【おとなのソロ部】「香十 銀座本店」で香木の香りを聞く“聞香体験”にソロ参加
アロマキャンドルやお香が好き!という人は多いはず。そんな香り好きな人におすすめしたい、お香にまつわるワークショップをご紹介します。場所は、東京・銀座の老舗お線香・お香専門店「香十 銀座本店(こうじゅう ぎんざほんてん)」。室町時代に“香道”として芸道となり、江戸時代に庶民に広まったという“聞香(もんこう)”をソロ体験してきました!香りを“かぐ”のではなく、“聞く”と表現する日本らしい雅な世界を詳しくレポートします。
天正3年(1575)創業、京都生まれのお線香・お香の専門店
地下鉄東銀座駅から徒歩1分、地下鉄銀座駅から徒歩2分の場所にあるのが、お線香・お香の専門店「香十 銀座本店」です。地上にある入口から階段を降りて、地下1階の店舗へ。
「香十」は、天正3年(1575)に京都で誕生。香りの専門家として、初代は御所御用を務め、二代目は豊臣秀吉公に、四代目は徳川家康公に召されたと伝えられています。その後、八代目が多数の銘香を創り出す名人といわれ、以後、天皇への献上品や茶道界を中心に、「香十」が創り出す練香の名声が高まりました。
創業から450年近くも続く老舗「香十」。現在では銀座本店のほか、東京店、埼玉の浦和店、京都の二寧坂店と店舗を構え、多くの人に愛されています。
歴史あるお線香・お香の専門店ではありますが、オードトワレなど現代の生活にフィットするアイテムも多数取り揃えています。また、今回体験するワークショップ「聞香コース」のように、芸道となった“香道”を今に伝えることも忘れていません。
香木の香りを聞く「聞香」を初体験!
ワークショップ「聞香コース」は、御簾で仕切られた店内の一角で行います。まるでカフェのようなカジュアルな雰囲気。鳥のさえずりが入ったBGMとお香の香りに包まれ、とてもリラックスできます。お買物を楽しむ人たちの話し声も、ほどよいノイズに感じられる心地いい空間です。
まずは、聞香についての歴史や今日鑑賞する香木の紹介、香道具の説明からスタート。仏教とともに伝来したお香が、その後、天皇や上流階級の特別な楽しみとなり、茶道や華道のような芸道となり、江戸時代には庶民が楽しめるまでに裾野を広げていったという歴史の話は、とても興味深かったです!
■灰手前(はいてまえ)
話を聞いた後は、実際に香道具を使った聞香体験がスタート!本式の聞香の手順に則り、灰が入った香炉を整えていく「灰手前」を体験。講師が手本を見せてくれるので、見様見まねで火道具を使いながら、まずは香炉の中に入った灰を山型に整えていきます。
灰をきれいな山型にできたら、聞香などの香席で使用される香炉特有の文様を入れていきます。灰全体を5つの区画に分け、かつ各区画に縞模様を9〜13本入れていくのですが、これが難しい…。普段から香道をたしなんでいる人でも「灰手前」は難しいそうですが、この縞模様の精密さに個性が出るのも醍醐味だとか。
火道具の「銀葉(ぎんよう)はさみ」を使って、灰の頂点に香木を置くための雲母板「銀葉」を乗せたら、本式の聞香で使われる香炉「聞香炉(もんこうろ)」の完成です。
本来はこの灰の中に火をつけた小さな炭・炭団(たどん)を入れ、その上に「銀葉」、香木を乗せて加熱し、その香りを聞きます。本式の「聞香」は数名で香炉を順々に回し、一度に三回だけ香りを聞いて記憶。それを複数回繰り返し、最後にルールに沿ってどの香木だったかを当てるという、雅なゲームなのです。
■香木3種を聞く
「香十 銀座本店」では本式の「聞香」に参加できる「香席体験」も実施していますが、この店内のワークショップでは、よりカジュアルに「聞香」を体験できます。「灰手前」の後は、炭団より熱の調整がしやすい「電子香炉」を使って、実際に香木の香りを聞いてみましょう!
