アルケッチャーノのガストロノミーツアー

山形の名店「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフと食の都・庄内を巡る

地産地消ディナー 東北グルメ イタリアン 山形県 るるぶ&more.編集部
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美食と美酒、山形でもとびきりおいしい食材が集まる庄内地方。“食の理想郷”ともよばれる庄内はいま、ガストロノミーツーリズムに力を入れています。今回は「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフと一緒に庄内をめぐり、豊かな恵みをふんだんに使用したディナーをいただいてきました。その様子をレポートします。

Summary

ガストロノミー界を牽引する奥田シェフが愛する「食の都・庄内」

庄内平野から望む鳥海山
庄内平野から望む鳥海山。海からの強い風を受けて降り注いだ雨や雪が、ミネラル豊富な伏流水となって山麓に湧き出す

「食材というのは水と塩以外、すべて地球上の生きもの。庄内は車で15分も走れば、海も山もある。街と自然がとても近いんです。ここには食材であるいろんな生きものがたくさん住んでいます」と語るのは、「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行氏。

山形県鶴岡市出身の奥田氏は、日本を代表するイタリア料理のシェフ。本場イタリアのスローフード協会による「世界の料理人1000人」にも選出され、自身の著書が「世界料理本大賞」でグランプリを受賞するなど国内外で目覚ましい活躍をされています。

「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行氏
「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行氏

2000年に地元・鶴岡市で「アル・ケッチァーノ」を独立開業し、現在全国に直営店が8店舗。地方におけるガストロノミーを語る上で欠かせない存在で、地方創生の分野でも注目を集めています。

「庄内には山菜の聖地といわれる月山もある、江戸時代から続く在来野菜もある、魚介類は139種類獲れるんです。この地はすごいだろうなと思って勉強したら、本当にすごかった(笑)」と奥田シェフ。

2014年に日本ではじめて「ユネスコ食文化創造都市」の認定を受けた鶴岡市は、いま日本各地で流行っている「ガストロノミーツーリズム」に力を入れており、食をテーマとした庄内地方への観光客誘致を目指しているのだとか。

今回の取材では、旅行商品開発中だという奥田シェフ同行のモデルツアーに同乗させていただき、奥田シェフ直々に庄内の食の魅力を教えていただきました。

※ツアーについてのお問合せは庄交トラベル(電話:0235-24-2550)まで

「アル・ケッチァーノ」を支える生産者のもとへ

月山高原花沢ファームの丸山さん(右)と奥田シェフ
月山高原花沢ファームの丸山さん(右)と奥田シェフ

ツアーのメインイベントはなんといっても「アル・ケッチァーノ」でいただくフルコースディナー。日中はそのコースで使用される食材の生産者のもとを訪ねました。

まず訪れたのは「月山高原花沢ファーム」。鶴岡市の名産・だだちゃ豆を食べて育つ羊の畜舎を見学します。

「ここではサフォークという品種の羊を育てています。大型で食用肉に適した品種で、今年は100頭ほど生まれました」と語るのは2代目の丸山公介さん。

サフォークという品種の羊

羊は1歳未満をラム、2歳以上はマトンと分けられますが、こちらのファームから出荷されるのは、ラムとマトンの中間である月齢1歳以上〜2歳未満のホゲットという羊肉。

「うちでは特別なエサを与えているので、それが肉質にうまく現れるのがホゲットの段階です。この月齢が一番おいしいと思って出荷しています」と丸山さん。

自家栽培のお米のほか、エサのなかで最も特徴的なのは鶴岡市特産の「だだちゃ豆」。近くの食品工場で廃棄されてしまう加工用のだだちゃ豆のサヤを無償で提供していただき、羊たちに与えたところ喜んで食べたのだとか。

だだちゃ豆を食べて育つ丸山さんの羊たちは、羊特有のくさみがなく、芳醇でふっくら、きめ細かな肉質。「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフは“日本一の羊”だと太鼓判を押し、コースのメイン料理に据えています。

そしてもう一軒訪れたのは「井上農場」。減農薬にこだわった庄内米と野菜畑を見学させていただきました。

井上農場の井上馨さん(右)と奥田シェフ
井上農場の井上馨さん(右)と奥田シェフ

こちらの農場では農薬や化学肥料を使用せず、ジャンボワカメを煮出して作った海藻エキスや椿油など自然由来の独自の活力剤を散布。虫や病気に強く、ひと粒ひと粒が大きく、しっかりとしたお米となるそうです。

「アル・ケッチァーノ」で提供されるリゾットは井上農場のお米を使用しており、ほかにも多くの野菜をレストラン専用に栽培していただいているといいます。この日も奥田シェフは野菜畑に自ら入り、畑で元気よく生えているシソの葉やバジルを摘んでいらっしゃいました。

コースで使うシソの葉を摘む奥田シェフ
コースで使うシソの葉を摘む奥田シェフ

「今日の夜のコースで使おうと思って!」となんだかひらめいた様子の奥田シェフ。一流料理人の感性を間近で感じとれたのはとても貴重な体験でした。

ローカルガストロノミーの真髄!地産地消のフルコースディナー

一面ガラス張りの店内
一面ガラス張りの店内

そしていよいよ夜本番。2022年7月に移転したばかりの本店で、おまかせフルコースディナーを堪能します。

「アル・ケッチァーノ」といえば、蔦の絡まる外壁とログハウスのようなかわいらしい佇まいが印象的でしたが、移転した新しい店内では一面ガラス張りに。庄内の田園風景やライスセンターを一望しながら料理を楽しめるようになりました。

