火山が生んだ雄大な大地と海!古民家に泊まって一夜干し体験やクルージング、魚介豊富なイタリアンなど隠岐ジオパークを満喫する旅【B&Bあとど(島根県 海士町)】
日本海に浮かぶ4つの有人島と180余りの無人島からなる隠岐諸島は、ほぼ全域が大山隠岐国立公園に指定されています。世界でたった2つしかないカルデラ湾があり、太古の火山活動で生み出された海岸景観や独自の生態系をもつことから「ユネスコ世界ジオパーク」にも認定。中ノ島の海士(あま)町にたたずむ古民家の宿「B&Bあとど」は、小泉八雲が「鏡のようだ」と称した透明度の高い菱浦湾に面し、フェリー乗り場から徒歩5分とアクセスも便利です。100社以上の神社が点在し、歴史や文化も感じることができる魅力あふれるエリアで、美しい海に囲まれた宿を拠点に、海や山、大自然にふれる旅に出かけましょう。
Summary
鏡のように美しい湾に面した宿で
港町の緩やかな暮らしを体感して!
B&Bあとど(宿泊)
まるで実家に帰ってきたような懐かしさを感じる外観の「B&Bあとど」。菱浦湾の目の前に立つ古民家をリノベーションした宿です。中は客室が並ぶ清潔でモダンな造り。宿にスタッフは常駐しませんが、フェリーを降りてすぐの海士町観光協会(菱浦港 キンニャモニャセンター1F)でチェックインの手続きやルームキーの受け取りができ、荷物も預けられるので、島に着いてすぐに海や山に出かけられます。商店や飲食店も徒歩圏内の場所にあり、門限もありません。自宅のような使い勝手のよさが◎。
写真の「HARBORVIEW SINGLE(ハーバービューシングル)」は海が一望できる客室。ブラウンベースのモダンな洋室で、全室にトイレとシャワールーム、Wi-Fiを完備。今治製のバスタオルや部屋着、歯ブラシなどのアメニティも揃っていて、快適に過ごせます。シングル5部屋にツインが1部屋となっているので、ひとり旅や、島に滞在しながらリモートワークという使い方にもぴったり。窓から外を眺めて、港町気分を満喫しましょう。
室内には、サザエや隠岐牛など島の風物を描いたオリジナルのルームプレートや漁火のランプを使った照明など、あちこちに海士町らしい意匠がちりばめられています。
共有スペースのダイニングの天井もその一つ。しゃもじを持って踊る様子を表した木彫りの飾りは、海士町発祥の隠岐民謡「きんにゃもにゃ」を表現したもの。見ているだけでなんだか楽しい気分になってきます。
エントランスには隠岐の自然や人、歴史に関する本をはじめ、雑誌やジオパークの資料が揃っています。実はこのスペースは海士町の町立図書館のコーナーで、本は客室に持って行って読むことができます。海士町では島のさまざまな場所に本を置く「島まるごと図書館」というプロジェクトを進めているので、島内の立ち寄った先でも本との出合いが待っているかもしれません。
朝食はチェックインの時に希望の時間を伝えておきます。地元で育てたコシヒカリ「海士の本氣米」を炊いたツヤツヤのご飯に、温かい味噌汁など、宿のキッチンで作られた、できたての朝食がいただけます。海士町は離島では珍しく湧き水が豊富なため、稲作が盛んで、お米の味もとてもおいしいんです。ご飯のお供は、隠岐の郷土料理であるシマメ(イカの醬油漬け)など3種の惣菜。惣菜は日替わりなので、連泊でも飽きません。食べるとほっこりする朝ごはんで、旅のエネルギーを充填して。
朝食は共有スペースのダイニングでいただきます。ご飯のおかわりもできますし、ドリップコーヒーなどのドリンクを1杯無料で飲むことができます。朝食以外の時間帯でも、ダイニングにはドリップコーヒーやカフェオレなど豊富なドリンク類が用意されていて、ちょっとしたブレイクタイムにも便利です(各100円)。
■B&Bあとど
住所:島根県隠岐郡海士町福井968-5
交通:菱浦港旅客船ターミナルから徒歩約5分
チェックイン:12時30分~18時30分(時期により変動)
チェックアウト:10時
料金:1泊1食付き9000円~(1名利用時)
※チェックイン手続きは海士町観光協会にて(菱浦港キンニャモニャセンター1F)
4月1日~8月31日は12時30分~18時45分、9月1日~3月31日は12時30分~17時30分
