京都の老舗生麩店「麩嘉」で期間限定の生麩&個数限定の鯛焼き麩を
京都で外食をすると、精進料理や京料理店はもとより、多くの居酒屋のメニューでも「生麩田楽」「揚げ出し生麩」「生麩ピザ」など生麩を使った料理を目にします。そんな京都人の食に欠かせない生麩を200年以上前から作り続ける「麩嘉(ふうか)」の七代目に、生麩のいろいろと、その時期にしか買えない季節限定の生麩についてお話しを伺いました。
Summary
老舗の雰囲気を感じられる「本店」と、錦市場商店街の活気にあふれる「錦店」
京都市内に本店と錦店の2店舗を構える「麩嘉」。丸太町通と西洞院通の交差点を北に2分ほど歩いたところにある本店は「麩嘉」創業の地。店舗は禁門の変(1864年)の火災などで何度も焼失、建て替えを繰り返したものの、変わらず同じ場所で商いをされています。本店の店先には、平安時代からこんこんと水が湧く井戸、滋野井(しげのい)があり、「麩嘉」の生麩はその井戸をさらに深く掘った地下を流れる良質の井戸水を使って、作られています。
写真は「麩嘉」の歴史を物語る「禁裏御用」の通行手形。宮中(御所)に品物を収めることを許されたお店が、御所に出入りするために必要だった通行手形には、慶応年間(1865−68)の記載があります。
錦市場商店街に2店目ができたのは昭和60年代のこと。「麩まんじゅう」が話題になり、求める人が増えて、本来は卸し専門の本店では対応しきれなくなったため小売専門のお店が誕生しました。
※現在、本店で購入するには事前予約が必要
2020年に改装した際には、本店に近い雰囲気の建築デザインを採用。外の気温や湿度に影響を受けにくいようにと、引き戸を開けて入るスタイルのお店にされています。
麩嘉を代表するロングセラーの手みやげ&四季折々の期間限定商品
さて、京都みやげの顔ともいえる看板商品の「麩まんじゅう」。あんこが大好きだった明治天皇が「カフェオレとともに麩まんじゅうを召し上がった」「その麩まんじゅうは麩嘉製のものであった」と古い文献に残っています。
この「麩まんじゅう」がムチッとやわらかく歯切れのよい食感の理由は、生地に青のりを練り込んで保水性を高めているから。本来は火を通して食べる生麩を生で食べてもおいしいように創意工夫が施されています。
生のままいただく「麩まんじゅう」はもちろん、料亭御用達の「麩嘉」の真骨頂を感じられる調理用生麩もおすすめです。「麩嘉」に行けば、生麩を通じて春夏秋冬、季節の移り変わりを感じることができます。例えば秋口に登場する「萩麩」は、小豆を萩の花に、新ぎんなんを葉に見立てた棒生麩。イチョウの実がつく季節に登場する品物で、売り切れ次第終了の人気モノです。おいしい食べ方やおすすめレシピも一緒にいただけるので、ぜひチャレンジしてみて。
朝夕の空気が冷んやりと秋めいてくる頃、「麩まんじゅう」にも秋限定「栗入り麩まんじゅう」が加わります。丹波大納言のこしあんの中に“秋といえば”な栗が入るのに加え、生麩生地に練り込まれるのも青のりではなく、新物のもち粟(あわ)。栗の入荷が終わり次第終了です。
「え、こんなものまで」と驚く変わり種は「チョコレート麩」。バレンタインデー前の約1週間の間だけ販売されるレア商品です。昔はあんこの代わりにチョコレートを詰めた生麩を販売していたこともあるそうですが、こちらは棒生麩。NYのショコラティエから取り寄せた香りの高いチョコレートが使われています。軽く焦げ目をつけて食べるのも美味。
春、和菓子屋さんに桜餅が並び始める季節に登場するのが、「桜麩まんじゅう」。ほんのりとしたピンク色は道明寺粉の色。あんこには京都の水尾で採れた柚子を使った自家製柚味噌がブレンドされています。お花見などの春の集いに持参すれば、場が華やぎそうです。
「麩嘉」の店頭に並ぶ商品のなかでは2番目に新しい「レモン麩まんじゅう」は2020年に登場しました。生麩にもあんこにもレモンの皮をすりおろして入れています。皮まで使うため有機栽培のレモンを厳選。使っているのは、広島の三角島で、生産者のナオライさんが丁寧に育てたレモンです。温暖な瀬戸内の気候で育ったレモンならではの、爽やかで香り高い味わいに、発売以来大人気!レモン柄の包装紙に包まれたパッケージもかわいく、ギフトとしても有能です。
