【中国・四国】偉人や各国ロイヤリティに愛された宿が集結!「日本 味の宿」5選
岡山県の奥津温泉、島根県のさぎの湯温泉など、湯量の豊富さを誇る知る人ぞ知る名湯が揃う中国エリア。文化人や各国のロイヤリティとゆかりの深い宿が点在しています。四季折々の表情を見せる庭園や、世界遺産の厳島神社やモミジダニを望む絶景自慢の宿など、その魅力はさまざま。今回は、JTBのムック『日本 味の宿』から、中国エリアの厳選された名宿を5軒ご紹介します。
Summary
足元からこんこんと湧き出る湯を堪能する、偉人に愛された宿 「名泉鍵湯 奥津荘」/岡山県・奥津温泉
岡山県の美作三湯の一つ、岡山市内から車で1時間半ほど山あいに“足踏み洗濯”の風習が残る奥津温泉があります。吉井川の清流に沿うように立ち、棟方志功はじめ多くの偉人に愛された「名泉鍵湯 奥津荘(めいせんかぎゆ おくつそう)」は、昭和2年(1927)の創業当時から全国的にも類いまれな名泉を自家源泉で持っています。唐破風の堂々たる玄関を入ると、一面に敷かれた赤い絨毯、窓格子や欄間、館内のモザイクタイルなどから、創業当時の和モダンを感じられます。
客室は全8室。1階の「梅」は広めのシャワースペースと内風呂が付いた和室にツインベッドルームが備わり、2階には吉井川のせせらぎが心地よいマッサージチェア付きの洋室も。銀杏の古木が立つ中庭を抜けた、離れ「清閒亭(せいかんてい)」も人気の客室で、宿名物の「鍵湯」と同じ源泉を引く露天風呂には、常にかけ流しの湯があふれています。
名物の自家源泉は毎分246ℓの湧出量を誇り、いっさいの加水・加温や循環もなく、足元湧出なのでまったく酸化(劣化)していないピュアな温泉に入ることができるのです。吉井川の自然の川底をそのまま生かした浴槽の「鍵湯」は、源泉のすぐ上が浴槽なので足元から湧出したばかりの湯を感じられます。一方、岩のくぼみを生かし立ったまま入浴できる「立湯」は、まるで川の中にいるようです。同じ「鍵湯」の湯を引く貸切風呂「川の湯」と「泉の湯」は、浴槽がタイル張りになっているので足元が不安な方はこちらへ。
夕食は奥津や近隣県の食材を使った9つのコースから選べ、吉井川を望む食事処で。「旬の会席コース」をはじめ津山名物の牛肉料理「そずり鍋」がメインの「牛肉の郷土料理コース」、秋冬なら地産のカニやマツタケ、ぼたん鍋などの季節のコースも人気です。創業当時のレシピで作る「強蒸し」など、すべてに温泉水を使い素材の本来の味を丁寧に生かした料理を地酒と共に楽しみましょう。
■名泉鍵湯 奥津荘(めいせんかぎゆ おくつそう)
住所:岡山県苫田郡鏡野町奥津48
TEL:0868-52-0021(受付9~21時)
チェックイン/アウト:15時/10時
料金:1泊2食付 4万1800円~(別途入湯税150円)
※宿泊は12歳以上
山陰の豊かな自然のなかで、時を忘れて田舎時間を「さぎの湯荘 別邸鷺泉【ROSEN】」/島根県・さぎの湯温泉
島根県安来市に、古くは戦国時代の尼子(あまご)氏の御殿湯として重宝された薬用高いラジウム泉、さぎの湯温泉が湧き出ています。アメリカの日本庭園専門誌で20年連続1位を獲得した足立美術館からすぐの立地に立つ、「さぎの湯荘 別邸鷺泉【ROSEN】(さぎのゆそうべっていろせん)」は、湯量豊富なさぎの湯温泉を源泉にもち、滞在中はいつでもかけ流しの湯を楽しむことができます。五代目主人の田辺大輔さんは、豊かな自然と田園に囲まれ、時を忘れ「田舎時間」を過ごしてもらいたいと話します。
築150年の出雲の古民家 をリノベーションした母屋を抜けると、離れ棟の「別邸 鷺泉【ROSEN】」の2室「田の蔵」と「野の蔵」へ。築100年という蔵をリノベーションした2階建ての2室はほぼ同じ間取りになっています。1階リビングスペースはモダンな造りですが、2階は蔵を生かした三角屋根の屋根裏部屋風な造りに、ベッドが2つ並びます。小さなテーブルとイスはワーケーションにもちょうどよく、窓から眺める田園風景に癒やされ仕事もはかどります。
源泉温度が50~54℃とやや熱めの湯は、季節により加水はあるものの、館内すべての風呂で常にかけ流しされています。離れ棟の2室には、庭園付露天風呂と足湯、モダンなシャワーブースを併設。使い勝手のよい洗面台とバスローブも用意され、好きな時に温泉に入ることができます。もちろん、本館にある山々を望む大浴場と露天風呂、2つの貸切風呂も利用できます。毎朝すべて湯を入れ替えているため、いつでもどこでも新鮮な湯が楽しめます。
