東京・錦糸町は、都会のシャングリラ!進化型スタイリッシュ銭湯「黄金湯」で、ととのう、泊まる、食べる…癒やしのサウナを満喫【清水みさとのあちこちサウナ旅VOL.02】
半紙に書かれた「沸いてます」の文字。コンクリート打ち放しに白いのれん。危うく半紙を見逃したら、どんなお店かわからないほどスタイリッシュな外観。錦糸町駅から徒歩6分ほどの「黄金湯(こがねゆ)」は、昭和初期創業の銭湯です。ここはオーナーがやりたいことを形にした進化型の銭湯。クラフトビールが飲める番台バーではアナログレコードが聴けて、ドミトリータイプの宿、ラム料理が揃うカフェまで併設。特に水深90mの水風呂付き男湯サウナは絶品です!毎週水曜は女性も利用できるので、ぜひととのいに訪れてみては?
Summary
昭和初期の創業「黄金湯」のリニューアルっぷりがすごい!
「二兎追うものは一兎も得ず」ということわざがあります。あれもこれもと手を出すと、結局一つも手に入りませんよという教訓。
わたしは欲張りなので、よくこの言葉を耳にしてきた人生です。だって好きなこと、やりたいことがたくさんあって、たった一つに絞るなんてできっこない。
しかし、そんなわたしに(あなたに)朗報。この現代においてはその教訓、だいぶかげりを見せている可能性あり。
その気になればなんだって、いくつだって追いかけられることを教えてくれる場所が堂々とあるのだから、この場をかりて「異議あり!」と言わせてください(小声で)。
教えてくれたのは、ここ、東京・錦糸町にある老舗銭湯「黄金湯」です。
昭和7年(1932)創業、たっぷりと歴史が詰まった「黄金湯」は、後継者不在で廃業するところを現オーナーの新保さんご夫婦が引き継ぎ、2020年に大規模リニューアル。
日本の銭湯カルチャーを若返らせ、これまでの銭湯の概念を一新しました。
コンクリート壁と大きなガラス扉。
のれんがなかったら、銭湯だってこと、あやうく見過ごしてしまいそうだけど、すぐ近くのコインランドリーからふわふわ漂う洗剤の香りが、ここに銭湯あり!と主張してくれます。さすがコインランドリー。ぁあ、この香り、大好き。
ゆらゆら風に揺られたのれんをくぐると、中央に大きな番台が一つ。
半紙に「沸いてます」の文字。味。
正真正銘、銭湯です。
券売機で銭湯の入浴料大人520円と、サウナ(女性・水曜)530円のチケットを買い、番台でロッカーキーとタオルを受け取ります。
ここまでは至って普通の銭湯っぽいですが、お風呂だけじゃない、縛られずとらわれず、やりたいことをどんどん形にした「黄金湯」を、余すことなく書き記したい所存です。
あったらうれしいもの…ぜんぶ揃う!「黄金湯」のサウナ施設って?
まずは、お風呂から。
女湯には、セルフロウリュができるサウナがあります。
この日のアロマは、スモーキーな香りが鼻腔をくすぐる「タール」。
4名程度の比較的小さめなサウナ室は、あっという間に蒸気と熱と香りで寸分の隙間なく埋め尽くされました。熱いスープを飲むように、深呼吸してアツアツの空気をいただきます。
柔らかな蒸気に包まれて、もう、気持ちいいの一言。
続いて、男湯。
「黄金湯」は、毎週水曜が男女入れ替え日です。水曜は男湯が女湯になるということ。
水曜は遠慮なく、わたしも普段の男湯を利用させてもらいます!
クリーム色のタイルと黄色い桶がお似合いでとってもかわいい浴室。あつ湯・薬草・炭酸泉・水風呂が並ぶのも、女湯と瓜二つ。
サウナは浴室内にありません。写真の左奥の扉の先が、男湯のサウナ室。
わたしが水曜日の入れ替え日をもっぱら狙ってしまう理由がこれ。
水風呂の横にある扉を開けると、一気に新鮮な空気が体を包みます。そう、外なんです。
男湯のサウナ料金(水曜日は女湯に!)を払った人だけが入れるこの特別な場所に、サウナ・水風呂・ととのいイスが待ち構えています。
男湯のサウナは、15分に一度のオートロウリュ付き。
見慣れたサウナ室とは違う麦飯石のシックな壁と、控えめなライトで照らされたほどよい暗さのサウナ室。
大人っぽくて、ついつい姿勢良く三角座り。派手な注意書きや広告もなく、無我夢中でぼーっと己と向き合います。
この時は110℃。高温のサウナ室でオートロウリュ。一刻も早く水風呂に入りたい気持ちをほんの少し溜めこんで、はち切れそうなタイミングで12℃の水風呂へ。
水深90cm、大きくて深い、あっちにもこっちにも動けてしまう自由度の高い水風呂に入ると、じっとしていられないわたし。
温かさを保つ温度の羽衣をまとえないからずっと冷たいけれど、それもまた一興。
そして、水風呂の縁でそっとひと息。冷たい水風呂にこんなに入っていられるなんて、体の温もりの深度たるや。
いいサウナ、いい水風呂で強めの温・冷をしたあとわたしは、座るや否やととのいへとまっしぐら。
そういえば、「錦糸町におすすめのサウナがある!」というと、時々ギョッとした目で見てくる人がいる。
錦糸町といえば、歓楽街としても有名だからしょうがないけれど。
「黄金湯」があるのは北口で、再開発が進んでファミリー層にも大人気な住みよい街、スカイツリーも徒歩圏内。
北口と南口。同じ錦糸町という街にありながら、桁外れの温度差と、水と油みたいに混じり合わないさまが妙に癖になる錦糸町に、おもしろいサウナ施設がたくさんあるんです。
だから今日もわたしは錦糸町でご覧の通り。
サウナ→水風呂→ととのう→うれしくてガッツポーズ。
しかし、フィニッシュにはまだ早い!
