【おとなのソロ部】谷中「ギャラリー大久保」骨董品に囲まれて和菓子作りと本格お点前を楽しむひとり時間

【おとなのソロ部】谷中「ギャラリー大久保」骨董品に囲まれて和菓子作りと本格お点前を楽しむひとり時間

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SNSなどでも目をひく彩り豊かな和菓子。見れば癒やされ、食べれば和む、そんな和菓子を自分で作り、自分で選んだ好みの骨董茶碗で本格的なお点前をいただけるという貴重な体験ができるのが、「ギャラリー大久保(ぎゃらりーおおくぼ)」の「和菓子づくり体験」です。敷居の高さを感じることなく、和の文化を存分に堪能できるぜいたくなひとり時間を過ごせます。

Summary

風情ある谷中にたたずむ大正時代から続く老舗骨董店

江戸時代からの寺町である台東区谷中。古きよき時代の面影が今も残り、古民家カフェや古書店、アトリエ、老舗の和菓子屋さんなどが点在しています。時の流れがゆったりと感じられる風情ある町です。

「ギャラリー大久保」は、この地に大正2年(1913)から続く老舗骨董商「大久保美術」の2階にあります。店で取り扱っている骨董品を実際に手に取りながらお茶や食事をいただくことができるとあって、骨董・アンティーク好きにとってはたまらない、隠れ家のようなお店です。

「大久保美術」の階段を上ると、和と洋、二つのタイプの茶室があります。和の茶室「瑜伽庵(ゆかあん)」は本来の茶室の間取りはそのままに、壁を取り払った解放的な造りになっています。椅子に座ってお点前をいただく立礼式で、気兼ねなく茶室の雰囲気を楽しめます。

一方、洋の喫茶室には、ショーケースに華やかなアンティークのコーヒーカップやティーカップなどが並び、優雅な気持ちにさせてくれます。こちらでは「ランチセット」1300円(飲み物付き)や「コーヒー」550円、「紅茶」600円などをいただくことができます。

今回ご紹介する「和菓子づくり体験」1人4500円(予約制)は、営業日に3回制で実施、定員は6名です。手ぶらでOK、初心者OKなので気軽に参加できます。

ソロおすすめPoint
日暮里駅から店まで10分ほどの道中は歴史情緒たっぷり。取材中には常連さんがひとりでお茶をしに来ていました。「和菓子づくり体験」は3割程度がひとり参加とのこと。相席だとしても作業に集中するので気兼ねなく過ごせます。


季節の和菓子作りで、無心になり自分と向き合う

まずは喫茶室で和菓子作りです。教えてくれるのはこの体験を7年間担当している小山敦子さん。「日頃の仕事を忘れて、一つの和菓子を作ることに集中し、没頭する時間にしていただければ」とのこと。

和菓子にはさまざまな種類がありますが、こちらの体験では「練り切り」という種類の和菓子を2つ作ります。練り切りは「上生菓子」に分類され、白餡や砂糖、つなぎとなる粉類などを混ぜた練り切り餡を用いて作る和菓子です。さまざまな色、形で四季折々の風物などを表現することができます。こちらの「和菓子づくり体験」の題材は月替わり。今回は初夏にふさわしい「紫陽花」と「新緑の葉」に挑戦します!

使用するこし餡(あん)と練り切り餡は、三重県で300年以上の歴史を誇る和菓子屋「大徳屋長久(だいとくやちょうきゅう)」から取り寄せています。練り切り餡は、手亡豆(てぼうまめ)にもち粉、白玉粉などを混ぜ、紫芋や抹茶、クチナシなどの天然色素で色付けされています。淡くやさしい色彩に癒やされます。

まずは「紫陽花」を作ります。下準備としてそれぞれの餡をこねて軟らかくします。餡の乾燥を防ぐため手を湿らせながら、てのひらで押しつぶし、水分を加えて、折る工程を繰り返します。こうすることで、口にしたときに滑らかな舌触りになるそうです。

次は成形です。白の餡で紫の餡を包んだ生地で、こし餡を包み、黒文字楊枝を使い花びらの線を描きます。

さらに小指の腹で表面に陰影をつけ、端をつまんで花びらを形作るとグッと紫陽花らしい姿に。

仕上げに柱頭や葉をあしらって、一つ目が完成しました!ちょっと緊張しましたが、小山さんがひとつひとつやさしく教えてくれたので安心でした。

二つ目は緑のグラデーションがさわやかな「新緑の葉」です。下準備の後、白の餡で緑の餡を包んだら、転がして筒状にし、さらに手のひらで平たく楕円状にして、一方の端をすぼめて、こし餡に巻きつけます。

