【京都】高台寺で庭園美と建築美を堪能|秀吉を想うねねの敬愛の念が随所に

【京都】高台寺で庭園美と建築美を堪能|秀吉を想うねねの敬愛の念が随所に

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桜と紅葉で知られる高台寺。豊臣秀吉の正室・高台院、通称北政所ねねが秀吉の菩提を弔うために慶長11年(1606)に建立した寺であり、境内には秀吉が逝去した伏見城から移築された遺構が残ります。庭園や格式高い建造物の意匠ひとつにも、ねねの夫に対する敬愛の念が刻まれ、戦国の天下人の威厳とそれを陰で支えた妻のたくましさを肌で感じるよう。自然・建築ともにみどころの多い高台寺を、意外な鑑賞ポイントも交えながらご紹介します。

Summary

入口すぐの場所から望む大文字や、丸窓が美しい茶室「遺芳庵」

ねねは武士である杉原定利の二女として天文18年(1549)に生まれ、恋愛結婚によって秀吉と夫婦になりました。秀吉は百姓の出だったため身分の差はあったものの、ねねの内助の功もあり天下人まで登り詰めたのです。秀吉が慶長3年(1598)に死去した後、ねねは高台寺を建てて尼となり、寛永元年(1624)に亡くなるまで隠遁生活を送りました。

高台寺は開創時の境内が今の10倍ほどの約9万6000坪だったと伝わります。高台寺山の傾斜を利用してつくられ、霊屋(おたまや)や茶室は小高い場所にあるので、拝観は歩きやすい靴で回るのがオススメです。

拝観口から入るとまず、木々の間から北側に大雲院の祇園閣や左大文字を望む景色が迎えます。順路を進むと、江戸時代初期建てられた茶室「遺芳庵(いほうあん)」が佇んでいます。こちらは京都を代表する遊女・吉野太夫を身請けした豪商の灰屋紹益(はいやじょうえき)が、亡くなった妻を偲んで建てたもの。檜皮葺(ひわだぶき)・杮葺・瓦葺の3つの屋根から成り、太夫が好んだ円窓「吉野窓」がはめられているのが特徴的です。高台寺には大正時代に寄進されたものですが、現役の茶室として使用され、毎年6月に1週間だけ朝3名限定で開かれる茶会には応募者が殺到するそうです。

方丈庭園「波心庭」の白砂の下にはある秘密が…⁉

みどころの一つである方丈は、高台寺の本尊であるお釈迦様を祀る重要な建物。ねねの位牌も安置され、毎月命日である6日には法要が営まれています。

四角い方丈を取り囲むように4つの建物があるのは、火事や有事の際に本尊を護るため。方丈の天井は格式高い部屋に用いられる「折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう)」という造りで、格子に組んだ角材の上に板を張った二重天井です。さらに、一つの格縁の中に細い組子を編むという非常に凝った建築様式で、さらに豪華な折上天井は二条城の大政奉還の間がある二の丸御殿でも見られます。

方丈から望む庭園は「波心庭(はしんてい)」とよばれ、白砂の波模様が見事な枯山水庭園です。正面には天皇の使いのみが通ることのできる勅使門がそびえ、白砂の下には石畳の道が隠れているのだそう。毎年1月1~7日だけ特別にこの門を開け、一般の参拝者がお詣りできるというから、この期間に訪れてみたいですね。

また波心庭はしだれ桜でも有名で、夜間特別拝観時期にはカラフルな砂でデザインされたり、プロジェクションマッピングが投影されたりと、ファンタスティックなアートを楽しめる庭でもあります。

開山堂天井には極彩色の四季草花図、狩野山楽画と伝わる龍図も

高台寺の中央部にある開山堂(かいざんどう)は、伏見城からの遺構であり、創建当時から残る非常に古い建物。楼船廊(おうせんろう)という唐破風(からはふ)屋根付きの廊下で方丈と結ばれ、その中ほどに秀吉が愛した観月台があります。ここでねねが秀吉を偲びながら月を眺めたといわれていわれています。

伝・小堀遠州(こぼりえんしゅう)作「高台寺庭園(国指定・史跡名勝)」の「偃月池(えんげつち)」の上には楼船廊が架けられており、北に亀島、南の岬に鶴島の見事な石組を望むことができます。また開山堂を挟んで反対側には「臥龍池(がりょうち)」という大きな池が水を湛えています。

臥龍池には霊屋へと続く廊下橋が配置されており、霊屋まで階段を上がり振り返るとその階段や屋根瓦がまるで龍の鱗のように見えることから「臥龍廊」と名付けられています。臥龍池は水面に景色が鏡のように映ることから「鏡池(かがみいけ)」の名もあり、夜間のライトアップ時は息をのむような美しさです。