陽が降り注ぐ日中の店内。田園風景が広がる
陽が降り注ぐ日中の店内。田園風景が広がる

今日一日、いろんな生産者の元を訪ね庄内の豊かさを実感し、それらがどんな風にコースに組み込まれるのか期待がすでに高まります。

今回提供されたフルコースはアミューズ含め全19品。仕入れや仕込み内容により提供品数は変更する場合がありますが、奥田シェフ曰く「ガストロノミーツアーに参加してくれた方々にスペシャルだと思ってもらえるように構成した」とのこと。

提供されたフルコースの内容


〜この日のメニュー〜

  1. 本日のアミューズ(グージェール、カニとレタスとだだちゃ豆プラリネ、黒バイ貝のジェノベーゼ和え、とうもろこしのスープにワサビのパンナコッタ、加熱メロンと生ハム、いちじくとリコッタチーズとフェンネル、雲丹と茄子とオレンジオイル、地魚の冷製カッペリーニとオリジナルキャビア)
  2. 地魚とお野菜の食感カルパッチョ
  3. 稚鮎と茄子のオーブン焼き
  4. 外内島きゅうりのフェデリーニ
  5. アラコの遠赤外線焼きと生ハムのクレーマー
  6. 赤海老の焼きリゾット
  7. 鯛と水とみずの実
  8. 魚介類の手打ちパスタフレーグラ
  9. ノドグロと長芋のバルサミコソテー
  10. 羽黒緬羊のローストと糸カボチャ
  11. 和梨と水ジュレ
  12. 本日のドルチェ

とっ…とにかくボリューミー!ワサビのパンナコッタ?きゅうりのフェデリーニ?と予想ができない数々にワクワクが止まりません。

稚鮎と茄子のオーブン焼き
『稚鮎と茄子のオーブン焼き』

こちらの「稚鮎と茄子のオーブン焼き」は、香ばしいアユとナスが主役の一品。「アユは脂の出る魚なので、相性のよいナスと合わせています。ナスに切り込みを入れて、アユを乗せてオーブンで焼くと、アユの旨みをナスがたっぷり吸ってくれるんです」と奥田シェフ。

地魚とお野菜の食感カルパッチョ
『地魚とお野菜の食感カルパッチョ』

この日のお魚はヒラメ。ミリ単位で細かく刻まれた野菜は食感が楽しいだけでなく、噛めば噛むほど甘みをプラスしてくれる役割があるのだとか。シンプルな味付けが素材のおいしさをより際立たせていて、ひとつひとつに味わいの奥深さを感じられました。

丸山さんの羊のローストに、先ほど井上農場で収穫したばかりのシソを添えて
『羽黒緬羊のローストと糸カボチャ』

先ほど井上農場で摘んだシソを即興で添えたこちらは、羊の脂とのバランスが絶妙で、口のなかが一気にさっぱり!奥田シェフ曰く「シソの香りのなかに、羊が飼育されている牧草の香りを感じた」とのこと。あの一瞬でここまでのイメージを作り上げていたのかと、驚きを超えてまさに感動の域でした。

ツアーでは奥田シェフが直々にテーブルを回って、料理一品一品を解説。ワインを注いでいただくという贅沢なサービスもありつつ、食材のポイントや調理のウラ側などを包み隠さず語ってくださり、大変貴重なひとときを過ごすことができました。

奥田シェフのおもてなしがさらに料理をおいしく感じさせてくれる
奥田シェフのおもてなしがさらに料理をおいしく感じさせてくれる

「今考えているガストロノミーツアーでは、こうして僕がテーブルで説明するのはもちろん、コースの内容もかなり充実させています。本気で庄内に観光客を増やしたいから、とことんサービスしますよ」(奥田シェフ)

移転した本店では、新たにアカデミー棟や奥田シェフの料理をカウンター越しに楽しめるシェフズテーブルを併設。駐車場は大型観光バスでも入れるように整備されました。ツアーによっては奥田シェフの料理教室を兼ねた内容なども検討しているのだとか。

2022年7月に移転した本店。隣にはアカデミー棟を併設
2022年7月に移転した本店。隣にはアカデミー棟を併設

“ガストロノミー”という言葉がまだまだ地方では浸透していなかった時代。おいしいイタリアンは東京にある、と都会に目が向けられていた頃から「アル・ケッチァーノ」は地産地消にこだわり、地元の生産者と一緒に歩みながらその根をおろしていきました。

いまや全国から「食×地方創生」のパイオニアとして引っ張りだこの奥田シェフ。それでも変わらぬ信念は、故郷を食で盛り上げたいという強い思いから。

コロナ禍を経て観光が本格化する今後に向けて、奥田シェフの次なる一手にこれからも注目です。



■アル・ケッチァーノ

住所:山形県鶴岡市遠賀原字稲荷43
交通:JR鶴岡駅から車で15分
TEL:0235-26-0609
営業時間:11時30分~13時30分LO、18時~20時30分LO
定休日:月曜(祝日の場合翌日)
メニュー:ランチ・ディナーコース 4400円(6品)・7700円(10品)・15000円(14品)


Text & Photo:ジェンティーレ恵


●新型コロナウイルス感染症対策により、記事内容・営業時間・定休日・サービス内容(酒類の提供)等が変更になる場合があります。事前に店舗・施設等へご確認されることをおすすめします。
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●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
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