魚は鳥取の境港から、米は島根の地産のものを使用するなど、夕食も朝食も素材にこだわって提供しています。別邸の宿泊客は母屋の個室が食事処となります。夕食は「季節の会席コース」が定番で、「しまね和牛」、カニ、ノドグロなどの豊富な食材が少しずつ彩りよく盛られ、大山の地ビールや出雲の地酒にもよく合います。季節のプランなら、夏は「しまね和牛会席」、秋冬は「カニづくし会席」、冬は「ボタン鍋」も人気で、これを目当てに訪れるリピーターも多いそう。
■さぎの湯荘 別邸鷺泉【ROSEN】(さぎのゆそう べっていろせん)
住所:島根県安来市古川町478-1
TEL:0854-28-6211
チェックイン/アウト:15時/10時
料金:さぎの湯荘 別邸鷺泉【ROSEN】1泊2食付 5万5000円~、さぎの湯荘 本館1泊2食付 2万5300円~(共に別途入湯税150円)
遊び心あふれる空間と美しい庭園に癒やされる「庭園の宿 石亭」/広島県・廿日市市
世界遺産・厳島神社で知られる宮島の対岸にある「庭園の宿 石亭(ていえんのやどせきてい)」。個性的なギミックを備えた空間と地元色豊かな料理が楽しめる、遊び心の詰まった宿です。
「庭園の宿」と冠するだけあって、特徴はやはり敷地内に広がる美しい庭です。宮島と経小屋山(きょうごやさん)を借景とした1500坪の日本庭園は、主人・上野純一さんが先代から受け継いだ石亭の“顔”です。春は桜や藤、夏は新緑など四季折々の風情とともに、ぜひ散策を楽しんでみてください。
客室は、この庭を囲むようにコの字型に並びます。宮島を見晴らす母屋の2階にある3室のほかに、一棟貸しの離れが8室あります。書斎を改築した「安庵(あんあん)」、昭和初期の民家を移築した「居中庵(こちゅうあん)」など、離れはそれぞれ趣が異なり魅力的です。また客室には、上野さんがセレクトした本やCDが置かれており、ジャンルもさまざまなので、小説や画集、専門書から絵本まで、好奇心の赴くままにページをめくってみては?素敵な出合いがあるかもしれませんよ。
旅の疲れがとれたら、館内の探検に出発しましょう。母屋や離れには、床下や建物の角の空間を改装した隠し部屋のようなフリースペースが。北欧製の椅子が並ぶ「床下サロン」、洞窟のような「凡々洞(ぼんぼんどう)」など、お気に入りの場所を見つけてみてください。
遊び心に満ちた空間は、先代主人であるお父様から受け継いだ建物に、上野さんと弟さんが少しずつ手を加えてつくり上げたもの。ワクワクが止まることなく、改築は今後も続けていくつもりなのだとか。どんな仕掛けが加わっていくのか、今後も楽しみです。
料理長・野島裕也さんが手掛ける夕食は、近海産の魚介と広島の里の幸をおりまぜた彩り豊かな懐石料理。既製品をいっさい使わない繊細な味わいにこだわりが感じられます。
特に注目したいのが穴子料理。実は、石亭の母体はJR宮島口駅前にある穴子めしの老舗「うえの」。確かな技術で調理された穴子には臭みがなく、口の中でほっくりとほどける食感が絶妙です。
宿泊客を楽しませる仕掛けが随所にみられる「庭園の宿 石亭」。2度、3度と訪れて、新たな発見に心を躍らせたいものです。
■庭園の宿 石亭(ていえんのやど せきてい)
住所:広島県廿日市市宮浜温泉3-5-27
TEL:0829-55-0601
チェックイン/チェックアウト:15時20分/10時20分
料金:1泊2食付3万8500円~(別途入湯税150円)
宮島の自然と老舗のおもてなしを五感で堪能!「みやじまの宿 岩惣」/広島県・廿日市市
海上にそびえる大鳥居で知られる世界遺産の厳島神社。その御神体である弥山(みせん)のふもと、紅葉の名所として知られるもみじ谷の入口にたたずむ宿が「みやじまの宿 岩惣(みやじまのやどいわそう)」です。
安政元年(1854)、もみじ谷を訪れた人々をもてなす茶屋として創業し、政財界の要人や文化人、各国のロイヤリティにも愛されてきました。
宿泊客を迎える木造の母屋玄関は、明治時代に建てられたもの。古きよき時代の面影を残す重厚なたたずまいが、あわただしい日常を忘れさせてくれます。
岩惣の自慢は、宮島の四季を堪能できる抜群のロケーションです。昭和初期に建てられた本館からはもみじ谷が、新館からは厳島神社と瀬戸内海が見渡せます。
