【富山・石川・福井】日本屈指の酒どころ、北陸三県を日本酒でめぐる旅へ

【富山・石川・福井】日本屈指の酒どころ、北陸三県を日本酒でめぐる旅へ

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2024年3月の北陸新幹線の敦賀延伸まであと1年弱。富山・石川・福井の三県が新幹線で結ばれると、県境に関係なく短時間で行き来すること可能に。北陸を一つのエリアとしてめぐりやすくなり、改めて北陸が注目を集めています。北陸と言えばお酒造りが盛んなエリア。酒蔵の数は三県を合わせると130蔵にも上り、日本屈指の酒どころなのです。各地には多彩な地酒や、お酒にまつわる魅力的な工芸、スポットもたくさん。今回はそのなかでも“日本酒”をテーマにめぐる北陸の旅をご紹介します。

Summary

地酒、肴、器。北陸は日本酒好きにはたまらない魅力がたっぷり

おいしい日本酒造りに必要なのは良質な水とお米、そして冬の厳しい寒さ。立山連峰や白山水系の豊富な水に恵まれ、「五百万石」、「山田錦」などに代表される酒米の生産が盛んな北陸では、古くから多くの酒蔵によって多彩な地酒が作られてきました。北陸は豊かな食文化と伝統工芸が今も受け継がれる地域でもあります。お酒に合う肴や、よりおいしくお酒を飲める酒器など、日本酒好きにはたまらない魅力が北陸には詰まっています。それでは、富山、石川、福井各県のおすすめ日本酒スポットを見ていきましょう。

《富山》食とお酒とアートを楽しめる町、東岩瀬

まず最初は富山県富山市の東岩瀬町。神通川の河口と日本海に面し、北前船の寄港地として江戸から明治時代に栄えた町で、旧北国街道のメインストリート「岩瀬大町・新川町通り」には、北前船の船主である廻船問屋の一つで重要文化財の「森家」をはじめ、明治の面影を残す建物の数々が約500mに渡って立ち並んでいます。近年は歴史的な建物をリノベーションし、富山を代表する銘酒「満寿泉」を造る桝田酒造店を中心に、日本料理やイタリアン、フレンチの飲食店やガラス工芸の工房が入るなど、町全体がお酒、食、アートの町として全国の注目を集めています。

東岩瀬町へは、富山駅から岩瀬浜行のライトレール富山港線に乗って約20分。

《富山》「満寿泉 沙石」で東岩瀬の日本酒を唎酒

岩瀬大町通りを進んだところにある、元廻船問屋だった宮城家の建物をリノベーションした「満寿泉 沙石」は、東岩瀬で明治から続く富山を代表する酒蔵、桝田酒造店の銘酒「満寿泉」の全種類、約100種を唎酒できる日本酒立ち飲みスタイルの店です。
店内は高い天井の下、立ち飲みでお酒を楽しめる大きな一枚板のテーブルと、杉の巨木が迎えてくれます。東岩瀬で制作されるガラス工芸作品なども展示され、さながらギャラリーのよう。

唎酒の楽しみ方は3通り。木桝を220円で購入し、1杯200円~500円のお酒を飲んだ分だけ支払うコースと、15分1000円、または30分2000円で冷蔵庫内のお酒を時間内で自由に唎酒できるコース。30分コースはガラスの器でお酒を楽しめるほか、お水が1本付いてきます。

店内の冷蔵庫にはさまざまな「満寿泉」がずらり。どれから飲もうか迷うのも楽しい時間です。

「満寿泉 沙石」オリジナルの限定酒も販売。左は純米大吟醸を熟成&ブレンドした「Masuizumi」5500円(720ml)、右は富山県産の山田錦(酒米)を使ったオール富山産の純米大吟醸「TOYAMA JAPAN」3850円(720ml)。

