2024年は横浜がアートの街に!「第8回 横浜トリエンナーレ」開催&横浜美術館リニューアルオープン【編集部のおでかけキロク】
日本でも有数のアートイベント、「第8回 横浜トリエンナーレ」が2024年6月9日(日)まで開催!横浜の街中を舞台に、さまざまな現代アート作品が展示されています。なかでもメイン会場のひとつである「横浜美術館」は、この横浜トリエンナーレと同時タイミングで3年ぶりのリニューアルオープン!この春はアートを見に横浜へおでかけしてみませんか。
Summary
「横浜トリエンナーレ」ってどんなイベント?
「横浜トリエンナーレ」とは、3年に一度横浜で開催される現代アートの祭典です。2001年から開催している、国内の芸術祭のなかでは歴史の長いイベントで、今回の第8回では、世界31の国と地域から参加している93組のアーティストの作品が集結しています。しかもそのうちの31組は日本で初出展。ここでしか見られないアート作品が集まっているんです。
今回のテーマ「野草:いま、ここで生きてる」は、中国の小説家である魯迅が執筆した詩集「野草」に由来したもの。差別や紛争などあらゆることが起こっている現代、野の草のようにもろく無防備な私たちがたくましく生き抜こうとする姿に目を向けています。
メイン会場は、3年ぶりにリニューアルオープンする「横浜美術館」と、馬車道エリアにある「旧第一銀行横浜支店」、「BankART KAIKO」です。また、「クイーンズスクエア横浜」と、みなとみらい線の「元町・中華街駅連絡通路」の無料空間にも作品が展示されるので、横浜を巡りながら現代アートにふれることができます。
メイン会場である「横浜美術館」は3年ぶりにリニューアルオープン
今回の展覧会と同タイミングで、約3年休館していた「横浜美術館」がリニューアルオープン!エレベーターの新設や多機能トイレ、授乳室を完備したことで、初めて現代アートを鑑賞する人や子ども連れ、体調が不安な人も含め、誰もが心地よくアートを体験できるようになっています。
今後も2024年11月には、無料で入れる新しいギャラリー「ギャラリー8」・「ギャラリー9」や、アートにまつわる絵本や専門書が揃う美術図書室などが登場予定。
2025年2月には、美術館の象徴「グランドギャラリー」を中心とする無料エリアが、より自由に開かれた「じゆうエリア」に生まれ変わってオープン予定!横浜ならではのカフェとミュージアムショップも新しくできるそうで、今後のリニューアルも引き続き楽しみですね。
「横浜美術館」で見られる注目の「横浜トリエンナーレ」参加作品を紹介
それではさっそく「横浜美術館」に展示されている作品をいくつかご紹介します。
入り口から最初に目に入る「グランドギャラリー」の展示チャプター『いま、ここで生きてる』は、まるでキャンプ場のような賑わい。その姿は、自然に囲まれたキャンプ場でもあり、人々が身を寄せ合う難民キャンプでもあり…。あらゆる非常事態を前にしたアーティストたちの思考が作品になって表現されている空間です。
北欧のトナカイ遊牧民・サーミ族の血をひくナンゴの作品は、その土地にある素材や技術を組み合わせて憩いのスペースをつくるという、サーミ族の歴史と文化をまるごと表現しています。移動しながらその場に必要なものだけを得て、決まった財産を持たないサーミ族の生き方は、私たちの暮らしを見直すためのヒントになるかもしれません。
現地のものを素材に使うという考え方から、この作品には神奈川県内で自ら採取した木や竹などが使われているそう。美術館の荘厳な御影石の間に、木の切れ端など日ごろ見るあれこれが散らばっている様子がとても新鮮でした。
「グランドギャラリー」内に常に流れているビデオは、ウクライナのアーティストグループ「オープングループ」の映像。ロシアによるウクライナ侵攻にともなってリヴィウの難民キャンプに逃れた人々に取材したもので、音によって兵器の種類を聞き分けた上で、いかに行動するべきか、というマニュアルのもと、その武器の音を口で再現する人々の様子をまとめています。生きるために新たな知識が必要となったウクライナの現実が生々しく伝わってくる作品です。
ガーナーは、消費社会やそのなかで広告によって作られた男女のイメージに行きづらさを感じた経験をもとに作品を制作しているアーティスト。今回の『ヒトの原型』では、肌の色・年齢・性別の異なる身体のパーツを組み合わせることで、多様性のあり方を問いかけています。
『宿舎』は、2018年に台湾の工場で働くベトナム人女性たちが、待遇改善を訴え寮に立てこもってストライキをした出来事がきっかけで生まれた作品。ストライキの場が、暮らしのなかでみんなが集う広場のように機能したのを見て、二段ベッドで組み立てたセットで、ストライキを再現するワークショップを行ったのだそう。
この作品、なんと実際にベッドに腰かけて、そんなストライキの風景の中に入ることができるんです。