※高速船レインボージェットで来島する場合は、公式サイトからの予約時に「その他・宿泊施設からの質問」の欄に、その旨ご記入ください。
話題のジオホテルで
島々の歴史にふれるひとときを
Geo Lounge/Geo Room“Discover”(体験)
2021年にリニューアルオープンして大きな反響を生んだ「Entô(えんとう)」は、日本初の本格的なジオホテルです。訪れたのはリニューアルで誕生した別館1階にある「Geo Lounge」。大きな窓で切り取られた海が額縁で縁取られた絵画のように美しく、心を打つ空間です。アンモナイトなどの古生物の化石も展示されていて、圧巻のジオ・スケープや悠久の時を感じる化石に囲まれているうちに、地球や大自然への畏敬の念が静かに湧いてきます。
海士町がある中ノ島や、西ノ島、知夫里島(ちぶりじま)の島前エリア3島をテーマにした無料の展示室「Geo Room“Discover”」を併設。
何億年もかけて変化を続けてきた大地や島々の成り立ち、その大地の上に育まれた不思議な生態系や、今日まで受け継がれてきた人々の営み……。貴重な地質遺産にふれることができるジオパークは、知的好奇心を満たしてくれます。
島に生きる動植物の生態や島の貴重な地質や独特の景観などを立体的に説明しているコーナーも見ごたえがあります。旅の始まりに島のことをインプットするもよし、旅の終わりに理解と知識を深めるもよし。「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」は、海士町がある中ノ島を含め、4つの有人島と多数の無人島によって構成されています。ここからさらにほかの島へ、アイランドホッピングしてジオパークの魅力を満喫しにいきましょう。
■Geo Lounge/Geo Room“Discover”
住所:島根県隠岐郡海士町福井1375-1 Entô内
TEL:08514-2-2365
交通:菱浦港旅客船ターミナルから徒歩約3分
営業時間:6~22時(スタッフ常駐時間:9時30分~17時)
定休日:火曜(解説員不在だが、観覧は自由)、ほかホテル休館日など不定休
料金:入館無料
水平線に沈む夕日、のぼる朝日!
船上で見る星空は圧巻
隠岐島前クルージング(体験)
海の上から「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」を堪能できる「隠岐島前クルージング」は、滞在中に体験したいことの一つ。菱浦港から出港し、「サンライズ」「サンセット」「星空」と3つのクルージングが用意されています。特に人気なのは「サンセットクルージング」。隠岐らしい島々の陰に、空や海を染めながら水平線に沈んでいく夕日は忘れられない景色になります。ちなみに海士町の陸地では、ほかの島にさえぎられて、水平線に落ちる夕日を眺めることができません(写真はサンセットクルージング)。海の上だからこそ味わえる絶景です。
「サンライズクルージング」はまだ暗いうちに港を出港し、明屋海岸の沖の辺りへ向かう早朝クルージングです。段々と明るくなるにつれ、暗闇から島々が浮かび上がるようにはっきりと見えてくる光景は神秘的。一日の始まりに感謝したくなるような、清々しい体験が待っています。
また、陸地では見られない星空を眺められる「星空クルージング」もおすすめ。真っ暗な海の上はまさしく真の闇。そのため、晴れた日は流れ星がほぼ見られるそうで、降るような星空が天上に広がり、幻想的な雰囲気を醸し出します。「星がくっきり見えるので、どこかで流れ星が観察できる」と船長さん。運がよければキラキラ光る夜光虫や、漁火など海上の輝きも楽しめます。
■隠岐島前クルージング(海士町観光協会)
住所:海士町菱浦港岸壁(詳細は受付時に通知)
TEL:050-1807-2689(島ファクトリー)
交通:菱浦港旅客船ターミナルから徒歩すぐ
営業時間:9~17時
定休日:無休(催行人数1~6名)
料金:サンライズクルージング(約45分)2万5000円(1グループ)、サンセットクルージング(約1時間15分)3万円(1グループ)、星空クルージング(約45分)2万5000円(1グループ)
※予約確定後でも、天候不良により欠航になる場合があります
※予約は乗船日の2日前までの受付となります
漁師さんとイカをさばく!