■満寿泉 沙石
住所:富山県富山市岩瀬大町93
TEL:080-2962-6683
営業時間:10~17時
定休日:火曜

《富山》日本酒の肴にぴったりの”海の保存食”が揃う「つりや東岩瀬」

富山県氷見市で江戸時代から続く魚問屋「つりや」が東岩瀬にオープンしたショップ「つりや東岩瀬」。厳選された素材を、素干しや燻製、オイル漬けなどに丁寧に加工した”海の保存食”は、日本酒のアテにぴったり。診療所だった昭和初期の建物をリノベーションした店内には、お酒好きにはたまらない肴たちが並びます。

左から「白えび素干し」710円、「カキ燻製オイル漬け」770円、ほたるいか素干し(酒粕漬け)740円。店舗の2Fは1日1組限定の宿泊施設。食とお酒を満喫しながら東岩瀬をめぐる拠点として人気です。

■つりや 東岩瀬
住所:富山県富山市東岩瀬町120
TEL:076-471-7877
営業時間:10~18時
定休日:無休

《富山》圧巻の酒ライブラリー「酒商 田尻本店」でお酒選び

重要文化財に指定されている廻船問屋「森家」の近くに、森家の土蔵だった場所をリノベーションした酒店「酒商 田尻本店」があります。レトロな三輪自動車ダイハツミゼットが目印。

お店に入ると、目に飛び込んでくるのは店内の半分を占めるガラス張りのセラー。外から見てもわかる圧巻の品揃えに胸が高鳴ります。

セラーの中に入る前に、商品にぶつからないように荷物はクラシカルなロッカーへ。アトラクションに乗る前のようなワクワク感。

いよいよセラーの中へ。天井近くまでずらりと並ぶ膨大な数のお酒は圧巻の一言。まるで図書館のようなセラー内は、お酒の保管に適した13度に保たれています。日本酒は北陸の地酒を中心に揃えるほか、焼酎や世界各地のワインも揃っています。

なんと言ってもすごいのは地元東岩瀬で造られる「満寿泉」の品揃え。大吟醸の古酒が醸造年ごとに並んでおり、一番古いものは1992年のもの。セラーの中で今も熟成が続いています。

セラー内の棚のあちこちには、店主さんによるPOPが。お酒の豆知識からおすすめのコメントまで、見ているだけで楽しい気分になります。数が多くて迷ってしまったときは、店主さんに相談してみましょう。

■酒商 田尻本店
住所:富山県富山市東岩瀬町102
TEL:076-437-9674
営業時間:10~19時(日曜は~18時)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)

《石川》森山大道の写真で埋め尽くされた「Lip Bar」で日本酒を楽しむ

© Daido Moriyama
© Daido Moriyama

続いては石川県へ。歴史と伝統文化が育まれてきた北陸随一の都市、金沢は、金沢21世紀美術館をはじめとして、国内屈指の現代アートと親しめる街でもあります。金沢市街に複数の展示室が点在し、街を歩きながら現代アートに出合える美術館『KAMU kanazawa』の一つ『KAMU L』では、ストリートスナップの名手として都市の路上を撮り続ける世界的な写真家、森山大道の唇の写真を内装に貼りめぐらせた作品「Lip Bar」が、コロナ禍で休止していた夜間のバー営業を2023年4月末~5月上旬より再開予定です。

© Daido Moriyama
© Daido Moriyama

「Lip Bar」では、金沢で最も歴史のある酒蔵「福光屋」による森山大道をオマージュした日本酒「Lip <Junmai>」を楽しめます。瓶のラベルには「Lip Bar」と同じ唇の写真を採用。バーを包む無数の唇と同じく、写真が複製を繰り返しプロダクトとして世界に拡散していくのを目の当たりにできる、刺激的な夜になるでしょう。

■Lip Bar(『KAMU L』)
住所:石川県金沢市片町2-23-6 とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO 1F
営業時間:21~26時(予定)(『KAMU kanazawa』の全スペース共通チケットは不要)
定休日:日曜(予定)
URL:https://www.ka-mu.com/