黒文字で葉の周囲のギザギザや葉脈を描いていきます。筋を入れるときは息を整えて集中。上向きの葉先で若々しさを表現して仕上げました。二つ目は要領を得たこともあって、力を抜いて楽しめました。

こねて、丸めて、成形してとするうち、無心になり、時が経つのも忘れ夢中になりました。指の先や関節、小さな道具を使った繊細な作業で、角度や力加減などのわずかな差で形が変化するのが難しくもありおもしろいところ。ちょっぴりいびつながらも、自分で作り上げた和菓子を眺めていると喜びと愛おしさが湧いてきました。

続いては器への盛り付けです。このステップでは参加者の創造力を発揮できます。初夏の季節を示すアオカエデなどの素材と、金平糖やかりんとうなどの小菓子とともに、器をキャンバスに見立てて自由に盛り付けていきます。

配置や、色合わせなど悩みつつも、直感を頼りに創り上げます。華やかなひと皿となり気分も上がりました!

ソロおすすめPoint
集中力を必要とする作業の連続なので、ひとりで黙々とものづくりをしたい人にはぴったり。器に盛り付け作品として美しく仕上げられる点も、この店ならではの楽しみです。


歴史感じる骨董茶碗での本格お点前と、作りたて和菓子をたしなむ

ここまででも十分に楽しい体験でしたが、ここからさらに奥の深い世界へ……。和の茶室「瑜伽庵」へと移動します。

次は、棚に並んだ15種類の骨董茶碗から、お抹茶のための一点を選んでいきます。これらは「大久保美術」で先祖代々大切にされてきたコレクションで、季節に応じて毎月ラインアップが変わります。ときには安土桃山時代の茶碗が登場することも! 丁寧に茶碗にまつわるエピソードやみどころを紹介してくれるので、聞いているだけで時空を旅している気分に。

いくつか候補を絞ったら、実際に手に取り、じっくりと選んでいきます。今回は加賀百万石の殿様が好んだといわれている、江戸時代後期に作られた大樋焼(おおひやき)を選びました。釉薬の艶が美しく安定感がありしっとりとした手触りが素敵です。

そしていよいよお点前を拝見します。茶室の空気が一変、凛とした静けさに包まれます。しなやかな所作に見入り、湯を注ぎ茶筌でかき混ぜる音に耳を傾けていると、背筋が伸びる思いがしました。

差し出された骨董茶碗の中で、お抹茶の鮮やかな深緑が引き立ちます。茶碗をしっかりと支え、正面を外していただきます。穏やかな苦味とすっきりとした後味が印象的で味わい深いものでした。茶碗の厚みや質感で、飲み心地も変わるのだそうです。

無作法でのお点前ですが、基本的な作法も尋ねれば教えていただけます。気構えることなくゆったりと楽しめました。

併せて、自分で作った和菓子もいただきます。

器から手で懐紙に移し替え、菓子切りでひと口大に切って口に運ぶと、しっとりとした食感で、甘さも上品。思わず頬が緩みました。二つあるうちの一つはおみやげとして持ち帰ることができるのもうれしいところです。

その後もくつろぎながら、茶道の意義や、茶室の掛け軸や茶花などの季節のしつらえ、宇治の抹茶のことなどさまざまなお話を伺いました。

目の前にある骨董品の数々と、茶の文化そのものが、時代を経て今もなおここに存在することの価値を大いに実感するとともに、和の精神性の奥深さにふれ、日本人としてもっと知りたいという気持ちにさせてもらいました。

ソロおすすめPoint
美術鑑賞と文化体験を一度に味わえるような体験。骨董茶碗選びは自分の価値観にも気づかされます。ひとりだからこそ、じっくりと浸ることができます。

季節を感じながら、心を無にして没頭できる和菓子作りに始まり、骨董の魅力にふれながら自分好みの茶碗を選び、歴史に思いを巡らせつつ、本格的なお点前とともに、自分の作り上げた和菓子を味わう。なんとも感慨深く、心の豊かさを感じられました。和の文化にじっくりとふれ合い、自分と向き合う時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

■ギャラリー大久保(ぎゃらりーおおくぼ)
住所:東京都台東区谷中6-2-40 2F
TEL:03-5834-2119
営業時間:お茶室11~17時(16時LO)、喫茶室11~18時(17時LO)
定休日:月曜(祝日は営業)、火曜
料金:和菓子づくり体験4500円(お菓子の材料、抹茶飲食費、お点前料、喫茶室使用料)

ソロMemo
■取材時のソロ率:90%(平日の午後)
■おすすめの利用シーン:和菓子ひとりで静かに和菓子を作りたいとき、じっくりと歴史や文化にふれたいとき。お点前を楽しみたいとき


Text:宮丸明香
Photo:斉藤純平

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

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