高野山の宿坊で心も体もととのう体験レポート【和歌山】
高野山は、和歌山県の標高900mの山上に開かれた真言密教の聖地。現在、51の寺院が宿坊として訪れる人たちを受け入れてくれます。精進料理を味わったり、瞑想などの修行体験をしたり、澄んだ空気の中で朝の勤行に参加したり、お寺ならではの経験をしてみませんか?最近はラグジュアリーな特別室を備えた宿坊も登場!その魅力をたっぷりご紹介します。
Summary
明智光秀の菩提寺・恵光院に泊まって修行体験を
高野山にある51ヵ寺の宿坊寺院のひとつ、恵光院(えこういん)は奥之院の参道入口である「一の橋」にほど近い場所にあります。朝の勤行や護摩祈祷、夕方の瞑想、夜の奥之院参拝ツアーなど、様々な体験ができると人気で、国内を始め海外からも多くの宿泊客が訪れます。
御由緒は、今から1200年前に、弘法大師空海が五重塔を建立して、毘沙門天、不動明王を五重塔に安置したことが始まり。のちに空海の弟子である道昌僧都が住職となり、多くの人たちの供養を行ったため、「廻向院」とよばれたそう。その後、八代将軍徳川吉宗公の命で「恵光院」に名を改めました。薩摩藩十七代当主島津義弘との縁が深く、明智光秀の菩提寺でもあります。
宿坊を訪れると、ご住職の近藤説秀さんをはじめ、お坊さんたちが迎えてくれます。チェックインを済ませたら、長い廊下を歩いてお部屋へと案内してくれます。広間の見事な襖絵はお見逃しなく。
精進料理のお食事は17時30分からですが、その前にぜひ修行体験を。恵光院には阿字観(あじかん)道場があり、毎日16時30分から行われる瞑想体験に参加できます。阿字観とよばれる密教独自の瞑想方法で、姿勢と呼吸を整えながら静かに座っていると、次第に落ち着いた気持ちに。お坊さんが丁寧に指導してくれるので初めてでも安心です。
恵光院に誕生したラグジュアリースイートルーム
2022年3月に誕生した特別室「月輪(がちりん)」は、高野山の宿坊では最大級という100㎡の広さの客室。プライベート庭園を望む広々としたリビングや半露天風呂のほか、モダンなベッドルームを備えたラグジュアリースイートルームです。定員6名なので、家族連れでもゆったりと泊まれます。
和室の壁面には金沢の金箔ブランド「箔一」と世界で活躍中のデザイナー吉本英樹氏のコラボで制作された特大アートを設置。真言密教の瞑想法「月輪観」をイメージしたという、赤い円から放たれる光と金箔の渦がみごとで、ここでプライベート瞑想をするのもよいかもしれません。ご住職が気さくに瞑想のポーズをとってくださいました。聞くとオプション料金で、瞑想の指導にも応じてくださるとのこと。
ベッドルームには高級ホテルのスイートルームに使用されるというSertaのマットレスを使用したベッドを設置。大型液晶テレビも備えられています。
洗面室には歯ブラシセットやバスタオル、ドライヤー、アメニティ類などがひと通り揃っているのもうれしいポイントです。
浴室は窓を開けるとプライベート庭園を望む半露天風呂に。好きな時間に入浴できるのが、お風呂付き客室のいいところ。チェックインしたらまず、瞑想の前にお風呂で、身を清めるのも心地よいものです。
朝夕の食事は精進料理。本膳形式の本格的な料理を、お坊さんたちスタッフが部屋まで運んでくれます。特別室の料理は特にみごとで、これがすべて肉や魚など動物性の食品をいっさい使用していない料理とは信じられないほど。目にも彩りよく味わいも多彩で、五味五色五法を五感で楽しむことができます。ちなみにこのお料理は、スイートルームに宿泊以外でも予約可能だそう。
翌朝は勤行に参加!護摩祈祷に参列も
朝の勤行は毎朝7時から本堂で行われます。ぜひ早起きをして参加を。荘厳な読経の声に身が引き締まる思いがします。参列者は順番にご焼香をします。
