【おとなのソロ部】ひとりじっくり、朝スープを。高円寺「itoma morning and night(イトマ モーニング アンド ナイト)」で満たされ、一日を始める
充実した朝ごはんからスタートした日は、気持ちのよい一日を送ることができます。ひとりの休日をより充実させたいなら、まずは充実した朝ごはんを。ということで今回訪れたのは、朝と夜だけオープンしているという、高円寺の隠れ家ビストロ「itoma morning and night(いとま もーにんぐ あんど ないと)」。起きたての空っぽな胃袋をじんわりと満たしてくれる、野菜たっぷりのスープを味わうことができます。
Summary
高円寺駅と新高円寺駅の中間あたり。てくてく散歩しながら店へ
「itoma morning and night」は、JR線高円寺駅と東京メトロ丸ノ内線新高円寺駅の中間あたりの、高南通り沿いにあります。高円寺駅からは徒歩約7分、新高円寺駅からは徒歩約5分と、新高円寺駅から歩くほうが少し近いので、今回は新高円寺駅から歩いてみました。駅から店まで高南通り沿いを歩くのも、軽い散歩ができてちょうどいい距離。モーニングは8時からの営業。朝の澄んだ空気を肌で感じつつお気に入りの音楽を聴きながら、お目当てのスープを目指して歩いていきます。
5分ほど歩くと、店に到着です。「morning and night」という名前のとおり、朝食の時間(8〜11時)と、夕食の時間(18〜22時)のみ営業しています。一見するとカフェのような雰囲気ですが、店主の野生真弓(のしょうまゆみ)さんいわく、あえて「カフェ」という表現はしていないそうです。
「カフェではないので、コーヒーは提供していないんです。純粋にお食事を楽しむ場所として来ていただけたら。混雑時はとくに、30分程度の利用でお願いしてます」と野生さん。
読書やパソコンでの作業など、長時間ゆっくりするスペースではないですが、30分もの時間をかけてゆっくり朝食を食べることって、日々を振り返ってみるとそうそうないのでは? あえて「朝食を食べる」ことだけにフォーカスした30分間を朝時間に組み込むことで、その日の活力となるのを感じるはずです。
ちなみに、モーニングは予約不可。営業開始の8時からすでに混み合う日もあるというので、8時より少し前に到着するのがおすすめです。
わずか6席。かわいい雑貨にあふれたこぢんまりとした空間
お店に到着すると、高南通りに面する入り口のドアは開いたまま。店の中の様子が一望できる、入りやすい雰囲気です。店内は、かわいいものが所狭しと詰めこまれた、それでいてごちゃごちゃしているのではなく、すっきりとした空間です。入ったとたんに「過ごしやすそう」という、ほんわかとしたオーラを感じることができます。雑貨好きな人はもちろん、そうでない人も「かわいい!」と心の中で悲鳴を上げてしまうこと、間違いありません。
カウンターに2席、テーブルに4席しかないこぢんまりとした空間は、「あえて」選んだのだそう。
「1人で店を切り盛りしたかったのであまり広くないということと、モーニングを食べにふらりと入りやすい店にしたかったので1階であることにもこだわりました。物件探しには、2年ぐらい費やしたんですよ」と野生さん。
「itoma morning and night」のインテリアを語るうえではずせないのは、入り口を入って左側の壁に描かれた、「かわいらしい」という言葉がぴったりなイラスト。「インテリアで一番こだわっているところは?」の問いにも、この壁画であると、野生さんは語ってくれました。
「この壁画は、イラストレーターで知人でもある、木下ようすけさんに描いてもらったものです。お店をオープンさせたのは6年前のことですが、始まって3・4カ月経ったころに、彼の個展を見に行って。かわいらしくてほのぼのとしたタッチに、惚れ込んでしまったんですよね。それで店の壁画を描いてほしいとお願いしました。だから店の内装に合わせたイメージで描いてくださっているので、雰囲気にばっちり合っていますよね」と野生さん。
6年という年月を経て、経年変化による味が出ています。スープが席に届くまでの間、この絵をぼうっと見て過ごすのも楽しいですよ。3日間かけて描き上げたというこちらの絵は、まだ未完成な部分も残っているのだそう。綴られているそれぞれの物語が浮かび上がってくる気がして、思わず微笑んでしまいます。
店内の至る所に飾られている置物にも注目です。「itoma morning and night」をオープンする前は、飲食業界やデザイン業界で働いていたという野生さん。デザイン業界で培ってきたセンスが、小物のセレクトに生きています。
どれも個性が強くありながら、お互いがなじみ合っていて、心地よさを作り出しています。青みがかった絶妙なモスグリーンの壁の色も素敵です。壁にかけられている手ぬぐいはオープン6周年を記念して作ったもので、壁画を担当した木下さんによって描かれたものだとか。
そして「itoma morning and night」での朝食の楽しみは、スープとスタイリングされるお皿の数々。スープ皿は、すべて一点もの。国内外の蚤の市などで気に入ったものがあるたびに、ひとつずつ集めているのだそうです。
「毎年9月に1カ月お休みにして海外に行くと決めているんです。店内に飾る雑貨やスープ皿を買ったり、その国の料理を学んだり、空気を感じたり。今年は、東欧を訪れてきました。ちょうど帰ってきたばかりなので、提供するスープや料理も、東欧っぽいものになっていますね」と野生さん。
ひとつひとつお気に入りばかりで揃え、妥協はしない。だからこそ、どこか統一感のある雰囲気が店の中に漂い、過ごしやすさにつながっているのかもしれませんね。
