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【茨城県 牛久】日本初の本格的ワイナリーは牛久にあった! 牛久シャトーで明治人のチャレンジ精神にふれる

【茨城県 牛久】日本初の本格的ワイナリーは牛久にあった! 牛久シャトーで明治人のチャレンジ精神にふれる

日本遺産 ワイン ロケ地 重要文化財
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国外のコンクールで高い評価を受け、人気急上昇の「日本ワイン」。そのルーツは明治時代の山梨県の甲州と茨城県の牛久にありました。「山梨県は知ってたけど、え、牛久?」なんて思った人もいるかも。今回は明治36年(1903)に誕生した日本初の本格的ワイン醸造場・牛久シャトーを訪ねました。

Summary

そもそも「日本ワイン」って何のこと?

簡単に言うと、日本で育てられたブドウを使って日本で醸造したワインのことです。「日本ワイン」という呼称は2018年に施行された「果実酒等の製法. 品質表示基準」という法律で定められました。施行以前は輸入ブドウやブドウ果汁を使って国内で生産したものは「国産ワイン」と名乗ることができましたが、この法律により「国産」でなく「国内製造」とよぶことになりました。国産ブドウで醸造する和文化の結晶である日本ワインと、リーズナブルな価格で安定したおいしさ提供する国内製造ワイン。どちらも大きな需要がありますから、そのすみ分けという意味合いがあります。

明治時代に川上善兵衛が生み出したマスカットベリーAは、今も赤ワイン原料の主力種
明治時代に川上善兵衛が生み出したマスカットベリーAは、今も赤ワイン原料の主力種

牛久シャトーの歴史を教えて

牛久シャトーは明治36(1903)年に実業家の神谷傳兵衛(かみやでんべえ)が造った日本初の本格的ワイン醸造場です。牛久が選ばれたのは、ブドウ栽培に必要な広大な土地と日本鉄道(現JR常磐線)の開通で東京との交通の便がよかったからです。この地でブドウ栽培を開始する一方で、娘婿の神谷傳蔵(かみやでんぞう)をフランスボルドー地方に派遣。現地の技術を導入して、葡萄の栽培からワインの醸造・瓶詰めまでを一貫して行なっていました。まさに日本ワインのルーツなのです。
ちなみにワイン醸造場を指す言葉としてはワイナリー、ドメーヌ、シャトー、メゾンなどがありますが、フランス語で「城」を意味する「シャトー」の名を冠する生産者が多いのはボルドー地方に多く、そのほとんどはまさにお城のような豪華な建物の周りをブドウ畑が取り囲んでいることが多いそう。技術だけでなくスタイルもボルドー仕込みということになりますね。

明治44年(1911)頃の牛久シャトー。建物の周りにブドウ畑が広がり、まさにボルドーのシャトーのよう
明治44年(1911)頃の牛久シャトー。建物の周りにブドウ畑が広がり、まさにボルドーのシャトーのよう

牛久シャトーでは、収穫したブドウは畑からトロッコで運ばれたあと、手動式小型起重機で2階の大きな扉から搬入。このフロアで除梗破砕(じょこうはさい)されて、床板に等間隔に開けられた穴から1階の醸造桶に流し入れて一次発酵させる牛久ワイナリー独自のシステムでした。

現在の1階の様子
現在の1階の様子
明治40年(1907)頃の醸造風景
明治40年(1907)頃の醸造風景

歴史的価値が認められて、平成19年(2007)年には「近代化産業遺産」に認定、平成20年(2008)には国の重要文化財に指定。令和2年(2020)には「日本遺産」に認定されています。

牛久シャトーを造った神谷傳兵衛はどんな人?

幕末の安政3年(1856)、現在の愛知県に生まれました。生家は豪農でしたが次第に没落したため、幼くして働きに出ました。転々と奉公する中で、わずか8歳で酒の商いに興味を持ったそう。
横浜の外国人居留地でフランス人が経営するフレッレ商会という洋酒醸造所で働いていた頃、突如、原因不明の病気になって衰弱するばかり。働き者で誠実な傳兵衛の容態を案じたフレッレ商会の経営者がワインを飲ませたところ、容体は好転。その後も少しずつ飲み続けたところ完治。傳兵衛はワインのもつ薬効に驚きました。
ですが当時、外国から輸入するワインは極めて高価でした。伝兵衛はふつうの日本人が飲めるよう、国内でワインの醸造をできないものかと考えるようになりました。

「日本ワイン」の礎を築いた神谷傳兵衛
「日本ワイン」の礎を築いた神谷傳兵衛

その第一歩として、浅草に「みかはや銘酒店」を開業し、にごり酒の一杯売りを始めました。のちににごり酒から洋酒に変更。輸入したワインをもとに日本人の口に合う甘口に再製。「蜂印香竄葡萄酒(はちじるしこうざんぶどうしゅ)」と名づけられた甘口ワインは、ハイカラなポスターの宣伝効果もあいまって、一大ブームとなりました。年配の方なら、現在の渋谷スクランブル交差点の角の映画館に、「蜂ブドー酒」という巨大な看板があったのを記憶しているかもしれませんね。

