四谷三丁目「上原食堂」のフレンチシェフによるかき氷は独創的でアートのよう!
今までに食べたことがない味わいで、また思い出して食べたくなる。そんなかき氷が味わえるのが、四谷三丁目にあるかき氷専門店「上原食堂(うえはらしょくどう)」です。秋葉原の古民家フレンチ「KUFUKU±(くふく)」のシェフ・竹中誠治(たけなかせいじ)さんがメニューを考案し、そして自ら氷を削り提供しています。常時4種類あるというかき氷の内容は、すべてフレンチさながらの独創性のあるものばかり。美しい見た目に、はじめて出合う味のハーモニー。ひと口食べるごとに、驚きとおいしさで新しい体験ができます。
Summary
完全予約制。フレンチのような繊細で創作性に富むメニュー
「上原食堂」は、東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅から4分ほど歩いた、風情のある飲食店が軒を連ねる荒木町エリアにあります。店主であるフレンチシェフ・竹中誠治さんが自ら氷を削り提供するかき氷は、ここでしか食べられない独創性のある逸品。平安時代から食べられてきたという説もあるかき氷を、よりモダンに進化させられたら、という思いでメニューを考案しているそう。「訪れたお客さんに『次はどんなメニューを出すのだろう』『また次の新作が出たら来たい』とワクワクしてもらいたいです」と、竹中さん。
席は完全予約制で、時間は40分制。毎週日曜に、翌週の水曜から1週間分の予約受付が開始されます。予約開始は22時ですが、10分後には、土日に関わらずすべての枠が埋まってしまうことも多いとか。不定休なので公式SNSで予定を見つつ、早めに予約を取るのがおすすめです。
メニューは、食材の仕入れ状況などにより1カ月単位ほどで随時入れ替わります。メニューの詳細も公式SNSに掲載されているので、チェックしたうえで来店を。基本的に、ラインアップは4種類。来店の際はすべてのメニューを食べる人もいるとか! そこまで人々を魅了する理由は、なんといっても使われている食材のユニークさ。
竹中さんが使ってみたいと思った食材がベースになっていたり、旬の食材がふんだんに使われていたりと、すべて竹中さんのひらめきにより様々なものが組み合わされます。かき氷というよりは料理として浮かんだアイデアをもとに、23年もの間フレンチに携わった経験を生かし、頭の中で味の計算をしながら、実際に落とし込んでいくのだそう。竹中さんの生み出すかき氷は、味覚の基本である「甘み」「塩味」「酸味」「苦み」「うま味」のバランスがよくなるように、使う食材が計算されているのです。
食材だけでなく、氷にもこだわりが。食べ進めていっても氷がすぐに溶けることなくフワフワな食感を楽しめるように、氷を冷蔵庫に入れて解凍するタイミングなどにも気を配っているとか。「氷削機は包丁と同じで刃が命なので、適度にメンテナンスを行いながら使っています」と竹中さんは言います。
かき氷に「なめろう」!? 食材が奏でるハーモニーに驚きを隠せない
こちらは、「パッシュンフルーツ、甘海老なめろうタルタル、枝豆、出汁醤油のかき氷」。連なる食材名を見るだけでも、本当にかき氷!?と、味の想像がつきません。食材の珍しさはもちろん、見た目の美しさにも注目です。さすがフレンチのシェフが手がけているだけあって、まるでアート作品のよう! こちらのメニューに入っている食材は14種類。食材のひとつひとつが、丁寧に下ごしらえされています。食材数はメニューによっても変わりますが、多いときでは30種類ほどになることもあるとか。
カウンター席からは、氷が削られかき氷が作られる工程を見ることができます。どんどん作られるさまを見るのもとても楽しいですよ。ほんのり甘さのある「アングレーズソース」と「パッションフルーツソース」がふんだんにかけられ、その上に「塩麹クリーム」がのせられます。酸味が強く香り高いパッションフルーツには、塩麹の甘じょっぱい風味が合うそうです。
中央のものはアボカド!? と思いきや、違いました。こちらはパッションフルーツの果肉を取り出したものを容器代わりにして、ミョウガのみじん切りである「茗荷シズレ」をベースに、塩麹とずんだをからめてつぶした「塩枝豆ずんだ」を詰めたもの。上にのった鮮やかな花は「ペンタス」。思わず写真を撮りたくなるような、美しい見た目にこだわっているそうです。
こちらのメニューの主役的存在である「甘海老なめろうタルタル」がのせられます。なめろうがのっているかき氷とは、さて、どんな味がするのでしょうか。ベースには「出汁醤油ソース」が使われているので、なんとなく合いそうではありますが……。
「甘海老なめろうタルタル」の上に、オリーブオイルを閉じ込めてキャビアのような見た目にした「オリーブキャビア」がのせられます。噛むとオリーブオイルがじゅわっと出てきて、風味とプチッとした食感を同時に楽しめます。なめろうとも合いそうです!
