【おとなのソロ部】元・町工場をリノベした書店、上野「ROUTE BOOKS」。本と出合い、家づくりの刺激を受けるひとり時間
JR上野駅から徒歩5分。台東区役所近くの裏路地にあるスペース「ROUTE COMMON(るーと こもん)」の一角に、書店「ROUTE BOOKS(るーと ぶっくす)」はあります。こちらを手がけるのは、洗練されたリノベーションで定評のある工務店「ゆくい堂」。書店のほか、ベーカリーやグリーンショップも併設されています。数々のリノべ実績をもつからこそのユニークなセンスの内装や家具に囲まれた空間は、どこか懐かしいようで洗練された空間。ゆっくり過ごしつつ、新しい発見ができる場所です。
ほかにはない選書だからこそ、新しい本との出合いがある
上野駅を降り、台東区役所方面へ。路地を歩いていくと、両側に何やら趣のある建物が現れます。この一帯が「ROUTE COMMON」。駅方面を背にして右側に書店とベーカリー、左側に施設を手がける「ゆくい堂」のアトリエとグリーンショップがあります。
この場所は、もとは10年ほど空き物件となっていたメッキ工場だったとか。リノベーションを手がける工務店「ゆくい堂」の事務所を移転した際に「スペース一帯で何かおもしろいプロジェクトができたら」と物件を借りたことがきっかけだそう。これまでのリノベで集まった廃材などを使い、工場跡に一からショップを造りました。最初にオープンしたのが書店で、中にはカフェがあったり、購入できるグリーンや雑貨があったり。陶芸体験ができるスタジオもあります。
「ROUTE COMMON」の内装に使われているインテリアや家具は、すべて廃材を再利用して作られたもの。「ゆくい堂」が大切にしているリユースやサステナブルの精神を反映しています。無造作なようでセンスのよさが感じられる、心地のよい空間。アットホームな雰囲気も漂います。
今回の一番のお目当ては、ユニークなラインアップが揃う書店。入り口の扉を開けると、目の前に広がるのは、おしゃれな部屋のような空間。
「ROUTE BOOKS」の選書を担当するのは、編集者やライターとしても活動している石川歩(いしかわあゆみ)さん。職業柄、本との出合いも多い石川さんだからこその、研ぎ澄まされた目利きで選ばれた本が並びます。
そのこだわりを伺うと、「いろんな人に手に取ってもらえるようにジャンルなどを決めつけることなく、手に取りやすい本から固い内容の本まで幅広く選んでいます。読了後に『さあ、ここから自分で思考を巡らせてみようか』と思える本が多いです」とのこと。一般的な書店に置かれるような新刊や話題の本ではなく、「本好きがおもしろいと思える」本が並びます。
「ROUTE BOOKS」で扱う本の一部は出版取次を介しておらず、すべて石川さん自身で取り寄せているというこだわりよう。なかには、著者から直接仕入れている自費出版の本も。
陳列の仕方にもこだわっているそうで、探しやすいようにカテゴライズされているというよりは、棚に置かれている本をひとつひとつ見ていくと初めて「こういう方向性のコーナーなんだ」という、「文脈」が分かるような構成にしているとか。
例えば料理関連の本が並ぶ棚には、レシピだけでなく、料理に関連する漫画やエッセイも。興味がありそうな棚に着目し、ひとつひとつ追っていくと興味の方向に近い本と出合いやすくなっています。だからこそ、これまで接点のなかった新しい本との出合いが生まれるのです。
例えばこちらは、「自分を見つめ直す」文脈の棚。自己啓発をうたう本もあれば、「一人」について語られているものや、「ネガティブ」という感情に着目したものも。石川さん自身が「おもしろい」と思ったものばかりが置かれています。
デジタルが普及して本離れが進んでいるともいわれている現代ですが、見たことのない視点の本がこんなにあるなんて! 題名のインパクトに惹かれてみたり、かわいい装丁にそそられてみたり。「こんな本もあるのか」という、新しい心の扉を開くきっかけになってくれそうです。自分の興味が惹かれる棚を重点的に見ていくと、思わず時間を忘れてしまいます。
コーヒーとパンを片手に、買いたてほやほやの本を読む
「ROUTE BOOKS」では、購入した本をイートインスペースで読むことができます。本と出合ってわくわくした気持ちの鮮度が高いままに、洗練された空間で早速読むことができる。これが、なんともうれしい!