1つ目の香木は「ひば」。日本で生まれたお香専門店での「聞香」なので、日本の木の香りも楽しんでもらおうと、3種の香木のなかに1つ和木がラインアップされています。香木を電子香炉に乗せ温めるのですが、温度調節やどのくらい待てば香りが立ってくるのかなど、講師が丁寧に説明してくれるので安心です。
電子香炉が温まったので、「ひば」の香りを聞いてみます。本式どおりに、香りを吸ったら香炉から顔を少し離して左右どちらかを向き、息を吐きます。本来は灰が入った香炉で香りを聞くため、横を向くのは息を吐いたときに灰が飛び散らないための作法だとか。
香りを聞いた後は、付属のシートにどんな香りだったかをメモします。嗅覚は、5つの味覚「五味」に例えて記憶するそうで、シートに「辛」「甘」「酸」「苦」「鹹」と書かれているので、感じた香りがどのあたりか考えながら丸を付けていきます。
「ひば」は香炉に顔を近付けた瞬間から、森林を思わせるようなさわやかな香りが漂ってきました。今回は青森県産の「ひば」でしたが、産地や樹齢、生育環境などで同じ木でも香りが違うから、おもしろいのだそう。
続いて、2つ目の香木「白檀(びゃくだん)」の香りを聞いてみます。1つ目の「ひば」と違い、香炉を持つ手にしっかり顔を近付けないといけないほど、繊細な香りでした。講師から「ひばは自分から香りを放ってくれるけど、白檀はこちらから香りを探しに行く感じですよね?」と言われ、まさにそのとおり!という香りでした。
本式の「聞香」は一度に3回まで香りを聞く「三息」がルールですが、こちらはカジュアルなワークショップなので、いい香りだなあ〜と思えば、何回でも香りを聞いて楽しむことができます。
最後は、大トリにふさわしい香木「沈香(じんこう)」の香りを聞いてみます。2つ目の「白檀」の繊細さと比べると、リッチで華やかな印象。それでいて嫌味はなく、ずーっと香りを聞いていたい気持ちにさせます。こんなにも小さな香木が香ること、そして香木によって香りの性質が違うことなど、多くの発見と不思議に触れ、あっという間の1時間でした!
お香をもっと身近に♪おすすめの香るおみやげ3選
ワークショップ「聞香コース」で香りへの理解が深まった後は、店内でお買物を楽しみましょう。スタッフに聞いたおすすめ商品を3点ご紹介します。
まず1つ目は、お香の「kojuいろは(5本入)」。お香の定番商品「香十いろは(30本入)」のお試し版で、お香は初めてというビギナーにぴったりの入門的アイテムです。多くの人が3点ほど選んで帰り、次の来店で気に入った香りの30本入りを買って帰るのだとか。沈香や白檀などの香木のほか、金木犀や水仙花など和花の香りも揃っています。
2つ目は、和装や着物に着想を得たオリジナルのオードトワレ「ジュエモン」。和装の衣擦れを思わせる華やかで高級感のある「AYAME」や、皇帝の威厳と落ち着きある温かさを表現した「皇」など、和装をイメージさせる7種の香りがあります。
最後は、ネットのクチコミなどでも話題のカードフレグランス「名私香(めいしこう)」。その名のとおり、名刺入れに忍ばせる匂袋で、名刺がふんわり香り、“私”を香りで伝えてくれるという人気商品です。好きな香りを選び、好きなケースに入れてバッグや引き出しに忍ばせても素敵。こちらを目当てに長年通うファンも少なくありません。
香老舗「香十 銀座本店」での聞香体験、いかがでしたか?香木から直接香りを聞くことは、なかなかできる体験ではありません。店内でカジュアルに本物を体験しながら、その歴史や奥深さに触れられ、ショッピングもできる。ぜいたくすぎるソロスポットでした!
■香十 銀座本店(こうじゅう ぎんざほんてん)
住所:東京都中央区銀座4-9-1 B1
TEL:03-6264-2450
営業時間:11〜19時
定休日:不定休
■「聞香コース」概要
開催時間:15〜16時
開催日:公式サイトの予約ページから要確認
料金:1名3000円(定員3名、所要60分、現金払いのみ可)
※公式サイトの予約ページから要予約。1カ月前から予約開始。
※2023年7月1日(土)〜8月20日(日)はワークショップ休業(2023年8月21日(月)以降の予約は、7月中に予約開始予定)
■おすすめの利用シーン:ひとりで香りを楽しみたいとき、ひとりでワークショップを体験してみたいとき、新しい趣味を見つけたいとき
Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平
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