日本遺産「御嶽昇仙峡」水晶をめぐるストーリーを体感できる旅とは?

日本遺産「御嶽昇仙峡」水晶をめぐるストーリーを体感できる旅とは?

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ツヤツヤと美しく輝き、アクセサリーの素材としても人気の水晶。光の加減や眺める角度によって、異なる表情を見せてくれるのも魅力です。山梨県の甲府市と甲斐市にまたがって位置する御嶽昇仙峡(みたけしょうせんきょう)は日本遺産に認定されており、国内でも屈指の良質な水晶が採掘される地として知られています。今回は水晶にまつわるストーリーに触れながら、日本遺産御嶽昇仙峡の名スポットをご紹介します!

Summary

日本遺産ってなに?

日本遺産とは、地域の歴史、文化、自然、伝統などを一体的に捉え、ストーリー性のある「物語」として認定する制度のこと。文化庁によって、現在までに104のストーリーが日本遺産に認定されました。地域に根づいたストーリーは、その土地の魅力を知るうえで欠かせません。

写真中央にある奇岩は、昇仙峡のシンボルの一つである「覚円峰」
写真左奥にある奇岩は、御嶽昇仙峡のシンボルの一つである「覚円峰」

今回スポットを当てる「御嶽昇仙峡」は、甲府市と甲斐市にまたがって位置する渓谷。首都圏に最も近い山岳公園として知られる「秩父多摩甲斐国立公園」内の一部です。御嶽昇仙峡の奥に鎮座する二千年の歴史の金櫻神社(かなざくらじんじゃ)や美しい自然の板敷渓谷(いたじきけいこく)の「北部エリア」、仙娥滝(せんがたき)や覚円峰(かくえんぽう)といったダイナミックな自然が美しい「渓谷ラインエリア」、ロープウェイが楽しめるエリアなどがあり、それぞれ目を見張るほどの景勝が楽しめます。

御嶽昇仙峡は、日本屈指の水晶の産地。水晶は花崗岩とともに産出されることが多い鉱物で、花崗岩を主体として形成されている御嶽昇仙峡は、水晶が生成されやすい場所といえます。特異な環境を有し、上質な水晶が多数産出される御嶽昇仙峡は、「水晶の鼓動が導いた信仰と技、そして先進技術へ」というタイトルで日本遺産に認定されています。

御嶽昇仙峡には、水晶とゆかりが深い神社もあります。それが、御嶽昇仙峡を登りつめた場所にある金櫻神社です。疫病が蔓延し、悪疫退散、万民息災を願い金峰山山頂五丈岩を御神体として本宮を建立しました。御祭神は小彦名命(すくなひこなのみこと)です。

金櫻神社では、加工された水晶としては日本最古となる水晶が、御神宝(ごしんぽう)として保存されています。「火の玉」とよばれると3つの水晶と、「水の玉」とよばれる2つの水晶からなる御神宝は、はるか昔に磨かれたもの。金櫻神社の神職たちが水晶の原石を京都へ持参し、水晶の職人が居住する「玉造」で加工させたといわれています。

金櫻神社では、御朱印もいただくことができます。拝殿と本殿の近くにある社務所を訪問し、御朱印が欲しい旨を伝えると、大きな水晶でできた御朱印で社印を押してくれます。

社務所には、ハート型の可愛らしい水晶も。これに手を添えてお願い事をすると、ご利益が期待できるのだとか!

社務所には、ハート型のかわいらしい水晶も。これに手を添えてお願い事をすると、ご利益が期待できるのだとか!


