【おとなのソロ部】京都の老舗「鍵善良房」プロデュース。ひとりで静かに楽しみたいアートなカフェ「ZEN CAFE」
京都・祇園でおよそ300年の歴史をもつ老舗京菓子店「鍵善良房」が2012年にオープンさせた鍵善のなかでは最も新しいお店「ZEN CAFE(ぜん かふぇ)」。店内は和のテイストを感じる落ち着いた雰囲気で、おひとりさまだからこそ楽しめる特等席もあります。取材時のお話しによると平均おひとりさま率は50%以上、静かにくつろげるカフェを探している方におすすめのお店です。
Summary
祇園町の石畳の路地にひっそりとある「ZEN CAFE」
四条大橋から東へ一筋目、大和大路通を南に入り、1筋目の道を曲がると左手に細い石畳の路地が現れます。街並みさえ風情のあるこの通り沿いに「ZEN CAFE」はあります。
「ZEN CAFE」と向かい合うように立つのは同じ「鍵善良房」が運営する美術館「ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM」。美術品や工芸品の蒐集家であった歴代社長の所持品で、美術的価値の高い作品を紹介する美術館です。カフェの後に、美術館を鑑賞するのも素敵なコースです。
さて、こちらは「ZEN CAFE」の建物の中。壁の文字がなければ、ギャラリーと間違えそうなエントランス。枝物の立派な生花が老舗の貫禄を感じさせます。カフェは1階。2階には器を中心に扱うクラフトのギャラリーショップ「昂 KYOTO」があります。
おひとりさま以外利用不可?な特別な二席
店内に入って、一番に目を引くのは、一枚板のカウンターテーブル。横長に切り取られた窓から見える庭の緑が目にやさしく、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
カウンター席の後ろの壁には、季節に合わせた書や絵が飾られています。
現社長の15代目が、お店のことを自著で「一般に使うには難しい間取り」と評しているのですが、その意味が最もわかるのが奥の部屋への入室を遮るかのような大きな2本の柱。
しかし、この空間を生かしたのが、おひとりさま専用席。スポット照明が手元を照らし、書斎のような雰囲気。革張りのソファに深く腰をおろして、本棚のアート本を眺めたり、読書をしたり。観光シーズンを除けば、地元のおひとりさま率は高く50%以上。向かいの美術館を鑑賞した余韻に浸りながら静かな時間を過ごしているお客さまも多いそうです。
おひとりさま席の壁には、向かいの美術館「ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM」の企画展で取り上げている作家さんの作品が飾られることもあり、アート好きにはたまらない空間です。
注文の呼び出しもハンドベルで。静かな時間を楽しみたいお客さんへの配慮がされています。
「ZEN CAFE」の看板メニュー「くずもち」
さて「ZEN CAFE」の看板メニューといえば、「くずもち」です。一方、鍵善良房の喫茶の看板メニューはくずきり。作りたてのくずきりの、つるっとした喉ごしと歯ごたえを一番いい状態で味わおうと思うと、提供から5分ほどで食べ切るのが理想。ですが「ZEN CAFE」では、ゆったりと過ごす“時間の贅沢”も味わってもらいたいとの思いから、時間がたっても味が変わりにくいくずもちを提供しています。
自家製の黒糖シロップをとろりとかけていただきます。上質な葛でできたぽってりとした餅は舌ざわりがよく、ほどよい軟らかさ。別添えのきな粉も香ばしく、お好みでかけると味の変化を楽しめます。
「お飲み物とセット」で選べるドリンクは、煎茶、ほうじ茶、珈琲、カフェオレ、紅茶のそれぞれホットとアイス。くずもちには珈琲も合うと教えてもらい、この日は珈琲をチョイス。
ぷるんと透明なくずもちの涼しげな姿、ひんやりとした口あたりのよさ、蜜とともに口の中に広がるおいしさに癒やされます。
和菓子職人の鋭敏な味覚が生み出した、別格の「フルーツサンド」
京菓子店がなぜ? と気になったメニューが「フルーツサンド」。実は常連さんの間で人気のメニューです。
使用するパンは、名店「ワルダー」のもの。中のクリームは和菓子職人がその鋭い味覚で、サンドするフルーツに合わせて調合。なんと、そのときどきのフルーツの甘さ(糖度)、みずみずしさに合わせて、クリームの甘さを微調整しているのだそう。
禅の影響で生まれた「わび・さび」の美意識のように慎ましく静かな趣をもちつつ、ひとつひとつは選び抜かれた本物で構成された「ZEN CAFE」。この空間でひとり過ごす時間は、心の洗濯にもなりそうです。
■おすすめの利用シーン:ひとりで本を読みたいとき、美術館でアートにふれ、その余韻に浸りたいとき
■ZEN CAFE(ぜん かふぇ)
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-210
TEL:075-533-8686
営業時間:11~18時(17時30分LO)
定休日:月曜 (祝日の場合は翌日)
アクセス: 京阪祇園四条駅から徒歩5分
Photo: photo scape CORNER.大﨑 俊典
Text:京都ライター事務所 小西尋子
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