【おとなのソロ部】「東京国立近代美術館」の対話する所蔵品ガイドにひとりで参加してみた!アートを感じて自由に語ろう♪
ひとりでも気軽に出かけやすいスポットといえば、美術館を思い浮かべませんか?想像力を膨らませながらアートと向き合う、自分だけの時間を過ごせますが、解説ばかり見ていたり、何を表現している作品なんだろう…とわからないまま終わってしまうことも。そこで、対話を交えて作品を深掘りしていく所蔵品ガイドを行う「東京国立近代美術館(通称:MOMAT)」へ訪れてみました。感じたことを自由に語ることでアート鑑賞がもっと楽しくなりそう!
Summary
「東京国立近代美術館」って、どんな美術館?
地下鉄竹橋駅から徒歩すぐ、皇居東御苑近くにある「東京国立近代美術館」は日本初の国立美術館。19世紀末以降の近現代美術作品を1万3000点以上所蔵していて、コレクションのなかには横山大観、川合玉堂など日本を代表する美術作家の国指定重要文化財の作品も。これらのコレクションは所蔵作品展「MOMATコレクション」にて、年5回ほど入れ替えながら常時約200点が展示されています。
今回参加する所蔵作品展「MOMATコレクション」の所蔵品ガイドは、約1時間ほどの対話を交えたギャラリートークで、火・木・土曜の14時と15時の1日2回開催。MOMATガイドスタッフがテーマを考え、それに合った3つの作品をじっくり鑑賞して回ります。訪れた2023年3月30日(木)のテーマは「春・らんまん」と「創造する女性たち」。桜が満開だった季節に合わせて「春・らんまん」に参加することにしました。
※2023年5月23日(火)より開館日に毎日14時〜1回開催(定員なし)に変更
13時から1階エントランスにあるインフォメーションカウンターで両回の整理券が配布されます。定員は5名程度、先着順となっています。所蔵品ガイドは無料ですが、「MOMATコレクション」の観覧チケットは必要なので、先に購入しましょう。2023年5月23日(火)以降は定員制ではなくなるので、より気軽に参加できます。
「MOMATコレクション」の“対話を交えた所蔵品ガイド”がスタート
1階エントランスの「所蔵品ガイド」と書かれた場所に集合します。参加者が揃い、MOMATガイドスタッフが挨拶した後にいよいよスタートします。
ガイドスタッフが選ぶ3つのアート作品を鑑賞&語り合う
まずは4階に展示されているこちらの作品。「作品タイトルや展示横の解説は見ずに、この絵画の第一印象を教えてください」と、MOMATガイドスタッフ(以下ガイドさん)から問いかけが。私は「オリエンタルな雰囲気で女性が着ている中国服が素敵だなぁ」という印象を抱きました。ほかの参加者も「洋服がかわいい」「華やか」「おしゃれをしてる」「女性の服と花とテーブルが落ち着いた色でまとまっている」など女性の身なりに注目がいきます。次に女性の人物像についてどう思うか。「女優?」「実業家なのでは?」「アジア系の裕福な女性」、さらに「左手の薬指に指輪をしているから既婚者」と鋭い分析をする人もいておもしろい!
「絵の中心にある小瓶が気になりませんか?これは何でしょう?」というガイドさんからの問いかけに、女性の服装ばかり見ていた私は小瓶について何も考えずにいたため、慌てました。「えっと…香水?でも机の上に香水だけ置くのはちょっとへんかな…。まさか毒!?」この小さな瓶は「鼻煙壷(びえんこ)」という嗅ぎ煙草入れとのことでした。
さまざまな意見が飛び交うなか、ここでこの作品が藤島武二作『匂い』(1915年)であることが明かされます。この作品は目に見えない、鼻煙壷や花の“匂い”をテーマにした作品。藤島武二はパリやイタリアへ渡り、ポスト印象派の影響を受けて帰国。中国服に魅せられ、数十着もコレクションにしていたそうで、日本で初めて中国服の女性像を描いたといわれています。女性の服装と作品全体の色味からオリエンタルな香りを想像すると同時に、一瞬にしてその想像した香りが消え去る儚さも感じられました。
作品を見て、思ったことを発言する楽しみを感じつつ、次へ向かいます。次の作品は、4つの着色ブロンズ像が正方形の台座の上に置かれた不思議な彫刻。「ブロンズ像の曲線がきれい」「地面がでこぼこしている」「ひとつだけ穴が空いているのが気になる」「どこから鑑賞するのがいいのか」「まるで人が集まっているみたい」と、参加者それぞれの着眼点とそこから生まれるコニュニケーションが新鮮で、謎解きをしていくような感覚になります。
こちらはモダニズム彫刻の先駆者といわれるイギリスの芸術家、バーバラ・ヘップワースの『待っている四人』(1968年)。風景を写し込む隣り合う人の姿、作品の特徴でもある空洞、そして何を待っているのか考えが膨らむ作品でした。作品の写真は残念ながら掲載できないので、ぜひ美術館で!
