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日本三霊山・白山に伝わる伝統菓子と報恩講料理、ジビエや山菜の郷土料理で大自然のパワーを充填する癒やし旅【温泉宿 岩間山荘(石川県 白山市)】

日本三霊山・白山に伝わる伝統菓子と報恩講料理、ジビエや山菜の郷土料理で大自然のパワーを充填する癒やし旅【温泉宿 岩間山荘(石川県 白山市)】

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富士山、立山とともに日本三霊山の一つに数えられる白山。2023年5月には石川県白山市全域が「白山手取川ジオパーク」としてユネスコ世界ジオパークに認定され、注目度が高まっています。白山の中腹にある「温泉宿 岩間山荘」は、猟師のご主人が射止めた熊や猪などの肉を、女将が調理してもてなすマタギの宿。ジビエ以外にも、山菜や木の実など女将が自ら採取した山の幸が宿の食事を彩ります。料理を口に運ぶたびに、豊かな白山のめぐみに感謝する癒やし旅に出かけましょう。

Summary


山での暮らしに精通した女将が
ジビエと山菜でおもてなし

温泉宿 岩間山荘(宿泊)

石川県と岐阜県を結ぶ白山国立公園内のドライブルート「白山白川郷ホワイトロード」。その石川県側の入口からすぐに位置する一里野(いちりの)温泉には、スキー場のゲレンデを囲む宿泊施設「温泉宿 岩間山荘」があります。一里野温泉は、数年前に起きた自然災害で、山奥から引いていた温泉の配管が大きく損傷し、温泉が宿まで届かなくなってしまいました。復旧の目処が立たず当面の間、温泉を楽しむことはできませんが、白山麓の自然を愛する女将が山の魅力を存分に伝えてくれます。

宿に入って最初に目につくのは、ロビーに飾られた2体の熊の剥製。白山麓で猟をするご主人が射止めたものだそうです。「獲物のお肉は、猟の仲間と分け合うの。お父さんが持って帰ってきたお肉を、私がおいしく料理してお客様に食べてもらっています」と女将の北村祐子さん。女将自身も、山歩きのガイドを務める山のスペシャリストで、周辺の森でとった山菜やキノコ、木の実なども一緒に料理してくれます。

お待ちかねの夕食は、女将のおすすめジビエコース。熊肉の料理を中心に、猪のチャーシュー風サラダやニジマスと堅豆腐の刺身など品数も多く、小鉢には、黒豆のなますやふきのとうの佃煮など、素材の味を生かして料理された山の味覚が盛り付けられています。

今回の熊肉料理は、熊のあばらの塩茹でと熊ハンバーグ、熊鍋の3種。熊のあばらの塩茹では、骨からほろっと身が外れ、噛むほどに肉のうま味が広がるものの、後味はさっぱり。一方、熊のハンバーグは、熊肉の脂が木の実のようないい香りがします。そして、熊鍋は、熊の骨から取った出汁の奥深い味わいに驚きます。熊鍋にはアザミの葉が合うそうで、一緒に煮込んだアザミの葉が、特有の香りとちょっとした苦味で熊肉の脂分を流してくれます。

「こうして自然の幸を大切にいただく工夫は、おじいさんやおばあさんから教わった山の暮らしの知恵なんですよ」と女将。白山麓はもともと熊や猿などの動物たちが暮らす場所。この地域では、そこに人間が住まわせてもらい、山の幸をお裾分けしてもらうのだと考えられているそうです。山の動物たちと自然のめぐみをともにする生活が、ここにあります。

食事がひと段落つくと、女将が白山麓に伝わる民話を紙芝居にして、宿泊客に読み聞かせてくれます。この地に伝わる民話の多くは人生の戒めになるような内容が多いそうですが、今回読んでくれたお話は『緑の谷の昔話』というハッピーエンドの物語。女将のやさしい口調に物語の世界観がぴったりで、もっと話を聞いていたいと思うほどでした。

翌日はチェックアウト後、女将に「ガイドと一緒にトレッキング」に連れて行ってもらいました。白山の動植物や地形、歴史をあれこれと教わりながら山を歩くのは気分爽快です。「元気がなくなったらまた山においで。山は元気をくれるよ」。そう言って見送ってくれた女将。山のもたらす不思議な力を証明してくれているような大らかな笑顔が印象的でした。

