【おとなのソロ部】渋谷・富ヶ谷「Letterpress Letters」で活版印刷体験に没頭するひとり時間
インクのかすれやにじみ、凹凸感などのアナログさが“エモい”とジワジワきている活版印刷(英語:レタープレス)。都内でも数少ない活版印刷スタジオ「Letterpress Letters(れたーぷれす れたーず)」で、ひとり参加も多いというワークショップに参加。どんな文字にするか?何色で刷るか?ひとりでこんなにもじっくりとクリエイティブな時間を過ごしたのは、いつぶりでしょう…。あなたもきっとハマる活版印刷の魅力をご紹介します!
Summary
カフェ&ショップも併設する活版印刷スタジオ「Letterpress Letters」とは?
京王井の頭線神泉駅、地下鉄千代田線代々木公園駅から徒歩13分ほどの場所にあるのが、活版印刷スタジオ「Letterpress Letters」。国内でも珍しいヴィンテージの印刷機と活字を使い、ワークショップまたはレンタルで活版印刷を体験できます。
実はこのスタジオの運営やワークショップのトレーナーを務めるのは、現役のデザイナーたち。紙からWebへと急速に情報の発信方法が変わる世の中で、「活版印刷」という歴史や技術を今に伝えたいと、コツコツと印刷機や活字を欧米から集めていたのだとか。
そして、2018年。東京・渋谷の閑静な住宅地、富ヶ谷(とみがや)に「Letterpress Letters」はオープンしました。
スタジオからすぐ近くにカフェ&ショップ「Canteen」を併設するのも、「Letterpress Letters」の特徴の一つ。運営元であるデザイン会社のデザイン力と活版印刷を掛け合わせた、センス抜群のオリジナルアイテムを購入できるのはうれしいですね。
朝8時からオープンしているカフェは、ふらっと立ち寄るご近所さんが多く、とても静かな雰囲気。おすすめは、「コーヒーアメリカーノ」420円と「キャロットケーキ」500円。ショップで活版印刷されたギフトボックスを買い、そこに焼き菓子を詰めて手みやげにするお客さんも多いとか。
欧文だからおもしろい!? 活版印刷の魅力
活版印刷の始まりは、15世紀のヨーロッパ。ドイツのグーテンベルクが活版印刷機を使って聖書を刷ったことにより、印刷技術の一つとして世界中に広がりました。活字を組み合わせた版を作り、そこにインクを塗って、紙へ転写させる活版印刷は、時代とともにさまざまな方式や形状の機械が誕生し、新聞や本、名刺などさまざまな紙媒体を作るのに欠かせない存在になりました。
1970年代に入ると印刷技術のデジタル化が進み、活版印刷や活字は急速に不要の存在に…。「Letterpress Letters」では、このように不要になり廃棄される印刷機や活字をレスキューしたり、欧米のマーケットなどで活字を買い集めたりして、現在では4台の印刷機と140書体以上の活字を揃え、スタジオを運営しています。
最近では、デジタル印刷とは違うアナログ感がたまらない!という若い世代やクリエイターたちに再認識され、ワークショップに参加する人も年々増加中とのこと。国内でもこの新聞紙などの校正刷り用(本番印刷の前に試し刷りするための印刷機)の活版印刷機を使える場所は少なく、1960〜70年代に現役で活躍していた印刷機を使って印刷できるとあり、ネットで調べてわざわざ足を運ぶ人もいるそう。
こちらのスタジオで使う活字は、和文もいくつかありますが、メインは欧文。その理由は、和文より欧文のほうがデザインのし甲斐があって遊べるからだそう。アルファベットは26文字ありますが、「A」「i」「W」「y」などを見るとわかるように横幅が広かったり狭かったり、縦に長かったり、さまざまな形があります。これらをどう組み合わせるかは、版を組む人の腕の見せどころであり、活版印刷の醍醐味でもあるのだとか。
紙と時間がある限り何度も刷れる!ワークショップでポストカード作りに挑戦
■レクチャータイム
いよいよワークショップ「はじめてのレタープレス」1名9900円(定員4名、所要4時間、ポスターサイズ5枚分)がスタート!まずはトレーナーから、活版印刷機や活字についての説明を受けます。このワークショップに参加すると、活版印刷の流れや印刷機の使い方が分かるのでおすすめ。
■シンキングタイム
続いて、シンキングタイム。どんなデザインにしたいか?どんな色にしたいか?30分ほど使ってじっくり考えます。分からないことはトレーナーに相談してみましょう。実際に手を動かす時間が長い方が楽しいので、ポスターやポストカードサイズにどんな言葉を印刷したいか?フレーズの候補を事前に考えておくと、時間を有効利用できますよ。
