多摩在住インフルエンサーが、多摩の林業について考えるツアーへ!東京の森林を守るために私たちができること
まだ知られていない東京の魅力を都民に知ってもらいたいとスタートした「あしたの東京プロジェクト」。3年目を迎えた「あしたの東京プロジェクト」の第一弾のイベントとして、2024年10月5日(土)にあきる野市で実施されたのが「多摩フォレストツーリズム」です。本イベントには、多摩在住のインフルエンサー・もなみんさん(@and_mona)が参加。森を歩き、林業にふれるなかで、もなみんさんは多摩の林業や森林について、どのような気づきを得たのでしょうか。
Summary
東京には知らない魅力がいっぱい! 「あしたの東京プロジェクト」って?
おしゃれなレストランに煌びやかなビル群の夜景、モダンで洗練された街並み。「東京の魅力」と聞いて真っ先にこうした都会のイメージを思い浮かべる人は多くいるでしょう。けれども実は、東京の魅力はとても多彩。東京は、人々の暮らしを支える一次産業や豊かな自然、長い歴史に裏づけられた伝統文化などが息づく、知れば知るほど奥深くて魅力的な地域なのです。
そんな、地元・東京の「いいところ」を改めて感じ、新しい魅力を都民のみなさんと一緒に生み出していく参加型キャンペーンが、東京都が2022年度から実施している「あしたの東京プロジェクト」。都内の産業や伝統文化、大自然など、数多くある東京の魅力を体感したり、地域の課題を考えるイベントに参加したりすることで、都民や都内事業者のみなさんの地域への理解・愛着を高め、「あしたの東京をつくる」気運を醸成するプロジェクトです。
2024年の「あしたの東京プロジェクト」では、多摩地域、島しょ、区部で、東京の魅力にふれるイベントを3回にわたって実施する予定です。10月にはあきる野市で森林ガイドツアーやワークショップなどを通して、東京の「林業」の魅力を楽しみながら体感するツアー「多摩フォレストツーリズム」を開催。11月には神津島で星空観察やトレッキングなどを行い島しょ地域の魅力を体感する1泊2日の体験ツアー、区部でもプロジェクトのフィナーレとしてイベントの開催を予定しています。
\ 都民のみなさんにこそ知ってほしい! /
多摩の森林を学ぶツアーに参加! 林業界が直面する課題も
2024年10月に開催された「多摩フォレストツーリズム」の舞台となったのは、東京都の多摩エリアにある、あきる野市。あきる野市は都心から1時間ほどとアクセスしやすい場所にありながら、大自然を擁しています。その代表的な存在として挙げられるのが、豊かな森林です。
実は東京都の土地の約4割は森林で覆われています。また、東京都の森林は約7割が多摩エリアにあるというデータも。この豊かな森林資源を拠り所に、あきる野市を含む多摩エリアでは、古くから林業が盛んに営まれてきました。
東京都には誇れるほどの森林資源があり、林業は、東京に根づいた歴史ある産業です。しかし、林業に従事する人口の減少など、現在の林業界は複数の課題を抱えています。「多摩フォレストツーリズム」では、森林や林業の魅力にふれるとともに、そんな林業にまつわる課題を知ることを目的に、林業ガイドツアーや材木加工場の見学なども行われました。
それでは実際に体験したツアーの様子をレポートします!