ほかにも1月中旬から2月下旬頃には酒粕入りの「酒粕麩」、2月の中旬頃には、旬の短い山菜のふきのとうを使った「蕗の薹麩」、同じく新春には定番の「蓬麩」と並んで、京都の里山で摘んだばかりのヨモギを使った「生蓬麩」が登場。どんな時期に訪れても、その時期限定の商品に出合えるのが魅力です。
知る人ぞ知る!「麩嘉 錦店」でしか買えない、京都の名店の希少な味
「麩嘉 錦店」に何度も足を運びたく理由は、時期に合わせた旬の生麩が味わえる以外にもあります。それが、京都の名店の味を手に入れることができるから。摘み草料理の草分けとして全国に名を轟かせる「草喰(そうじき)なかひがし」の早春の味、「春ひとつ」がそのひとつ。
パッケージに書かれた「春ひとつ」の文字はなかひがしのご主人の筆。合わせ味噌と白味噌、ふたつの味噌が薹(ふき)の苦味をほんのり甘辛くまとめあげる上質なごはんのお供です。完全予約制の店の味をアクセスのよい錦商店街で手に入れられるとあって、毎年山菜の季節になるとこの味を求めて訪れる人が後を立たず、1人あたりの購入数が制限されるほどの人気商品です。
祇園四条に店を構える人気店「祇園ろはん」の山椒味噌も「麩嘉 錦店」で購入することができる希少な味のひとつ。初夏にとれる実山椒のフレッシュな香りと、ピリリとした辛みが詰まった調味料で、「祇園ろはん」では、地鶏の炭火焼きなどの料理に添えて提供されています。
また、「麩嘉 錦店」以外では販売されていない希少な品がこちら。お茶の世界では知らない人がいないといわれる老舗「茶懐石 柿傳」の「特製 山椒昆布」です。もともと非売品だったものを特別に限定販売しています。
ほかにも「山利商店」の白味噌や「一保堂」のいり番茶など、京都の名店の味をさまざまに扱います。自社商品ではないものを扱う理由は、「現在は、観光地色が濃くなってきた錦市場ですが、もともとは“京の台所”と呼ばれた場所。地元の人にももっと喜んでもらえるように」とのこと。京都の老舗だからこその品揃えで、地元の人の心も掴みます。
できたてを食べたい!個数限定の鯛焼き麩と笹の香りがする期間限定のかき氷
おみやげ探しはもちろん、食べ歩きが楽しい錦市場ならではのおすすめは「鯛焼き麩」。お菓子としては「麩まんじゅう」が看板ですが「火を通した生麩のおいしさをもっと知ってほしい」との思いから誕生しました。
驚くことに鯛の形の焼き型は一つ。そのため1日の販売数に限りあり。ガス火で炙った焼きたてを提供してくれます。焼きたての「鯛焼き麩」は、外側はカリッと中はもちもち。ほどよい塩気があり、胡麻油の香りがふわっとして甘辛のバランスがたまりません。おみやげや贈答にも使える木箱に5個入った商品もあります。
暑い時期だけ登場するのは、ミニサイズのかき氷「笹の露」。暑い中、錦市場を散策する人たちに涼をとってもらえるようにと作られたプチプライスな商品。「生麩まんじゅう」を包む笹の葉を、乾燥から戻すときの井戸水で作ったかき氷。ほんのり笹の葉の香りが移った氷とザラメのやさしい甘さのみぞれがすっと喉の渇きを癒します。
店内に備えられたテーブルでイートインもできます。サービスのお茶は「一保堂」の「いり番茶」。ほっこりします。
いかがでしたでしょうか。「麩嘉」のことは知っていても、季節に応じてこんなにもバリエーション豊かな生麩が揃っていること、知る人ぞ知る名店の味が集まっていることは初めて知ったという人も多いのでは。切って焼くだけでおやつにもおかずにもなる生麩。冷蔵で5日間の日持ちし、持ち運び時間に合わせた対応もしてもらえるので、京都みやげにイチオシです。
■麩嘉 錦店(ふうか にしきみせ)
住所:京都府京都市中京区錦小路堺町角菊屋町534-1
TEL:075-221-4533
営業時間:10時〜17時30分
定休日:月曜
Text:京都ライター事務所 小西尋子
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