水晶ってどうやってできるの? ~自然の力と匠の技に触れる旅へ~

1. 水晶が生まれる場所へ出発!【御嶽昇仙峡】

御嶽昇仙峡がある一帯は山地となっており、大小さまざまな滝や巨石、奇岩を目にすることができます。

この特徴的な景観は、当地を流れる荒川により、長い年月をかけて山地が削られた結果として生まれたもの。こうした景勝は、かつては人々の目に触れることはありませんでしたが、江戸時代末期、甲斐猪狩村に暮らす長田円右衛門(おさだえんえもん)が村人の協力のもと、昇仙峡を開削し新道を設置。これをきっかけに昇仙峡の渓谷美や仙娥滝が望めるようになり、同地は山梨県の観光名所となりました。

六角柱の結晶が確認でき、透明感があるものこそが良質な水晶。摂氏573度以下の熱水中という特定の条件下でないと形成されません。花崗岩を主体とする金峰山周辺には、優れた結晶が産出される水晶鉱床がいくつもあったそう。

御嶽昇仙峡にはロープウェイ施設もあり、山頂のパノラマ台駅からは、御嶽昇仙峡一帯の景観を眺めることができます。また山麓にある昇仙峡ロープウェイ仙娥滝駅では、日本遺産の地域を来訪した証となる「日本遺産 御周印」がもらえます。「日本遺産 御周印帳」を持って仙娥滝駅の券売所を訪ねると、「御嶽昇仙峡」と彫られた御周印を押してもらえ、御嶽昇仙峡に足を運んだ証が御周印帳に残ります。

全国には104の「日本遺産 御周印」があるので、すべての御周印を取得するべく、各地を旅してみるのも一興です。

パノラマ台駅から仙娥滝駅までの乗車時間は5分ほど
仙娥滝駅からパノラマ台駅までの乗車時間は5分ほど

山頂には広々とした遊歩道が設けられており、軽いトレッキングをしながら絶景を楽しむことができます。

弥三郎岳からの眺め

パノラマ台駅から徒歩10分ほどの弥三郎岳まで足を延ばすと、さらに視界が開け、パノラマビューが目の前に。金峰山、荒川ダム、甲府盆地などが望めるうえ、晴れた日には富士山も確認できます。ダイナミックで開放的な視界を堪能しながら、清々しい気分に浸れること必至。

■昇仙峡ロープウェイ
住所:山梨県甲府市猪狩町441
TEL:055-287-2111
時間:4月1日~11月30日 上り始発(9時)・上り終発(17時10分)・下り終発(17時30分)、12月1日~3月31日 上り始発(9時)・上り終発(16時10分)・下り終発(16時30分)
定休日:無休
料金:大人(中学生以上)往復1500円、片道800円、小人(小学生以下4歳まで)往復750円、片道400円 ※3歳以下無料
アクセス:仙娥滝から徒歩約2分

2. 清らかな水の流れに心酔【板敷渓谷・板敷大滝】

御嶽昇仙峡には、覚円峰や仙娥滝に引けを取らない名スポットがまだほかにも。それが、御嶽昇仙峡の北部エリアにある板敷渓谷・大滝です。板敷渓谷周辺の道は、専用駐車場から往復30分ほどかけて散策できます。コースには人工物がまったくなく、ありのままの自然を感じられるのが大きな魅力。

歩き始めてから15分ほどで、終着地点である板敷大滝に到着。高さ30mの場所から水がとめどなく流れ、清らかで神秘的な滝壺が形成されています。水のパワーを感じながら鳥のさえずりやせせらぎに耳を傾けるうち、日常を忘れ、心がみるみる洗われていくはず。ちなみに板敷渓谷・大滝は、この地域のパワースポットとしても有名です。

