを1時間ほどで結ぶローカル鉄道です。この路線は「フラワー」の名のとおり、沿線上に花の名所が続くのが特徴。南陽市はサクラ、川西町はダリア、長井市はアヤメ、そして白鷹町はもちろん紅花。それぞれの花をあしらった4種のラッピング車両も走っています。華やかな電車に乗ると気分も高揚。美しい田園を眺めながらウキウキと移動しましょう。
「べにばな号」は真っ赤な紅色に、鮮やかな黄色の花が描かれています。ほかにもキュートなキャラクター「鉄道むすめ」をモチーフにしたラッピング車両もあります。何時にどの車両が走るのかは当日のお楽しみ。ホームの向こうからやってくる車両を待つ時間もワクワクします。
車窓から臨む田園風景の向こうに朝日山系の葉山が広がります。まさに日本の原風景といった趣。初夏は青々とした田んぼ、初秋にはそばの花畑、冬は雪景色と四季折々の風景が楽しめます。移動のためだけではなく、窓の外を流れる景色をのんびりと眺めるために乗ってみるのもありですね。
■山形鉄道フラワー長井線
TEL:0238-88-2002(山形鉄道株式会社)
毎朝製粉し挽きたてにこだわるからこそ。
そばの風味と喉ごしが抜群!
そばきり八寸(食)
古くから祝い事などの際にそばを食べる文化があった白鷹町。町内には今も手打ちそばの名店が点在し、「隠れ蕎麦屋の里」とよばれています。今回は長井市で20年以上営み、白鷹町に移転して7年を迎える「そばきり八寸」でそばランチをいただきます。
原料は国内産の厳選した玄そばのみで、この日は福井県のそば農家から直接取り寄せたそばの実を使用。毎朝、その日に使う分だけを自家製粉しているのだとか。石臼の製粉スピードはゆっくりと、挽き具合は食感を損なわない程度の粗挽きに。仕上がりは、そばのもつ豊かな香りが残ります。
「せいろ」700円は、つなぎを5%ほどしか使わない手打ちそば。コシがありつつ、すっきりとした喉ごしです。本枯節とサバ節、昆布のコクを効かせたキレのあるツユにくぐらせていただくと、そばの風味が引き立ちます。お腹が空いたときには「板そば」1200円がおすすめ。「いかの下足天」500円など、山形のそば処らしい一品料理もぜひ味わって。
■そばきり八寸
住所:山形県西置賜郡白鷹町浅立3589-1
TEL:0238-85-1083
交通:東北中央自動車道南陽高畠ICから約30分
営業時間:11~14時
定休日:不定休
年間約300種類の野菜がずらり!
朝採れ野菜や地元グルメをチェック
白鷹産直市場 どりいむ農園直売所(体験)
「白鷹産直市場 どりいむ農園直売所」には、白鷹町内産野菜や山菜のほか、総菜や漬物、スイーツなども地元産がずらり。町内産の馬肉もリピーターの多い人気商品です。3~5月には併設の観光いちご農園でいちご狩りができるなど楽しみ方はさまざま。土・日曜、祝日は鮎焼きや田楽などの軽食も楽しめます。白鷹町らしいショッピングを楽しむならここへ。
産直スペースには約240人の生産者が登録。毎日、朝採れの新鮮な農作物が所狭しと並びます。年間で300種類ほどの農作物が登場し、珍しい野菜に出合えることも面白さのひとつ。15時ころには品切れになることも多いので、午前中に来店を。
実は白鷹町は東北屈指のミニトマトの産地。4~11月のシーズン中、多い時でなんと約14種類のトマトが並ぶこともあるそう。写真は6~8月が旬のプチぷよトマト(左手前)、5~9月が旬のヘルシートマト(右手前)、5~11月と長い期間流通するアイコの3種類(右奥)。プチぷよトマトは薄い皮とフルーツのような濃厚な甘みが特徴の人気商品なので、見つけたらぜひゲットして!
■白鷹産直市場 どりいむ農園直売所
住所:山形県西置賜郡白鷹町畔藤9053-30
TEL:0238-85-2922
交通:東北中央自動車道山形上山ICから約40分
営業時間:9~18時
定休日:1月1日~1月5日
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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