ベッドに置かれているテレビやヘッドホンからは、普通に冗談を言ったり退屈そうだったりする彼女たちの日常が垣間見えました。自分と彼女たちの違いって何もないんだな…と考えさせられる作品でした。
このほかにもあらゆる地域や観点で誰かが直面している問題が、アートという形で展示されています。見終わった後には、自分が普段意識していない世界を少し身近に感じて、背筋が伸びる思いがしました。
横浜の街なかにも出現するアートが気になる
「横浜美術館」を飛び出したアートにも注目。横浜の街を巡りながらアートを楽しむことができます。「横浜美術館」から一番近いのは、「クイーンズスクエア横浜」に飾られている写真家・北島敬三氏と美術家・森村泰昌氏がコラボした作品。横浜トリエンナーレのタイトルにもなっている『野草』の作者である魯迅に森村氏が変装することで、魯迅も日常を生きる匿名の一人であることを表現しています。
みなとみらい線で馬車道駅に着いたら「旧第一銀行横浜支店」、「BankART KAIKO」を順番に訪れましょう。この2つの会場は共通して、イスラエルの作家のドリット・ラビニャンの小説『すべての河』からテーマが採用されており、大きな時代の流れが個人の人生にもたらす影響の大きさと、それに抗って表現を続ける人々に焦点が当てられています。
「旧第一銀行横浜支店」のレトロで美しい建物の中に再現された、台湾での社会運動の一幕。この横浜トリエンナーレならではの光景に心がざわつきつつ、自分が生きていない時代や環境に思いを馳せました。
「アートもりもり!」やパブリックプログラムなどで横浜トリエンナーレをさらに楽しむ!
期間中には、アーティストと一緒になってろうそくの設置や点灯に参加できる「アメリカ山公園ペーパーランプイベント『野草の灯』」(2024年5月3~4日に開催予定)や、「横浜美術館」内の無料観覧エリアの作品が楽しめる「はじめての横浜トリエンナーレ『ちょこっとガイドツアー』」など多彩なパブリックプログラムが予定されています。
また、同期間で「野草」の統一テーマで展開される文化・芸術イベントが「アートもりもり!」として多数開催されます。
本展覧会とのセット券もある「BankART Life7『UrbanNesting:再び都市に住む』」や、無料で鑑賞できる「石内都『絹の夢―silk threaded memories』」など、横浜駅から山手地区にわたる街なかに点在したアートを見に行ってみてくださいね。
チケット情報や基本の巡り方を紹介
チケットは、公式サイトまたは会場窓口で購入できます。会場窓口は、「横浜美術館」「BankART Station(みなとみらい線新高島駅B1F)」、「黄金町バザールインフォメーション(高架下スタジオSite-Aギャラリー)」の3スポットです。
チケットは3種類。「野草:いま、ここで生きてる」のメイン会場3つを巡れる鑑賞券が2300円、鑑賞券と「BankART Life7」・「黄金町バザール 2024」のパスポートが一緒になったセット券が3300円、すべての会場に何度でも入場できるフリーパスが5300円と、自分の鑑賞スタイルに合わせて購入が可能です。フリーパスのみ「横浜美術館」だけの取り扱いなので要注意。
すべての作品を一気に見たいなら、「横浜美術館」で鑑賞したあと、「クイーンズスクエア横浜」に立ち寄り、横浜中華街行きのみなとみらい線に乗って、馬車道駅にある「旧第一銀行横浜支店」、「BankART KAIKO」を巡って、最後に「元町・中華街駅連絡通路」を訪れましょう。
自分の価値観が変わるようなメッセージ性を持った、世界中のアートが集う「横浜トリエンナーレ」にぜひ出かけてみてくださいね。
■第8回 横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」概要
メイン会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)、旧第一銀行横浜支店(横浜市中区本町6-50-1)、BankART KAIKO(横浜市中区北仲通5-57-2 KITANAKA BRICK & WHITE 1F)
TEL:050-5541-8600(9~20時)
営業時間:10~18時(入場は閉場の30分前まで)※2024年6月6日(木)~9日(日)は20時まで開場
会期:2024年3月15日(金)~6月9日(日)※休場日:木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
料金:鑑賞券大人2300円、学生(19歳以上)1200円/セット券大人3300円、学生2000円/フリーパス大人5300円、学生3000円
Text&Photo:のじょ(中條望)
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。