おでかけ
2022.11.07
【伊豆・熱海】大正レトロ満載の「起雲閣」で、建築美とティータイムを満喫する週末トリップ
歴史ある温泉街のひとつ、静岡県熱海市。都心から電車で2時間弱とアクセスが良く、週末のプチトリップにもおすすめの観光地です。熱海の街に残る近代建築「起雲閣」では、文豪たちが愛した大正浪漫を満喫できます。
文豪たちが愛した、熱海三大別荘のひとつへ
大正8年（1919）に、政治家・実業家である内田信也の別荘として建てられた「起雲閣（きうんかく）」は、昭和22年（1947）に旅館となり、現在は有形文化財として一般公開されています。
持ち主と業態を変えながら現代に引き継がれてきた起雲閣。日本を代表する文豪たちが愛した、旅館当時の面影を残したままの館内を鑑賞することができます。
敷地内には、大正8年（1919）に建てられた「麒麟」、昭和4年（1929）に造られたローマ風浴室の「金剛」、昭和7年（1932）に建てられた洋館「玉姫」など、いくつかの建物が集合しています。
貴重な建築物の破損を防ぐため、大きな荷物は入口の受付に預け、まずは日本の伝統的な造りを見られる「麒麟」へ。別荘から旅館、そして現在に至るまでの歴史を、ガイドの方がわかりやすく解説してくれます。
不規則に波打つ窓は、大正時代に造られていた「大正ガラス」。ゆらゆらとした質感は、現代ではなかなかお目にかかれない希少価値の高いものです。石川県・加賀藩の伝統塗料による、鮮やかな群青色の壁にも目を奪われます。
続いて、かつて太宰治も滞在したという麒麟2階の部屋「大鳳」へ向かいます。
広々とした室内で、腰を落ち着けてみましょう。緑あふれる窓の外の風景を眺めていると、日常の喧騒を忘れてしまうようです。
起雲閣には、太宰治をはじめ、志賀直哉や谷崎潤一郎、三島由紀夫なども宿泊しました。館内の元客室は、宿泊した文豪にちなんだ展示室として活用。熱海を舞台にした小説『金色夜叉』の作者・尾崎紅葉の貴重な資料など、ここでしか見られないものもあります。
豪華絢爛！大正・昭和時代にタイムスリップ
廊下を渡ると、先ほどとは異なる趣向が凝らされた「玉姫」に到着。入ってすぐにサンルームがあり、続くダイニングと客間を見ることができます。
足元を見ればモザイクタイル、目線を上げればステンドグラスが。それぞれ花がモチーフとなり、アール・デコの様式美を感じます。
天井にもガラスが使われ、陽光を存分に取り入む室内は、いつまでも眺めていたくなるほど。
続く客間は、暖炉を中央に配置した洋館の造りで、昭和初期のレトロ感が満載！
扉や柱に波打つように施された模様は、工具の一種である釿（ちょうな）を使ったもの。当時の職人たちの技が光ります。
「玉姫」に隣接する「玉渓」も、基本的には洋風の造りですが、ところどころに和のエッセンスが入り混じった空間が広がっています。貝を使用した装飾など、レトロで愛らしい雰囲気がたっぷりです。
ローマ風浴室のある「金剛」もお見逃しなく。昭和4年（1929）に建てられた浴室は、ステンドグラスの窓から燦々と陽が入る贅沢な空間。浴槽は、滑り止めも兼ねたという木製タイルで囲まれています。
オーナーそれぞれの趣味趣向が反映された各館は、見ごたえ抜群。お気に入りのスポットを見つけてくださいね。
喫茶室で味わう、レトロな時間と地元名産の茶菓子
盛りだくさんの鑑賞を終えたあとは、フロント近くの喫茶室「やすらぎ」で一服を。 館内の雰囲気をそのままに、レトロ感満載の空間が広がっています。正面の大きな窓からは、庭園を眺めることもできますよ。
お品書きは、お菓子と飲み物がメイン。コーヒー、紅茶、抹茶などの中から、熱海の名前を冠した「熱海紅茶」をいただきました。紅茶には地元の特産品である、柑橘類の橙（だいだい）マーマレードがたっぷりと添えられています。
マーマレードは、ロシアンティー風にスプーンでカップに移して混ぜて飲んでもよし、ストレートティーを飲みながら、お茶うけがわりに食べ進めるのもおすすめです。
「やすらぎ」では、起雲閣ブレンド珈琲とクッキー、もしくは、抹茶と和菓子のセットメニューも人気です。クッキーと和菓子は、地元・熱海のお菓子屋さんのもの。お菓子は月ごとに変わるので、何度訪れても飽きることがありません。
大正から昭和、そして現代へと、時代を越えた美しさが引き継がれてきた「起雲閣」には、みどころがたくさん。週末トリップで、訪れてみてはいかがでしょうか。
■起雲閣（きうんかく）
住所：静岡県熱海市昭和町4-2
TEL：0557-86-3101
時間：9～17時（最終入館16時30分）
定休日：水曜（祝日の場合および梅まつり期間中は開館）
料金：入館料大人610円
Text：横畠花歩
Photo：森島吉直（しずおかオンライン）
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