【京都】「学問の神様」を祀る北野天満宮で撫で牛めぐり。京都屈指の梅&紅葉もおすすめ
春の梅、秋の紅葉の名所で有名な「北野天満宮」。「学問の神様」菅原道真公を祀る神社として、毎年たくさんの学生が合格祈願に訪れます。全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社は、古くから「北野の天神さま」と親しまれてきました。人気の梅苑やもみじ苑、花手水、かわいらしい「撫(な)で牛」など、みどころも豊富な北野天満宮を参拝しませんか?
Summary
実在の人物、菅原道真公を祀った神社
北野天満宮の創建は、平安時代初期の天暦元年(947)。平安京の天門(北門)にあたる北野の地に、菅原道真公を祀る社が建てられたことに始まります。それまでの神社は、天照大神や須佐之男命など神話の世界に登場する人物を神として祀りましたが、北野天満宮は実在の菅原道真公を神として祀ったことが特徴です。なぜ菅原道真公は神として祀られたのでしょうか。
祭神の菅原道真公は、幼い頃から学業や和歌、漢詩の世界で優れた才能を発揮。漢詩集『菅家文草(かんけぶんそう)』『菅家後集(かんけこうしゅう)』の編さんを行い、歴史書『日本三大実録』の編集にも携わり、数多くの和歌が今も伝わっています。また宇多天皇から信任され、最終的には右大臣まで上り詰めたのですが、左大臣・藤原時平などの策謀により昌泰4年(901)に太宰府に左遷。その2年後に波乱に満ちた生涯を閉じました。
菅原道真公の清らかで誠実な人柄と不遇な晩年はさまざまな伝説を生み、やがて「天神さま」と崇められ、現代に続く「天神信仰」へと発展します。天暦元年に社が創建されると、藤原氏による大規模な社殿造営が行われました。永延元年(987)には一條天皇の勅使が派遣され、国家平安が祈念されるとともに、「北野天満大自在天神」の御神号を賜ることになります。
桃山時代には、豊臣秀吉公がこの地で大茶会を催したり、歌舞伎の元祖といわれる出雲阿国が京ではじめてややこ踊り(歌舞伎踊り)を演じたり、日本文化発信の中心地としての役割も果たすように。江戸時代に入り、全国各地に読み書きそろばんを教える寺子屋が普及すると、天神さまが祀られたり道真公の姿を描いた御神影が掲げられたり、道真公は「学問の神様」「芸能の神様」として尊崇されるようになりました。
国宝「御本殿」と伝説の門「三光門」
それでは早速北野天満宮を参拝しましょう。一の鳥居を抜け、参道を抜けると壮大な楼門が見えます。楼門の上部には平安時代の学者、慶滋保胤(よししげのやすたね)、大江匡衡(おおえのまさひら)が菅原道真公を讃えた「文道大祖風月本主」の文言が刻まれた額が掲げられています。年末に飾られる干支の大絵馬は、京の師走の風物詩となっています。
楼門をくぐって右手にあるのが「北野の花手水(はなてみず)」。コロナ禍の2020年頃から疫病退散と参拝客の心の慰みのために始まり、SNSを中心に話題に。季節の花々が美しく生けられ、心の安らぎを感じられます。
左手にある絵馬所は江戸時代の元禄12年(1699)に建てられたもので、規模・歴史ともに現存する絵馬所のなかでも随一。中に入って見上げてみると、北野天満宮に奉納した絵馬がいたる所に掲げられています。
こちらの「誠」の絵馬は、新撰組が奉納したものという説、新撰組の隊旗や法被(はっぴ)のモチーフになったという説があります。絵馬所の西側に掲げられているのでぜひ見ておきましょう。
御本殿へと続く参道には、令和9年(2027)に執り行われる「菅公御神忌千百二十五年半萬燈祭」に向けて、奉納御神燈提灯がズラリと掲げられています。この祭は、菅原道真公の没後25年ごとに行われ、没後50年ごとに行われる「大萬燈祭」とともに、北野天満宮にとって最も重要な祭りなのだとか。毎月25日のご縁日やライトアップの日には、幻想的な光景を目の当たりにできるそうです。
御本殿の前に立つ三光門(重文)は、日・月・星の彫刻があることが名前の由来。でも実は星の彫刻は見当たらないともいわれ「星欠けの三光門」として、北野天満宮に古くから伝わる「天神さまの七不思議」のひとつに数えられます。
雄大な檜皮葺屋根をのせた御本殿は、豊臣秀頼公によって造営されたものです。御殿と拝殿は石畳の廊下でつながり、御本殿西に脇殿を、拝殿の両脇には楽の間を備えた、神社建築では珍しい「八棟造(やつむねづくり)」となっているのが特徴。貴重な遺構として国宝に指定されています。
梅が咲く季節には、御本殿の前にある飛梅もぜひ愛でたいところ。北野天満宮に遺された資料や文献等から、創建以来、代々御神前で守り受け継がれてきたことが伝わっています。
北野天満宮の境内には、御本殿を囲むように50の摂社と末社が建ち並んでいます。こちらは、北野天満宮の創建以前からある地主神社。天神地衹の神々をお祀りする神社で、一の鳥居から続く北野天満宮の参道は、もともと、この地主神社へと続く参道として整備されたものといわれています。御本殿と合わせて参拝しましょう。