仕上げに「ペリーラ」「マイクロトマト」「カラスミパウダー」が添えられ、完成!
すぐ溶けてしまうかき氷をいただくのは、時間との勝負です。写真を素早く撮ったら、早速いただきます! 気になる「甘海老なめろうタルタル」の味はというと、思ったよりも淡白でほかの食材となじんでいます。エビの風味がほんのりだし程度に香るところが、まるでフレンチの前菜のよう。冷たい氷との相性もばっちりで、「カラスミパウダー」のしょっぱさもまた合います。
「パッションフルーツソース」のフルーティさや、「塩枝豆ずんだ」の甘じょっぱさなど、少しずついろいろな具材を合わせながら、味の変化を楽しんでいきます。少し氷が溶け出してきた部分が冷製スープのようで、またおいしい。甘さだけでなく、酸味や塩味などさまざまな味わいが楽しめ、最後までおいしく食べられる工夫が詰まっています。
まるでアートのような黒いものは、「イカ墨チュイル」。お店のフライパンで手作りされていて、ほんのり感じる苦みとサクサク食感が、かき氷の甘みに飽きたころにちょうどよく口の中をリセットしてくれますよ。
ちなみに、提供の際には使用食材が詳細に描かれたメニューのイラストカードが付いてくるため、それをひとつひとつ見ながら食べ進める人が多いとか。あっという間に、完食です!
スイーツ系かき氷にも、ひと癖あり。宇治抹茶氷には「みりん」が!
スイーツ要素の強いかき氷のメニューも、もちろんあります。こちらは「ブルーベリー、宇治抹茶、熟成黒みりん、蕨餅のかき氷」。
ベースの「黒糖クリームチーズ」の上に「ブルーベリーソース」をたっぷりとかけていきます。
「上原食堂」のかき氷は、食材と氷が何層にもなっているのも特徴です。こうすることで、スプーンを入れるごとに、しっかりとした味を感じられるようになります。中央に見えるのは、素朴な甘さの「大納言きな粉クリーム」。
全体に「アングレーズソース」をかけ、上に「大納言きな粉クリーム」と「ブルーベリー蕨餅」をのせます。もちもちとしたなかにブルーベリーの心地いい酸味を感じるわらび餅は、少し弾力のある軟らかさ。
その上から「宇治抹茶エスプーマ」をたっぷりとかけ、最後に「クラッシュパイ」をのせて、完成です。竹中さんが作るかき氷は、どの食材もたっぷりと使われているのが特徴です。
こちらのメニューは、緑茶の季節にちなんでお茶を使いたいという発想から、抹茶をベースにすることをひらめいたそう。かき氷と和菓子をフュージョンさせたイメージで作られました。下ごしらえにも手間をかけ、食感も楽しめる逸品です。そしてこちらも、酸味と甘みのバランスが絶妙!
まずは、サクサクとした「クラッシュパイ」と、ほんのりとした苦みを楽しめる「宇治抹茶エスプーマ」をいただきます。パイの質感も楽しく、抹茶の苦みで奥行きのある味わいに。たまに当たる「ブルーベリー」も、なんだか当たりくじを引いたようでうれしい!
このメニューはどちらかというと、デザート寄りの発想だったとか。そんななかでも少しの酸味を利かせることで、甘すぎないようなバランスとなっています。
中をほじるといろいろな食材が出てくる、それも「上原食堂」のかき氷の醍醐味です。中に入った「大納言きな粉クリーム」が、甘すぎず香ばしくて繊細な味。「ブルーベリーソース」や「ブルーベリー」の酸味を感じながら、やさしい甘さの「アングレーズソース」と香ばしさのある「黒みりんソース」、和菓子風味の「黒糖クリームチーズ」が絶妙に絡み合います。すくう部分によって味の変化を楽しみながら、あっという間に完食してしまいました。
ひと口ずつ食べることに、新しい食材のハーモニーが口中に広がる。おいしいを通り越した満足度の高い食体験ができる「上原食堂」のかき氷、ぜひ予約して味わってみてはいかがでしょうか。かき氷の固定観念を覆す体験ができますよ。
■上原食堂(うえはらしょくどう)
住所:東京都新宿区荒木町7-14 四谷三丁目101 AXAS
TEL:非掲載
営業時間:12時~17時30分LO(完全予約制)
定休日:不定休
Text:松崎愛香
Photo:yoko
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。