朝の勤行の次は、毘沙門堂で毎朝7時30分から行われる護摩祈祷へ。宿泊客は堂内に入って参列ができ、目の前で燃え上がる炎と読経、激しい太鼓の音は迫力満点なのでぜひ!護摩木をお供えしたり、祈祷を申し込んで御札を授与いただくこともできます。
毘沙門堂に祀られているのは御本尊の毘沙門天像と、愛染明王像、不動明王像。不動明王像は「舵取り不動」ともよばれ、弘法大師空海が唐に渡航する際に航海の安全を守ったご利益があると伝えられています。護摩祈祷の後、参列者は間近でお参りすることができます。
最後にぜひチェックしておきたいのが、毘沙門天や蓮の花をモチーフにしたTシャツ。恵光院のお坊さんたちが企画したものだそうで、とっても素敵!ほかにも、オリジナルの御朱印帳などもあり、寺務所の横のコーナーにディスプレイされているので手にとってみては。
■恵光院(えこういん)
住所:高野町高野山497
電話番号:0736-56-2514
料金:1泊2食付1万3000円〜(特別室月輪は1泊2食付5万円〜)
時間:IN14時/OUT10時
アクセス:バス停苅萱堂前からすぐ
真田家ゆかりの寺・蓮華定院で優美な貴賓室に宿泊
高野山に蟄居(ちっきょ)を命じられた真田昌幸・幸村父子が身を寄せた寺・蓮華定院(れんげじょういん)の宿坊には、6室の貴賓室が用意されています。みごとな襖絵や庭園を望むガラス張りの縁側など、贅を凝らした和室の設えは部屋ごとに異なり、次回はどこの部屋に泊まろう、という楽しみも生まれます。
和室の続き間にはバスルームを備えたベッドルームがあり、ゆったりとしたベッドから液晶画面のテレビを見ることもできます。
こちらは、また別の貴賓室で、和室の隣に洋風のベッドルームを備えています。壁面にデザインされた孔雀の屏風絵がみごと。白い扉の奥はバスルームです。
■蓮華定院(れんげじょういん)
住所:高野町高野山700
電話番号:0736-56-2231
料金:1泊2食付1万2500円〜(貴賓室1泊2食付6万6000円〜)
時間:IN15時/OUT10時
アクセス:バス停一心口からすぐ
西禅院に泊まって重森三玲が作庭したみごとな庭園を観賞!
西禅院(さいぜんいん)は壇上伽藍の北に位置する宿坊寺院。重森三玲が作庭した3つの庭園が国の登録記念物にも指定されています。そのなかのひとつ、枯山水庭園を望む貴賓室が誕生しました。壁面には象や孔雀が遊ぶ極楽浄土をイメージしたアート作品が描かれてとっても優美な設えです。
新書院と茶室に面した枯山水庭園は昭和28年(1953)の作庭。パナソニックの創業者、松下幸之助氏が愛したことで知られています。茶室「仰塔庵」の奥には壇上伽藍の根本大塔が見えています。
朝の勤行は本堂で毎朝6時30分から行われます。自由参加なのでぜひ泊まった際には参列してご焼香を。ほかにも、ご住職が壇上伽藍を案内する伽藍ツアー(8時30分〜、1000円)や阿字観(10時〜あるいは16時〜、1000円、要事前予約)などの体験もできます。
朝の勤行が行われる本堂へ向かう際に、貴賓室前の壁面アートや枯山水の庭園を眺めることができるので、要チェック。リーズナブルな客室もあるので、ぜひ気軽にお泊りしてみてはいかがでしょう。
■西禅院(さいぜんいん)
住所:高野町高野山154
電話番号:0736-56-2411
料金:1泊2食付1万2000円〜(貴賓室1泊2食付2万2000円〜)
時間:IN15時/OUT10時
アクセス:バス停金剛峯寺前から徒歩5分
Text&Photo:杏編集工房 中島彰子
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