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日本の伝統文化・盆栽にふれる宿を拠点に、棚田、渓谷、水路……自然美に圧倒される一関へ【天空のお宿 盆栽民宿 雅館(岩手県 一関市)】

日本の伝統文化・盆栽にふれる宿を拠点に、棚田、渓谷、水路……自然美に圧倒される一関へ【天空のお宿 盆栽民宿 雅館(岩手県 一関市)】

食・グルメ 農泊 体験 古民家 岩手県 るるぶ&more.編集部
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岩手県南部に位置し、東西約63km、南北約46kmの広さを誇る一関市。市の中心部から西方には奥羽山脈の山々が連なる、自然豊かな街です。そんな一関市ののどかな田園風景を一望できる高台にあるのは「天空のお宿 盆栽民宿 雅館」。全国でも珍しい盆栽を体験できる宿として注目されています。ほかにも、「世界かんがい施設遺産」に登録されている「照井堰(てるいぜき)用水」や、日本の原風景を思わせる棚田、郷土料理や渓谷の舟下りなど、この地で育まれてきた歴史や自然、文化を満喫しに出かけましょう。

Summary

田園風景を望む一棟貸しの宿で、
盆栽を愛でるスロー・トラベル

天空のお宿 盆栽民宿 雅館(宿泊)

山の中腹にあり、自然豊かな環境が自慢の「天空のお宿 盆栽民宿 雅館」。ログハウス調の宿の周りには見事な盆栽がずらり。40年ほど前にオーナーの山岸さんが盆栽を趣味で始め、全国から集めて育てている盆栽を多くの人に楽しんでもらいたいと、この宿をオープンしました。今では、敷地内にある盆栽専用ハウスに、サツキを中心とした大小さまざまな盆栽約400鉢が並び、宿を訪れた人々を楽しませています。

この宿に泊まる目的のひとつは盆栽体験。季節によって剪定や花摘みなど体験内容が異なりますが、今回はミニ盆栽作りに挑戦しました。日本園芸協会の盆栽士の資格をもつ山岸さんから直接手ほどきを受けて、特別な時間を過ごすことができます。

盆栽というと青々とした葉のイメージがありますが、5月下旬~6月中旬には可憐な花を咲かせるなど、季節ごとに多彩な美しさに出合えることが魅力。盆栽はその芸術性の高さから、「BONSAI」として海外のファンも増えているそうです。

まずは、いくつかの小さな苗木から好きなものを選びます。枝が曲がっているもの、まっすぐ小ぶりなものなどいろいろあるなかから、今回は心ひかれたまっすぐな苗を選択。苗の根をほぐしつつ、ハサミで鉢に合う大きさに整えていきます。途中、山岸さんが「いいですね!迷いがなくてまっすぐで、とても上手ですね」などとほめてくれるので、緊張もとけて自信をもってハサミを入れることができました。

整えた後は苗の正面を決めて鉢へ植え込み、養土などを加えて完成です。それぞれの工程はシンプルなので初めてでも安心してチャレンジできます。「どんな鉢に仕上げたいのか」を考えながら作業するため、日常を忘れて没頭。完成した鉢はそのまま持ち帰ります。自分で作り上げた盆栽なので愛着もひとしおです。

宿泊施設の「天空のお宿 盆栽民宿 雅館」は1日1組限定の1棟貸しスタイル。高台に位置するため、田園風景を一望できます。北上川と田畑の美しさはもちろん、目の前に広がる空の広さにも心を奪われます。一般道路から離れているため静けさに包まれていて、時には野生のカモシカが庭に現れることも。出合える運に期待したいですね。

客室内は洋風の家具でしつらえられていながら、重厚な梁や囲炉裏スペースなどがあり、和とモダンが融合した落ち着いた雰囲気になっています。間接照明や厚みのある一枚板テーブルなど、オーダーメイドであつらえた家具が高級感を漂わせます。一方で、オーガニックバンブーの歯ブラシといった自然由来のアメニティが用意されるなど、環境に配慮したサスティナブルな一面もこの宿の魅力です。

2階は寝室スペースが2部屋。ベッドはシングルサイズ1台と、セミダブルサイズ2台の計3台が用意されています。間接照明が柔らかく室内を照らし、リゾート感もたっぷり。テラススペースもあり、窓を開ければ爽やかな風と開放的な眺望を楽しめます。満天の星空を眺めながらロマンティックな夜を過ごしましょう。

夕食は、地元飲食店のケータリング料理をお願いしました。届いた料理は、地元食材をふんだんに使った、もちや山菜料理など郷土料理を中心とした膳。いろいろな味を少しずつ食べられて、食事とともにおしゃべりも弾みます。季節によって内容が変わるので、シーズンごとに訪れたくなります。また、キッチンに調理器具も完備しているので、食材を持ち込んで調理も可能。

朝食は、できたての料理を客室まで運んできてもらえます。温かいスープやトースト、新鮮なサラダなど、ボリュームたっぷりな料理で一日の旅のエネルギーをチャージできました。

