使う人の生活や心に寄り添うクラフトの
しなやかな文化にふれる
Craft Inn 手〔té〕（宿泊）

クラフトをテーマに、手仕事の美しさや温かみ、その魅力を多角的に伝えてくれる宿があります。それは明治期と昭和初期の歴史的建造物をリノベーションした「Craft Inn 手〔té〕（クラフト イン テ）」。3つの部屋は「藍染め」、「和紙」、「竹細工」がコンセプトになっていて、それぞれ職人たちがもてる技術を余すことなく注ぎ込んだ繊細なクラフトが出迎えてくれます。

フロントで印象的なのは、頭上に浮かぶ幻想的な照明。大小さまざまな提灯をカットし、ランプシェードにアレンジしたもので、懐かしくも新しい、幻想的な空間を生み出しています。テーブルは筑後川の石を使って、左官に作ってもらったという特注品。八女のクラフト文化発展へと寄与した筑後川の歴史が感じられます。

藍染めをテーマにした「藍の部屋」では、久留米絣の織元「藍染絣工房」が大胆に織り上げたタペストリーが印象的です。リネンだけでなく居間の木のテーブルまで藍染めだというから驚き。「ジャパン・ブルー」と称賛された、青よりも一段と深い藍の色が心を落ち着かせてくれます。

「和紙の部屋」（旧丸林本家蔵）は1棟丸ごと貸切りの部屋で、家族連れに人気。八女和紙や名尾和紙を使ったオーナメントや版画のほか、クラフトに関する本を中心に集められた充実のライブラリースペースもあり、時間を忘れて過ごせる豊かな空間です。リビングは2階の寝室まで吹き抜けで開放感たっぷり。

「Craft Inn 手〔té〕」では、クラフトにこだわった部屋作りだけでなく、八女市内の工房をめぐる街歩きや、久留米絣を体験できるような多彩なクラフトツアーも用意されています。一過性の滞在で終わるのではなく、包括的に八女のクラフトを体感してほしいという思いの詰まった企画が目白押し。手仕事のよさを再発見する旅に出かけましょう。

■Craft Inn 手〔té〕
住所：福岡県八女市本町120-1
TEL：0943-25-7577
交通：九州自動車道八女ICから車で約7分
チェックイン：15～18時
チェックアウト：10時
料金：1泊朝食付き2万2200円～（2名1室利用時）

お気に入りの柄を選んで
久留米絣のストール作りに挑戦
下川織物（体験）

せっかく八女に来たので、手仕事のすごみが感じられる体験へ。「Craft Inn 手〔té〕」を通して、久留米絣の織元「下川織物」の工場見学とストール作りに参加することができます。「下川織物」は伝統柄の久留米絣を作り続けるだけでなく、海外のトップブランドとコラボしたり、ラグジュアリーホテルの内装に使われるものをデザインしたりと、革新的に挑戦し続ける織元。時代に合わせて柔軟に変化する久留米絣の可能性に驚かされます。

工場の扉を開けると、ミシンの音を何倍にも大きくしたような音が響きます。ズラリと並ぶのは20台ほどの動力織機。糸が途切れないよう、また、織機に不具合がないよう、目を光らせて微調整を加える職人たちが、その間を通り抜けていきます。

久留米絣は糸の束をあらかじめ染めておき、経糸（たていと）と緯糸（よこいと）を編み上げて複雑な模様を表現します。模様といってもプリントのようにくっきりとした絵柄が現れるわけではありません。「染め」で表現される模様の輪郭は一部がかすれたり、じんわりと揺らいだりしています。しかし、この“ゆるさ”のなかにあるほのぼのとした味わいこそが久留米絣の大きな魅力です。

工場見学の後は、好きな柄の生地を選んでストール作りに挑戦。用意されている久留米絣の生地は300種類以上と目移りしてしまうほどです。選んだ生地を適切な長さにカットしてもらったら、耳を適量ハサミで切り、緯糸を丁寧に抜いていきます。この箇所がストールのフリンジになります。フリンジはストレートのままでも、小さな束にして結んでもOK。自分好みのアレンジを加えて世界でただひとつのストールを作り上げましょう。

