【京都】妙心寺|天才絵師・狩野探幽が描いた「雲龍図」は必見!
京都には日本を代表する寺院がたくさんありますが、臨済宗妙心寺派大本山の妙心寺もそのひとつ。境内には、天才絵師とよばれる狩野探幽が描いた「雲龍図」をはじめ、国宝や重要文化財も多数あります。そんな妙心寺の魅力やおすすめ拝観ルート、アクセスなどをご紹介します。
Summery
四季の花が咲く“花園”に、法皇が求めた理想の寺院
妙心寺がある花園地域は、かつて四季折々に美しい花々が咲いていたことが名前の由来。この地をこよなく愛したのが、鎌倉時代末期に第95代天皇を務めた花園法皇です。法皇は、ここに離宮を構え禅の奥義を究めようとし、後に禅寺に改めました。これが妙心寺のはじまりです。
妙心寺の開山に迎えられた関山慧玄(かんざんえげん)は、大徳寺の宗峰妙超(しょうほうみょうちょう)に師事し、その法を継承。関山慧玄は厳格な禅風で知られ、常に質素な生活を心がけていたことで知られ、その姿勢は妙心寺の僧侶たちに脈々と伝わっています。室町時代に入ると、応永の乱で寺領が没収されたり、応仁の乱で寺院が焼失したり、様々な苦難に遭いますが、その度に復興しました。
江戸時代の永正6年(1509)には境内が拡張され、この地で学んだ多くの僧侶が日本全国へ赴き、現地で寺院を建立。現在では国内はもちろん、海外を含めると約3300もの寺院があり、臨済宗最大宗派として多くの人から信仰を集めています。
じっくり回ると約半日!とにかく広い境内
さて、妙心寺のみどころをご紹介する前に知ってほしいのが、境内がとてつもなく広いことです。境内は直線距離で東西約500m、南北約600m、敷地面積は約10万坪あり、これは東京ドーム約7個分もの規模。境内をぐるりと回るだけでも2時間近く、通常公開している退蔵院や桂春院、大心院といった境内塔頭も合わせて巡ると半日は必要です。そのため、事前に拝観したい寺院を巡るルートを決めてから訪れましょう。
妙心寺の境内に入ると、勅使門から三門、仏殿、法堂(はっとう)が一直線上に並ぶ、禅宗ならではの伽藍配置が見られます。こちらは慶長4年(1599)に建てられた丹塗りの三門。東福寺三門、大徳寺三門に続く歴史があり、国の重要文化財に指定されています
こちらも重要文化財に指定されている仏殿。妙心寺の本堂に当たる建物で、蓮の花を手にした釈迦如来坐像(通常非公開)がご本尊。妙心寺にゆかりのある武将、明智光秀の位牌も安置されています。
その明智光秀と妙心寺の縁を示す建物が、こちらの浴室(重要文化財)です。光秀の叔父に当たる密宗和尚(みっそうおしょう)が光秀の菩提を弔うために建立したとされ、別名「明智風呂」とよばれています。
現在の建物は明暦2年(1656)に再建されたもので、内部は洗い場を備えたサウナのような蒸し風呂形式となっています。ちなみに、この明智風呂は、昭和2年(1933)まで実際使われていたとか!
天才絵師渾身の傑作を目撃せよ!圧巻の「雲龍図」
多くの人が訪れる法堂(はっとう)。内部にある巨大な「雲龍図」がお目当てです。作者は、江戸時代初期に活躍した絵師・狩野探幽。およそ8年もの歳月をかけて描かれた作品に期待も高まります。
壮大なスケールを誇る堂内。その天井で大きな龍がジロリとこちらを見ているのに気づきます。直径約12mの大きな円の中に描かれた龍は、どこから見ても目が合うように描かれたことから別名「八方睨(にら)みの龍」とよばれ、その威厳ある姿に思わずたじろいでしまいます。
狩野探幽は、空想上の動物である龍を描くために、口はワニ、ひげはナマズ、角はシカ、胴体から尻尾はヘビ、胴体の鱗は鯉、爪はワシをモチーフにしたといわれています。最後に入れられた眼は、やさしい目をしたウシを参考にしたそうで、見る人を圧倒する迫力がありながらもどこか親しみやすさも感じられます。
この絵が描かれた当時は、現代のような絵具はありませんでした。そのため狩野探幽は、貝殻や墨、草木の搾り汁、青い岩をすりつぶしたものなど、自然素材を原料に、糊(のり)となる「にかわ」に溶かして、直接天井板に描いたそうです。雲龍図が完成したのが江戸時代初期の明暦2年(1656)。それから400年近く経っているのですが、実はまだ一度も修復を行っていないのだとか。描かれた当時のまま保たれているのにも驚きです!
また、堂内にあるこちらの鐘は、飛鳥時代後期の文武天皇2年(日本最古の梵鐘(ぼんしょう)として国宝に指定。雅楽六調子のひとつ「黄鐘調(おうじきちょう)」の美しい音を奏でることから「黄鐘調の鐘」ともよばれています。残念ながら現在は鐘を突くことはできませんが、この鐘の音を録音した貴重な音源を堂内で聞くことができます。美しい調べに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
塔頭寺院界隈で良縁を呼ぶ「縁まわしの鐘」を鳴らそう!
境内の東側や北側には、たくさんの塔頭が並ぶ界隈(かいわい)が広がります。地元の人の散歩ルートや学生達の通学路となっており、寺院と人々の生活が密接した光景を見ることができます。
たくさんの塔頭が並ぶ界隈は白壁がどこまでも続き、とても静か。途中にはカーブを描く場所もあり、変化に富んだ散策ができます。
北総門の近くには、「良縁を呼ぶ縁まわしの鐘」があります。近づけたい縁、遠ざけたい縁、届けたい縁をお札に記し、100円を納めたら、願いを込めて鐘の右側を叩いてひと回し。お札を両手にはさんでお祈りします。良縁を結びたい人や悪縁を断ちたい人は、ぜひ立ち寄ってくださいね。
妙心寺へのアクセスは?南から行く?北から行く?
妙心寺には「南総門」と「北総門」が設けられ、それぞれアクセスが大きく異なります。
「南総門」へは、JR花園駅から徒歩約5分。バスを利用する場合は、阪急西院駅から91系統「妙心寺前」下車徒歩約4分。または京阪三条駅から京都バス62・63・65・66・67系統「妙心寺前」下車徒歩約4分のアクセスとなります。
「北総門」へは、JR京都駅からJRバス・市バス26系統「妙心寺北門前」下車徒歩約2分。嵐電妙心寺駅からだと徒歩約3分で到着できます。JR京都駅から電車で行ける「南総門」と、石庭で有名な龍安寺が近くにある「北総門」。その日の観光ルートに合わせて決めるとよいでしょう。
妙心寺には桜や紅葉はありませんが、緑が美しい松の木がたくさん植わっています。禅語にも年月や季節に左右されず、美しい緑を保つ松のことを「松樹千年翠(しょうじゅせんねんのみどり)」とよび、大変重宝しているそうです。松の並木道と白壁、石畳が調和した美しい光景に、出合ってみませんか。
■妙心寺(みょうしんじ)
住所:京都市右京区花園妙心寺町1
TEL:075-461-5226
参拝時間:9~16時(15時30分受付終了)
参拝料:大方丈(おおほうじょう)・法堂500円(大庫裏は2026年頃まで修復工事のため拝観不可)
駐車場:80台(拝観の場合無料)
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Photo:マツダナオキ
Text:津曲克彦
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