御嶽昇仙峡の清流は「名水百選」の一つにも選出されており、甲府市と甲斐市では農業用水や水道水として利用されているのだそう。

■板敷渓谷・板敷大滝
住所:山梨県甲府市上帯那町字奥千丈
アクセス:仙娥滝から車で約10分

3. 地域の湧き水を使用した、澄んだ味わいの御嶽そば【大黒屋荒川ダム店】

昼食時にやってきたのは、「大黒屋 荒川ダム店」。地域の水源である荒川ダムが完成した年にオープンした店で、40年近く、この地で営業を続けてきたそう。

「御岳そば」850円
「御岳そば」850円

こちらの看板メニューが、オープン時からある「御嶽そば」。普通のそばよりも麺が太く、噛みごたえがあるのが特徴の一つ。とてもみずみずしく、澄んだ味わいが楽しめます。店主の相原さんによると、澄んだ味わいの秘密は、そばの作り方や水にあるそう。「そばを長持ちさせるための保存料などは使わず、必要最低限の材料でそばを作っています。また、近隣にある神社には清らかな湧き水があるので、これを汲んできてそばを打つ際に使っています」。

ちなみに御嶽そばは、地域の歴史ともつながる由緒あるメニュー。こう、相原さんが教えてくれました。「昔は、全国各地の修剣者が金櫻神社を目指し、この地にやってきたそう。そうした修験者をもてなすために地域の人々がそばを打つようになり、やがて『御嶽そば』という名物となりました」。

■大黒屋 荒川ダム店
住所:山梨県甲府市高町454-3
TEL:055-287-2158
営業時間:10~17時
定休日:第2・第4火曜日 ※1~3月は毎週火曜日が定休日
アクセス:板敷渓谷から徒歩約3分

4. 伝統工芸士の指導のもと、研磨体験【昇仙峡物語 円右衛門伝承館】

神秘的で魅力的な水晶。さらに水晶について知るべく、その生産過程や歴史を紐解いてみませんか?
ロープウェイエリアにある「昇仙峡物語 円右衛門伝承館」は、水晶について深く知ることができる施設。施設内には水晶にまつわる展示品が設けられており、水晶が生成される環境や水晶の研磨加工法などを知ることができます。

人気商品の一である「光の種ピアス」8800円
人気商品の一つである「光の種ピアス」8800円

円右衛門伝承館には水晶研磨の工場があり、そこでは現役の伝統工芸士が日々、水晶を研磨しています。採掘されたばかりの水晶は、もやがかかったような色合い。職人の手で丁寧に磨かれることで、透明感があり美しい色合いの水晶に仕上がるのだそう。円右衛門伝承館の工場では、伝統工芸士に教わりながら水晶の研磨体験もできるため、ぜひトライを。

研磨体験では最初に、複数種の水晶のなかから自分の好きなものを選びます。取材時は、淡いピンク色が持ち味のローズクオーツをセレクト。この時点ではまだ研磨されていないため、やや濁ったような色合いです。ここから専用の機械と研磨剤を使って磨くことで、つややかな表情が現れるのだとか。

研磨専用の機械は、中央部に回転する鉄板が設置された、"ろくろ”を思わせる機械。これに研磨剤が入った水をかけつつ、水晶を押しつけて前後に動かすことで、水晶の表面がだんだんと削られていきます。5分ほどかけて削り、最後に艶出しワックスを塗布すると、目の前には光を受けてツヤツヤと輝くローズクオーツが。

採掘されたばかりの水晶は、まさに原石。匠の技術があるからこそ、水晶に秘められた輝きと魅力が引き出されるのだと、実感できました。

ちなみに水晶は、現在の暮らしにも深く根づいています。コンピュータやスマートフォンといった電子機器の重要部分に使われているのは、水晶を原料とする「水晶振動子」。水晶が電子機器に使われるようになったのは、御嶽昇仙峡一帯が日本有数の水晶の産地であることが関係しています。地域の特産である水晶を活用すべく、山梨大学では戦前から水晶に関する研究が行われていました。そして研究の末、日本で最初に人工水晶の工業化に成功したのだとか。

■昇仙峡物語 円右衛門伝承館
住所:山梨県甲府市猪狩町385-1
TEL: 055-287-2228
営業時間:9~17時
定休日:無休
アクセス:仙娥滝から徒歩約3分