天神信仰ゆかりの神宝をじっくり観賞するなら、宝物殿を訪れてみてはいかがでしょう。国宝指定の「北野天神縁起絵巻」や、菅原道真公の守り刀と伝わる「猫丸」、新々刀(江戸時代後期から廃刀令までに作刀された日本刀)の銘品「大慶直胤(たいけいなおたね)」、豊臣秀頼が奉納した「堀川國広」などの名刀も展示され、刀剣ファンも数多く訪れます。
境内いたる所に置かれた「撫(な)で牛」に願いを…
北野天満宮の境内を散策していると、たくさんの牛の石像があることに気づきます。牛は、古くから天神さまの使いとして崇められ、菅原道真公と牛にまつわる故事もたくさん残っています。
境内の牛は「撫で牛」とよばれ、いつの頃からかその身体を撫でるとご利益があるといわれるように。「学問の神様」菅原道真公にあやかって頭を撫でる人や、手や足を撫でる人、おなかを撫でる人…。科学が発達した現代でも多くの人が撫で牛に願いを込め、いたわるように撫でています。境内に奉納された牛も全て寄進されたものだそうで、天神さまへの崇敬の念が広く伝わってきたことがよくわかります。
目を真っ赤にして菅原道真公の帰りを待つ忠義心を表した「赤目の牛」やマーブル模様の撫で牛、花手水にちょこんと置かれた小さいサイズの撫で牛など、一つひとつのフォルムも異なり、眺めているだけでも楽しいですね♪
境内の北西にある一願成就所には、北野天満宮で最も古い牛の像が祀られ、こちらは「一願成就のお牛さま」とよばれています。よく見ると長年多くの人に撫でられたり風雨にさらされたりして、顔の一部が欠けていますね。牛を撫でた多くの人への思いも馳せながら、お願い事を託しましょう。
梅苑「花の庭」と史跡御土居のもみじ苑で四季を満喫
北野天満宮は、四季それぞれに美しい光景を楽しめるのも魅力です。例年2月上旬~3月下旬まで公開される梅苑「花の庭」には、白梅、紅梅、一重、八重、と花咲く梅の間を散策できます。展望台は、梅苑をぐるりと360度見渡せる絶好のポイント。2月25日には、梅花祭と梅花祭野点大茶湯が行われ、多くの人でに賑わいます。
また秋は、「史跡御土居のもみじ苑」へ行きましょう。桃山時代、豊臣秀吉公が洛中洛外の境界を定め、水防のための土塁「御土居(おどい)」を築きました。その一部が境内に今も残り、約350本の木々が美しい紅葉に染まります。
もみじ苑は、例年10月下旬~12月上旬の期間公開されます。期間中はライトアップデイもあり、昼とはひと味違った幻想的な世界が広がります。また例年4月中旬~6月下旬の期間は、青もみじが公開されます。高低差がある御土居だからこそ眺められる、御土居の上からや下からの景色をぜひ楽しんでください♪
北野天満宮はたくさんの年中行事がありますが、毎月25日に開かれる「天神さまの縁日」は、毎月21日に開かれる東寺の縁日と並んで、京都の人々に広く親しまれています。菅原道真公の誕生日である6月25日と祥月命日である2月25日に由来するこの行事では、早朝6時~日没まで境内に多くの露天が並び、たくさんの人で賑わいます。骨董品や小道具、古着などの出店も多いので、お宝に巡り合えることができるかも!?境内は日没からライトアップされ、御本殿を始めとする社殿が美しい光に照らされます。
北野天満宮へのアクセスはバスが便利
北野天満宮へは、バスの利用が便利です。最寄りの市バス「北野天満宮」停から徒歩すぐ。JR・阪急・京阪の最寄り駅近くにあるバス停から乗れば、スムーズに到着できますよ。
JR京都駅からは市バス50系統。JR・地下鉄二条駅や阪急大宮駅からは市バス55系統、JR円町駅や阪急西院駅、京阪出町柳駅からは市バス203系統に乗車してください。また京阪三条駅からは市バス10系統、地下鉄今出川駅からは市バス51・203系統を利用しましょう。
嵐山方面から北野天満宮に向かう場合は、嵐電を利用するのがおすすめ。北野線の終点・北野白梅町駅から徒歩5分のアクセス。今出川通を東にまっすぐ行けば到着できるので、初めて京都観光に訪れた人も迷わず行けるでしょう。
■北野天満宮(きたのてんまんぐう)
住所:京都府京都市上京区馬喰町
TEL:075-461-0005
参拝時間:7~17時
※毎月25日のライトアップは日没~21時、秋のライトアップは日没~20時、状況により、時間・内容の変更・中止の可能性あり。詳しくは、北野天満宮ホームページ等を確認
参拝料:無料※宝物殿拝観料大人1000円、御土居のもみじ苑入苑料大人1200円(青もみじの公開時期は大人500円)
駐車場:300台(有料)※毎月25日は縁日のため利用不可
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Photo:鈴木誠一
Text:津曲克彦
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