■活字を拾う
どんなフレーズにするか決まったら、140書体以上がしまってある活字の引き出しの中から、好きな活字を拾っていきます。同じ「A」という文字であっても、書体や文字の大きさがさまざまあるので、どれにしようか悩ましい…。版を組んだときに同じ高さにする必要があるので、高さだけは同じ活字で揃えることがポイントです。
■版を組む
活字を拾ったら、印刷機にセットする版を組んでいきます。文字と文字の間を空けるか空けないか、1行目と2行目を空けるか空けないかなど、ここがデザインセンスの見せどころ。印刷する言葉は、スティーブ・ジョブズがスピーチで語った言葉として有名な「STAY HUNGRY STAY FOOLISH」に。ポストカードにしたいので、細めの書体でコンパクトに組んでみました。
■インク(色)を決める
版を組んだら、地下2階の印刷機があるスペースへ移動。実機を見ながら印刷機の使い方をレクチャーしてもらい、インクの色を決めます。既存のインクをそのまま使用してもいいですし、何色か混ぜて好きな色を作ってもOK。どんな色で刷りたいかトレーナーと相談します。
■印刷機にインクと版をセットする
インクが決まったら、版を印刷機に固定させ、大きなローラーにインクをのせます。スイッチを入れると、みるみるうちにインクがローラーに広がり、こちらもワクワクしてきます!
■紙に刷ってみる
ローラーと版にインクがのったら、いよいよ紙をはさんで印刷してみます!印刷機のレバーが重くずっしりしていて、予想以上に力が必要でした。力が足りないときはトレーナーが手伝ってくれるのでご安心を!
レバーを回して刷り上がりが現れると、今まで感じたことのない感動が!自分の手で印刷するって、こんなにも楽しいなんて知りませんでした。せっかくなので凹凸感も楽しめるように、紙を2枚重ねて刷ってみたら、しっかり凹んでいて、これまた感動。トレーナーに応援されたり、褒められたりして、なんだか子どもに戻った気分で新鮮です。
■色を重ねてみる
既存のインクで刷ったら楽しくなり、もう1色ほかの色を重ねて刷ってみたくなりました。せっかくなので、インクの色も調合してみます。色見本のなかからこの色にしてみたい!とトレーナーに相談すると、トレーナーが調合するインクを用意してくれるので、指示どおりスパチュラで混ぜていくだけ。色の知識がなくても大丈夫!
試し刷りをして作った色の具合を見たり、文字の重なり度合いを試したり。文字を重ねて印刷するには、版を少し組み直す必要がありますが、文字をどう重ねたいかトレーナーに相談すると、そのやり方を丁寧に教えてくれます。
ピンクとブルーがうまく重なるかどうかドキドキしながら、印刷機のレバーを思い切り回します。刷り上がりを見て、トレーナーと一緒に「やったー、成功ですね〜♪」と思わず拍手し合いながら、やっぱりものづくりって楽しいなあと実感するひとときでした。
■印刷機と版を掃除する
最後は、印刷機に5カ所あるローラーと版に付いたインクを全部ふきとって、ワークショップは終了です。楽しい体験をさせてくれた印刷機に感謝の気持ちを、その歴史にリスペクトの気持ちを込めて、しっかり掃除させていただきました。
■断裁して完成!
掃除をしている間に、トレーナーがポストカードサイズに断裁してくれました。スタジオには断裁機もあるので、好きなサイズにカットしたり、角丸に加工したり、いろいろできます。活版印刷のアナログな風合いに妙に愛着がわいて、次はこんなものも印刷してみたい、作ってみたいとクリエイティブな想像が膨らみ続ける4時間でした!
一度体験するとハマる人続出の活版印刷。ワークショップで活版印刷を学んだ後に、印刷機の時間貸しレンタルサービスを利用して、コツコツ通ってカレンダーや名刺などを作る人もいるほどです。自分で作ったポスターやポストカードを額装して、オンリーワンのアート作品を部屋に飾ってみませんか?
■おすすめの利用シーン:ひとりでものづくりを楽しみたいとき、ひとりでワークショップを体験してみたいとき、ひとりでデザインに挑戦してみたいとき
Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平
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