パン&スープのセットは2種類。メニューは2週間ごとに変わる
モーニングは、8時から11時まで。スープとパンのセットにドリンク2杯が付いた、AセットかBセットのいずれかより選ぶことができます。AセットとBセットの違いは、スープと、パンに付くスプレッドの種類。スープやパンの内容は、2週間ごとに変わります。夏時期は、1種類だけが冷製スープになるそう。
ただし、同じスープは作らないというのが、野生さんの徹底ぶり。
「カボチャを使うスープでも同じ組み合わせにはせず、ニンジンと組み合わせてみるとか、オーツミルクのスープにしてみるとか。幅を出して楽しんでいます」と野生さん。
パンは、プラス200円で野生さんが惚れ込んだという長野県にある木村製パンの直営店である「埜屋」のパンに変更することもできます。取材時は、ハニーオーツの食パン。味わうごと空気をふくみ、ほどよい酸みと苦みを感じられるおいしさです。
写真は取材時のAセット。カブのポタージュにバジルオイルとラディッシュがのっています。パンに付いたバターは、柿を使った手作りのもの。ドリンクは炭酸水、ホットチャイ、オレンジジュース、りんごジュース、ルイボスティーから選ぶことができ、写真はオレンジジュースとりんごジュース。
カブだけではなく、葉っぱも丸ごと使っているからこその、この緑色。食器との色の組み合わせがお見事です。
やさしい風味に仕上げているので、味のメリハリをつけるために真ん中にバジルオイルを垂らし、ラディッシュをトッピングしているとか。スープを飲み干すまで、おいしさや楽しさを感じる工夫がされています。絶妙な味の変化をじっくりと感じられるのも、ひとりモーニングならではの醍醐味です。
Aセットのパンには、柿のバターがのっています。季節を感じられるフルーツを使ったバターが楽しめるのも、「itoma morning and night」での朝食の密かな楽しみです。
取材時のBセットはこちら。「南瓜とひよこ豆のスープ」に、柚子のホイップクリームがのったパンのセットです。飲み物は、ホットチャイとルイボスティーをセレクトしました。
このホットチャイが、またおいしい! 「食事に合うように」とショウガとスパイスをベースにした甘くない味付け。甘さが足りないという人のために、手作りシロップも持ってきてくれます。このシロップを少し垂らすと、また違うおいしさに!
こちらは、Bセットのカボチャのスープ。見た目から想像できる濃厚さ、カボチャの甘い香り。食べる前から、幸せを感じます。
ねっとりとした、噛むスープといってもいいほどの濃密さ。これは、見た目のかわいさのために中心にトッピングをしたいという、野生さんのこだわりから。野生さんのスープは「関係性」を大切にしていて、トッピングにのせるのはスープの材料となっている野菜や、一緒に合わせて食べるとよりおいしくなるものだそうです。
トーストにのせられているのは、柚子のクリーム。カボチャの濃厚なスープを食べ進めていくうちに飽きてしまわないように、さわやかな柚子のクリームとセットにしているそう。
「『食の立体感』を、とても意識してます」と野生さん。立体感という言葉で表現されるにふさわしい、奥行きのあるうま味を感じられる朝食です。
野菜をふんだんに使ったスープのやさしい味が、体中にじんわりと染み渡っていきます。これは、おしゃべりしながらでは感じることはできません。また、野生さんが大切にしているという、食べ合わせの「関係性」や「立体感」もゆっくりと噛み、味わうことで解釈をすることができます。これぞ、ぜいたくな朝時間。
店内の中でもおひとりさまにおすすめなのが、通りが見える壁際の席だそう。通りを行き交う人や自転車、車を見ながら、ぼうっと物思いにふけってみて。入り口は東側にあり、晴れている日はとてもきれいな朝日が入ってくるそうです。雨の日はしっとりとした雰囲気があって、それもまた趣があるとか。
夜はレモンサワーなどお酒も楽しめる場に
なお、店内の絵の壁の棚には、レモンをコリアンダーシード、レモングラスなどのさまざまなスパイスに漬け込んだ瓶が置かれています。こちらは、料理や夜に提供するお酒に使っているそう。レモンサワーは常に、4・5種類があるそうです。
こちらが夜営業にて提供される「自家製レモンサワー」。今回は取材ということで、特別にと用意いただけました。レモンのすっきりとした酸味のなかに、ほのかにコリアンダーのスパイシーな香りが鼻をくすぐります。このレモンサワーなら、何杯でも飲めてしまいそう!というぐらい、やさしい味わいでした。
スープ&パンの朝食もいいですが、丁寧に作られたレモンサワーもおいしかったので、夜の訪問もおすすめ。夜営業では、多国籍のおつまみも提供されているそうですよ。
穏やかな空気が流れる、「itoma morning and night」。近所に住んでいなくても、わざわざ訪れる人が後を絶たないのが納得です。朝ごはんを特別なものにして、ぜひいい一日のスタートを切ってみては? スープを食べながら物思いにふけるひとりの朝時間は、きっと忙しい毎日のなかで大切なものになるはずです。
■itoma morning and night(いとま もーにんぐ あんど ないと)
住所:東京都杉並区高円寺南2-24-16 SASAKIビル1F
TEL:なし
営業時間:8~11時(10時30分LO)、18〜22時(10時30分LO)
※現在、夜営業は木~土曜のみ
定休日:月・日曜
■おすすめの利用シーン:体にやさしい朝ごはんをじっくりと味わいたいとき、いい休日のスタートを切りたいとき、野菜たっぷりのスープで体を労わりたいとき
Text:松崎愛香
Photo:yoko
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