「しぃしび」作りに挑戦
一夜干し作り体験(体験)
おみやげとしても大人気の海士町の名産「しぃしび」。「しぃしび」とは一夜干しのことで、島の沖合でとれた立派なイカを漁師さんに教わりながらさばいていきます。
「あら、けっこう上手じゃない」なんてほめられながら、イカの足や内臓を取り除いて開いていきます。思っていたより簡単で何杯でもさばけそう。
イカをさばいたら、目の前の海から汲み上げて減菌した海水にくぐらせ、きれいに洗います。それを専用の機械に吊るし、準備は完了。スイッチを入れると、イカがくるくると回り出し、まるで踊っているよう!スイッチオンの瞬間は、思わず興奮してしまいました。
海を背景にくるくる回るイカの光景は、隠岐ならではの風物詩です。一昼夜回し干ししたイカは、適度に水分が抜けて甘みがアップ。焼いて食べると、自然の塩気がついていて、とても軟らかです。体験した翌日に真空パックにして持ち帰ります。冷凍保存もできるので、隠岐の思い出を家に帰ってからお酒とともに味わうこともできますよ。
■一夜干し作り体験(海士町観光協会)
住所:島根県隠岐郡海士町豊田2-1(海の駅松島)
TEL:050-1807-2689(島ファクトリー)
交通:菱浦港旅客船ターミナルから車で約20分
営業時間:10~15時(夏季は午後の時間帯のみ)
実施期間:8月以外、随時
料金:3300円(3名から受付)
島の豊かな食材がたっぷり!
隠岐諸島初の本格イタリア料理店へ
Italian cafe Radice(食)
東京の有名店やイタリア・フィレンツェで修業を積んだシェフが、地元・海士町に開いた本格イタリアン「Italian cafe Radice(いたりあん かふぇ らでぃーちぇ)」。オープンから10年、観光客はもちろん島の人たちからも支持される名店です。ディナーはコースのみ(要予約)で、隠岐の島の食材をすべての皿に使った「OKIコース」7500円がおすすめ。魚介類中心のコースですが、メインを隠岐牛にチェンジですることもできます(追加料金1800円)。
料理内容は季節によって変わりますが、取材当日のコースの一皿目は「サザエのエスカルゴ風」。プリプリと肉厚のサザエを頬張れば、海の香りが一気に口の中に広がり、アンチョビバターが貝の旨味を引き立てます。
メインは「レンコ鯛のカチュッコ」。本来はイタリア版ブイヤベースといった煮込み料理ですが、「この魚は焼いた方がおいしいから」というシェフのアイデアでレンコ鯛はソテーし、客席で魚介のアツアツ濃厚なスープをかけるスタイルにアレンジ。海士町の魚がよりおいしくなる工夫を凝らした料理は、本場イタリアで学んだシェフの技が光ります。
店はオーナーシェフの桑本千鶴さん(左)と、ソムリエの升田由美子さん(右)が切り盛りしています。おふたりはいとこ同士で、店でのサービスも息ぴったり! レストランのすぐ向かいには桑本さんのご実家の「ファミリーショップくわもと」があり、桑本さんが焼いたパンが販売されることもあるそうなので、立ち寄ってみてください。
■Italian cafe Radice
住所:島根県隠岐郡海士町福井968-1
TEL:08514-2-1278
交通:菱浦港旅客船ターミナルから徒歩約7分
営業時間:18~22時(21時LO) ※カフェ(平日)14~16時、ランチ(土曜のみ)13~16時
定休日:日・月曜
※ディナーは要予約
鮮やかなコントラストに息をのむ
エメラルドグリーンの海と赤い崖
明屋海岸(体験)
中ノ島の北東部に位置する「明屋海岸(あきやかいがん)」は、海士町きっての絶景&ジオスポット。海岸にそそり立つ崖の不思議なほどの赤が、はっと目に飛び込んできます。この大地は約280万年前の火山活動によって作られたそうで、多孔質のスコリアなどの火山物質が崖を赤く見せているのだとか。赤い崖と驚くほど透明度が高いエメラルドグリーンの海のコントラストは、ここだけの貴重な景色。「明屋海岸のスコリア丘」として「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」に指定されています。
海岸沿いはキャンプ場になっていて、トイレやシャワー設備もあり、夏は海水浴も楽しめます。広場には海を眺めるベンチやテーブルも用意されているので、コーヒーやサンドイッチなどを持って行き、フェリーが行き交う海をのんびり眺めながら過ごすのも素敵。
明屋海岸には、中ノ島の神様である宇受賀命(うづかのみこと)神と結婚した女神がお産をしたという伝説が残っています。その産屋とされる場所に「たらい岩」と「屏風岩」があり、「屏風岩」には遊歩道から近づくこともできます。この岩は、ハート型に穴があいた場所があることから「ハート岩」ともよばれ、伝説とハート岩の効果から、幸運や縁結びのパワースポットとして人気。「ハート岩」の恩恵を授かれるように、しっかりとお祈りをして帰りました。
■明屋海岸
住所:島根県隠岐郡海士町豊田73-1
交通:菱浦港旅客船ターミナルから車で約15分
営業時間:散策自由
定休日:散策自由
料金:散策自由
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
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