5. 唯一無二の、匠の技に感激!【玉造 昇仙峡店】

円右衛門伝承館の隣には、「玉造 昇仙峡」という要チェックのお店があります。こちらでは、伝統工芸品の甲州印伝や雑貨に加え、まん丸の水晶玉を販売。この水晶玉は、店舗に併設されている工場で、1級宝石研磨士の資格をもつ職人・福田正和さんがひとつひとつ、手作りしたものです。

「かっこみ」をしたあとの水晶

採掘されたばかりの水晶は、あちこちに凹凸があり、全体がくもった状態。この水晶の原石を、「たがね」という細長い金属を使って荒削りしていくところから、水晶の加工は始まるのだそう。なお、水晶を荒削りする作業は「かっこみ」とよばれています。かっこみは水晶の形や特徴を生かして行う必要のある非常に難易度の高い作業なのだそう。かっこみを経た水晶は、小さな円盤が設置された機械で少しずつ磨かれていきます。

長い年月をかけて成長する水晶。写真の水晶に入っているいくつもの線は、「成長線」と呼ばれるもの
長い年月をかけて成長する水晶。写真の水晶に入っているいくつもの線は、「成長線」とよばれるもの

こうして完成した水晶玉は、まん丸でツルツル。真円率99%の、ほぼ完全な円球に仕上げられるのだそう。ちなみに水晶玉には魔除けなどの効果があると、昔から言い伝えられてきました。そうした効果があると思わず納得してしまうほどの神々しさが、「玉造」の水晶玉にはあります。

■玉造 昇仙峡店
住所:山梨県甲府市猪狩町388-1
TEL: 055-287-3200
営業時間:9~17時
定休日:無休
アクセス:昇仙峡物語 円右衛門伝承館から徒歩すぐ

6. 御嶽昇仙峡の銘菓「食べる水晶玉」【仙人茶屋】

おやつ時にぜひ訪れたいのが、御嶽昇仙峡の仙娥滝付近にある「仙人茶屋」。聞くところよると、こちらでは「食べる水晶玉」というスイーツがいただけるそう。

「食べる水晶玉」660円
「食べる水晶玉」660円

店舗で注文し、目の前に出てきた「食べる水晶玉」は、まさに水晶玉にそっくり。美しい半球型で透き通っており、眺めているだけでありがたい気持ちになってきます。この水晶玉は、水やゼラチンなどからできた水餅で、ぷるぷると軟らかく、ほどよい弾力も。日本名水百選の「女取湧水(めとりゆうすい)」が使われているとあり、雑味のないクリアな味わいも楽しめます。また、水晶玉とセットでついてくる、きめ細やかな極上きな粉と特製黒蜜をかけると、芳しいきな粉の香りと黒蜜ならではのコクが感じられる一品に。

■仙人茶屋
住所:山梨県甲府市猪狩町1338
TEL: 055-287-2055
営業時間:9~17時
定休日:無休
アクセス:仙娥滝から徒歩すぐ

御嶽昇仙峡へのアクセス

巨大な花崗岩で形成された天然のアーチ「石門(いしもん)」
巨大な花崗岩で形成された天然のアーチ「石門(いしもん)」

自然のなかでのトレッキングに絶景、グルメまで楽しめる御嶽昇仙峡。この地に根付いたストーリーも踏まえて御嶽昇仙峡を訪問すれば、より感慨深く、絶景やグルメを堪能できるはず。
なお御嶽昇仙峡は、アクセスしやすいのも魅力の一つ。都内から日帰りで訪問しても、充分に楽しむことができます。

■鉄道で
JR新宿駅から特急かいじ/あずさで約1時間30分、JR甲府駅からバスまたはタクシーで30分

■車で
東京都内から中央自動車道で約1時間30分、甲府昭和ICまたは双葉スマートICから約45分

雄大な自然があり、水晶をも生み出す、神秘的な御嶽昇仙峡。ぜひ当地を訪れ、日本遺産の魅力を体感してみてくださいね。


Text:緒方よしこ
Photo:村岡栄治

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。


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