《石川》金沢のネオン街とアートが融合する「金沢新天地」

© Daido Moriyama
© Daido Moriyama
「Lip Bar」にほど近い、昭和の香りを色濃く残す金沢随一の繁華街「金沢新天地」では、飲食店のネオンに森山大道の写真作品が入り混じる作品《Brightness/Contrast》が屋外展示されています。個性的な飲食店が連なるネオンサインたちの中に、ライトボックスに森山大道のモノクロ写真が浮かび上がっています。
© Daido Moriyama
© Daido Moriyama
新天地に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がるネオンサインと写真からなる光景は、思わず歓声を上げてしまうほどのインパクト。展示されているのは森山大道の代表的な作品《三沢の犬》など、強い印象を残す写真が夜の街を照らしています。初めて森山作品を見る人にとっても忘れられない体験になりそうです。
「金沢新天地」には50軒を超える居酒屋やバーなどの飲食店が集まっています。ネオンとアートの融合を楽しんだ後は、好みのお店を探しながら路地を歩いてみては。

《福井》えちぜん鉄道に乗って、永平寺の水と風土が詰まった”郷酒”「白龍」の里へ

©えちぜん鉄道
©えちぜん鉄道
福井県吉田郡永平寺町。霊峰白山のふもとを流れる九頭竜川の豊かな水に恵まれた土地には「黒龍」で知られる黒龍酒造を始め、数々の酒蔵がある県内有数の酒どころです。のどかな景色の中を走ることで人気の福井県のローカル私鉄、えちぜん鉄道に乗って福井駅から約35分。越中野中駅近くに、家族経営で営む「白龍」の酒蔵、吉田酒造があります。
©吉田酒造株式会社
©吉田酒造株式会社
吉田酒造の「白龍」の特徴は、酒造りに用いる酒米「山田錦」を栽培から醸造にいたるまで、すべてを永平寺町で、自分たちで手がけるまさに”郷酒”。お酒の一滴一滴に、永平寺町の水と風土が詰まっています。
©吉田酒造株式会社
©吉田酒造株式会社
©吉田酒造株式会社
©吉田酒造株式会社
酒蔵直営のショップは、えちぜん鉄道越中野中駅から歩いて5分ほど。コロナ禍の影響で、試飲は休止中(2023年3月現在)ですが、「白龍」の定番商品から折々に登場する限定酒まで、現地ならではのラインナップを楽しむことができます。旅から戻った後でも、土地の香り、作り手の思いが込められた日本酒を飲めば、永平寺町の思い出が鮮やかに蘇るのも、お酒の大きな魅力ですね。

■吉田酒造
住所:福井県吉田郡永平寺町北島7-22
TEL:0776-64-2015
営業時間:10~17時
定休日:水曜

《福井》越前漆器の酒器で日本酒を楽しむ「丸山久右衛門商店」

おいしいお酒を飲むときは、器にもこだわりたいもの。福井県鯖江市は日本一の眼鏡産地としても有名ですが、福井を代表する「ものづくりの町」として、伝統工芸が盛んな土地でもあります。1500年もの長い歴史をもつ越前漆器は、主に鯖江市河和田町で生産される漆器のこと。漆の落ち着いた美しい光沢と丈夫さは、古くから全国で愛され、人々の生活の一部として溶け込んできました。

©丸山久右衛門商店
©丸山久右衛門商店

河和田町で古くから漆器を生み出してきた老舗、丸山久右衛門商店は、宮内庁御用達の漆器店。日本酒をよりおいしく楽しめる酒器も手がけています。落ち着いた光沢と華やかな朱が美しい「いろらら片口酒器セット(朱)」1万1000円。

©丸山久右衛門商店
©丸山久右衛門商店

直営ショップでは、酒器以外にもさまざまな用途の越前漆器を販売しています。

■丸山久右衛門商店
住所:福井県鯖江市河和田町21−4
TEL:0778-65-0011
営業時間:9~17時
定休日:土・日曜、祝日

日本酒でめぐる北陸の旅、いかがでしたか?北陸各地の歴史、風土、食、アート、そして工芸。多彩で豊かな文化が北陸の人々によって長い年月で育まれ、お酒に込められています。北陸新幹線の延伸でますます訪れやすくなる北陸へ。日本酒との素敵な出合いが待っています。

Text:江本典隆(JTBパブリッシング)
Photo:広瀬久哉・えちぜん鉄道株式会社・吉田酒造株式会社・丸山久右衛門商店

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