【京都】徳川家の栄枯盛衰を見つめた世界遺産・元離宮二条城は名画&庭園の宝庫!

【京都】徳川家の栄枯盛衰を見つめた世界遺産・元離宮二条城は名画&庭園の宝庫!

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元離宮二条城は、年間約186万人が訪れる京都でも指折りの観光名所。江戸時代は徳川家の西の拠点としての役割を果たした歴史があり、明治以降は皇室の離宮となったことから正式には「元離宮二条城」とよばれています。2024年9月に長らく改修を行っていた本丸御殿の公開が再開され、ますます注目を集める元離宮二条城。訪れる前にみどころやアクセスなどをチェックしましょう!

Summary

徳川家康が築城!幕末の大政奉還が行われた歴史の舞台

江戸幕府を開いた徳川家康が、慶長8年(1603)、京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所として築城。家康は、豊臣秀頼との会見をこの城で行い、大阪冬の陣・夏の陣の際もこの城から大阪城へと出征しました。3代将軍・徳川家光の時代に、後水尾天皇(ごみずのおてんのう)の行幸のために増・大規模な改修が行われ、二の丸御殿も狩野派の絵師の障壁画で飾られました。寛永11年(1634)に家光は30万人ともいわれる大軍を率いて入城しましたが、その後約230年にわたりこの城に将軍が入城することはありませんでした。

二条城が歴史の表舞台に再び登場するのは幕末になってからのこと。14代将軍・徳川家茂は孝明天皇が願った「外国勢力の排斥」の求めに応じて上洛。文久3年(1863)、家光以来、約230年ぶりに入城しました。家茂の没後、15代将軍となった徳川慶喜は、二条城で将軍職を継ぎます。しかし倒幕の勢いは加速し、慶応3年(1867)、慶喜は二の丸御殿で朝廷に政権を返上する大政奉還の意思を表明。徳川幕府は終焉を迎えることとなりました。

御書院一之間から三之間(提供:元離宮二条城)
御書院一之間から三之間(提供:元離宮二条城)

明治に入ると、二条城は京都府庁や陸軍省を経て皇室の別邸「二条離宮」となります。現在の本丸御殿は、京都御所の北にあった桂宮御殿の主要部を移築した建物です。大正4年(1915)には大正天皇の即位の儀式が京都御所で行われますが、その後の饗宴が二条城で開催。饗宴には皇室関係者や各国の要人、総理大臣が招かれ、新たな天皇の即位を華やかに祝しました。昭和15年(1940)、恩賜元離宮二条城として一般公開が始まり、昭和27年(1952)には文化財保護法の制定により二の丸御殿6棟が国宝に、東大手門など22棟の建物が重要文化財に指定。平成6年(1994)にはユネスコの世界文化遺産に登録されました。現在は、全国各地から訪れる修学旅行生やインバウンドの外国人観光客など、年間約186万人(2023年度)が、元離宮二条城を訪れています。

絢爛豪華な国宝・二の丸御殿で名画鑑賞!

総面積27万5000㎡の広大な敷地の中に、本丸御殿、二の丸御殿をはじめ、3つの大規模な庭園や多くの門を有する元離宮二条城。二の丸御殿及び二の丸庭園を観覧する場合は約1時間~1時間30分程度。加えて本丸御殿及び本丸庭園を観覧する場合は、2時間30分~3時間程度必要です。できれば歩きやすい靴や服装で行きましょう。

東大手門(提供:元離宮二条城)
東大手門(提供:元離宮二条城)

入城券を購入したら、元離宮二条城の正門・東大手門(重要文化財)へ。築城当時は2階建てでしたが、後水尾天皇の行幸の際には、天皇を2階から見下ろさないための配慮から一重の門に建て替えられたそうです。現在の門は、寛文2年(1662)頃の建築と考えられています。威風堂々とした門をくぐって、いざ入城です!

