京都人もこよなく愛する京漬物の老舗「村上重本店」の味を食卓に♪
天保3年(1832年)から四条河原町の一等地に店を構えている漬物専門店「村上重本店(むらかみじゅうほんてん)」。京都に住む人にとってもちょっとした贅沢であり「村上重本店の漬物が一番好き」という人も多い、特別感のあるお店です。
「丸十」の商標が物語る「村上重本店」の歴史
高瀬川の四条小橋の西を南へ下がる細い道。レトロカフェ好きに有名な「フランソア喫茶室」がある通りをつきあたりまでまっすぐ進むと、目の前にあるのが、京漬物の老舗「村上重本店」です。
歴史を物語るのが、十文字をまるで囲んだその商標。このマークは、薩摩藩島津家の家紋である轡(くつわ)十字と同じ形。「村上重本店」が創業した天保年間といえば幕末で、薩摩藩が京都に進出してきた頃。非常に勢いのあった薩摩藩島津家の紋と同じ形が許されたのにはこんな逸話が残っています。
ある日、高瀬舟の船着場を降りた薩摩の殿様が、近くで休憩したときに出されたお茶請けの漬物(「村上重本店」のもの)を大層気に入り、丸に十の商標を使うことを許可されたのだとか。薩摩藩のお殿様も一目置いたその味は、家伝独自の製法により作られ、いまに受け継がれています。
およそ40種類の漬物や佃煮が並ぶ風格ある店内
さて、店内に入るとこのとおり。にぎやかな繁華街の中心地にありながら「村上重本店」の様子はいつもひっそり、どっしりとしています。石畳の土間に置かれた樽は、かつて中に冷蔵庫を入れていたそうで、いまもその名残を見ることができます。
商品が並ぶ店先の奥には、発送の宛名を書くためのカウンターと包装を待つ待合があります。
裏通りにもカフェやバーなどが立ち並び京都一といってよいほどにぎやかな四条木屋町界隈ですが、店に飾られる昭和32年当時の写真を見るとまるで様子が違います。写真には、当時走っていた路面電車とともに「村上重本店」の姿もしっかり映っています。
時代の流れに流されず、変動の激しい四条界隈で、変わることなくここに在ることに敬意を払いつつ、お買い物。
お買い物は、好きな漬物を竹ざるに入れていくスタイル。
特に寒くなると人気が高まるのが「こぶ大根」。おいしい大根を皮ごと角切りにして、昆布とともに重石をきかせて調味したポリポリとした食感のよい漬物です。「刻み壬生菜」は9月上旬から翌5月までの季節商品。四季折々に厳選した白菜を使う「白菜昆布漬」は、秋冬白菜を使ったこの季節のものがとくに人気だそう。
厳選された白菜を主にした漬物には「しめじ入り 白菜風味漬」もあります。しめじ、人参、壬生菜も入り、お皿に彩りを与えてくれる漬物。「小かぶら風味漬」は糠床で小かぶらをじっくり熟成させ、青紫蘇、山椒の実、生姜、みょうがなどの香味野菜を加えた淡い味わいが人気です。
箔押しの箱に入れて、目上の方へのおみやげや贈答に。箱のサイズにはバリエーションがあり、2袋から詰められます。
限られた期間にしか出合えない季節限定の商品&量り売り
「村上重本店」といえば千枚漬というほど、千枚漬が有名ですが、購入できるのは11月初旬から2月末までの短い期間のみ。そのため一番のベストセラーは、通年購入できるしば漬です。しば漬だけでもきゅうりを主役にナス、みょうが、生姜を漬け込んだ赤紫蘇の「しば漬」、赤紫蘇ではなく青紫蘇で漬けた「京高瀬」、きゅうりだけの「胡瓜のしば漬」「胡瓜の京高瀬」、乳酸発酵による「生しば漬」「山科茄子の生しば漬」とバリエーション豊か。
その中でも気になったのは、9・10月限定の【樽出し】胡瓜のしば漬。袋詰めの商品は、発酵をとめるために加熱し、真空密閉しますが【樽出し】は、非加熱で袋詰め。その分、賞味期限は短くなりますが、樽から出したての新鮮な味が楽しめます。お店では、この【樽出し】の漬物を食べる分だけ量り売りしています。
町家の間取りでいくと奥座敷にあたる場所で、ゆったりと包装を待つのも老舗の風情。と思っていると、すかさず温かいお茶のサービスが。「少しの間ですが、寛いでいただけるように」とのおもてなしに心がほぐれます。このお茶も春は桜茶、夏は冷えた麦茶、秋冬になると昆布茶と変えているそうです。
取材時にはまだ店頭に並んでいませんでしたが、11月に入ると看板商品の「千枚漬」が登場します。厳選した聖護院かぶらと利尻昆布と塩だけで熟練の職人が「塩かげん」「重石かげん」「気候かげん」を丹念に見守りながら育てた季節の味。お歳暮を贈るお客さんで賑わう前に、訪れてみては?
■村上重本店(むらかみじゅうほんてん)
住所:京都府京都市下京区西木屋町四条下る船頭町190
TEL:075-351-1737
営業時間:9〜19時
定休日:無休
アクセス:阪急京都河原町駅から徒歩2分
Photo:photo scape CORNER.大﨑 俊典
Text:京都ライター事務所 小西尋子
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。