■温泉宿 岩間山荘
住所:石川県白山市尾添チ81-3
TEL:076-256-7933
交通:北陸自動車道小松ICから車で約50分、またはJR松任駅から車で約1時間
チェックイン:15~24時(チェックインが18時以降の場合、要連絡)
チェックアウト:10時
料金:1泊2食付き 1万800円~(大人2名1泊利用時)、女将のおすすめジビエコース1泊2食付き1万6650円~(大人2名利用時)※入湯税は別途1名150円

■ガイドと一緒にトレッキング
TEL:076-255-5340(ホワイトリング内、白山ろくスローツーリズム研究会)
料金:1名3500円(約2時間、2~10名)※トレッキングポールレンタル料は別途500円、温泉宿 岩間山荘宿泊者以外も参加可


神秘的な力を感じに
霊峰・白山のパワースポットを巡る

白山信仰パワースポットめぐり(体験)

古(いにしえ)より白山は、神の座する霊山として崇められてきた聖地。その白山の麓で、神秘的なパワーが感じられる場所をガイドが案内してくれる「白山信仰パワースポットめぐり」に参加しました。今回、連れて行ってくれるのは地元で約20年間ガイドを務め、白山手取川ジオパーク公認観光ガイドにも認定された磯部雄三さんです。

コースは、全国に三千社ある白山神社の総本宮「白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)」からスタートします。「一の鳥居をくぐってすぐにある結界橋を渡ると神域に入ります」と磯部さん。老杉の並木が続く表参道には清らかなせせらぎの流れる音が響き、歩を進めるごとに心と体が清められるようです。並木の中には、樹齢約800年といわれる夫婦杉があり、根元は一本で幹が二本に分かれています。

「白山比咩神社」の御祭神=白山比咩大神は、『古事記』に登場する女神・菊理媛尊(くくりひめのみこと)。「国生み」「神生み」を命じられた、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)の二神の仲を取り持ったことから、人々の縁を結ぶ神様として、崇められているそうです。唐破風造りの厳かな弊拝殿で手を合わせていると、神社の中ではご祈祷が行われているのか、太鼓の音が聞こえてきました。

「本宮自体は白山の山頂から遠く離れているため、境内で白山を拝めるようになっているんですよ」と磯部さんが案内してくれたのは、神門の右側にある白山奥宮遥拝所。鳥居の中には白山三山の形をした岩が祭られていて、山頂の御前峰に鎮座する奥宮を拝むことができます。今回は遥拝所から白山に手を合わせましたが、いつかは奥宮へ登拝してみたいですね。

「白山信仰パワースポットめぐり」では、「白山比咩神社」のほか、豊富な水の流れが生み出した景勝地「手取峡谷(てどりきょうこく)」、白山信仰の修験者が山頂を目指した加賀禅定道の登山口「一里野温泉」などあり、コースのアレンジは自由とのこと。ガイド申し込みの際に希望を伝えて、白山のパワーにあやかりましょう。

■白山信仰パワースポットめぐり
住所:石川県白山市三宮町ニ105-1(白山比咩神社)
TEL:076-255-5340(ホワイトリング内、白山ろくスローツーリズム研究会)
交通:集合場所の白山比咩神社まではJR松任駅から車で約25分
料金:1名3500円(移動費用は別途、約3時間、2~40名、要予約)

山の幸をいただく伝統のおやつ
「こびり」作りに挑戦

こびりづくり(食・体験)

この地方の人たちが農作業の合間に食べるおやつの一つ「こびり」。食べると力がわいてくるのだそうです。今回はそんな「こびり」の一つである「くずまわし」を「温泉宿 岩間山荘」の女将に教えてもらいました。

材料は、女将が自ら山でとったオニグルミと栗、山芋、田畑で育てた米の粉、サツマイモ。「クルミは山から分けてもらった大切な食料。クルミ料理は結婚式や報恩講の時に作る祝い料理でもあったのよ」と女将。まずは、たくさんのオニグルミをひとつずつトンカチで割り、クルミの殻から中の実を取り出します。

そして、クルミと、栗、山芋、サツマイモを水で煮て、軟らかくなったら箸でかき混ぜ続けます。山芋が崩れてきたら砂糖、しょうゆで味付けして、最後に米粉を入れて全体を混ぜ、粘りが出て具材の角がなくなったら「こびり」の完成です。

熱々を一口食べると、木の実や穀物特有のホクホクした食感とやさしい甘みが口いっぱいに広がります。できたてと熱が取れて味がなじんだころとでは違った風味に。冷めると山芋や米粉のつなぎの部分がねっとりとして、香ばしい木の実がいいアクセントになります。熊や猿も同じ木の実を食べていると思うと、山の動物たちを身近に感じられます。