まずは二の丸御殿へと向かいます。こちらは、二の丸御殿の正門・唐門(重要文化財)です。切妻造の檜皮葺の屋根には立派な唐破風が設けられ煌びやかな印象ですね。門の内側には長寿を意味する「松竹梅に鶴」や、聖域を守護する空想上の動物「唐獅子」など、極彩色の彫刻が彩られています。

二の丸御殿と御所御車返し(提供:元離宮二条城)
二の丸御殿と御所御車返し(提供:元離宮二条城)

二の丸御殿は全6棟の建物で構成され、江戸初期に完成したとされる書院造の代表例として日本建築史上、重要な遺構です。国内の城郭に残る唯一の御殿群として国宝に指定されています。

四の間(提供:元離宮二条城)
大広間 四の間(提供:元離宮二条城)

御殿の内部は、部屋数33、約800畳の広大さで、狩野派の障壁画や極彩色の彫刻に金の装飾など、まさに絢爛豪華な空間となっています。また二の丸御殿の廊下を歩くと鳥が鳴くような音がなることから、「鶯(うぐいす)張り」とよばれています。これは目かすがいと釘のこすれによって生じるもので、視覚はもちろん聴覚でも楽しむことができます。

大広間一の間・二の間(提供:元離宮二条城)
大広間一の間・二の間(提供:元離宮二条城)

大広間一の間(上段の間)・二の間(下段の間)は、将軍と大名や公家との公式な対面所として利用されました。将軍が座る一の間は一段高く設けられ、二の間に大名が並びました。

狩野山楽筆「松鷹図」(提供:元離宮二条城)
狩野山楽筆「松鷹図」(提供:元離宮二条城)

二の丸御殿には、寛永期の障壁画を含む約3600面の障壁画が残されており、そのうち1016面が重要文化財に登録されています。寛永期の障壁画を手がけたのは、江戸幕府の御用絵師たち狩野探幽(かのうたんゆう)をはじめ、狩野山楽(かのうさんらく)など当代一の絵師たちがその総力を挙げて制作しました。こちらは、四の間に描かれた狩野山楽筆の「松鷹図」。雄大にして繊細な筆致に、思わず圧倒されてしまいます。

二の丸庭園(提供:元離宮二条城)
二の丸庭園(提供:元離宮二条城)

二の丸御殿の観覧後は、ぜひ二の丸庭園(特別名勝)も鑑賞しましょう。庭園は、家康築城時から存在したと考えられ、後水尾天皇の行幸に合わせて改修されたました。作事奉行や大名茶人として活躍した小堀遠州が手がけた庭園は、不老不死の仙人が住むといわれる異世界を表現。大きな池の中央に蓬莱山を、左右に鶴亀など、神仙蓬莱思想に基づいて設計されているのが特徴です。

観覧チケットはWebで事前購入を!18年ぶりに公開された本丸御殿

続いて内堀に囲まれた約2万㎡の広さを有する本丸エリア。お目当ての本丸御殿へ行きましょう。本丸御殿は長らく改修工事が行われてきましたが、2024年9月から18年ぶりに一般公開が再開されました。観覧は事前予約制となっており、元離宮二条城の公式HPから「本丸御殿観覧券」を購入した上で出かけよう。また障壁画の保全のために御常御殿では時期を分けて各部屋の公開を行っています。元離宮二条城の公式HPを確認の上、Webチケットを購入しましょう。

御常御殿
御常御殿

初代の本丸御殿は、後水尾天皇の行幸に伴い、敷地を拡張した際に設けられましたが、天明8年(1788)の大火で焼失しました。明治に入って二条城は皇室の離宮となり、明治天皇は京都御所の北にあった桂宮御殿の主要部である玄関や御書院、御常御殿(おつねごてん)、台所、雁の間を移築しました。明治天皇は主要な部屋に「松鶴の間」などの名前を付け、「呈寿(ていじゅ)」と書いた額を2階の御座所に掲げさせました。

御常御殿「松鶴の間」(提供:元離宮二条城)
御常御殿「松鶴の間」(提供:元離宮二条城)

各部屋に描かれた障壁画は、まだ建物が京都御所にあった文久2年(1862)に、桂宮家の当主・淑子(すみこ)内親王が当主になるにあたり描かれたものといわれています。京都画壇の各派を代表する絵師達が描いた美しい障壁画に思わず見とれてしまいます。

御書院三之間から一之間(提供:元離宮二条城)
御書院三之間から一之間(提供:元離宮二条城)

その後本丸御殿は、嘉仁皇太子(後の大正天皇)や裕仁皇太子(後の昭和天皇)等の宿泊所として用いられ、照明やテーブル、椅子などの洋風の設えが取り入れられました。京都御所の周辺にあった宮家や公家の建物は明治以降にほぼ失われてしまい、江戸時代にさかのぼる大規模な宮家の御殿はこの本丸御殿を残すのみ。江戸時代から近代の宮廷文化を今に伝える大変貴重な建物は、令和の今も優雅な趣に包まれています。

