【兵庫・須磨】1日4組限定!「LE UN 神戸迎賓館」でシェフのプレゼンテーションとともに味わう珠玉のオリジナルコース【ご褒美の新定番】
100年以上もの間、須磨を高台から見守り続けてきた歴史的建造物・神戸迎賓館。かつては多くの客をもてなした豪華な空間は、結婚式場・邸宅レストランとなり、人生の大切な節目を祝う特別な場所として活用されています。フレンチレストラン「LE UN 神戸迎賓館(るあん こうべげいひんかん)」では第1・3水曜のランチタイムに1日4組限定で、シェフから料理の解説を受けられるオリジナルコースが味わえます。いったいどんな料理と出合えるのでしょうか。
Summary
「神戸迎賓館」の豪華な空間で過ごす非日常で特別な時間
大正8年(1919)に建てられた「神戸迎賓館」は県の指定重要文化財であり、神戸の西洋建築を代表する建物です。自然に囲まれた約1万㎡の広大な敷地には洋風庭園に加え、神戸市の名勝にも指定される日本庭園があり、四季の移ろいが感じられます。
一歩足を踏み入れると、現在では再現不可能といわれる豪華なしつらえが当時の姿そのままに多数残されており、まるで大正時代にタイムスリップしたような非日常的な空間が広がっています。この素敵な空間のなかでフレンチを味わえるのが「LE UN 神戸迎賓館」です。
シェフが料理を目の前で取り分け、解説してくれる1日4組限定の特別プラン
今回体験してきたのは久保田剛史(くぼたつよし)シェフのプレゼンテーションが付いたオリジナルコース。なんとシェフ自らが料理を取り分け、一品ずつ解説してくれます。久保田シェフは神戸ポートピアホテルにて料理人のキャリアをスタートし、2018年からこちらでシェフを務めているそう。穏やかで気さくな人柄、料理への探究心が伝わる説明は聞き手の心を動かすこと間違いなし。出身は地元・神戸。地元愛あふれるシェフが手がける、神戸の旬の食材をふんだんに使用した料理が登場します。
クラシカルな料理に独創性をプラス!魅惑のフレンチのコース
食事会は久保田シェフの自己紹介から和やかにスタートしました。取材時は秋(9〜11月)のコース。コースの構成で特に印象的だったのは、クラシカルなフレンチに神戸らしさやシェフの独創性を織り交ぜている点です。
「先人たちから継承されてきたクラシックなフレンチをぜひ味わっていただきたいと考えています」とにこやかに話す久保田シェフ。料理人が受け継いできた伝統的なフレンチの味わいをコースのなかに取り入れ、そのおいしさにふれられる構成に。味わう人にも、働く仲間にも、伝統的なフレンチの魅力を伝えたいとシェフは話します。神戸迎賓館という100年以上もの歴史を紡いできた建物で、クラシカルなフランス料理のおいしさに出合う体験もまた特別。
まず登場したのが「フォアグラのテリーヌとさつまいものワッフル」。お酒やスパイスでマリネしてしっとりと仕上げられたフォアグラはクリーミーで奥深い味。フランス料理ではブリオッシュと合わせられることが多いそうですが、シェフは旬のさつまいものワッフルを添えました。フォアグラの絶妙な塩気とさつまいもワッフルのやさしい甘さがマッチ。ローストされたサツマイモの食感も楽しいアクセントに。
続いて、「前菜3種盛り合わせ」が登場します。左は「鱧と柿」。旬の柿、赤玉ねぎやケッパー、ビネガーなど甘みと酸味があいまったソースが、淡泊でありながらうま味のある鱧の味わいを引き立てます。
右上は「車海老とかぼちゃ」。じつは2尾の車海老が使われていて、1尾は火を通し、もう一方はさっと湯にくぐらせたレアな状態で供されます。こちらは香辛料を加えた色鮮やかなかぼちゃのピューレを添えて。マスコとキャビア、オリーブオイルで漬けたキャビア、3種類の魚卵を添えた華やかな前菜です。
右下は「秋刀魚となす」。春巻の皮に似たパートフィロシートで秋刀魚とハーブを包んでパリッと焼き、バルサミコ酢を添えています。なすのコンポートが軟らかでみずみずしく、香ばしい秋刀魚のあとにいただくとフレッシュでひと際おいしく感じられました。
魚料理は伝統的なフランス料理「ノルウェーサーモンのパイ包み焼き クーリビヤック風」です。ゆで玉子、サーモン、リゾットをほうれん草の葉で包み、さらにパイ生地で包んで焼き上げた一品。こちらはシェフが切り分けて、お皿にサーブしてくれます。切り分けられた断面が美しく、盛り付けされるのを見守りながら期待が高まります。