さらに「ROUTE BOOKS」店内では、向かいにある併設のベーカリー「Route pain」のパンも食べることができます。「Route pain」のパンは、濃厚でコク深いバターと牛乳を使い、素材にこだわったやさしい味。
ドリンクとパンを購入したら、早速くつろぐ席を探しましょう。さまざまなデザインのテーブルと椅子があるので、直感で座ってみたいところへ。ちょうど窓際の席が空いていたので、今日はこちらへ座ることにします。サボテンなどのグリーンに囲まれ、落ち着いた雰囲気が心地いい。周りのお客さんも読書をしたり仕事をしたりと、みな思い思いにゆったりとしたくつろぎの時間を過ごしています。
おいしいパンとコーヒーを片手に、じっくり選んだ買いたてほやほやの本を読む。これぞ、贅沢なひとり時間の過ごし方の極み!
本を読み進めていくと、空間にとけこんで気持ちが落ち着いていくのを感じます。なんだか思考もポジティブになり、新しいアイデアも湧き出てきそうです。
グリーン探しや陶芸もできる。センスある空間での気づきも
読書をしてゆっくり過ごした後は、ほかのスペースも少し見てみましょう。「ROUTE BOOKS」店内にある階段からは、2階に上がることができます。階段脇にはうっそうと茂る観葉植物が。「ROUTE COMMON」では、至る所に観葉植物がさりげなく配置されており、こちらはすべて購入することが可能です。
2階にもテーブルと椅子がずらりと並んでいます。ここでも本を読んだり作業をしたりしてOK。奥には、週末限定のランチで使用されているキッチンがあります。とくに金・土曜の「ディンディカルビリヤニ」1800円、日曜の「チェティナード ヴィルンドゥ(ミールス)」2300円は、ファンが多い人気のメニューだそう。
2階エリアの半分は、陶芸ができるスペース。陶芸体験「ROUTE POTTERY(るーと ぽってりー・1時間程度3800円~)」は完全予約制で、平日はおひとりさま利用が多いようです。自分とじっくり向き合いたいなら、平日が狙い目のようですよ。
階段を降りて、1階へ。先ほどは本選びに夢中であまり気づきませんでしたが、本と本の間に、さりげなく雑貨も置かれ、販売されています。こちらは、廃材で作られたブックマーク。お気に入りのブックマークにしたら、本を読む時間がもっと大切なものになりそうです。
ヴィンテージの食器も発見しました。ちょっとした買い物もできてしまうなんて、心が浮きたちます。「かわいい雑貨、あるかな~」と見て回るのも楽しそう。
道路を渡った向かいのスペースにあるグリーンショップ「ROUTE BOTANICALS(るーと ぼたにかるず)」も、ぜひチェックしておきましょう!難易度が高そうなボリュームのあるグリーンもありますが、買ってお持ち帰りできそうな、小さめのグリーンもたくさんあるのでご安心を。
読書の後は、ヴィンテージ雑貨やグリーンを眺めながらウインドーショッピング。今度は陶芸体験をしに来てもいいな。
知見を広げてくれる新しい本との出合いはもちろん、趣のある空間での読書は新しいアイデアも生まれてきそう! ひとりで新鮮な気持ちで過ごしたいときに、ぜひ訪れたいスポットです。
■おすすめの利用シーン:自分を対話しつつ新しい本と出合いたいとき、洗練された空間で読書をしたいとき、洗練されたインテリアのヒントを得て家でのひとり時間の参考にしたいとき
Text:松崎愛香
Photo:斉藤純平
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。