本丸御殿の南側に広がる本丸庭園は、明治天皇の行幸の際に枯山水庭園から大改造が行われました。東南隅に築山を配し、伏せて据えられた景石、芝生と曲線的な園路を設けています。庭園の南西にある天守跡に登って眺めると、遠く比叡山を望む庭園が御殿と一体化し、優美な美しさを感じられますね。

第3の庭園「清流園」や四季の花を愛でよう

本丸御殿を満喫したら、城の北側にある「清流園」へ。こちらは昭和40年(1965)に造られた庭園で、江戸時代初期の豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)の屋敷跡(現:日本銀行京都支店)から建物の一部や庭石、樹木を譲り受け作庭されました。設計には「昭和の小堀遠州」と称えられた中根金作(なかねきんさく)氏らが携わっています。

書院・香雲亭と茶室・和楽庵がある庭の西側は日本庭園、東側は洋風の芝庭という和洋折衷が特徴的。東西の庭の対比を楽しみながら観賞するのもよさそうですね。

画像提供:元離宮二条城
春の元離宮二条城(提供:元離宮二条城)

春には美しい桜が出迎えてくれます。庭と桜が織りなす美しい景色を楽しめるスポットなので、春に元離宮二条城を訪れた際はぜひ見学しましょう。

画像提供:元離宮二条城
アジサイが咲く元離宮二条城(提供:元離宮二条城)

また梅雨の時期には、城の西南隅櫓近くの周辺道路にアジサイが美しい花を咲かせます。こちらは約3200株のヤマアジサイやヒメアジサイなどが開花し、隅櫓とアジサイが織りなす光景を間近で楽しめます。

東大手門から入城し、右手に進むと、二の丸御殿の障壁画を展示する「二条城障壁画 展示収蔵館」があります。二の丸御殿では遠くからしか見学できない絢爛豪華な障壁画の原画を近くでじっくりと鑑賞できるので、ぜひ訪れましょう。

扇子各3,300円
「扇子」各3300円

収蔵館の南にある大休憩所には、おみやげも売っているのでぜひチェックしましょう。おすすめは、本丸御殿の公開再開に合わせて企画されたこちらの「扇子」。京都市観光協会と嵯峨美術大学の学生がコラボした商品で、本丸御殿&庭園や障壁画をモチーフにしたデザインが施されています。

限定二条城大政奉還靴下 男性靴下1,100円、女性靴下1,100円、子供靴下990円
限定二条城「大政奉還靴下」「男性靴下」1100円「女性靴下」1100円「子供靴下」990円

こちらは、元離宮二条城限定で販売されている、その名も「大政奉還靴下」。大政奉還ををモチーフに、畳の上に座る侍が表現されている人気商品なのだそう。かわいいデザインはおみやげにも喜ばれそうですね♪

混雑を避けて二条城へ行くなら地下鉄がおすすめ

元離宮二条城へは、電車・バスで移動できますが、混雑を避けるなら電車移動がおすすめ。地下鉄東西線二条城前駅から歩いてすぐと便利ですよ。またバスの場合は、京都駅前から市バス9・50系統を利用してバス停「二条城前」から徒歩すぐのアクセスです。

徳川家の栄枯盛衰を見届け、皇室の離宮となった歴史がある元離宮二条城。本丸御殿を見学する際は、Web予約を忘れずに!絢爛豪華な建築美や障壁画の粋をぜひじっくりと観賞してください。

■元離宮二条城(もとりきゅうにじょうじょう)
住所:京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
TEL:075-841-0096
営業時間:8時45分~16時(閉城17時)
定休日:【休城日】12月29~31日、【本丸御殿】毎月第3月曜日及びその翌日(当該日が休日の場合は観覧可能)、12月26~28日、1月1~3日【二の丸御殿観覧休止日】12月26~28日、1月1~3日、毎年1月、7~8月、12月の火曜日(当該日が休日の場合は二の丸御殿の観覧可能。ただしその翌日は観覧休止)
料金:一般800円※入城券+二の丸御殿観覧券一般1300円、本丸御殿観覧券1000円(要予約、入城券別途要)、展示収蔵館観覧券100円(入城券別途要)
駐車場:140台(有料)

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Photo:鈴木誠一
Text:津曲克彦

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