【静岡・伊東】レトロ喫茶と和の伝統美。「東海館」で、温泉街の情緒と昭和の名建築にふれる
古きよき温泉街の面影が残る街、静岡県・伊東。JR伊東駅から徒歩8分の「東海館」は、昭和3年(1928)創業の旧旅館です。現在は観光施設の一つとして一般公開されている、伊東温泉のランドマークを訪れてきました。
伊東の温泉街を象徴する旧旅館「東海館」へ
古くから観光地として親しまれ、伊豆屈指の温泉街である伊東。街を流れる川沿いを歩けば、昭和時代の面影を色濃く残した光景が広がっています。
川沿いに立ち並ぶ建物のなかでも、一際存在感を放つ「東海館」が見えてきました。昭和3年(1928)に旅館として創業、伊東温泉を訪れる人たちを迎えた立派な玄関は、宿が辿ってきた歴史の重みを伝えているようです。
平成9年に旅館としての営みを終えた東海館。現在は観光施設として公開され、館内の見学に加えて、土・日曜、祝日は日帰り入浴ができます。
温泉は唐獅子が中央に鎮座する「大浴場」と、タコが踊る湯口の「小浴場」があり、時間帯によって男湯と女湯が入れ替わります。敷地内から沸いている温泉はアルカリ性単純泉で、老若男女に好まれる、柔らかな肌触り。
受付でタオルを購入できるので、手ぶらで気軽に立ち寄れます。
職人たちが技を競った、和の伝統美にふれる
玄関を入り受付を済ませたら、早速館内を見学しに行きましょう。入口にある中庭には、国内各地から集めたという大きな石が置かれています。縁起がよい亀の姿を模した大石を、ぜひ目を凝らして観察してみてくださいね。
東海館は、創業者の稲葉安太郎が材木商であったことから、高級木材や珍しい形の変木(へんぼく)がふんだんに使用された3階建ての旅館です。3人の棟梁たちが各階を担当し技を競ったと言われており、廊下や各部屋の入口部分にも、それぞれの個性が表れています。
部屋に入ると、欄間(らんま)や障子、飾り窓などに細やかな装飾が施されていることに驚きます。その細工は、鶴が舞うものや帆が走るもの、勝利と豊かさを表す千鳥文様などさまざま。
夕日が差し込む時間帯に訪れると、生まれた影によって壁に描かれる小さな雀の姿なども見ることができます。ぜひ自分のお気に入りのスポットを見つけてみてくださいね。
伊東にまつわる要人の展示スペースが設けられた2階では、伊豆高原にアトリエを構える彫刻家・重岡健治さんの展示室もあります。作品は実際に手で触れることができるので、指先で質感を堪能しましょう。
3階窓際の部屋の窓からは、川沿いの風景を見下ろすことができます。椅子に腰掛け、のんびりと時間が流れるのを感じてみましょう。本を持参して読書をするのもおすすめです。
旅館当時、毎夜宴会が繰り広げられたという大広間は、120畳という圧巻の空間!舞台や室内のきらびやかな装飾から、芸妓が唄い踊った当時の様子が目に浮かぶようでした。
最上階には、伊東の街並みを見下ろすことができる望楼があるので、こちらもお見逃しなく。
川を眺める和風喫茶室で、昭和レトロなカフェタイム
見ごたえたっぷりの館内見学を終えたら、1階の喫茶室で休憩を。畳敷きの席か、窓際のソファ席を選ぶことができます。抹茶や甘味のほか、おそばや干物定食などの軽食メニューがあり、受付でチケットを購入して注文を行うシステムです。
窓際のソファ席からは川を見ることができ、座り心地のよいソファのおかげで、ついつい根っこが生えてしまいそう!
期待を裏切らないビジュアルの「クリームソーダ」は、さくらんぼにバニラアイス、そしてホイップクリームで飾り付けがされています。可愛らしい見た目が、和風喫茶室の雰囲気にぴったり!
ちょうど小腹が空いたので、甘味メニューのなかから「あんみつ」をいただくことにしました。なんと嬉しいお茶付きです。自家製の寒天にのっているのは、こしあん、バニラアイス、みかんや黄桃など。どこか懐かしさのある甘さが、身体に染み渡ります。
まるで時が止まったような空間が広がる東海館は、夜も雰囲気抜群。20時まで入館できるので、お風呂上がりに下駄を鳴らしながら訪れるのも風情があります。
地元の人に愛され、訪れる人々を魅了する街のランドマークは、一見の価値ありです。
■東海館(とうかいかん)
住所:静岡県伊東市東松原町12-10
TEL:0557-36-2004
時間:9~21時(喫茶室は10~17時、日帰り入浴は土・日曜、祝日のみ)
定休日:第3火曜(祝日の場合は翌日)、1月1日
料金:入館料200円、入浴料大人500円
Text:横畠花歩
Photo:森島吉直(しずおかオンライン)
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