■こびりづくり
住所:石川県白山市尾添チ81-3(温泉宿 岩間山荘)
TEL:076-255-5340(ホワイトリング内、白山ろくスローツーリズム研究会)
交通:JR松任駅から車で約1時間
料金:1名3500円(2名~受付、要予約)

親鸞聖人の教えとともに
北陸地方に伝わる特別な料理

「報恩講料理」体験(食・体験)

一里野温泉スキー場のゲレンデに面した「ホテル牛王印(ごおいん)」では、この辺りの尾添(おぞう)集落で受け継がれる報恩講(ほうおんこう)の際の料理を堪能できます。「報恩講」とは、浄土真宗の開祖、親鸞聖人の祥月命日の前後に行う法要のこと。この地方で暮らす人々は山岳信仰と同時に浄土真宗も熱心に信仰。法要の際には特別な料理を作って振る舞うのが、白山麓だけでなく広く北陸地方の習わしとなっています。その料理は地域ごとの特色を交えながら変化して集落ごとに受け継がれています。

写真が報恩講体験の料理です。輪島塗の椀に盛り付けた、ご飯、報恩講汁、クルミの甘露煮、なます、煮物が主な5品で、それ以外にきんぴらや酢の物と、体験の特別メニューとして天ぷらが付きます。煮物に入った豆腐の大きさに驚いていたら、「本当はこの4倍の大きさなんですよ」と女将の林恵子さん。本来の報恩講の料理は、椀を覆い尽くすほどの大きさの白山麓特有”堅豆腐”を使うそうです。

料理に使う食材のほとんどは山からとってきたものや自分たちで育てたもの。「クルミの甘露煮がフタ付きのお椀に入っているのは、かつてはクルミが貴重な油分を得るための重要な素材のひとつだったので、特別な料理として振舞われたからなのよ」と女将が教えてくれました。どれも食材や作り方は決まっているそうです。本来は年に一度だけ振舞われる料理ですが、体験は通年可能。白山の地に受け継がれる味を体験しましょう。

■「報恩講料理」体験
住所:石川県白山市尾添一里野60-12(ホテル牛王印)
TEL:076-255-5340(ホワイトリング内、白山ろくスローツーリズム研究会)
交通:JR松任駅から車で約1時間
料金:1名3080円(2名~受付、要予約)

お持ち帰りにぴったりな
白山麓グルメが目白押し

道の駅 瀬女(食・体験)

白山麓には川に沿って山奥にまでいくつかの集落が点在し、そこで暮らす人々は、山のめぐみをいただきながら、知恵を絞り、独自の保存食や生活用品などを作って暮らしてきました。そんな白山麓ならではの食品や工芸品を取り揃えた「道の駅 瀬女(せな)」の特産品売り場でおみやげを探します。

作り手の思いがこもった白山麓ならではの食品を集めた「白山百選」のコーナーには、気になる商品がたくさん。「かんこの家」の「とちもち」850円は山でとったとちの実をじっくりとアク抜きして作られていて、とち特有の風味がたまりません。中宮温泉の湯で茹でた「にしやま旅館」の「おんたまさん」6個570円や、白山で育ったなめこを使った「コトコトなめこちゃん」640円、特産のそばの実を使った「にわかそば」580円などは、どれも素朴ながら、白山のめぐみの豊かさが感じられます。この地方ならではの「堅豆腐」は、できれば豆腐自体を持ち帰りたいところですが、日持ちが気になる方には、堅豆腐の豆乳を使った「瀬川屋」の「白山堅どうふショコラ」720円がおすすめです。

毎日、焼きたてのパンが店頭に並ぶパン工房「山のパン屋さん 瀬女」が併設。甘いパンやお惣菜パンをメインに約30種類ほどあり、あんやクリームも手作りしているそう。恐竜の化石が見つかった桑島地区の地層をデザインした「ジオキューブ」300円は、よもぎ、プレーン、とちの実の生地を三層にして、中に化石をイメージした小豆の粒が入ったこだわりのパン。白山水系の水でキリマンジャロ豆をドリップした「白山きりまんじゃろ」300円と一緒に、カフェタイムを楽しんで。

■道の駅 瀬女
住所:石川県白山市瀬戸寅163-1
TEL:076-256-7172
交通:JR松任駅から車で約45分
営業時間:9~17時(12~3月は~16時)
定休日:4~5月 水曜、12~3月 水・木曜、ホワイトロード開通期間中(6月中旬~11月中旬)無休 ※「山のパン屋さん瀬女」はホワイトロード開通期間中も水曜


●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

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