客室にあるオーディオセットを使って好みの音楽を聴いたり、オンデマンドサービスの映画を迫力のあるボリュームで鑑賞したり、Wi-Fiを利用してワーケーションをしたり、何もせずただ景色を眺めて深呼吸をしたり……。盆栽体験や静かな客室のステイを通して、贅沢なおこもり旅を満喫してください。

■天空のお宿 盆栽民宿 雅館
住所:岩手県一関市舞川梅木66-5
TEL:070-1510-3838
交通:東北自動車道平泉スマートICから車で約20分
チェックイン:15~18時
チェックアウト:11時
宿泊料:1棟貸切1日1組限定朝食付き6万6000円(サービス料別、1組5名まで)※土・日曜、祝日は8万8000円
※盆栽体験3300円(1週間前までに予約)、ケータリングは地産地消 和食3850円 、5500円、出張シェフコース1万6500円(1名)

 

青空に映える緑の棚田。
里山風景に心洗われる時間

金山棚田・山吹棚田(体験)

棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に作られた水田のこと。一関市には、農林水産省の「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に選ばれた2カ所の棚田があります。ひとつは山の中腹にあり、8畳ほどの小さな水田が約50枚並んでいる「金山棚田」。江戸時代後期に開墾されたと伝わる水田で、いまも機械を使わない手作業による伝統的手法で耕作を続けています。

「金山棚田」には、田おこしから脱穀まで米作りに参加する棚田オーナー権という制度があります。1つの棚田のオーナーになり、楽しみながら棚田の保全活動や農業に興味をもってもらおうという取り組みです。ベンチや展望デッキがあり、オーナーでなくても誰でも自由に散策することができます。展望デッキに立つと、爽やかな風が通り抜け清々しい気持ちに。肩の力がすっと抜けていきます。

次に訪れたのは「金山棚田」から車で35分ほど東へ向かった場所にある「山吹棚田」。2ヘクタールの斜面に約40枚の水田が並んでいます。遠くには室根山を望み、初夏には周りの木々の新緑と稲の共演が、秋には刈り取った稲を昔ながらのハセ掛けで乾燥させる光景が見られ、日本の原風景を思わせる四季折々の絶景が広がります。日本の農村文化の素晴らしさを体感できる棚田は、時を忘れてゆっくりと過ごしたくなる特別な空間です。

■金山棚田
住所:岩手県一関市舞川唐ノ子6
交通:東北自動車道平泉スマートICから車で約18分
問合せ:playfarm.iwate@gmail.com
営業時間:見学自由
定休日:見学自由

■山吹棚田
住所:岩手県一関市大東町大原山吹
TEL:0191-72-4080(一関市観光協会大東)
交通:東北自動車道平泉スマートICから車で約45分
営業時間:見学自由
定休日:見学自由

世界かんがい施設遺産を、
大自然にふれながら歩く

照井堰と平泉文化の歴史ウォーキング(体験)

「照井堰(てるいぜき)用水」とは、平安時代末期に藤原秀衡の家臣・照井太郎高春が開削したと伝わる用水路。この用水路によって、この地域の水田や畑が栄え、現在では生活用水、防災用水、水力発電として利用されています。その社会的価値が認められ、「世界かんがい施設遺産」に登録されています。

「照井堰用水」のそばには、世界遺産の毛越寺から中尊寺を結ぶ約3.2kmのトレッキングコースが整備されていて、遣り水の取り入れ口や分水、水門などが見られます。案内板の解説からその役割を学んだり、普段、見かける機会のない水路を眺めたりしていると、暮らしを支える水の大切さに気づかされます。

中尊寺側の散策路は湿地帯の木道になっていて、しっとりとした空気の中で森林浴を楽しめます。豊かな自然が魅力で、周辺はモリアオガエルの生息地やアジサイなど季節の花が咲くスポットがあちらこちらにあり、目を楽しませてくれます。平泉町の遺跡群など歴史的建造物を訪れながら散策するトレッキングコースは、少し距離が長めですが、歴史と文化、自然を一度に満喫できる充実した時間を過ごせます。滑りやすい場所もあるので、歩きやすい服装、靴で出かけましょう。

■照井堰と平泉文化の歴史ウォーキング
住所:岩手県一関市~岩手県西磐井郡平泉町
TEL:0191-23-2135(照井土地改良区事務所)
交通:毛越寺は、東北自動車道平泉スマートICから車で約4分
※毛越寺は別途拝観料が必要(中尊寺境内は拝観料無料、中尊寺金色堂は要拝観料)

一関伝統のもち料理を、
多彩なアレンジで召し上がれ

三彩館 ふじせい(食)

一関市を代表する食文化といえば、もち料理。この地域では、古くから冠婚葬祭や正月、季節の節目など、あらゆるタイミングでもちをついてふるまい、食べる文化がありました。伝統的なもち料理だけでも60種類ほどあり、現在は洋風アレンジなど300種類を超える食べ方で楽しまれています。今回は、コンクリート造りのスタイリッシュな外観が目を引く「三彩館 ふじせい」で、一関ならではのアレンジの効いたもち料理をふるまってもらいました。