開山堂には歴史的に重要な構造物や寺宝が多数残っています。こちらの天井も折上小組格天井ですが、先ほどの方丈よりもさらに豪華で、黒漆に24金の金箔が貼られています。また材料も秀吉が乗った御座船(ござぶね)と、ねねの御所車の天井をそのまま移したとされ、中央には金地極彩色の四季草花図が描かれています。時を経て色褪せてはいるものの、あざやかだった色彩の面影はまだ見て取れます。

さらに奥の間の天井には、江戸時代を代表する狩野派の一人、狩野山楽(かのうさんらく)の筆と伝えられる龍図が描かれています。特別公開時以外は入ることができませんが、衝立の外からでも少しかがんで上を覗くと、その迫力ある龍の姿を見ることができます。

また高台寺は創建時において曹洞宗の寺院でしたが、のちに建仁寺の三江紹益(さんこうじょうえき)禅師を招き臨済宗に改宗したという歴史があります。開山堂には三江和尚やねねの兄である木下家定の像が安置されているほか、代々住職の名が刻まれた表も掲げられており、高台寺の歴史やねねの周辺の相関図を知ることができる学びの場でもあります。


ねねの眠る「霊屋」。優美な高台寺蒔絵に目を奪われる

高台寺散策のクライマックスと言える「霊屋」は臥龍廊を上がった高台にあり、ねねの墓所に建てられています。秀吉の廟堂を模した宝形造の檜皮葺で、厨子内には秀吉像とねね像がそれぞれ安置されています。ねねの像の2mほど地下には実際に本人の遺体が埋葬されており、秀吉像の下には遺髪や喉仏の骨などが眠っているのだとか。

提供:高台寺
写真提供:高台寺

霊屋の内陣全体には美しい「高台寺蒔絵(まきえ)」とよばれる伝統工芸が施されているのも特徴。黒漆の地の上に金粉や銀粉で絵柄を描き、それを幾層にも盛り上げて黒と金の対比を際立たせた蒔絵です。正面にある階段一面には花が筏で流れるような「花筏(はないかだ)」、左右の須弥壇(しゅみだん)には笙(しょう)やひちりきなどが描かれた「楽器尽くし」という図柄が彩られています。霊屋は高台寺の中でも秀吉とねねが眠る重要な建物であるため、柱の一本残らずまで蒔絵が施され別格の様を呈しています。

高台寺最上部にある茶室からは、大阪まで望む絶景が!

写真提供:高台寺
写真提供:高台寺

高台寺で最も高い場所にあるのが2つの茶室、「傘(かさ)亭」と「時雨(しぐれ)亭」です。どちらも伏見城から移設されたもので、利休好みの茶室と伝わります。

傘亭は内部に竹が放射線状に配されており、広げた傘を見上げるような屋根裏の造りからこの名に。伏見城の頃は池に面した水辺に建っていたと推測され、入口は舟で出入りできるよう跳ね上がり式の「舟入り口」という構造です。

一方、時雨亭は2階建てになった杉皮葺切妻屋根の茶室。1階は「お待ち合い」で、茶会は2階の茶席で営まれていました。庇の向こうには京都の南向きの眺望が広がり、霊山観音、その向こうにはなんと大阪の「あべのハルカス」周辺のビル群がくっきりと望めます。慶長20年(1615)の「大坂夏の陣」でも、ねねは大坂城が炎に包まれているのをこの時雨亭から眺めていたと伝えられています。

当時の交通は川の流れに沿っており、桂川・木津川・宇治川が流れて淀川に合流し、そこに遮る山などがないため、時雨亭から大阪方面への眺望が今も同じように開かれているといえます。

竹林の小径を降り、拝観ルートの最後にあるのが「雲居庵(うんごあん)」。古い建物ではありませんが、モミジで彩られた庭を眺めながら抹茶とお菓子で一服いただける茶屋です。

ここでは「天目台(てんもくだい)」という円錐状の台に乗った天目茶碗でお茶が供され、貴族になった気分。散策の終わりに一息ついて、秀吉とねねの仲睦まじい暮らしに思いを馳せてみてはいかがでしょう。

高台寺へのアクセスは?バスで直行も、ぶらぶら散策も

高台寺はどの鉄道の駅からも少し離れているため、バスでのアクセスが便利です。京都駅から市バス206系統で約20分、京阪祇園四条駅と阪急京都河原町駅からは207系統で5〜10分、いずれもバス停「東山安井」で降車し東へ徒歩約7分ほどです。駅から歩いて向かうなら、京阪祇園四条駅から徒歩約20分、阪急京都河原町駅からは徒歩約25分です。

ただ高台寺は八坂神社と清水寺の中間ぐらいにあるので、祇園・清水エリアの散策途中に立ち寄りやすい立地。みやげ店やカフェなどが並ぶ石畳の道「ねねの道」をぶらぶら歩きながら向かうのも楽しいですよ。

■高台寺(こうだいじ)
住所:京都市東山区高台寺下河原町526
TEL:075-561-9966
参拝時間:9時~17時30分(17時受付終了)
参拝料:600円
駐車場:100台(拝観の場合1時間無料)

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Photo:橋本正樹
Text:猫田しげる

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