文学をテーマにした寿司喫茶? 港の見える丘公園の「鮨喫茶すすす」で粋な時間を堪能する
2023年4月に文学×寿司という面白い組合わせの鮨喫茶がオープンしました。その名も「鮨喫茶すすす」。店を構えるのは横浜の観光スポット、港の見える丘公園内にある神奈川県立神奈川近代文学館の1階です。本格寿司が食べられる喫茶店…? 文学をテーマにした寿司…? と情報量が多く、いろいろ気になる「鮨喫茶すすす」。その正体は日本の食文化を大切にする店主の思いが詰まった、新しいカタチの寿司店でした。
港の見える丘公園の最奥にたたずむ
みなとみらい線元町・中華街駅を出て、徒歩約10分。港の見える丘公園を本牧方面へ登っていき、作家・大佛次郎の小説『霧笛』にちなんだ霧笛橋を渡ると神奈川県立神奈川近代文学館が見えてきます。
高低差のある建物の1階に突き出ているように見える窓ガラスが「鮨喫茶すすす」の目印。正面入口は写真のスロープを奥に進んでいった神奈川県立神奈川近代文学館のエントランスからアクセスとなりますが、写真左にあるドアからも入れるそう。不思議な造りの外観からどんな空間が広がっているのかとワクワクします。
寿司店×喫茶店が見事にフュージョンするおしゃれ空間
「鮨喫茶すすす」を手がけるのは店長であり職人の草薙唯さん。料理の世界で自分が表現できるものを、と考えたとき、日本の食文化のひとつであるお寿司に着目。お寿司の専門学校を卒業後、都内の一流江戸前寿司店で修行を積み、2023年4月満を辞して神奈川県立神奈川近代文学館の1階に「鮨喫茶すすす」をオープン。
メニューに名を連ねるのは「岡本かの子の手毬鮨」、「ささめ雪のちらし鮨」2600円、「梶井基次郎のレモンスカッシュ」650円といった個性豊かな料理やドリンク。せっかくさまざまな文学書や資料が展示されている神奈川県立神奈川近代文学館に店を構えるのだから、文学にリンクしたメニューをと考えたのだそうです。
ちなみに店名の「すすす」は𠮷野昇雄氏『鮓・鮨・すし―すしの事典』の頭文字から来ているそう。
店内はテーブル席とカウンター数席といったこぢんまりとした空間ながら、公園側に面している窓際の席からは横浜ベイブリッジまで望めるという好ロケーション。またにぎやかな路面店とは異なり、文学館の中にあるせいか静謐な雰囲気に包まれていて、落ち着いたカフェタイムを過ごせそうな居心地のいい空間が広がっています。
カウンターに目を向ければ、黙々と魚を捌いていく草薙さんの姿が。ここだけ切り取れば見まごうことのない寿司店ですが、アンティーク調のカウンターやバーにありそうなチェアといった一見アンバランスに見えるインテリアが唯一無二の“鮨喫茶”を作り出しています。寿司店と聞いてもどこか緊張感なく過ごせるのは、この絶妙な空間作りにあるのかもしれません。
カウンターに並ぶのは横浜市中央卸売市場から仕入れる新鮮なネタ。養殖のものは使用せず天然物にこだわっているそう。
マストでオーダーしたい!短編小説からインスパイアされた手毬鮨
ころんとした形がかわいらしい「岡本かの子の手毬鮨」は看板メニューのひとつ。これは芸術家・岡本太郎の母であり、歌人・小説家として活躍した岡本かの子の名作短編『鮨』をイメージしたメニューです。
小説後半に、食べ物に難のある子どものために母親が一生懸命寿司を握る場面があり、そんな子どもでも食べられるようにと考案したのがこちらの手毬鮨なのだそう。この日はカツオ、イサキ、ブリ、コハダ、マグロ、煮穴子、甘エビ、玉子に濃厚な赤味噌のお味噌汁。(季節によってネタは変更あり)
自家製の醤油を刷毛で塗っていただくスタイルでいただきます。ほんのりコクを感じる赤酢のシャリはふんわりとした絶妙な握り具合。サイズ感もちょうどよく、思わず次々と口に運んでいきたくなります。口の中でふんわりとろける煮穴子、濃厚で弾けるような身の甘エビ、上にのったすだちがアクセントのイサキなど、どれも絶品であっという間に完食!
お寿司以外のメニューも要チェック!
「この時期にぴったりのメニューがあるんです」と草薙さんが取り出したのがこちらの機械。なんと寿司店ながらかき氷をスタートするとのことで、こちらも紹介させていただけることに。
看板メニューはこちらの「お鮨屋さんのガリ氷」。寿司店には欠かせないガリをかき氷のフレーバーに昇華させたひと品。鮨喫茶ならではの発想に脱帽です…。
ジンジャーとスパイスの特製シロップに、自家製のガリをふんだんにのせたかき氷は甘さ控えめで、さっぱりした後味。お寿司を食べた後にもばっちり合います。またショウガの疲労回復効果も期待でき、夏バテ防止にもなるのがうれしい! ほかには「オリジナルシロップ使用レモン×マスカルポーネ」1200円、「いちごミルク」1300円、「抹茶×もち小豆」1300円といった定番フレーバーも提供予定だそう。(2023年10月まで提供予定。天候により早めに終了の可能性あり)
食後にもおみやげにもおすすめなのがこちらの「柚煎茶」。1888年創業、静岡県牧之原市の茶農園「カネ十農園」から直送した茶葉を使用しています。ほどよく香るゆずがさっぱり飲みやすく、こちらも暑いこの季節におすすめ。店内ではティーバッグも販売しているので、おみやげに購入してみてはいかがでしょうか。
港の見える丘公園の奥にたたずむ「鮨喫茶すすす」。ふらっと訪れて、手軽に本格江戸前寿司が食べられるのはもちろん、港の見える丘公園や神奈川県立神奈川近代文学館を見学した後に休憩するのにもぴったり。今後は握り寿司や企画展に合わせたコラボメニューなども展開予定だそう。もちろん、喫茶のみの利用もOK。緑豊かな空間の中、肩肘はらず粋を感じる本格江戸前寿司を堪能してみてくださいね。
■「鮨喫茶すすす」(すしきっさすすす)
住所:神奈川県横浜市中区山手町110 神奈川県立神奈川近代文学館1階
TEL:090-1186-7884
営業時間:9時30分〜17時(寿司の提供は11〜14時)
定休日:月曜、ほか神奈川県立神奈川近代文学館に準ずる
Text&Photo:Maui Hara
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