ちょっとずついろいろな味がうれしい「元祖ひと口もち膳」1750円は、雑煮も含めた9種類のもちが並ぶ看板メニュー。くるみやショウガ、ずんだ、じゅうね(エゴマ)、エビなど伝統的なあんが揃っています。多彩な味わいに、おもてなしの心が伝わってくるよう。膳の中心にある大根おろしは味のひとつではなく、箸休めのため。「たくさんの味を食べてもらいたい」という同店の女将さんの思いから、もちは食べやすいひと口サイズのため、品よく口に運べます。

最初にあんこもちをいただき、最後は雑煮で締めくくるというのが一関のもち料理の作法。また、納豆もちは「糸をひく」ため不祝儀には使わないというマナーもあるそうです。さらに「この地域のもちは柔らかくてはダメなの。つきたてでも強いコシが特徴なんです」と、生まれも育ちも一関の女将さんが教えてくれました。一関産のもち米・コガネモチを使ったつきたてのもちは、しっかりとしたコシと粘りを楽しめ、優しい甘みが口に広がります。多彩な味つけが生きる質のよさはさすが。

■三彩館 ふじせい
住所:岩手県一関市上大槻街3-53
TEL:0191-23-4536
交通:JR一ノ関駅から徒歩約3分
営業時間:11~14時
定休日:月曜

創業100余年の老舗造り酒屋で、
郷土料理「はっと」の手ちぎり体験

世嬉の一酒造(体験・食)

南部小麦の産地でもある一関市でぜひ食べたい料理のひとつが「はっと」です。「はっと」とは、小麦粉に水を加えて練って熟成させた生地を薄くのばし、茹でて食べる郷土料理のこと。名前の由来は、一斗(いっと)の小麦から八斗(はっと)作られたこと、あるいは、かつてお殿様が食べてあまりにおいしくご法度にしたことなど。数々の伝説に思いを馳せながら食べるのもいいですね。

地元一関の酒造「世嬉の一(せきのいち)酒造」が営む「蔵元レストランせきのいち」では、生地を自分でのばす体験型の「手延べはっと膳」1500円が人気です。もちもちの生地を好みの薄さ、大きさにちぎり、鶏だしがきいた醤油ベースのつゆでたっぷりの野菜と一緒にいただきます。「はっと」はつるりとした食感で野菜の旨味となじみ、ほっとする味わい。なにより自分で生地をのばした、はっと料理は格別です。地元食材の小鉢や自家製の甘酒など、膳には滋味深い品が並び、お腹も心もすっかり満たされました。

大正7年(1918)創業の「世嬉の一酒造」。日本酒やクラフトビールを醸造し、敷地内には直売所もあります。こちらでは時期ごとにおすすめの酒を2種類ほど試飲することができるほか、ビール工場の見学ができたり、酒の民俗文化博物館で酒造りを学んだりできます。みどころが多く、郷土料理を味わった後もゆっくりと過ごせます。

■世嬉の一酒造
住所:岩手県一関市田村町5-42
TEL:0191-21-1144
交通:JR一ノ関駅から徒歩で約10分
営業時間:レストラン11~15時LO、直売所9~18時
定休日:不定休
料金:酒の民俗文化博物館入館料300円、小・中学生200円、未就学児無料

渓谷に響く舟唄が心に染みる
絶景を和船から見上げる

猊鼻渓舟下り(体験)

岩手県内有数の景勝地「猊鼻渓(げいびけい)」。砂鉄川が石灰岩を浸食してできた約2kmの渓谷に沿って、静かな流れの川を船頭が長い棹一本のみで操り、手漕ぎで進んでいくのが「猊鼻渓舟下り」です。両岸にそびえる高さ約100mの断崖・奇岩が迫力満点。

往復1時間30分ほどの舟下りは、船頭のユーモアを交えた風景の解説を聞いたり、折り返し地点で降りて高さ約124mの巨石・大猊鼻岩を見学したり、盛りだくさんの内容で飽きることなく過ごせます。舟の周りには、川魚や鴨などがエサを求めて近づいてくることも。名物は、船頭が歌う「げいび追分」。風土のよさを伝える民謡が渓谷に響き渡り、しみじみとした風情を感じさせてくれます。

一年を通じてさまざまな美しい表情を見せる渓谷。その間に身を置いて過ごす舟下りは、春は桜、夏は緑、秋は紅葉、そして冬はこたつ舟と、四季折々の楽しみ方があります。特に12~2月のこたつ舟は、雪に包まれた水墨画のような渓谷の中をこたつで温まりながら進みます。体験のおもしろさはもちろん、心癒やされる特別な思い出になりますよ。

■猊鼻渓舟下り
住所:岩手県一関市東山長坂町467
TEL:0191-47-2341
交通:JR猊鼻渓駅から徒歩約5分
営業時間:8時30分~最終運行出発15時(季節により変動あり)
定休日:無休 
料金:乗船料1800円、小学生900円、3歳~未就学児200円、3歳未満無料


●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

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