紫式部が『源氏物語』を綴りはじめた地、大津・石山寺のご利益&みどころは?
紫式部は、千年の時を超えて読み継がれてきた『源氏物語』の作者。滋賀の「石山寺」は、紫式部が物語を綴りはじめたと伝わるお寺で、いま注目を集めています。境内の見どころや、さまざまなご利益をご紹介します。
Summary
知っとこ!紫式部&『源氏物語』って?
紫式部は、平安時代中期、時の実力者・藤原道長に知性と才能を認められ、一条天皇の中宮(正妻)となった道長の娘・彰子に仕えることに。和歌や漢詩などを教える家庭教師のような役割を担いました。
『源氏物語』は、そんな紫式部が王朝の雅や栄華、悲哀を織り交ぜて書き上げた全54帖にわたる壮大なラブストーリー。いまでは30か国を超える国で翻訳され、国内外で親しまれています。物語の舞台は京の都や宇治ですが、隣接する滋賀県も、じつは紫式部とゆかりの深い場所。紫式部が物語を起筆したと伝わる古刹「石山寺」を訪ねてみましょう。
観音様を祀る国宝の本堂へ
両脇で仁王像が睨みをきかせるこちらの東大門が、石山寺への入り口です。
石山寺のはじまりは、天平19年(747)のこと。聖武天皇から東大寺の大仏建立の命を受けた良弁僧正が、大仏に使う金を求めてこの地を訪れます。天皇の念持仏(観音様)を岩の上に置いて祈ったところ、陸奥国で黄金が発見されたという朗報が! 願いが叶ったため観音様を持ち帰ろうとしましたが、岩から離れなかったため、その場にお堂を建てて祀ったと伝わります。
東大門をくぐってすぐのお堂は、3人の僧侶に夢告を授け、湖の中から現れたという故事を伝える大黒天が本尊。恋愛、金運、福徳のご利益で親しまれています。
参拝受付を過ぎて右手にある池のほとりには、「くぐり岩」が。岩の間をくぐると願いごとが叶うと伝わります。
長い石段を上がると、そびえ立つ石の山が目に飛び込んできて、その迫力に圧倒されます。この岩は硅灰石(けいかいせき)といって、石山寺の起源を伝える境内屈指のパワースポットです。
平安時代以降は、秘仏・二臂如意輪観世音菩薩を本尊とする真言宗の寺となり、安産・縁結び、福徳、厄除けなどさまざまなご利益を授けてくれる仏様として信仰を集めました。京都の清水寺、奈良の長谷寺とともに三観音として崇められ、和泉式部、清少納言、『蜻蛉日記』の藤原道綱母など女流作家たちが、こぞって「石山詣」に訪れたそうです。
紫式部もその一人。京の都から逢坂の関を越え、琵琶湖の浜辺に出て舟に乗り、瀬田川を下ってこの石山寺に参詣し、7日間滞在したといいます。
本堂の一角には、紫式部が物語を起筆したと伝わる「源氏の間」が残されています。『石山寺縁起絵巻』によると、こちらの部屋は、天皇や貴族、高僧など身分の高い人たちが参拝や参籠の際に使っていたそうです。お寺でよく見かける花頭窓(火灯窓)には「源氏窓」という別名がありますが、この源氏の間に由来しています。
多彩なご利益アイテムに注目
本堂内の授与所には、安産御守、子授御守、子育御守、合格御守、仕事御守など、さまざまなお守りやご利益アイテムが並んでいます。こちらは「紫式部開運おみくじ」。紫式部ゆかりの歌を織り込んだ、石山寺だけにしかない開運おみくじです。
安産のシンボルである犬にちなんだ「犬吉みくじ」は、背中におみくじを背負ったキュートな姿で人気。白、茶色、ピンク、黒の4色がそろいます。
お守りやおみくじ以外にも、オリジナルアイテムが充実。本堂そばの授与所には、『石山寺縁起絵巻』に登場する人や動物たちを描いたシール、手紙に添える「文香」などが並びます。
眺望抜群!近江八景「石山の秋月」
つづいて、境内でいちばん見晴らしのいい場所へ向かいましょう。硅灰石の迫力を間近に感じながら横の石段を上がっていくと、斜面にせり出すように建てられた月見亭にたどり着きます。
月見亭は、近江八景のひとつ「石山の秋月」を象徴する場所。紫式部が生きた時代より後の平安時代後期、後白河天皇行幸の際に建てられたもので、歴代天皇がお座りになる玉座(ぎょくざ)となっています。※月見亭内部の見学はできません。
紫式部は、琵琶湖に映る美しい月を眺めたときに物語の情景を浮かべたそう。そうして書き留めた一文が、第12帖「須磨」や第13帖「明石」の元になったと伝わります。
月見亭付近からは、紫式部が舟で下ってきた瀬田川、その向こうに琵琶湖が望めます。
境内は通常夕方に閉門となりますが、毎年中秋の名月の頃の「秋月祭」や紅葉シーズンには、夜間拝観が行われ、紫式部が眺めたのと同じ月を望むことができます。
まだある!境内のパワースポット
本堂の東側に並び立つお堂のひとつ、観音堂は、福徳、厄除け、縁結びのご利益を授けてくれるそう。石山寺の本尊を中心に西国三十三所札所すべての観音様が祀られているため、お参りすれば、ご利益も33倍になるかも⁉
こちらは、国宝・多宝塔のそばにある「めかくし石」。目を閉じたままこの石を完全に抱くことができれば願いごとが叶うと伝わります。実物はかなり大きいので、なかなかの難題。ぜひお試しを。
木々に囲まれ、ひときわ神秘的な空気が満ちる小さなお社は、「八大龍王社」。歴海(れきかい)和尚がここでお経を唱えたところ、龍が出現。和尚が帰るときには龍が背負ってくれたという逸話が伝わります。また、どんなに晴れの日でもここで願えば雨が降る、雨乞いの聖地でもありました。
「石山寺」のアクセス・拝観情報は?
大阪・京都方面から石山寺へのアクセスは電車が便利です。
JR東海道・山陽本線の野洲方面行きに乗車し、石山駅から徒歩すぐの京阪石山駅に乗り換え。終点の石山寺駅で下車し、瀬田川沿いを南下すること徒歩約10分で石山寺に到着します。
広々とした境内をじっくりとめぐるには約90分、ポイントをおさえてめぐる場合は、60分程度みておくといいでしょう。
東大門の前には、和菓子やプリン、志じみを炊き込んだ釜めしなどバラエティに富む門前名物があるので、参拝後に立ち寄ってみてはいかが。
■石山寺(いしやまでら)
住所:滋賀県大津市石山寺1-1-1
TEL:077-537-0013
参拝時間:8~16時30分(最終受付16時)
参拝料:600円
駐車場:140台(有料)
Photo:マツダナオキ
Text:佐藤理菜子
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