蜂印香竄葡萄酒の人気に大きな影響を与えたハイカラなポスターたち
蜂印香竄葡萄酒の人気に大きな影響を与えたハイカラなポスターたち

ちなみに「みかはや銘酒店」はのちに「神谷バー」と改名。そう、浅草を代表するカクテル「電気ブラン」が名物のあの老舗店。日本初のバーでもあります。「神谷バー」という名前は創業者・神谷傳兵衛の名前からきたものだったのですね。

牛久シャトーでグルメやショッピングを楽しむ

その1 神谷傳兵衛記念館を見学する
神谷傳兵衛記念館は、シャトーカミヤ旧醸造場の醗酵室内にあります。ここでは上記の歴史をもっと詳しく知ることができます。関わりのあった著名人、小説にも記された電気ブランなど、「へ~!」「そうだったのか!」の連続。明治人の進取の気性と勇気と実行力に驚かされます。

煉瓦造、建築面積436.75㎡、地上2階地下1階の建物は国の重要文化財に指定されている
煉瓦造、地上2階地下1階の建物は国の重要文化財に指定。2階の赤い扉が、かつてブドウが運び込まれた開口部
貴重な資料や写真、当時の醸造道具などが展示されている
貴重な資料や写真、当時の醸造道具などが展示されている

その2 煉瓦造のワイン貯蔵庫でフレンチを味わう
旧醸造場の貯蔵室を改装した歴史を感じる店内で、旬の食材を活かしたカジュアルフレンチを味わえます。ワインはもちろん、牛久シャトー醸造のクラフトビールも楽しめますよ。

煉瓦造の貯蔵庫も国の重要文化財
煉瓦造の貯蔵庫も国の重要文化財
天井が高く、煉瓦の温もりが感じられる店内
天井が高く、煉瓦の温もりが感じられる店内
ランチ、ディナーともにコース料理。ランチ2500円~、ディナー3500円~。写真はイメージ
ランチ、ディナーともにコース料理。ランチ2500円~、ディナー3500円~。写真はイメージ

■レストラン
電話:029-896-3612(レストラン直通)
営業時間:11時30分~14時LO、17時30分~20時LO
定休日:公式ウェブサイトを参照

その3 ショップでおみやげ探し
牛久シャトーで栽培されたマスカット・ベーリーAと2代目神谷傳兵衛の故郷・山形県産のマスカット・ベーリーAから醸したワインや、牛久シャトーで醸造したクラフトビール、ワイン入りケーキなどオリジナル商品はもちろん、茨城県内の特産品が揃います。1杯500円で4種類のワインを試すこともできます。季節ごとに表情を変える屋外で味わってみてはいかが?

マスカット・ベーリーA 2022 F+(右)、
「マスカット・ベーリーA 2022 F+」(右)と、「マスカット・ベーリーA 2022 A+」(左)いずれも4000円
4種類の牛久産クラフトビールも人気
4種類の牛久産クラフトビールも人気

その4 イベントを楽しむ
ロマンティックな園内では、クリスマスなど多彩なイベントも開催されます。約250本の桜が咲き誇る園内は牛久屈指の桜の名所。2024年は3月23日~4月7日に「うしくの桜」と題して桜まつりを開催。期間中はレストランで桜をテーマにした特別料理が提供され(要予約)、特設テントでは桜色の「テナーロゼワイン」1杯300円も販売。4月13日までライトアップも実施されますよ。

ライトアップに浮かび上がる桜と牛久シャトー
ライトアップに浮かび上がる桜と牛久シャトー

近代の「日本ワイン」をけん引した牛久シャトーですが、2018年にいったん閉鎖を余儀なくされました。ここで牛久の誇りであるシャトーの存続を望む市民が声をあげ、2020年6月に新たなスタートを切りました。牛久シャトーは、ワインだけでなく、住民の心に地域への誇りと愛着「シビックプライド」を醸成してきたことがわかりますね。
今度のお休みは、牛久シャトーで本格日本ワインを楽んでみませんか?

■牛久シャトー(うしくしゃとー)
住所:茨城県牛久市中央3-20-1
TEL:029-873-3151
営業時間:10~16時(見学施設、店舗により異なる)
定休日:無休(年末年始を除く。ただし施設点検等の臨時休館あり)
料金:入館無料
アクセス:JR常磐線牛久駅東口(シャトー口)から徒歩約8分

Text:松尾裕美 Photo:村岡栄治、牛久シャトー株式会社、牛久市教育委員会

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。


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