【長野県松本市】2023年10月オープン!松本市立博物館は“人とまちをつなぐ”ミュージアム
明治39(1906)年からの歴史をもつ「松本市立博物館」が、2023年10月7日に松本城公園内から移転オープンしました。かつて松本城三の丸があったエリア、大名町(だいみょうちょう)通りに新築された3階建ての建物は、旧博物館の2倍以上の広さ。人々が集い、交流し、未来を創造するためのミュージアムとして生まれ変わった博物館の全容をご紹介します。
Summary
市民の想いをのせた「松本てまり」が博物館のシンボル
新・松本市立博物館は、武家屋敷を意識したデザインで、大きなガラス張りのファサードが開放感たっぷり。エントランスを入ると、吹き抜けの大階段が広がり、愛らしい「松本てまりモビール」が出迎えてくれます。
松本てまりとは、古くから松本で作られてきた伝統工芸品。戦後、一度は製作技術が途絶えたものの、博物館の資料をもとに市民の手によって復元されたという歴史があります。そんな松本てまりを新博物館を象徴するモニュメントと位置付け、市民参加のアートプロジェクトによって「松本てまりモビール」が作られました。色とりどりの松本てまりは、その数およそ150個。松本の木工職人の手による木製フレームにもぬくもりを感じます。
多彩なテーマで企画展を開催する特別展示室
2階は定期的に催される特別展示室。多彩なテーマの特別展や企画展で楽しませてくれます。
オープンから2023年12月10日まで開催した「まつもと博覧会」は、明治に開催された「松本博覧会」をオマージュした令和版の「松本博覧会」で、明治と令和、2つの博覧会を通して、松本の未来を考える特別展。
2024年1月13日(土)〜3月3日(日)には「至極の大衆文化 浮世絵—酒井コレクション—」を展示。現代では芸術作品として知られる浮世絵ですが、江戸時代には庶民が作り、庶民が育て上げた大衆文化だったといいます。そんな浮世絵の日本三大コレクションのひとつ、日本浮世絵博物館所蔵の「酒井コレクション」を紹介。
今後も数カ月ごとにさまざまな展示を展開する予定なので、訪れるたびに新たな発見がありますよ。
8つのテーマで松本を知るユニークな常設展
3階の常設展示室は「お城のあるまち」「にぎわう商都」「開かれた盆地」など、8つの切り口で松本を紹介しています。縄文時代から歴史的に順を追って紹介するのではなく、現代の暮らしや営みに結びついたテーマごとに案内することで、より身近に松本のことを感じられる展示になっています。
なかでも目を引くのが、テーマ「お城のあるまち」に鎮座する日本最大級の城下町ジオラマ!江戸時代後期の松本城と城下町が緻密に作り込まれていて、思わず見入ってしまいます。松本城は天守のある本丸、御殿のある二の丸、上級武士が住む三の丸で構成され、それぞれが水堀で区切られているのがよくわかります。「松本市立博物館」があるのは三の丸。その三の丸の外側に町人や中・下級武士が生活するエリア、さらにその外側に寺社エリアが配置されています。今でも松本市内の道は、当時のまま残されているものが多いそう。現在の町と照らし合わせながら眺めてみましょう。
8つのテーマに加え、休憩エリア「探求の井戸」にも注目です。文字が水面に浮かぶように描かれていて、内容は松本のローカルネタのよう。「確かに!」「松本市民はそんなふうに思っているんだ」「いやいや、市外から見たらこうじゃない?」など、気づけば会話が弾んでいます。実はそれこそが、この展示の狙い。まさに“井戸端会議”している、というわけです。松本に住む人もそうでない人も、つい自分の町のことを語りたくなるはず。そうやって“自分ごと”として町を考えるきっかけになる、楽しい仕掛けになっているのです。
西に北アルプス、東に美ヶ原高原と、市内のどこからでも美しい山々を眺められる松本。テーマ「ともにある山」の立体展示「山岳回廊」では、水や食料、鉱物といった恵みの源であり、畏れや信仰の対象でもある山が、松本の人々にとっていかに大切で身近な存在なのかを伝えてくれます。動物の毛でつくられた尻当てにふれられるのも、貴重な体験です。
オリジナルのミュージアムグッズをおみやげに
1階に戻ったら、ミュージアムショップにも立ち寄ってみましょう。動物のイラストがかわいい一筆箋や松本てまりモチーフのコースターなど、博物館オリジナルグッズは松本みやげにぴったりです。
松本民芸家具に囲まれて、人気コーヒースタンドの味を堪能
ミュージアムショップのお隣には、松本の人気店「High-Five COFFEE STAND」が出店。長野県内に4店舗を構えるコーヒースタンドですが、国の伝統工芸品にも指定されている松本民芸家具に座ってコーヒーが楽しめるのはこの店だけ。ちょっと贅沢な気分を味わいながら、のんびりひと休みしましょう。
遊んで学べる、キッズ向けの体験ひろばが楽しい!
小学6年生までの子ども連れなら、1階の「子ども体験ひろば アソビバ!」は必見!壁に描かれた松本の山や森の動物たちと並んで背比べしたり、虫や野菜のマグネットを自由に貼ってみたり、「まつもとすごろく」や「まつもとパズル」に挑戦したり。いっぱい触って、体験して、新たな発見に出会えるスペースです。
大人もワクワクするひろばですが、原則、大人だけの利用はNG。小学3年生以下は保護者同伴で楽しんでくださいね。1回訪れるごとに、10種類ある松本にちなんだスタンプが押せるので、10回行ってコンプリートをめざしましょう。
博物館というと、堅苦しいイメージをもつ人が多いのでは? 「松本市立博物館」は開放的な空間づくりもさることながら、すべての展示物が今の松本の暮らしとつながる線状にあって、自分の生活と結びつけて親しみを持って思考することができます。展示物にふれたり、作品を見て話をしたり、松本民芸家具に座ってコーヒーを味わったり、楽しんで松本について知ることができるスポットです。松本市民以外の人も、自分が暮らす町について想いをめぐらせるきっかけにもなりそうです。
展示室を出たあとは、松本の町歩きに出かけましょう!松本の新しい景色が見えてくるはずですよ。
■松本市立博物館(まつもとしりつはくぶつかん)
住所:長野県松本市大手3-2-21
TEL:0263-32-0133
開館時間:1階(子ども体験ひろばを除く)は9〜21時、2・3階と子ども体験ひろばは9〜17時
定休日:火曜(子ども体験ひろばを除く1階は第3火曜、祝日の場合は翌日)
料金:観覧料(3階常設展)は大人500円、大学生250円、高校生以下無料。1階は無料、2階の特別展は展覧会により異なる
Text:塚田 真理子
Photo:内山 温那
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