多摩の森には、どんな生き物が住んでいる? 「森林ガイドツアー」
「多摩フォレストツーリズム」は、森を歩きながら生態系などを知る「ネイチャーガイド」からスタート。舞台は、2009年に自然体験ツアーのフィールドとして拓かれた「新宿の森・あきる野」。ガイドを担当してくれたのは、あきる野市が掲げる”郷土の恵みの森づくり”を推進する専門集団「森林レンジャーあきる野」の隊長である杉野 二郎さんです。
ネイチャーガイドが始まると、慣れた様子で山道をどんどん歩いていく杉野さん。森林を知るための手がかりを見つけると立ち止まり、分かりやすく解説してくれます。
ガイド中に見つけたのは、木の切り株の上に落ちていたイガ栗。中身は空っぽに近く、何者かが実を食べたような形跡があります。杉野さんいわく、これはリスによるものなのだそう。「リスには、地面より高く、周囲を見渡せる場所に木の実を運び、そこで食べるという習性があります。リスの目は特殊で、前後左右に加えて上まで見渡せます。木の切り株の上のような、視界を遮るものがない高い場所に運ぶことで、木の実を食べているときに、敵に襲われるのを防いでいるのです」と、杉野さん。
続けて「新宿の森・あきる野」の生態系について、こう解説してくれました。「空になったイガ栗があることから、この森にはリスをはじめとする小動物がいると分かります。小動物がいるなら、彼らを獲物にするキツネや猛禽(もうきん)類もいる可能性が高い。先ほど皮が剥がれた木や傷が付いた木もありましたが、あれはシカやクマによるもの。つまり『新宿の森・あきる野』には、小動物から大型動物まで幅広い生き物が生息しているのです」。
「新宿の森・あきる野」を1時間ほど歩いたところで、ネイチャーガイドは完結。続けて、林業について学ぶ「林業ガイド」が始まります。ガイド役を担うのは、個人事業でエコツアーガイドを展開しているオフィス髙濱(東京グリーンエコツーリズム)の髙濱 謙一さんと、あきる野市の林業事業体「株式会社 山武師(やまぶし)」のスタッフの髙木 海さんです。
「新宿の森・あきる野」に息づいているのは、大きさ、形状ともにさまざまな木々。こうした木々を目の前にしながら、髙濱さんと髙木さんが、林業が環境に与える影響や伐採の方法などをやさしく解説してくれます。
まずは林業の必要性について。「林業における重要な作業の一つとして、森に生えている木を間引く『間伐』という作業があります。間伐をすることで、残った木の根が地中にしっかりと伸びるようになります。木の根が張っている土地は異常気象に強く、強風や大雪に見舞われても、雪崩などの災害が起きにくくなります」と髙木さん。
林業ガイドの終盤、参加者より「木は1本あたり、どれくらいの価格で売れますか?」という質問があがる一幕も。髙濱さんからの回答を通じて、林業を取り巻く厳しい状況が明らかになりました。「50年ほどかけて25m以上に育った木でも、市場では4m単位で1本3000~4000円にしかなりません。また、木の伐採には人件費がかかりますし、切った木を運ぶときには人件費以外にもガソリン費がかかります。つまり木を切っても儲けが出ないどころか、赤字になるため、現状国からの補助金で賄われるケースが多いです」。こう髙濱さんが解説すると、驚き、考え込むような表情をみせた参加者も。
林業が直面している厳しい状況を改善するうえでは、木の市場価格を上げる必要があるそう。また、私たち消費者が暮らしに木材製品を積極的に取り入れることで、木の需要や価値が上がっていくようです。
森の中を歩く時間は、とても心地よかったです。川のやさしいせせらぎなどに、なんだか癒やされました。また、都心から1時間ほどの場所にもトレッキングができるフィールドがあることに驚きました。
髙濱さんや髙木さんのお話を聞いた後は、林業の未来について考えさせられました。林業に就く人が少なく、木材の単価が低いという状況は、将来的に致命的な問題につながるように思います。今の状況を改善するために私たちができることについては、まだまだ分からないことばかり。でも森を守るために、何かしたいという思いが強くなりました。
