【京都】廬山寺|紫式部ゆかりの地で『源氏物語』の世界に触れる
京都御苑の東側に佇む廬山寺(ろざんじ)は、令和6年(2024)話題の紫式部邸宅跡としても有名な寺院。四季折々に違った表情を見せる「源氏庭」をはじめ、みどころやアクセスを詳しくご紹介します。
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「洛中の叡山」とよばれた廬山寺の歴史
桃山時代、天下を統一した豊臣秀吉は、権力の拠点となる京都の大改造に着手。その際、洛中に散在していた寺院を京都御所の東側に移転させました。今回ご紹介する廬山寺も数ある移転した寺院のうちのひとつです。
廬山寺は、比叡山天台座主の元三大師(がんざんだいし)良源(りょうげん)が、船岡山(現在の京都市北区)の南麓に開いた與願金剛院(よがんこんごういん)が始まり。鎌倉時代の寛元3年(1245)、法然上人に帰依した覚瑜上人(かくゆしょうにん)が出雲路(現在の京都市北区)に廬山寺を開き、南北朝時代に両寺院が統合。以来、円、密、戒、浄の四宗兼学道場として隆盛を極めました。
しかし、室町時代に起こった応仁の乱で寺院は焼失。天正年間(1573~1593)に現在の場所に移転した後も、度々火事に遭いました。現在の御仏殿(通称:本堂)と御黒戸(通称:尊牌殿)は、寛政6年(1794)に廬山寺とゆかりの深い光格天皇が仙洞御所の一部を移築造営したもので、令和になった現在もその姿を留めています。
廬山寺と紫式部のつながりとは?
廬山寺が現在地に移転するずっと前の平安時代。この場所は平安京の外れとなる東京極大路(ひがしきょうごくおおじ)にあたり、通りには公家屋敷が立ち並んでいました。そのひとつが、紫式部の曾祖父・権中納言藤原兼輔(堤中納言)が建てた邸宅「堤第」。紫式部はこの邸宅で一生の大部分を過ごしたといわれています。
現存する世界最古の小説『源氏物語』をはじめ『紫式部日記』『紫式部集』といった多くの作品をこの場所で執筆したと考えると、なんだか胸がときめきますね。
ちなみに、この場所に「堤第」があった事実が確定したのは、意外にも20世紀に入ってからのこと。日本の考古学に大きな影響を与えた角田文衛(つのだ ぶんえい)博士によって考証が行われ、昭和40年(1965)、境内に紫式部邸宅跡を記念する顕彰碑が建てられました。
顕彰碑は、『広辞苑』の編集者としても知られる言語学者の新村出(しんむらいずる)が書き下ろしました。協賛者には、政治家や財界人に交じって『源氏物語』の現代訳を行った作家の谷崎潤一郎や円地文子の名前も見られます。
季節ごとに訪れたい雅な美しさの「源氏庭」
顕彰碑と合わせて境内に作られたのが「源氏庭」です。源氏庭は白砂を使っていることから枯山水といわれますが、正確には平安時代の庭園をモチーフに作庭したもの。優美な曲線を描く苔と白砂が調和する光景は、雅やかな平安時代を思い起こさせます。ちなみに『源氏物語』に登場する花散里の屋敷はこの辺りにあったといわれているそうで、じっとこの景色を眺めているとまるで物語の世界に迷い込んでしまいそうです。
源氏庭の大きな魅力は、四季折々に美しい景色を見せてくれる点にもあります。とりわけ6月~9月初旬の期間は、『源氏物語』で朝顔として描かれた紫色の桔梗の花が訪れた人を出迎えてくれます。
春には『源氏物語』にもしばしば登場する桜の花が境内を彩ります。
秋には紅葉のグラデーションが源氏庭を彩ります。
うっすらと雪が積もった冬の源氏庭もまた趣がありますね。
境内に点在する紫式部にちなんだスポットも押さえたい
廬山寺の境内には、源氏庭以外にも『源氏物語絵巻』や紫式部日記、若紫の掛け軸といった、紫式部や『源氏物語』とゆかりのある寺宝が展示されています。
境内に立つこちらの歌碑には、紫式部とその娘で歌人として活躍した大弐三位(だいにのさんみ)の2人の歌が刻まれています。
御仏殿には、百人一首や『源氏物語』の場面が描かれた貝合わせが展示されています。貝合わせとは、左右2片のハマグリの貝殻に花や歌などを書いて左右に分けて置き、絵柄を合わせる平安時代に宮中で行われていた遊びのこと。細部にまで綿密に描かれた美しい世界観に思わず目を奪われます。
こちらは、御仏殿の玄関に安置されている紫式部像。凜々しい表情で筆を進める姿を表現しています。堂内の撮影は禁止されていますが、こちらの紫式部像は撮影OKです。記念写真に残しておきましょう。
廬山寺では、御朱印もいただけます。こちらは、オリジナルの御朱印「若紫」800円。江戸時代後期の画家・住吉廣尚が描いた『源氏物語』の『若紫』の一場面に紫式部が詠んだ歌が記された、なんとも雅やかな御朱印です。
御朱印と同じ『若紫』の一場面を描いた「御朱印帳」2000円やかわいいイラストタッチの「御朱印帳」2200円もおすすめです。
廬山寺へのアクセスは?
廬山寺へは、市バス停「府立医大病院前」から徒歩5分のアクセス。京都駅から向かう場合は3または205系統を。四条河原町から向かう場合は、3・4・17・37・59・205系統を利用しましょう。また京阪鴨東(おうとう)線神宮丸太町駅からは徒歩約15分と少し距離はありますが、途中に紫式部も眺めた鴨川の景色を楽しめるので、こちらもおすすめです。
なお、毎年2月1日~9日の期間は源氏庭の見学は休止していますのでご注意ください。
また、2024年の3月3日(日)は特別拝観休止となります。※通常拝観は行っています。
住所:京都市上京区寺町通広小路上ル北之辺町397
TEL:075-231-0355
営業時間:9~16時
拝観料:大人500円、小・中学生400円
休み:無休(2月1日~9日源氏庭の拝観は休止※境内の拝観は可能)
アクセス:市バス停府立医大病院前から徒歩5分、京阪鴨東線神宮丸太町駅から徒歩15分
Photo:鈴木誠一
Text:津曲克彦
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