しっとりとしたパイにサーモンのうま味とゆで玉子とリゾットのまろやかさ。こっくり濃厚な「ソースショロン」とよばれる伝統的なソースをかけていただきます。ソースショロンは卵黄と澄ましバター、エストラゴン(甘く繊細な香りのハーブ)などで作った「ソースベアルネーズ」にトマトを加えたソースです。シェフいわくマヨネーズの原型のようなソースで、中毒性の高いおいしさ。
こちらの料理の原型はロシア料理なのだそう。今まで食べたことのない料理との出合いって、何て楽しいのでしょう。現在まで途切れずに脈々と紡がれてきた手の込んだクラシックな料理をまるで新しい料理のように斬新に感じつつ、じっくりと味わいました。
彩り華やかな肉料理がテーブルに運ばれてきました。表面は香ばしく、低温でしっとりと焼きあげた黒毛和牛は赤身と脂身のバランスのいい部位をチョイス。ソースは神戸北区の「神戸ワイナリー」の赤ワインを煮詰め、仔牛や香味野菜と煮込んだだし・フォンドボーとあわせたソースヴァンルージュ。神戸ワインの酸味と渋みを生かして複雑で深みのある味わいに仕上げたソース、さらに地場野菜のローストが添えられています。
とても小さなひと皿なのですが、シェフのこだわりが詰まっているのがこちら。ハヤシライスが一般に普及したのは「神戸迎賓館」の全盛期、大正時代のこと。洋食文化が盛んな地元・神戸らしい料理をひとつコースに取り入れたくて、とシェフ。
糖度の高い淡路島の玉ねぎを飴色になるまでじっくり炒め、玉ねぎの自然な甘みをフルに引き出したハヤシライス作りはなんと1日がかり。フレンチのシェフが本気で作るハヤシライスをほんの少しだけいただくという、なんともうれしい贅沢!
甘いデザートの時間がやってきました。イースト菌で膨らませた焼き菓子「ババ」に神戸紅茶とオレンジシロップをたっぷりしみこませ、モンブランペーストでおめかししたデザート「モンブラン仕立てのババ」。気分が明るくなるような紅茶とオレンジシロップの華やかな味わいに、しっとりなめらかで上品な栗のペーストが絡みます。盛り付けも目に楽しい!
パリブレストというお菓子は世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」の前身ともよべるレースを記念して作られたお菓子。自転車の車輪を模した焼き菓子が皿を飾るのですが、シェフは秋の月に見立てて丸いシューを飾りました。黒い皿に浮かぶのは、ウサギとお月見団子に見立てた餅のムース。秋の味覚・巨峰やイチヂクのコンポート、金木犀が香る泡を添えて、なんとも艶やかなメインデセールを堪能しました。
重要文化財「神戸迎賓館 旧西尾邸」の名建築を鑑賞する
大正8年(1919)に建てられた「神戸迎賓館 旧西尾邸」は建築的なみどころがたっぷり。かつては世界中からVIPが訪れ、外国人居留地のなかでも特別なステータスのある貴賓が招かれるような社交の場だったといいます。貿易商・西尾類蔵の邸宅で、設計を担当したのは初代通天閣を手がけた建築家・設楽貞雄(しだらさだお)氏です。
1階の正面玄関に足を踏み入れると天井が高く開放感のある空間が広がります。ヨーロッパから輸入した大理石をふんだんに使用した高級感のあるエントランスは、地震で破損した右の柱以外は当時のままだそうです。
館内でもひときわ目を引くのがステンドグラス。色鮮やかなデザインは部屋ごとに異なります。和と洋が織りなす大正建築の技巧にも注目。当時ヨーロッパで流行したアール・ヌーヴォーの流れを汲む建築デザインと、日本ならではの技法も見られ、和洋折衷の造りが印象的です。施工を行なったのは宮大工ということもあり、日本建築の技術の素晴らしさも随所に感じられます。
かつて貴賓をもてなした「鳳凰の間」。鳳凰を透かし彫りにした欄間など格調高い意匠もみどころの一つ。
大きくて開放的な窓も印象的。一部の窓からは須磨海岸の海や豊かな緑も眺められます。細部まで技巧を凝らした美しい建築美のなかでとっておきの美食を堪能できる非日常的なひととき。特別なお祝い事に利用すれば、思い出に残る素敵な1日になりそうです。ぜひ訪れてみてくださいね。
■LE UN 神戸迎賓館(る あん こうべげいひんかん)
住所:兵庫県神戸市須磨区離宮西町2-4-1
TEL:078-739-7600
営業時間:第1・3水曜 12時30分来館、13時食事スタート
アクセス:山陽電鉄月見山駅または須磨駅から徒歩10分
Text:鴨 一歌
Photo:沖本 明
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