多摩産材を使った「瀬音の湯」へ
あきる野市内には、多摩の森から切り出された木が多用された施設も。それが、“美肌の湯”として知られる「秋川渓谷 瀬音の湯」です。こちらは温泉棟と宿泊棟を擁しており、どちらも一部が木造構造になっています。また、木造構造が採用されている空間の柱や梁などには、多摩で産出された木材が使用されているのだとか。
「秋川渓谷 瀬音の湯」の湯質にも、特筆すべき点が多々あるよう。こちらの施設で楽しめるのは、地下1500mから湧出したアルカリ性単純温泉。ph値が10を超えている全国的にも珍しいお湯で、“美肌の湯”として人気なのだそう。
館内の至る所に、多摩産材が使用されていて驚きました! 木があしらわれた内装のおかげで、ぬくもり感のある空間になっていると思います。また、オープンから10年以上経っているため、木ならではの味わいも感じられました。
地産食材を使ったランチを楽しみながら交流
この日は、「瀬音の湯」にある「石舟Dining」でランチタイム。提供されたのは、あきる野市内にあるレストラン「kitchen CANVAS」が手がけたお弁当です。お弁当の中には、青梅市で生産された豚を使った「青梅産豚の合挽ハンバーグ」、多摩エリアのブランド牛・秋川牛を用いた「秋川牛ローストビーフ~焼きナス巻き~」、「東京しゃもの唐揚げ~自家製塩麹漬け~」、「檜原舞茸の天ぷら」など、地産食材を生かした料理がぎっしり。
「いただきます」という掛け声を合図に食事がスタートすると、各テーブルで次々と笑顔の花が咲きました。「こんなにおいしいハンバーグ、初めて食べた!」と喜ぶ子どもや、多摩エリアでとれた天然鮎のふりかけを食べ「おかずはもちろん、ふりかけもすごくおいしい。食材の質の高さを感じます」と、笑顔で語る参加者の姿も。各テーブルは終始、和やかな雰囲気で満たされていました。
地場の食材だけでお弁当を構成できるほど、多摩エリアには豊富な食資源があるんですね。都内でこんなにも多彩な食材が作られているんだ!と驚きました。また、お弁当は本当においしかったです。ローストビーフは軟らかく、とろとろになったナスと相性抜群。多摩・檜原村のマイタケは肉厚で、食べごたえがありました。
\ 参加者の声も! /
多摩産材はこうして加工される! 貯木場&材木加工場を見学
「多摩フォレストツーリズム」の後半では、森から切り出された木材の加工方法などを学びます。一行が訪れたのは、多摩産材の製材と乾燥、加工を行っている「中嶋材木店」。「中嶋材木店」は貯木場と工場を所有しており、貯木場では主に木の皮むきや乾燥を、工場では木材の切削などを行っています。
「中嶋材木店」で木材の加工方法などを解説してくれたのは、「新宿の森・あきる野」で林業について教えてくれた髙濱さんです。髙濱さんによると、森で切り出した木を市場に出荷するまでには、さまざまな工程が必要になるそう。
「森で切った木はまず原木市場に運ばれ、そこで競りにかけられます。競り落とされた木は貯木場や工場に運ばれ、その後加工されるわけですが、切り出された後、山土場や市場などで小石などの異物が樹皮に入り込んでしまうケースが多々あります。小石が入り込んだ木材を機械で切断すると、機械が壊れてしまう可能性が高いので、原木市場から持ち込まれた木は、まず皮むき機にかけられます」
また、原木には、水分が多分に含まれているそう。原木を皮むき機にかけ、柱や板材に製材した後、できあがった木材を乾燥機にかけることで、出荷後の木材の劣化が抑えられるそうです。
皮を剥き、乾燥させた木材は工場に運び込まれた後、カンナがけの機械である「モルダー加工機」や製材機にかけられ、規格に沿った角材や板材に仕上げられます。
たまに私もDIYで家具を作るのですが、そういうときはホームセンターへ足を運び、整然と並んでいる角材を何気なく買っていました。日常で林業とのつながりを感じる機会はありませんでしたが、今回、原木が角材に加工される様子を見て、「森に息づいていた木が複数の工程を経ることで、私たち消費者の手に角材が渡るんだな」と実感。とても貴重な体験をさせてもらいました。
多摩産材を使ったバターナイフ作りに挑戦!