また、一度は泊まってみたいのが、もみじ谷の谷川に沿って並ぶ4棟の離れ。大正~昭和期に建てられた、1棟ごとに趣の異なる純日本風の平屋造りの建物です。作家・吉川英治が逗留した「洗心亭」など、各部屋に残るエピソードにも注目しましょう。
旅の楽しみである食事は、京懐石で経験を積んだ料理長が腕を振るい、四季の海の幸・山の幸を盛り込んだ懐石料理を提供しています。
秋~春の献立には、広島名物の牡蠣を堪能できます。近海で水揚げされた新鮮な牡蠣は、驚くほど大粒で肉厚!レモンと醤油でいただく生牡蠣はもちろん、きつね色にカラリと揚がった牡蠣フライも食欲をそそります。
実は広島みやげの定番「もみじ饅頭」の発案者は、なんと明治時代の岩惣四代目女将。「お客様のために宮島らしいおみやげを」と、ハイカラなカステラ生地でもみじ型の饅頭を作ったのが始まりだそうです。お客様を思う心から生まれたもみじ饅頭は、今も宿泊者へのお茶菓子として提供されています。
昔と変わらず「お客様に喜んでいただきたい」というおもてなしの心が息づき、宮島きっての老舗旅館ながら、肩肘張らない居心地のよさを感じさせてくれます。
■みやじまの宿 岩惣(みやじまのやど いわそう)
住所:広島県廿日市市宮島町もみじ谷
TEL:0829-44-2233(9~21時)
チェックイン/チェックアウト:15時~19時30分/10時(1名1時間1000円で最長12時まで延長可)
料金:1泊2食付2万9700円~(別途入湯税150円)
コンセプトは「湯治モダン」。ラグジュアリーな温泉リゾート「別邸音信」/山口県・長門湯本温泉
室町時代に開湯し、湯治場として600年もの歴史を誇る長門湯本温泉。この温泉郷に立つ「別邸音信(べっていおとずれ)」は、湯治宿にモダニズムを融和させた、高級感のある温泉リゾートです。エントランスをくぐると、静けさをたたえた美しい水盤が広がり、水盤に沿って回廊を歩くと広々としたホールが目の前に現れます。ゲストはここで靴を脱ぎ、館内へと上がります。ほとんどのエリアが畳敷きか床暖房になっているため、足裏にその感触が心地よく伝わります。
客室は広い敷地内にわずか18室。ゆったりとした室内は、和モダンな雰囲気です。客室「タイプC」は、のびのびとくつろげるソファスペースに加え、10畳の和室、さらにツインベッドが置かれるなどゆとりある造り。大きな窓からは木々が望め、春には満開の桜も見られます。ほかに客室は計7タイプ。ホームバーやホームシアターを設けた部屋もあり、おこもりステイに最適です。すべての客室に源泉かけ流しの露天風呂が備わります。
夕食は〝その土地で採れたものを、その土地の料理法で、その土地で食す〟という「三土料理の哲学」を基本にした会席料理。「別邸音信」は山あいにありますが、車で15分ほど行けば日本海に出るため、夕食にも新鮮な魚介類がふんだんに盛り込まれます。冬季は山口県自慢のフグも味わえますよ。京都で研鑽を重ねた料理長・武田純一さんの手による会席料理は美しく、料理が運ばれるたびにうっとりします。食事は朝夕とも「日本料理 雲遊」の個室に用意されますが、プランによっては部屋食も可能です。
「別邸音信」宿泊者専用の男女別大浴場は、ともに内湯、露天、岩盤浴付き。泉質はアルカリ単純泉で肌あたりが柔らかく、朝に夜にと何度でも入りたくなる湯ざわりです。多くのゲストが客室露天を利用するため、大浴場は、時間帯によって貸切状態になることも。広々とした空間で、心ゆくまで湯浴みが満喫できます。
■別邸音信(べっていおとずれ)
住所:山口県長門市深川湯本2208
TEL:0837-25-3377
チェックイン/アウト:14時/11時
料金:1泊2食付4万4000円~(別途入湯税300円)
※13歳未満は入館不可
いかがでしたか?中国エリアのみならず、日本全国から厳選の宿を集めたムック『日本 味の宿』が発売予定。次の旅行の計画にぜひご活用ください!
ムック『日本 味の宿』は、「あじわい深く」「地元に根付いた」「野にあるごとく大らかな」「宿とは何かを問い続ける」「どこにもない」そんな条件を満たした、ニッポンならではの「味わい」を提供する上質で個性ゆたかな名宿32軒を1冊にまとめました。宿こだわりの味、朝ごはん、おすすめ&注目ポイントをステキな写真と共に楽しんでください。
Text:安岡遥(エディットプラス)/宮本喜代美
Photo:ハリー中西/増田えみ/鈴木誠一/松隈直樹
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