南三陸311メモリアル

写真提供:南三陸町

震災伝承施設「南三陸311メモリアル」で震災を知り、防災を学ぼう

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宮城県南三陸町にある「南三陸町東日本大震災伝承館 南三陸311メモリアル」。2011年3月11日に発生した東日本大震災による記憶と教訓を伝えるために設立され、ラーニングプログラムを中心に防災・減災の一助となるコンテンツが提供されています。施設周辺の「南三陸さんさん商店街」や「南三陸町震災復興祈念公園」とあわせて巡りましょう。

Summary

三陸海岸を代表する海の町・南三陸町

南三陸の海

宮城県北東部に位置し、太平洋を望む南三陸町は、東日本大震災によって甚大な被害を受けた町の一つです。

南三陸町の発表(平成30年2月28日現在)によると、死者620人・行方不明者211人にのぼり、全・半壊の建物被害は震災前の世帯数の6割超にも及びました。

被害の多くは津波によるもの。14時46分の地震発生から約36分後には最初の津波が到達し、最終的には宮城県内で最大値となる、約20mの浸水高を記録しました。


2022年10月オープン。震災伝承施設「南三陸311メモリアル」へ

南三陸の道の駅
写真提供:南三陸町

東日本大震災から10年以上の時が経ち、町は少しずつ復興が進み、中心市街地にはBRTのJR志津川駅や観光交流拠点など新たな施設も誕生しました。

2022年10月にオープンしたのは「南三陸町東日本大震災伝承館 南三陸311メモリアル」。

震災伝承施設として登録されており、「南三陸町で起きたこと」を記録展示するほか、住民の証言をもとに「自分ならどうするか?」を問いかけ、いのちを守るための行動を考えるラーニングプログラムを提供しています。

施設は無料と有料のエリアから構成され、メインコンテンツである有料のラーニングプログラムは、公演時刻が決まっており(約1時間に1本)、専用シアターで上映されます。


ラーニングプログラムが始まるまで、まずは「震災の事実」を学ぼう

無料エリアにある展示
天井付近にあるメモリはかさ上げ前の土地から15.5mの高さにあり、町の防災対策庁舎を襲った津波と同じ高さになっている

施設入口からすぐの無料エリアには、過去に周辺地域で起きた震災と津波の記録を立体地図とともに展示しています。

津波は2011年だけでなく、過去に何度も町を襲っていることが分かり、災害は繰り返されるものだと改めて知ることができます。

展示ギャラリー
「あの日」を語る住民の証言映像や震災遺物資料などが展示されるギャラリー

そこから有料エリアに進むと、映像やパネルが展示されるギャラリーへと続きます。ここでは被災した住民のうち約90名から証言を集め、映像に収録したものを視聴可能。防災対策庁舎で被災した役場職員の方など、紡ぎ出されるように語られる住民一人一人からの証言から、震災当時の状況をまざまざと突きつけられます。

クリスチャン・ボルタンスキー『MEMORIAL』2022/写真提供:南三陸町
クリスチャン・ボルタンスキー『MEMORIAL』2022/写真提供:南三陸町

さらに先へ進むと、現代アートの空間が広がります。

こちらはフランスの現代美術家・クリスチャン・ボルタンスキー氏が町の依頼を受けて制作したインスタレーション空間『MEMORIAL(メモリアル)』。ユダヤ系の父を持つ同氏は、幼少期から戦争の話を耳にし、人の死や命、存在をテーマにした作品を世界各地に残しました。

震災直後に実際に被災地を訪れ、インスピレーションを得て作られた作品の世界観を感じ、静かに思いを巡らせてみましょう。

「その時、自分ならどうする?」を考えるラーニングプログラム

ラーニングプログラムの専用シアター
写真提供:南三陸町

ラーニングプログラムは、3面投影型の専用シアターで行われ、2つのプログラム「生死を分けた避難」と「そのとき命が守れるか」から選ぶことができます(交互に上映)。通常の60分のほかショート版の30分もあり、公式ホームページから事前予約も可能です。

プログラムは「もし自分がそこにいたら、どう考えどう行動するか」を考える場。ただ震災の実情を知って終わるのではなく、自分ごととして捉え、もし自分に災害の危機が訪れた時に「いのち」を守るために何ができるのかを考えることが大切です。

そのため、映像を通してさまざまな問いと1分間の対話の時間が設けられており、シアターは参加者同士が話しやすいよう椅子がランダムに配置されています。

プログラムで配られる防災ミニブック
プログラムで配られる防災ミニブック

例えば「万が一避難場所が使えなくなってしまったら、次に向かう安全な場所はどこか?そこにたどり着くまでに問題になりそうなことは?」という問い。

参加者は住んでいる場所も、家族の状況も、みんなバラバラ。マンションやビルが立ち並ぶような大都市に住んでいる人は、逃げている間に窓ガラスが破損して降ってくるかもしれない、人が多いから通信状況が悪くなるかもしれない、などの意見も。

また地方の田舎に住んでいる人は、周りに高いところがないのでより内陸の方へ向かいたいが、車がないと移動が大変。道も少ないので道路が混雑するかも、といった意見が出されていました。

映像では実際に被災した住民たちがあの時、どのように考え、そのような行動を取ったのかが語られ、一瞬の判断がいかに大事なのかを思い知らされます。

プログラムで使用した防災ミニブックは持ち帰りOK。防災の知識がまとめられているので、家に帰ってからも振り返りに活用しましょう。

いまを生きる人々の力強さと変わりゆく町の様子を見届けよう

みんなの広場
写真提供:南三陸町

シアターを出ると、「みんなの広場」と題された空間へとつながります。ここは写真家・浅田政志氏と住民がアイデアを出し合いながら制作した「みんなで南三陸」写真プロジェクトを展示しています。