ツアーの最後に訪れたのは、秋川のそばにあるキャンプ場「自然人村」。こちらには、ホテル仕様のベッドを備えたタイニーハウスや川に入れるプライベートアウトドアサウナ、BBQ場などがあり、ゲストは自然に囲まれた環境で、思い思いに過ごすことができます。
「自然人村」も、多摩産材を建築に採用している施設の一つ。タイニーハウスとプライベートサウナは、多摩で産出された杉や檜を材料に作られています。「自然人村」を管理する「株式会社do-mo」の鴨井 浩人さんは、この施設に多摩産材が使用された背景を次のように語りました。「4年前に自然人村をリニューアルオープンするにあたり、『この施設を地域ブランディングに役立てる』という目標を掲げました。この目標を実現するため、地域の特産品である多摩産材を使って、建物を新設することにしました。なお、多摩産材への注目度を上げ、多摩産材の普及に貢献したいという思いから、タイニーハウスはユニークな形状に仕上げました」。
「自然人村」では、多摩産の檜の端材を使ったワークショップも行われました。参加者全員の手元にはバターナイフ型の木材とやすりが配られました。まだ分厚い木材を自身の手で削り、バターナイフに仕上げます。誰もが真剣に、そして楽しそうにバターナイフ作りに取り組んでいました。
「自然人村」の周囲にあるのは、豊かな森。施設の建物にも木材が多用されていることから、木が森と「自然人村」の間で循環しているようなイメージが湧きました。たくさんの人にここを訪れ、多摩の森や林業にふれてもらいたいなと思います。
また、バターナイフを作っている最中、木の温もりや檜の香りが感じられました。仕上げたバターナイフには、愛着がもてそうです。友人などが家に来た際は「これは東京の檜でできてるんだよ」と、積極的に伝えたいです。
多くの人に多摩エリアに訪れ、多摩の森林や林業を感じてもらいたい
ーもなみんさんがこのツアーを通じて感じたこととは?
今回のツアーを通じて、都内の駅やカフェなどにも多摩産材が使われていると初めて知り、私たちの身近な場所にも多摩産材があったんだなぁと感慨深くなりました。また、今日は森を歩きながら、東京の自然の豊かさを実感しましたし、お弁当を通じて東京の食資源の多彩さを感じて、都民であることを誇らしくさえ思いました。
一方で林業を取り巻く状況には、どきりとさせられました。林業に対して熱意を抱く人が減りつつあるというのは、深刻な問題。どうすればこの状況を変えられるのか、みんなで考えていく必要がありますね。ふだんの暮らしのなかで、林業を意識する機会が少ないことが原因の一つだとも思うので、多くの人に多摩の森や「自然人村」のような、林業を感じられる場所に足を運んでもらいたいなと思います。
オンライン上であなたもデジタルランタンに参加しよう♪
現在、「あしたの東京プロジェクト」特設サイトで「デジタルランタンキャンペーン」が開催されています。キャンペーンページにある「デジタルランタンキャンペーンに参加する」のボタンをクリックし、次に表示される「スタート」ボタンをクリックすると、画面上に大きなデジタルランタンが登場。同画面に表示されるデジタルペンを使って、ランタンの上に、あなたが住む街“東京”の「魅力」や「未来への願い」を書き込みましょう。
記入していただいたメッセージの一部は、「あしたの東京プロジェクト」特設サイトや、23区内で実施予定の「あしたの東京プロジェクト」のイベントで公開される予定です。「デジタルランタンキャンペーン」への参加をきっかけに、東京の魅力を見つめ直したり、「あしたの東京」に思いを馳せたりしてみては?
■デジタルランタンキャンペーン概要
募集期間:2024年9月4日(水)14時~2025年2月15日(土)23時59分
参加方法:「あしたの東京プロジェクト」公式サイト内の「デジタルランタンキャンペーンに参加する」のボタンをクリックし、「参加にあたっての注意事項」をご確認のうえ、専用フォームから応募
公開予定:ご応募いただいたデジタルランタンは、2種類の制作物のデザインとして活用し、以下の場所・時期での公開を予定しております。
※多くのメッセージをご応募いただいた際には、一部のみの公開となる場合がある旨ご了承ください。
①デジタルランタンが東京の夜空に上がっていくイメージ動画
【公開場所】「あしたの東京プロジェクト」特設サイト
【公開時期】2025年3月まで定期的に公開予定
※投稿いただいてから特設サイトの公開までは1カ月程度かかる場合がございます。
※年度内に開催するイベント会場でも公開予定です。
②デジタルランタンを用いた集大成アート
【公開場所】「あしたの東京プロジェクト」特設サイト
【公開時期】2025年3月に公開予定
\ あなたが思う「東京のいいところ」って? /
Text:緒方よしこ
Photo:もなみん、PIXTA
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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Sponsored:東京都、公益財団法人東京観光財団