最後は3階に展示されているこの作品。「屏風絵なので古典画かと思った」「花が団子みたい!」「ピンク色のなかに白が混じっているのはなぜだろう」「花の色が鮮明!桜?梅?」「幹まで黒いドットがある」「花の後ろの丸はなんだろう?」と思ったことをどんどん言葉にして参加者同士で語り合うことで、作品への関心度が高まっていきます。
油彩画を学びながらも琳派の絵画に感銘を受け、日本画に転向した画家・船田玉樹氏の四曲一双の屏風『花の夕』(1938年)。古典的な表現と実験的描法を取り入れた日本画のアヴァンギャルドとして注目されています。
花木は紅梅といわれていて、後ろにある丸い物体は満月なのだとか。ドットのような花は枝も含めひとつひとつ筆で描いてから色を付けています。鮮やかなマゼンタピンクはドイツ製のコチニール色素を使用。風景画を得意とし、群れることを嫌った画家が描く1本の大木は屏風によって立体的に感じられます。
※『花の夕』は、春にちなんだ作品が見られる毎年恒例の催し「美術館の春まつり」に合わせて展示されます(2023年の「美術館の春まつり」は終了しましたが、『花の夕』は2023年5月14日(日)まで展示中)。
ミュージアムショップでグッズのチェックも忘れずに!
所蔵品ガイドを楽しんだ後は、ミュージアムショップへ!所蔵作品をモチーフにしたオリジナルグッズや美術関連書など、さまざまなアートグッズを販売しているので、記念にいかが?
おすすめグッズをピックアップ。まずは近代日本のグラフィックデザイナー・杉浦非水のデザイン絵はがき。大正ロマンを感じられるレトロモダンなデザインは、つい手に取りたくなるかわいさです。
大正期に活躍したシュールレアリスムの代表的な男性洋画家・古賀春江の『海』に描かれている水着の女性をモチーフにした手ぬぐい。昔ながらの注染(ちゅうせん)染めで製作されたこだわりの品です。
近代日本画の巨匠・横山大観の画巻超大作『生々流転』がマスキングテープに変身。一滴の水が大河になり、最後は飛龍となって天の昇るという、水の一生を描いた全長40mにも及ぶ水墨巻絵物を実寸の20分の1サイズに縮小した、切って使うのがもったいないテープです。
今回、紹介したオリジナルグッズのほかにも、実用的で個性あるデザインのアイテムも多数取り揃っています。観覧チケットがなくても利用できるのもうれしいポイント。
アート鑑賞に正解はない、自由に見て感じたことを発言する楽しさを知ったひとときでした。「東京国立近代美術館」のガイドスタッフは40名以上在籍していて、取り上げるテーマ・作品はガイドさんごとに毎回異なります。これは何度でも参加したくなります!
■所蔵品ガイド
開催日:火・木・土曜(2023年5月23日(火)から開館日に毎日開催)
開催時間:14時〜、15時〜(2023年5月23日(火)から14時〜のみ開催)
料金:無料(要観覧チケット)
ソロ Memo
■おすすめの利用シーン:ひとりでアートと向き合いたいとき、感じたことを言葉で表現してみたいとき
Text:木村秋子(editorial team Flone)
Photo:yoko、写真の一部は東京国立近代美術館
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