■下川織物
住所：福岡県八女市津江1111-2
TEL：0943-22-2427
交通：九州自動車道八女ICから車で約12分
営業時間：下川織物見学と久留米絣ストール作り体験は14時～（土曜は10時～）
定休日：日曜、不定休
料金：下川織物見学と久留米絣ストール作り体験1名7800円
※Craft Inn 手〔té〕予約時に要予約

八女の豊かな日常にふれる宿で
暮らすように過ごす
RITA八女福島（宿泊）

2022年８月にオープンした宿「RITA八女福島」。歴史の風情漂う町並み、昔からの生業を継承して元気よく働く職人たち、おいしいお茶を飲みながら楽しくおしゃべりしている町の人々…何でもないようで、とても豊かな八女の暮らし。その日常にふれ、街に溶け込むように旅をしてほしいという思いから生まれました。

「RITA八女福島」は山の産物を扱っていた旧大坪家だった築100年以上の歴史的建物を改築、再生した宿。釘を使わずに元の建材と新しい建材に凹凸を作ってはめ込む「継手」という伝統工法を多用するなど、大工技術の高さや美しさにふれることができます。

チェックインの際に、フロントに尋ねれば、おいしいお茶屋さんや酒屋さん、体験スポットなどを教えてもらえます。地域の人たちとの交流が加わると、旅の記憶はいっそう鮮やかなものに。

宿泊者に好評なのが、部屋で楽しめる「利き茶体験」のサービス。３種類のシングルオリジンの八女茶「つゆひかり」「おくゆたか」「やぶきた」の飲み比べが楽しめます。甘み、苦味、うま味といった味わいがそれぞれまったく異なることにびっくり。余ったお茶は好みの味にブレンドし、お土産として持ち帰ることも。

部屋のしつらえだけでなく、調度品やアート作品も注目してほしいポイント。「巴（ともえ）」の2階の部屋では、提灯を扱う「伊藤権次郎商店」と久留米絣工房「藍森山」の合作、久留米絣提灯が部屋を灯します。和紙造りの提灯とは一味違った味わいを感じて。

広々とした「九城（くき）」の部屋は土と木の優しい香りが心を穏やかにします。季節によって表情を変える2つの中庭もあり、眺めている時間も贅沢です。さらに、桶職人が作った角の丸い檜風呂もあり、旅の疲れを流してくれます。酒粕や竹炭で作られた洗顔ソープなど、こだわりのアメニティも揃います。

朝食は八女にちなんだ8品目の料理が並ぶ、宿自慢の「八の膳」を。薬膳の考え方を取り入れて作られるメニューは、二十四節気をさらに5日ごとに分けた、七十二候に合わせて考案されています。気候に合わせて変化する体を労り、健康をもたらしてくれる旬の食材を使用しているそうです。食事の時にはぜひ料理人との会話を。「梅雨の時期は体がむくみがち。ジャガイモのように体内の水分の排出を促してくれる野菜がおすすめ」といった具合に、日々の生活に生かせるヒントやアドバイスをもらえます。

■RITA八女福島
住所：福岡県八女市本町13-1
TEL：0943-24-2233
交通：九州自動車道八女ICから車で約8分
チェックイン：15～18時
チェックアウト：10時
料金：1泊朝食付き2万9060円～（2名1室利用時）

とっておきの八女茶を
趣のある歴史的建物のカフェで
八女茶カフェ（食）

日本有数の高級茶の名産地としても知られている八女。観光客と地域住民の交流の場所として活用されている「八女市横町町家交流館」内にある「八女茶カフェ」では、八女茶の歴史や栽培方法などが詳しく学べ、おいしい緑茶の淹れ方も教えてもらえます。

造り酒屋だった江戸末期の建物をリノベーションしたこの施設では、八女福島の町並みの様子や歴史などをパネルで詳しく紹介。町家にも「職人型」と「商人型」があって、窓の数や形状が違うなど、それぞれの特徴を事前に知っておくと、街歩きがさらに趣深いものに。

「八女茶カフェ」の「八女茶伝統本玉露」はお菓子付き。お茶は1煎淹れて終わりではなく、3煎ほど味わえます。1煎目はまろやかな甘みを、2煎目は甘さの後にやってくるすっきりとした渋味、3煎目はさっぱりとした味や香りを堪能。湯呑みと蓋の間からすするように飲むと、お茶の味や香りがダイレクトに伝わってきます。また飲み終わった後、残った茶葉をポン酢に付けて食べることも。丁寧に心を込めて栽培された高級茶葉は食べてもおいしいのです。