まだまだ進化中!ビアバーに、お宿、サウナ飯の「コガネキッチン」まで
サウナから上がったら、そのまま一直線に番台へ。
サーバーで注がれたできたてのクラフトビールを飲める「銭湯」です。
そのすぐ横にはDJブース。日々選曲をして、レコードを流している「銭湯」。
靴箱横の階段で2階に上がると、アカスリ部屋がある「銭湯」。
(入浴後、そのまま施術を受けられます。アカスリ30分コース4000円~)
そして、泊まることもできるる「銭湯」。
(1泊5800円~ドミトリータイプの宿は全8個室。宿泊すると、銭湯の営業時間内ならいつ何度でもサウナに入れます。サウナ好きにはお得!)
たくさんの植物で彩られた大きなバルコニーを通り過ぎると、カフェ「コガネキッチン」が登場。
おいしいご飯も食べられる「銭湯」です。
来るたびに食べる「ラムラムバーガー」1300円(スープ・ポテト付き)。香ばしいパン、ジューシーなラム肉、添えられたホクホクのポテト。
スパイスたっぷりの「ラムラムキーマ」1250円(スープ付き)。
ただドリップするだけじゃない、遊び心とアイディアの傑作「ロウリュコーヒー」2100円(2~3名分、ヴィヒタ、ラドル型クッキー付き)。
イベントスペースまで存在する「銭湯」です。
そして2023年12月末には、押上にビール醸造所をオープンし、ここで作ったオリジナルクラフトビールも「黄金湯」で飲めるようになるんだそう。
このバリエーションと新しさ。感嘆。
初めて「黄金湯」に来た日から今日まで、たえず進化し続ける姿をみて、銭湯業界はもちろんのこと、わたしの未来にすら圧倒的な予感を感じさせてくれる「黄金湯」。
やってやれないことはきっとなくて、やらずにできることだけはひとつもない。だけど、追いかけるにはそれ相応のエネルギーと思いが必要なことも学びます。
「やりたいことがたくさんある」というオーナーの新保朋子さんは、いつでもアイディアがいっぱいで、でも〜とか、〜じゃなきゃいけないとか、そういう言い訳や縛りから一番遠い人で、思ったことをどんどん形にしていくスペシャリストです。
振り返ると昔をみつけられるらせん階段のような進化を続ける「黄金湯」。
新しさの中に過去の景色もあり続けるから、お金じゃ買えない人の温もりや情緒がありつづけると思うんです。
古株の常連さんも、新しいお客さんも、みんな一緒でいられる「黄金湯」が大好き。
やりたいことは全部やろう。いくつあっても本当にやりたいことなら欲張って、何兎も追いかけると決めています。「黄金湯」みたいに。
だってすごく楽しそうだから。
PS. 結婚発表の写真を撮影したのも、「黄金湯」でした。大切な瞬間も「黄金湯」で。
■黄金湯(こがねゆ)
住所:東京都墨田区太平4-14-6
TEL:03-3622-5009
営業時間:6~9時、11時~24時30分(土曜は15時~)
料金:入浴料大人520円(90分)、中学生420円、小学生200円、幼児100円、サウナ月~金曜女性330円、男性530円(土・日曜、祝日は女性350円、男性580円)※2時間制、水曜は男女入れ替え日、貸しタオルセット200円
定休日:第2・第4月曜
●黄金湯 お宿(こがねゆ おやど)
チェックイン:16時~
チェックアウト:10時
料金:ドミトリー 5800円~
予約:黄金湯公式サイト 館内設備 お宿[予約する]より
■コガネキッチン
https://rurubu.jp/andmore/spot/80132701
Text:清水みさと
Photo:添田康平
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。