2013年秋から2021年夏にかけて実施されたプロジェクトで、すべての人への感謝と、南三陸町でいまを生きる人々のくじけない心・生きる喜びを伝えています。無料エリアにあるのでラーニングプログラムの前にも見学することが可能です。

また施設には展望デッキも。外階段をのぼりデッキに出ると、被災当時の姿を残した旧防災対策庁舎や志津川湾、南三陸町震災復興祈念公園を見渡すことができます。

復興が進む町の姿を目に焼き付けながら、あの日のこと、そして失われた命に思いを馳せ、心の中で祈りを捧げましょう。


■南三陸町東日本大震災伝承館 南三陸311メモリアル(みなみさんりくちょうひがしにほんだいしんさいでんしょうかん みなみさんりくさんいちいちめもりある)

住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川五日町200-1
電話:0226-47-2550(南三陸町観光協会)
交通:JR志津川駅からすぐ
時間:9~17時
定休日:火曜(祝日の場合は翌日となる場合あり)
料金:レギュラープログラム(60分)大人1000円ほか、ショートプログラム(30分)大人600円ほか


周辺観光も楽しんで、地域の魅力を知ろう!

南三陸町の中心部
写真提供:南三陸町

南三陸町はこれまでも、これからも、ずっと人々がつながる活気ある町。「南三陸311メモリアル」に訪れたのなら、周辺観光も楽しんで、地域の魅力を感じてみてください。

「南三陸311メモリアル」をはじめ、町中心エリアのグランドデザインは建築家・隈研吾氏によるもの。「南三陸さんさん商店街」や観光交流施設「南三陸ポータルセンター」、交通拠点施設「JR志津川駅」が一体となって「道の駅さんさん南三陸」として新しく生まれ変わりました。

南三陸さんさん商店街/写真提供:南三陸町
南三陸さんさん商店街/写真提供:南三陸町

「南三陸さんさん商店街」は「南三陸311メモリアル」のすぐ目の前。飲食店やおみやげ処28軒が軒を連ねる南三陸町の大型観光施設です。

ここでぜひ味わいたいのが町のブランドグルメ「南三陸キラキラ丼」。海の幸に恵まれた南三陸の新鮮な魚介類をリーズナブルに丼ぶりで提供しています。

キラキラうに丼の一例/写真提供:南三陸町
キラキラうに丼の一例/写真提供:南三陸町

キラキラ丼は、四季に応じた4種類の丼が用意され、特に5月1日〜8月31日ごろ提供予定の「キラキラうに丼」はダントツの1番人気。南三陸産を中心とした無添加・新鮮なウニを贅沢に盛り付けた究極の一杯となっています。

町内で参画する9店舗のうち、「南三陸さんさん商店街」では6店舗で提供されており、各店舗によって値段も提供スタイルも異なります。食べたい一杯を求めてぜひ訪れてみてくださいね。


■南三陸さんさん商店街(みなみさんりくちょうさんさんしょうてんがい)

住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川五日町201-5
電話:0226-25-8903(事務局)
交通:JR志津川駅からすぐ
時間:店舗により異なる
定休日:店舗により異なる


中橋も隈研吾氏が手がけている
中橋も隈研吾氏がデザインを手がけた

また「南三陸311メモリアル」や「南三陸さんさん商店街」から中橋を渡り、川の向こう側へと進むと、「南三陸町震災復興祈念公園」へと続きます。

こちらには東日本大震災によって犠牲になられた方々の名簿を納める「名簿安置の碑」や、町の復興を祈念して作られた「復興祈念のテラス」が設置される祈りの丘などがあります。

奥に見える赤い鉄骨の建物が旧防災対策庁舎
奥に見える赤い鉄骨の建物が旧防災対策庁舎

祈りの丘には「高さのみち」と名付けられた歩道があり、これは志津川地区の市街地に襲来した津波の平均高さ16.5mと同じ。目線の先には43人が犠牲となった旧防災対策庁舎が見え、この高さでも安全ではなかったということを身をもって体感できます。

旧防災対策庁舎は震災遺構として当時のまま保存されており、津波によって剥き出しになり、ひしゃげた鉄骨の様子などを間近で見ることもできます。津波の脅威をこの目で確かめてみましょう。


■南三陸震災復興祈念公園(みなみさんりくちょうしんさいふっこうきねんこうえん)

住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川塩入地内
電話:0226-46-1377(南三陸町建設課)
交通:JR志津川駅から徒歩5分
時間:散策自由
定休日:散策自由


旧防災対策庁舎
写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

南三陸観光協会では、語り部ガイドも実施しています(通年、料金:1名7000円、2名(一人につき)3500円※人数により料金は変動、申込は公式予約サイト「みなたび」https://minatabi.good-travel.info/ へ)。震災当時の話を直接体験者から聞けることは大変貴重な機会であり、また震災に対する学びもより深まるのでぜひ申し込んでみましょう。

日本全国では、今後もいつどこで災害が起こるかは予測できません。自分や大切な人のいのちを守るため、いまできることは学び、備えることです。南三陸町を訪れ、多くのものを吸収してこれからの生活に生かしていきましょう。

Text:ジェンティーレ恵

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