■八女茶カフェ（八女市横町町家交流館内）
住所：福岡県八女市本町94
TEL：0943-23-4311
交通：九州自動車道八女ICから車で約8分
営業時間：10～17時
定休日：月曜（祝日の場合は翌日）
料金：八女伝統本玉露体験（和菓子付き）1名1100円

福岡の伝統工芸品がズラリ。
作家の一点ものを見つけよう
うなぎの寝床（体験）

福岡県内に4店舗を経営する「うなぎの寝床」は伝統工芸品を通し、地域文化の魅力を発信しているスポット。その土地らしさがあるもの、ストーリー性があるもの、作り手の思いが伝わるものなどを、福岡県を中心とした日本全国からセレクトし、使い手（生活者）に届けています。どれも日常に寄り添い、彩りを与えてくれるものばかり。実際に触れると手仕事の温もりが感じられます。なかでも「旧寺崎邸」と「旧丸林本家」は、八女福島の地域性が感じられる店づくりでも楽しめるスポットです。

「うなぎの寝床（旧寺崎邸）」では、全国の伝統工芸品を扱っています。かつて商家だった建物を改築した「旧寺崎邸」に食器や調理器具といった台所用品や、生活雑貨、玩具などが並びます。実際に使いたくなるようなワクワクするものがたくさんあり、時間を忘れて見入ってしまいます。

また、「うなぎの寝床（旧寺崎邸）」から徒歩3分ほどの場所にある「うなぎの寝床（旧丸林本家）」では、作業着モンペを現代風にアレンジした200種類以上の「MONPE」1万1000円～を販売。サイズはS 、M、 Lの3つで、種類によっては2L、3Lといった大きなサイズや子ども用のものも。形はシルエットがスタイリッシュな「現代風」と、昔ながらのゆったりとした「ファーマーズ」の2種類を展開しています。

久留米絣の布地のほか、兵庫県の播州織、鹿児島県奄美の泥染、滋賀県の高島ちぢみなど種類も豊富でどれにしようか迷います。生地によって肌触りや履き心地も変わるので、はき比べをしながら自分に似合う一枚を見つけましょう。

■うなぎの寝床
住所：福岡県八女市本町327（旧寺崎邸）、福岡県八女市本町267（旧丸林本家）
TEL：0943-24-8021（旧寺崎邸）、0943-22-3699（旧丸林本家）
交通：九州自動車道八女ICから車で約7分（共通）
営業時間：11～17時
定休日：火・水曜（祝日の場合営業）

豊かな大地のめぐみがたっぷり。
日々の健康と元気を与えてくれる薬膳料理
八女サヘホ（食）

「八女サヘホ」では“食は体を作るもの”という考えのもと、薬膳の考え方や要素を取り入れた「楽ZEN」というスタイルの料理を提供。厳選した季節の食材をたっぷりと使用し、どの料理も彩り鮮やかで目を引きます。

店内はテーブル16席、カウンター4席。築90年の町屋がリノベーションされていて、吊るしランプがどこか懐かしく優しい雰囲気を醸し出しています。
店主の中村忠和さんは2017年に関東からこの地に移住してきました。「これまで八女を訪れる機会が度々あったのですが、その度に“おかえり”と迎えてくれる八女の人々の優しさにひかれて」と笑顔で答えてくれました。

八女郡広川町の農薬不使用の野菜や、八女市上陽町でお茶やハーブを餌にして育てられたうま味の強い豚肉、筑後市でのびのびと育てられた牛肉など、メニューのほとんどは地元で作られた食材が使用されています。県産のオーガニック小麦粉と季節の野菜で作ったスイーツ類も人気。日常的に食べてほしいと、「昼定食」750円（写真はお茶とスイーツのセットは＋350円）など、値段もリーズナブル。モリモリ食べて体の内側から美しく健康になりましょう。

■八女サヘホ
住所：福岡県八女市本町3-1
TEL：0943-41-0103
交通：九州自動車道八女I Cから車で約7分
営業時間：12時～13時30分、15～18時、18時～21時30分（予約のみ）
定休日：日曜、火・水曜ランチとカフェタイム、不定休あり

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。